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2010.10.11

中国の尖閣諸島関連政策の補足(中国政府と軍閥の問題に関するメモ)

 ちと現在多忙であり、のんびりブログの更新をしている暇もなかなかないのであるが、凡そ今回の尖閣諸島問題についての論評も出揃ってきて、中国のアジア外交における綻びも概ね衆知のところになってきたのは一応触れておきたい。

 フジタの社員も釈放されているが、実質的なところで言うと、今回はどうやら、中国政府が尖閣諸島問題の値段を吊り上げたわけではないということがおぼろげながら分かってきたような感じである。

柳条湖事件と盧溝橋事件の比喩性
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2010/09/post-4077.html
「中国の漁船は中国軍の手先」とNYTが報道
http://d.hatena.ne.jp/zyesuta/20101010/1286721448

 仔細は省くが、要するに「安全保障」と「為替操作」と「人権問題」とが、いままでの中国外交が稼いできたポイントをすっかり失わせる結果になりつつあるということで。

 欧米の見方をすれば、ソビエト連邦に続く西側諸国の価値観や権益を脅かす偉大なニューエネミーの出現という見え方になるし、経済の観点からすれば資源外交の延長線上に新重商主義、新植民地主義のアプローチを喚起する。中国がアジアにおけるモンロー主義を実現しようとしているともいえるし、「真珠の首飾り」だって平たく言えば中国のシーパワー膨張のグラウンドデザインのひとつに過ぎない。

 問題は、アジアにおける局地的なゲームが始まっている割に、ずいぶん細やかな事件が外交上の問題へと発展し、ユニラテラルな外交課題であるはずの事案をあっという間に地域間の外交ネタにリンクさせ発展させてしまうというあまり余裕のない各国の国内情勢にある。これが中曽根政権だったら、あるいは海部政権だったらと思うと、いろんなことを思い描いてしまうわけだが、やはりポスト冷戦から少し時代が動いて、ごく具体的に米中対立の状況に陥りつつあるという分析を誰もが否定できなくなってきている。

 中国の場合は、今回の一連の流れでいうならば一番外交的に負けた形になっている。本来ならば、局地的な安全保障の問題については(とりわけ南沙諸島などへの)リンクを絶対に防がなければならないし、中国の挑戦的な経済覇権に対する警戒感は間違っても表出してはならなかった。国内に対して弱腰であるように見えたとしても、実際には中国に実益上失うものはなにもない。謝っておけ、という話である。

 ところが、そうはできなかった理由というのは、実は漁船に仕立てた軍人を送り込む活動は必ずしも中国政府の統制のもとに行われているわけではない、という点だ。まず間違いなく、中国政府は地方の軍閥を統制できていない。軍事関連での冒険的な物言いや領土問題での過激な態度は、本来の中国政府の取りたい態度からは隔絶しており、いままでの中国の外交姿勢との一貫性を欠く。

 どうであれ、中国はもうすでに外へ向けてボールを蹴った以上、落としどころについても本来ならば考えておかなければならないのであろうが、中国国内では情報を統制し、外に対しては一枚岩に見せるやり口はかなり無理が出てきており、手の打ちどころをあまり考えずに各地域各軍閥が好き放題やった挙句、中南海だけが失点しているというゲームが続いている。

 ダルフールやマグロの件での中国外交が取り繕う「善良な新しい大国」というアプローチが、近隣外交の突発的な事象であっという間に崩壊するのは何とも物悲しい。ベトナムが日米に急接近してみたり、ロシアがとりあえずの中ロ親密化をアピールしてみたり、とても分かりやすい動きがメッセージつきで出ていて興味深いことこの上ないのである。


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Comments

中国の軍人も怒ってるだろうな、なんで、我々軍人は経済的に豊かにもならないし、もっとも名誉ある仕事が今や政府の関心も大都市からの関心も薄れているからね。

ま、そのうち、貧乏人が金持ちに対して、誘拐とか強盗とか、どんどんでるでしょ。軍は、経済人に対しては無視を決め込むだろうし、そうなると経済人は自衛するために、軍に金を渡すか、自分たちで私兵をつくるしかないわけで。

日本は、スルーしていればいいんじゃないの? 日本なしには、中国はアメリカともうまくやっていけないだろうしw

革命前夜かな。

中国の軍人も怒ってるだろうな、なんで、我々軍人は経済的に豊かにもならないし、もっとも名誉ある仕事が今や政府の関心も大都市からの関心も薄れているからね。

ま、そのうち、貧乏人が金持ちに対して、誘拐とか強盗とか、どんどんでるでしょ。軍は、経済人に対しては無視を決め込むだろうし、そうなると経済人は自衛するために、軍に金を渡すか、自分たちで私兵をつくるしかないわけで。

日本は、スルーしていればいいんじゃないの? 日本なしには、中国はアメリカともうまくやっていけないだろうしw

革命前夜かな。

なるほど。軍閥の統制が取れてないとな。日本では小沢首相になっておいたほうが明らかに中国に利があると思ったのでなぜこのタイミングでと思ったがそういうことか。

>>中南海の一人負け
インドから尖閣諸島まで、寄りにもよって「同時に」まんべんなく国境紛争引き起こすとか、まっとうに考えればアホかという話なのだけど、要するに各現場の軍閥が戦略もなしに勝手に実績上げようとするのを止められない、という話なんですよね。

まぁ、「大国に外交なし」っちゃ、それまでですけど。

改めて、中国は太古の昔から分裂癖があって、今の体制もほんの60年経ったに
過ぎないことを認識せねばならない。

> ダルフールやマグロの件での中国外交が取り繕う「善良な新しい大国」というアプローチが、近隣外交の突発的な事象であっという間に崩壊するのは何とも物悲しい。

人、それを「化けの皮が剥がれた」、言う。これ大地の教え。インディアン嘘つかない。

なんというか、いにしえの巨人が蘇って暴れ始めたんだけど、ちょっと暴れるのが早すぎて体がまだ付いていかず、蘇る前に潰れちゃうかも…ってなんか見たことあるなあと思っていたら、ナウシカの巨神兵だった。

プロトンビーム発射しながら体が腐ってドロドロと落ちていく感じ、あれを想像してしまいました。
あと5年、頭を低くして陰で爪を研いでいれば、完璧な巨神兵として復活して世界を蹂躙できたかも知れないのにね。

これで近々に中国崩壊となれば、あふれ出る難民の何パーセントが日本に来ようとするでしょうか?これだけは絶対に避けなければいけない。ほとぼりが冷めるまで、不法入国者は皆殺し路線をとる方がいいと思います。彼らが死ぬのは彼らの責任ですから、情けなどかける余地は無いでしょう。「日本に来たら殺されるぞ」という認識を、今のうちに広めておく必要があるでしょう。ロシアだったらやると思いますけどね。ぜひ、それに乗じてやるべきです。しかしあれですな、結局現代シナ人というのは、何の文化も作らす滅びる事しかできない愚劣な連中なのですなあ

フジタの件は、まぁ中国が人質とったというゆうより、単に社員さんたちの行動がちょっと注意不足だったということかと。タイミングは悪すぎたけど。中国だけじゃなく、軍事施設と気がつかなくても周辺でビデオや写真を撮りまくったら拘束されるのあたりまえだと思うけど。しかも現地駐在員もいたんでしょ。

中国は国防動員法施行など、さらに有事に向けた法体制を整えつつある。


http://www.epochtimes.jp/jp/2010/10/html/d26537.html

「緊急時、所有物徴収」へと法を整備化  高まる批判の声=四川省 

【大紀元日本10月8日】四川省は、災害時などにおける緊急対応能力を高めるために法整備を進めている。地方紙・成都晩報の報道によると、起草されている法案には、「緊急時には、企業または個人の所有物を徴収することも可能」という内容が盛り込まれている。同法案に対して法曹界と市民から批判の声が上がっている。

 草案では、徴収は2人以上の職員によって執行されること、公証人による立会いが必要、などの条件も記されている。

 これに対し、法曹界は、同草案は憲法に違反していると主張している。2004年に修正された憲法では、「国民の私有財産を侵害してはならない」と明記されている。また、徴収された私物に損傷があった場合の賠償について触れられていないという問題も指摘された。

 また、「緊急時」の定義が明確ではないため、多発する強制立ち退きも法案の対象となり、正当化される恐れがある、と市民から反対の声が上がっている。

(翻訳編集・高遠)

>Posted by: | 2010.10.11 at 06:36

中国の軍人さんの給料は、ここ数年で跳ね上がってると聞きましたよ。
最近の軍人さんは、外資系のショッピングセンターで平気で買い物できたりしますから
普通の工員さんの5倍くらい貰ってるとか

http://blog.tatsuru.com/2010/10/11_1212.php
斯人也而有斯疾也
斯人也而有斯疾也

軍人さんは副業可能だそうで、昔テレ東で補給品の工場長の上校(大佐)が軍用品(靴墨)を大増産、チャイナミルスペックの格安販売で大もうけ。兵士もボーナスもらって大喜びって話を見たことがあったような気が。

ちなみに武器は揃ったけど、兵士の質は低くて、日清戦争再びな予感が・・。歩兵からして今時自衛隊でもやらない学芸会的訓練が主流だからな。

中国のトップツイーターの一人であるフリージャーナリストの安替(アンティ)が2010年10月、国際交流基金の招きで来日。12月中旬までリサーチ、取材、講演を行います。英語が堪能で西洋メディアの情報をツイッターやコラムで紹介する彼は、なんと初来日。そんな彼の目に映る日本とは…。安替の滞在中、常時更新の予定です。

http://togetter.com/li/56666

この安替(アンティ)さんは、捕まらないのだろうか?

今は経済成長してるから、貧農も夢見て我慢してるけど、超高齢化社会となり経済発展がなくなる10年後に、騙されたと知った彼らがどういう行動に出るのかは、まあ、ね…

新潟とか名古屋の中国領事館、チャイナタウン計画とかのほうが大問題では。内部侵食に対抗。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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