異様なテンションで京都の街を突っ走る表題作をはじめ、先達への敬意が切なさと笑いをさそう、五つの傑作短編。 (Amazon)
森見登美彦を何作か読んで,
その一つとして「新釈 走れメロス 他四篇」を見つけた。
(それらの感想は機会があればいつか。)
うれしい発見だ。
この本は,近代文学のパロディ5作品から成り立っているが,
その中に私の大好きな坂口安吾のパロディがあるではないか。
しかも安吾の名作「桜の森の満開の下」だ。
名作と言っても,安吾は評論・随筆の方が面白いので
小説家としてパッとしないんだけど。
短編は面白いものが多いけど,「風博士」とか。
そう言えば,青空文庫で「吹雪物語」まだ作業中だったな,早く読みたいな。
あんまり期待を込めるとしっぺ返しが怖いので,
それなりの調子で読んでみたが,なかなかうまいじゃないか。
雰囲気は。
登場する女の寒々しい美しさの描写がいいな。
安吾の「桜の森の満開の下」に登場する女は美しい。
しかしその女は無知だ,だが美しい,
美しさというものに人間的要因はなど必要なはないのだ。
花が美しいのは,ただ美しいからだ。
そこに人間の入る余地などない・・・
こういう論をここで述べてもそれは無意味だろう。
これはパロディなんだ。
楽しめればいいよ,それ以外を求めるなんてナンセンスだろう。
ましてや,この本が近代文学を盛り上げる偉大なる架け橋なろうとは,
なんて確信している読者が入れば・・・それはそれで面白いだろうが・・・。
要は楽しい楽しい森見ワールドなんだ,それが一番。
私は「走れメロス」が一番面白かった,
バカすぎるストーリーで笑わせてもらった。
こういうバカバカしい乱痴気騒ぎ(群像劇)を書かせたら森見登美彦は本当に面白い。
元ネタが先にあるんじゃなくて,森見ワールドが先にあるの。
卵が先か鶏が先かとかそういうじゃなくて,
森見作品は常に森見が先なんだ,それが森見ワールド。
私は順をつけるなら
走れメロス >藪の中>桜の森の満開の下=山月記>百物語という感じか。
元ネタの芥川龍之介の「藪の中」って読んでないけど,この本を読むとかなり面白そうだ。
ちょうどGWのBOOKOFFの安売りフェアで買った,ちくまの芥川龍之介選集の中にあるので
後で楽しみに読むとしよう。(当初は,トロッコ・蜜柑・河童目的で購入。)
森鴎外の「百物語」って読んだことないけど,鴎外はそんなに好きじゃないのでスルー。
関係ないけど,グチ(戯言?)みたいなもんを一つ,新潮で朝吹真理子の新作が載ってた
なんだろう,もう凄すぎてこの人何処にいくんだろう,半端ないです。
☆☆☆
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- 2013/05/15(水) 20:31:15|
- 本 ☆☆☆
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こんにちは。
坂口安吾の桜の…は私も好きな話なのでこの本も読んでみたくなりました。
(蜜柑もすごく好きな話です^^)
- 2013/05/16(木) 18:09:57 |
- URL |
- まつ毛 #shkGrSU.
- [ 編集 ]
> こんにちは。
> 坂口安吾の桜の…は私も好きな話なのでこの本も読んでみたくなりました。
> (蜜柑もすごく好きな話です^^)
まつ毛さん コメありがとうございます
良いですよね,坂口安吾!
- 2013/06/12(水) 20:33:26 |
- URL |
- ヒメキリン #-
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