昔 々むかし、ある村むらのお寺てらの和尚おしょうさんが、北海道ほっかいどうへ出で
かけて帰かえってくる時ときのことでした。連絡船れんらくせん [1] の船室せんしつで眠
ねむっていた和尚おしょうさんは、不思議ふしぎな夢ゆめを見みました。一羽 いちわの
ニワトリが、こんな事 ことを言 いうのです 。「わたしは、この船ふねに乗のっている
ニワトリです。夜明よあけ前まえには殺ころされて食たべられてしまいます。どうかわ
たしを助たすけてください。六十銭ろくじゅうせんで、わたしの命いのちを買かいとっ
てください。どうかお願ねがいいたします。」
やがて空そらが白しらみはじめる [2] と、和尚おしょうさんは目めを覚さましました。
「不思議ふしぎな夢ゆめじゃ。ただの夢ゆめだろうが、もしもという事ことがある。」
そこで和尚 おしょうさんは船 ふねが港 みなとに着 つく前 まえに、お供 ともの小僧 こ
ぞうさんに一円札 いちえんさつを持 もたせて、ニワトリを連 つれている人 ひとがいた
ら、その人 ひとからニワトリを買 かいとる [3] よう言 いいつけたのです 。
しばらくすると、小僧こぞうさんは籠かごに入はいったニワトリと、つり銭せんの四十
銭よんじゅうせんを持もって和尚おしょうさんの所ところへ戻もどってきました。何 な
んと、金額 きんがくまでピッタリで、不思議 ふしぎな夢 ゆめは正夢 まさゆめだったの
です 。和尚おしょうさんはそのニワトリを港みなとの知しり合あいの人ひとに預あずけ
て、村むらのお寺てらへ帰かえっていきました。ニワトリはその後ご、八はっヶ月げつ
ほどして死しんでしまいました。
ニワトリを預あずけた知しり合あいからその知しらせを受うけると、和尚おしょうさん
は知しりあいの家いえまで出でかけていって、ニワトリの供養くよう [4] をしてやりまし
た。それからしばらく経たったある日ひ、和尚おしょうさんの夢ゆめの中なかに、あの
ニワトリが現あらわれました。「和尚おしょうさま、おかげさまでわたしは命いのちを
延のばすことができました。寿命 じゅみょうが尽 つきるまで生 いきられたのですか
ら、真 まことに幸 しあわせです。お礼 れいとして和尚 おしょうさまのお命 いのちを、
七十五才 ななじゅうごさいになる年 としの七月二十五日 しちがつにじゅうごにちまで
お守 まもりいたします 。それまではどんな病気びょうきになっても、けっして死しぬよ
うなことはさせませんのでご安心あんしんを。」
それから幾年いくとしか過すぎて、和尚おしょうさんは七十五歳ななじゅうごさいの七
月二十五日しちがつにじゅうごにちの日ひを迎むかえました。「今日こんにちまでは、
あのニワトリがわしを見守みまもってくれていたわけか。そう言いえば、今いままでた
いした病気びょうきにもならずにやってこられた。ニワトリに礼れいを言いわんといか
んな。さあ、明日あしたからはニワトリも見守みまもってくれん。体からだに注意ちゅ
ういせんとな。」和尚おしょうさんは自分じぶんに言いい聞きかせましたが、その後ご
まもなく病気びょうきになり、一月後いちがつごの八月二十五日はちがつにじゅうごに
ちに大往生だいおうじょうを遂とげたという事ことです。
[1] 「連絡船」,名词。联运船。
[2] 「空が白みはじめる」,天开始发亮。
[3] 「買い取る」,动词。买下,买入。
[4] 「供養」,名词。供养,上供,祭祀。
很 久以前,一个村子的寺庙里有一个老和尚,他从北海道回来的时候,在渡船的船舱里睡
着了,还做了一个奇怪的梦。一只鸡对他说:“我是这艘船里的一只鸡,在黎明前要被宰杀
吃掉,请救救我吧!请用六十钱,买下我的性命吧。拜托你了!”
不久,天空泛起鱼肚白时,老和尚醒了,心想:“真是一个不可思议的梦啊!只是梦吗?莫
非真有此事儿?”于是,老和尚在船到达港口之前,让随从的小和尚拿上一日元的纸币,并
吩咐他说:“如果看见有人带着鸡,就把他的鸡买下来。”
过了一会儿,小和尚拿着关在笼子里的一只鸡和找回来的四十钱零钱回到了老和尚这
儿。“不会吧?连找回的金额都吻合,这个奇怪的梦真是应验了。”老和尚把那只鸡交给了
港口的一个熟人喂养后,就回到了村里的寺庙。此后,这只鸡过了八个多月死去了。
一从帮喂养鸡的熟人那里得知鸡死去的消息,老和尚就赶到了他的家里,为那只鸡上供。
不久,老和尚又梦见了那只鸡。鸡对老和尚说:“师父啊,多亏了您我的寿命才得以延长
的。能够寿终正寝,真是一件幸福的事啊!作为答谢,我会守护您的生命到七十五岁那年
的七月二十五日。在此之前无论您患什么病,我都不会让您死去,请您放心吧!”
从那以后,不知度过了多少年,老和尚迎来了七十五岁那一年的七月二十五日。“直到今
天,那只鸡应该一直在守护着我吧?的确至今也没患什么大病,平安地过来了,我必须向
那只鸡道谢才是啊!唉!从明天开始那只鸡就不再守护我了,自己可要注意身体呐。”老和
尚对自己这么说。但过了不久他就生了病,在一个月后的八月二十五日就安然辞世了。
语法详解
(1)用言の連体形+のだ/のです
表示客观说明。用于解释、说明事实和原因根据,强调自己的主张等。
「…んだ」是其口语形式。书面语也用「…のである」的形式。
* その日は雨が降っていたのです。
那天下着雨。
* 私は肉が嫌いなのです。
我不喜欢吃肉。
* ドル安はアメリカの経済政策に問題があるからなのである。
美元贬值是因为美国的经济政策有问题。
(2)体言+として
表示资格、身份、范围、状况等。相当于“作为……”
* 外交官としてイギリスに来ます。
作为外交官来英国。
* 趣味として、書道を習っています。
作为兴趣我正在学习书法。
* 豆腐はダイエット食品として人気があります。
豆腐作为减肥食品很受欢迎。
小知识
和尚
和尚(おしょう、わしょう、かしょう)とは、仏教の僧の敬称である。
本来の意味は、出家して受戒した僧が、日常親しく教えを受ける教師を
指す。『十誦律』では、受戒の師を指す。日本では、天平宝字2年(758
年)に戒師として渡来した鑑真に対して「大和尚」の号が授与されてお
り、その後、高僧への敬称として使用され、更に住職以上の僧への敬称
となった。宗派によって書き方·読み方が異なり、一部地域では更に言葉
が詰まって「おっさん」「おっさま」(アクセントは前)と呼ばれてい
る。
和尚
和尚是对佛教僧人的敬称。原本是出家受戒的僧人对日常亲切教诲自己的
老师的称呼。在《十诵律》中指的是受戒的老师。在日本,天平宝字2年
(758年),作为戒师从中国来的鉴真被授予“大和尚”的法号,从此,“和
尚”一词作为对高僧的敬称而广为使用,并成为住持以上僧人的敬称。根据
宗派不同,其写法与读法各有差异,另有一些地区,由于使用方言,而出
现“おっさん”“おっさま”一类的叫法。