昔 々むかし、ある所ところにお爺じいさんとお婆ばあさんがいました。お爺じいさん
は、編あみ笠がさ [1] を作つくって暮くらしていました。お爺じいさんとお婆ばあさんは
貧乏びんぼうで、ある年としの大晦日おおみそかにはお正月しょうがつのお餅もちを買
かうお金かねもありませんでした。それでお爺 じいさんは編 あみ笠 がさを売 うるため
に町 まちに行 いくことにしました 。お爺じいさんは編あみ笠がさを五いつつ背せ負
おって出で掛かけました。
町まちは遠とおくて長ながい間ま野原のはらを歩あるきました。やっと町まちに着つい
て、お爺じいさんは「編あみ笠がさ、編あみ笠がさは如い何かんですか。丈じょう夫ぶ
な編あみ笠がさ。」と言いいながら売うり歩あるき [2] ました。
町まちはとても賑にぎやかで、お正月しょうがつの準じゅん備びをしている人ひとが沢
たく山さんいました。お魚さかな、お酒さけ、お餅もちを買かって皆みなは自じ分ぶん
の家いえに帰かえりました。誰だれも編あみ笠がさを買かってくれませんでした。お正
月しょうがつには誰だれも外そとを歩あるかないので編あみ笠がさは要いりません。お
爺じいさんが一日いちにち中町じゅうまちを歩あるいても、声こえを出だしても、編あ
み笠がさは一ひとつも売うれませんでした。そしてお爺 じいさんは仕 し方 かたなく、
お餅 もちを買 かわずに帰 かえることにしました 。
お爺じいさんが町まちを出でて歩あるき出だした時とき、雪ゆきが降ふり始はじめまし
た。疲つかれたお爺じいさんは雪ゆきの中なかで凍こごえながら野の原はらを歩あるい
て行いくと地じ蔵ぞう様さまの姿すがたが見みえました。石いしの地じ蔵ぞう様さまは
六むっつ並ならんで、頭あたまの上うえに雪ゆきが積つもっていて、氷ひょう柱ちゅう
も下さがっていました。優やさしい心こころのお爺じいさんは「地じ蔵ぞう様さまは寒
さむいだろう。」と思おもいました。お爺じいさんは地じ蔵ぞう様さまの頭あたまを拭
ふいて、雪ゆきを取とってあげました。そして、売うれなかった編あみ笠がさを地じ蔵
ぞう様さまに被かぶせてあげて、「売うれ損そこない [3] の編あみ笠がさですけど、被か
ぶってくだされ…」と言いいました。でも編あみ笠がさが五いつつありますが、地じ蔵
ぞう様さまは六むっつです。編あみ笠がさが一ひとつ足たりないので、お爺じいさんは
自じ分ぶんが被かぶっていた編あみ笠がさを地じ蔵ぞう様さまに被かぶせてあげまし
た。「古ふるくて汚きたないですが、これを被かぶってくだされ。」とお爺じいさんが
言いいました。そしてお爺じいさんは雪ゆきの中なかでまた歩あるき出だして、家いえ
に帰かえりました。
お爺じいさんは家いえについた時とき、編あみ笠がさを被かぶっていなかったので雪ゆ
きで真まっ白しろでした。お婆ばあさんはお爺じいさんを見みると聞ききました。それ
でお爺じいさんは「実じつは町まちで編あみ笠がさが全ぜん然ぜん売うれなかったん
だ。帰かえり道みちで地じ蔵ぞう様さまを見みて、寒さむいだろうと思おもって、傘か
さを差さし [4] あげた。一ひとつ足たりなかったので、自分じぶんのを被かぶせてあげ
た。」と答こたえました。その話はなしを聞きいて、お婆ばあさんは喜よろこんで「そ
れはいいことをしました。貧乏びんぼうでもわたしたちには家いえがあってありがたい
ことですね。」と言いいました。そして凍こごえるお爺じいさんを囲い炉ろ裏りで暖あ
たためてあげました。編あみ笠がさは売うれなかったので、お餅もちもほかの食たべ物
ものもありませんでした。お爺じいさんとお婆ばあさんは漬つけ物ものだけでご飯はん
を食たべて布ふ団とんに入はいりました。
明あけ方がたまだ暗くらい内うちに、お爺じいさんとお婆ばあさんは外そとから歌うた
が聞きこえたので目めを覚さましました。まず遠とおくから聞きこえた歌うた声ごえは
段だん々だん近ちか付づいてきました。「地じ蔵ぞうに編あみ笠がさをくれたお爺じい
さん、お爺じいさんの家いえはどこだ、お爺じいさんの家いえはここか」と言いう歌う
たでした。
お爺じいさんとお婆ばあさんはびっくりしました。そして「どっすん [5] 」と大おおきな
音おとが聞きこえました。お爺じいさんとお婆ばあさんは戸とを開ひらけて見みて驚お
どろきました。家いえの前まえに、荷に物もつが一いっ杯ぱいありました。お米こめ、
お酒さけ、お餅もち、お魚さかな、お正月しょうがつの飾かざり、暖あたたかい布ふ団
とんと着き物もの、いろいろありました。お爺じいさんとお婆ばあさんが回まわりを見
みると、編あみ笠がさを被かぶっている六むっつの地蔵様じぞうさまが帰かえって行い
くのが見みえました。地じ蔵ぞう様さま達たちは優やさしい心こころのお爺じいさんに
楽たのしいお正月しょうがつを過すごしてもらうために、恩おん返がえしをしに来きた
のでした。
[1] 「編み笠」,名词。草编制的笠。
[2] 「売り歩く」,动词。叫卖。
[3] 「売れそこない」,名词。没能卖出。
[4] 「傘を差す」,打伞、撑伞。
[5] 「どっすん」,副词。扑腾的响声。
从 前,有一个地方住着一对老爷爷和老奶奶。他们靠老爷爷编斗笠过日子,家里十分贫
穷。有一年除夕,他们连买年糕的钱都没有,所以老爷爷决定去集市卖斗笠,他背着五顶
斗笠出发了。
集市非常远,他步行穿过漫长的原野,终于来到了集市。老爷爷一边走一边叫卖:“卖斗
笠!卖斗笠!结实的斗笠,买一顶吧。”
集市非常热闹,大家都在为了准备年货而忙碌。他们买了鱼、酒和年糕之后就各自回家
了。没有一个人买他的斗笠,这是因为正月不出门,没必要戴斗笠。尽管老爷爷一整天都
穿梭于市场叫卖,却没有卖掉一顶斗笠。老爷爷没办法买回年糕,只好踏上返程之路。
老爷爷离开集市时,天开始下起了雪。老爷爷累得精疲力竭。当他冒雪穿行于冰冻的原野
时,看见了六位石头做成的地藏菩萨并排在一起,头上积满了雪,身上还挂着冰柱。“地藏
菩萨一定很冷吧。”善良的老爷爷一边想,一边把每一位地藏菩萨头上的积雪拂掉。接着,
又把没有卖掉的斗笠戴在地藏菩萨的头上。“这斗笠既然没卖出去,就让我帮你们戴上
吧。”老爷爷说。可是,斗笠只有五顶,而地藏菩萨有六位,于是老爷爷就把自己戴的那一
顶也给菩萨戴上了。“这一顶虽然又旧又脏,可请您戴上吧!”说完,他又继续迎着风雪往
家赶。
老爷爷到家时,因没有戴斗笠,全身上下覆盖着一层白雪。老奶奶一看老爷爷这个模样,
就问个究竟。老爷爷回答:“在集市上一顶斗笠也没卖掉。回家的路上我看见了地藏菩萨,
心想他们肯定很冷,就把斗笠给他们戴上了。因为还少一顶,又把我自己的也给他们戴上
了。”听完老爷爷的话,老奶奶高兴地说:“你做了件大好事啊!我们虽然很穷,但幸运的
是,还有一个家。”老奶奶用被炉给老爷爷暖和身子。因为没能够卖掉一顶斗笠,所以他们
既没年糕也没其他食物。老爷爷和老奶奶只好就着咸菜吃了米饭,睡觉了。
天还没亮,突然从外边传来了一阵歌声,把老爷爷和老奶奶吵醒了。歌声由远及近:“给地
藏菩萨戴斗笠的老爷爷家在哪儿?老爷爷的家在这儿吗?”
老爷爷和老奶奶吓坏了。接着,他们听到“扑通”一声。打开门一看,他们被眼前的情景惊
呆了。只见家门前摆满了东西,有大米、酒、年糕、鱼、正月用的装饰、暖和的被子和衣
服等年货。他们往四周一看,发现六位戴着斗笠的地藏菩萨渐行渐远的背影。原来是地藏
菩萨为了让善良的老爷爷和老奶奶能过个愉快的新年,特地前来报恩的。
语法详解
(1)動詞の連体形+ことにする
表示行为主体的主观决定和选择。相当于“我决定……”
* 雨なので、タクシーで行くことにしましょう。
因为下雨,我决定打车去。
* よく考えた結果、会社を辞めることにしました。
经过深思熟虑,我决定辞去公司的工作。
* 夏休みに韓国へ旅行することにした。
暑假我决定去韩国旅游。
(2)動詞の未然形+ず(に)
表示以否定的状态或方式来做后项。相当于“不……地”“没有……地”。
「ず」是否定助动词「ぬ」的连用形。
* 私はいつも靴を脱がずに部屋に入ります。
我经常不脱鞋就进屋。
* 本を見ずに言ってごらんなさい。
请不要看书来回答。
* この患者は何も飲まず食ずの状態が三日続いている。
这位病人已经连续三天水米未进了。
小知识
大晦日
大晦日(おおみそか)は、1年の最後の日。天保暦(旧暦)など日本の太
陰太陽暦では12月30日、または12月29日である。現在のグレゴリオ暦
(新暦)では12月31日。翌日は新年(1月1日)である。大つごもりとも
いう。日本では、年神を迎えることにちなむ行事が行われる。大晦日に
は、様々な年越しの行事が行われる。年越しの夜のことを除夜(じょ
や)とも言う。かつては、除夜は年神を迎えるために一晩中起きている
習わしがあり、この夜に早く寝ると白髪になるとか、皺が寄るとかいっ
た俗信があった。また、年越し蕎麦(地方によっては他の食事)、除夜
の鐘(108つの煩悩を祓う)、二年参り(初詣)、お雑煮など伝統的な風
習がある。神社仏閣や各地方では伝統的な行事が行われ、その他にも年
越しを祝うイベントが行われる。また、そういった行事やイベントの為
に移動する人が多いため、電車などの交通機関が日常は営業時間外と
なっている深夜に営業する事もある。
除夕
除夕是一年中的最后一天。是天保历(旧历)等日本阴历的12月30日或12
月29日,新历的12月31日。第二天就是新年(1月1日)。在日本有迎接年
神的习俗。除夕有各种各样迎接新年的活动。除夕夜也叫“除夜”。在过去,
有为了迎接年神而通宵不睡的习俗,民间认为,除夕夜早睡的话,会生白
头发,或者长皱纹。另外,除夕还有吃过年荞麦面(有些地方吃别的东
西)、敲钟(除去108种烦恼之意)、新年参拜(新年第一次到神社参
拜)、吃杂煮等习俗。神社佛寺、各地会举行各种传统庆典,除此之外,
还有各式各样的祝贺新年的活动。另外,因为很多民众会外出参加各种庆
典和活动,所以,电车等交通工具会延长运营时间到深夜。