2008年の第84回東京箱根間往復大学駅伝第2日目、逆転してトップに立った9区の堺晃一(右)に、伴走車の中からマイクで檄を飛ばす駒澤大学・大八木弘明監督(写真:産経新聞社)
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(黒木 亮:作家)

「男だろ!」

 箱根駅伝で選手の足音以上に面白いのが、伴走車(運営管理車)の声かけである。

 最近では、駒沢大学の大八木弘明現総監督の「男だろ!」が有名だが、各監督とも、選手を1秒でも速く走らせるため、工夫をこらしている。一方で、何十年も変わらない定番のセリフもあり、息の長さに驚いたりする。

 昔も今も変わらない声かけのセリフは、「お前のお父さん、お母さんも見てるよ」である。てっきりこういうのは昭和の時代だけかと思っていたら、今でも言っている監督がいるので、「へえー、今でも言うんだなあ!」と感心する。

 山梨学院大学の上田誠仁前監督が、ケニア出身の選手たちに「お前のお父さん、お母さんも……」と日本語で言っているのを聞いたときは、「えっ、ケニアの選手にあんなこと言って、意味が通じるの?」と驚いた。

2016年の箱根駅伝の3区、平塚中継所で4区・田代一馬へ3位でたすきを渡す山梨学院大の上田健太。左後方の車両内右端は指示を出す父の上田誠仁監督(写真:時事通信社)
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 ところが後で上田氏のインタビュー記事などを読むと、初代留学生のジョセフ・オツオリ選手などは、日本人以上に日本的で、日本人学生の模範にもなっていたそうで、なるほどと納得した(オツオリ選手は37歳のとき、一時帰国中のケニアで交通事故死した。山梨学院の川田「未来の森」運動公園陸上競技場には、彼を偲ぶモニュメントがある)。

1992年、箱根駅伝で山梨学院大が総合優勝総を飾る。勝利を喜ぶ山梨学院大のオツオリ(左)とイセナ(右)(写真:共同通信社)
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