規模見積もりにおける「事前チェックリスト」を右表に示した。各項目は,本文で示した落とし穴とは関係なく,見積もりを迅速かつ確実に進めるために事前に点検しておきたいものである(工数編とコスト編のチェックリストも同様)。「RFP(提案依頼書)を入手したか」や「RFPの記載内容に過剰な期待はないか」など,ベンダー視点の項目を除けば,立場を問わず利用できる。
各チェック項目には「FP法」や「LOC法」「画面/帳票」を示すアイコンがある。技法別に,関係する項目を表したものだ。30項目すべてをチェックしなくても,使う技法のアイコンがある項目のみをチェックすればよい。
規模見積もりの事前準備では,いかに「要件」を明確にするかがポイントとなる(7~28番)。規模見積もりの入力情報は要件だ。その要件に関する情報が不足していると,正しい規模を測定できない。
例えば,FP法や画面/帳票による規模見積もりでは“何を作るか”を示す「機能要件」を明確にする必要がある(7~20番)。LOC法では,それに加えて技術要件や品質要件といった非機能要件も必要になる(21~28番)。FPや画面/帳票の値は実装する技術が何であろうと見積もりの結果が変わらないが,LOCの場合は採用する開発言語やプラットフォーム,レスポンス・タイム,セキュリティ・レベルによって,ステップ数が違ってくるからだ。
すべての情報をそろえるのは難しいかもしれない。それでも初期の段階で,要件を明確にしようとする努力を惜しんではいけない。どんな情報が足りないのかを把握できれば,精度を高めるためにすべきことが見えてくるはずだ。