日立製作所とKDDIは、短距離無線通信方式「Bluetooth」を内蔵したKDDIの携帯電話機(サービス名はau)に装着できる無線ICタグリーダーを共同開発し、2006年10月2日に販売を開始した。有線ネットワークが敷設できない場所でも使用できるのが特徴である。同製品の発売を機に両社は、携帯電話機とICタグを連携させたさまざまなソリューションを提供し、企業向け市場を共同で開拓する。

 今回のICタグリーダーは、auの携帯電話機の背面に取り付けて利用するもので(写真1)、日立のICタグ「ミューチップ」(2.45GHz帯の周波数に対応)に準拠した製品である(価格は1台8万4000円)。読み取ったICタグのID番号などのデータを、Bluetoothによって携帯電話機に送信する。携帯電話機とデータを管理するサーバー間の通信には、auのネットワークを利用する。LANなどのネットワークを敷設できない屋外などでも利用できるため、さまざまな場所でICタグシステムを利用することが可能になる。業務用アプリケーションの開発には、携帯電話用プラットフォーム「BREW」を利用する。

写真1 携帯電話機に装着して使うICタグリーダー(左)

 ICタグと携帯電話機を連携させた今回のシステムの適用例として日立は、(1)鉄道レールの敷設・保守管理システム、(2)宅配便ドライバの支援システム、(3)小売店における商品購入時の決済システム──などを挙げる。このうち、鉄道レールの敷設・保守管理システムは、GPS(全地球測位システム)と組み合わせた位置管理システムである(図1)。

図1 実用化に向けた検討が進むレールの敷設・保守管理システム 【クリックすると拡大表示】

 ICタグを埋め込んだ杭(くい)を線路脇に一定間隔で設置し、ICタグにはID番号のほかに杭の敷設日時や前回の保守日時などを書き込む。GPSによって取得した位置情報と杭に埋め込んだICタグのデータを、今回のICタグリーダーを装着した携帯電話機経由で管理サーバーとやり取りすることで、保守対象の場所を正確に特定できるため、作業コストの削減や作業ミスの低減が可能になる。現在、実用化に向けた検討が進んでいるという。

 日立は2006年6月に、ICタグを利用したトレーサビリティソリューションの提供を開始しており、業界別に125のメニューを用意している。トレーサビリティとICタグを中核事業の一つに据える同社にとって、今回の新製品は市場開拓の有力な武器になる。一方KDDIも、自社の携帯電話サービス(au)の企業向け市場の開拓に力を入れている。今回の新製品を日立と共同開発したのは、こうした戦略の一環である。

 日立とKDDIは今回のリーダーを、3年間で1万台販売する計画だ。また日立は、ICタグと携帯電話機を連携させたソリューションの提供によって、3年間で100億円の売り上げを目指す。



本記事は日経RFIDテクノロジ2006年11月号の記事を基に再編集したものです。コメントを掲載している方の所属や肩書きは掲載当時のものです