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2007-09-27

産科崩壊 助産所の助産師の未熟と自信過剰が赤ちゃんを殺す 神奈川県相模原市の北里大学病院からの報告 初産29歳産婦は水中出産を4日も続けさせられ、赤ちゃんは細菌感染して生後5日で死亡、生まれてくるまで双子だとわからなかった(2例)未熟な助産師も

毎日精力的に産科を始めとする医療記事をOCR入力している僻地の産科医先生「産科医療のこれから」に
 助産所からの搬送依頼では、赤ちゃんの死亡率が明らかに高い
ことを示す
 神奈川県相模原市にある北里大学病院からの報告
である
 助産所からの搬送例の実状と周産期予後
 北里大学医学部産婦人科・小児科*
  池田泰裕 鴨下詠美 望月純子 金井雄二 右島富士男 谷 昭博 天野 完 野渡正彦*
    (日本周産期・新生児医学会雑誌 第40巻 第3号 p553-556)
がアップされている。
是非、ご一読を。
 助産所からの搬送例は有意に死亡率が高い
http://obgy.typepad.jp/blog/2007/09/post_6869.html

論文の対象となったのは
 1998-2002年に北里大学病院に助産所から搬送されてきた助産所からの母体搬送21例,新生児搬送15例の予後
についてだ。
助産所から搬送されてきた赤ちゃんの死亡率が高い。


助産所からの搬送36例中4例が新生児死亡,1例か乳児死亡であった。同時期の1次,2次施設からの母体搬送742例中新生児死亡は34例(4.6%)であったが,助産所からの母体搬送21例中死亡例は4例(19,0%)で有意に高頻度であった.助産所か分娩取り扱い基準を遵守していれば救命し得た症例もあった。助産所は周産期救急医療システムの理解を深め,関連協力病院との連携を密にする必要があると考えられた.

自然なお産、という言葉に惑わされて、助産所での出産を望むお母さん達には厳しい結果だ。

助産所は
 正常分娩を扱う
とされているのだが、
 助産師の自信過剰によって、扱ってはいけない範囲の難しいお産を扱い、母子を危険にさらした例
が、上記報告にはある。
たとえば
 水中出産を4日間も続けたために、赤ちゃんが細菌に感染し、胎内で仮死状態となり、搬送後緊急に帝王切開したが、生まれてわずか5日目に亡くなった例
がある。おかあさんは29歳で初産だった。


母体搬送の実例を呈示する.
 症例:29歳,0経妊0経産.
 診断:妊娠41週0日・遷延分娩・子宮内感染
    non reassuring fetal status
 経過:妊娠初期より助産所で管理されていた.40週2日,陣痛発来後,4日間水中分娩を行っていた.40週5日21時破水(羊混2+),22時子宮口全開大後経過観察していたが,所見の進行が認められず,41週0日で母体搬送となった.
 身体所見:体温37,3℃,脈拍数88/min.
 内診所見:頭位,sp±0,子宮口全開大
 羊混3+(悪臭あり)
 入院時のCTGモニタリングで高度変動一過性腺脈,基線細変動消失を認め,non reassuring fetal statusの診断にて緊急帝王切開術
となった.
 新生児所見
 出生体重:3,157g   Ap.S  0/0(10分値1点).
 臍帯動脈血pH:6.72
 血液検査:WBC 24,400/mm3 Plt 17.9×103/mm3 CRP8,502μg/dl.
 児胃内容培養:H.Parainfluenzae(パラインフルエンザ菌)
 (母体の腔培養からE.coli(大腸菌),Staph.Epidermidis(ブドウ球菌),H.Parainauenzae(パラインフルエンザ菌)が検出
された.〉
 重症感染症のため,日齢5新生児死亡となった。

"non reassuring fetal status(胎児ジストレス)"というのは以前は「胎児仮死」という診断名だった。子宮の中の赤ちゃんの呼吸や血液循環がうまくいってない状態を指す。
陣痛が起きてから4日も放置されるだけでも問題だが、
 水中出産で子宮内に細菌感染した
のである。これではまず赤ちゃんは助からない。上記には、赤ちゃんの胃や、母体から
パラインフルエンザ菌・大腸菌・ブドウ球菌
が見つかっている。こんな不潔な環境に4日間も晒された赤ちゃんが不憫である。

この水中出産が原因となった新生児死亡は言語道断だが、それ以外にも
 助産師の自信過剰が赤ちゃんを危険にさらした例
がある。
まずは
 新生児搬送の場合
から。


1998年から2002年の5年間のNICU総入院数1,295例のうち,院外出生時は393例(30.3%)であった.助産所からの新生児搬送依頼は45例で,受け入れた症例は15例で5年間の総入院数の1、2%であった。
依頼理由の内訳は呼吸障害5名(33.3%),チアノーゼ5名(33.3%),低出生体重児2名(13.3%),発熱・新生児仮死・不整脈が各々1名であった.この15例のうち9例が早産,適期産,IUGR,双胎,胎児不整脈,non reassuring fetal status であり,取り扱い基準逸脱例と考えられた.

北里病院が受け入れた15例のうち9例、すなわち
 6割が本来助産所では扱えない「正常分娩以外」
だったということになる。この9例の内、一人の赤ちゃんは染色体異常があり、すぐに亡くなっている。

母体搬送ではどうか。


母体搬送21例中3例(14,3%)が新生児死亡、1例(4.8%)か乳児死亡であった.いずれも妊娠正期のnon reassuring fetal statusが搬送理由で,その中には助産所取り扱い基準を逸脱(既往帝切,骨盤位,IUGR,適期産)している症例もあった同時期の1次,2次施設から当院への母体搬送は742例あり,新生児死亡は34例(4.6%)であった.一方助産所からの母体搬送は21例あり死亡例か4例(19.0%)と,有意に高頻度であった.

21人のお母さんが助産所から搬送されてきたものの、3人の赤ちゃんは新生児の内に亡くなり、1人の赤ちゃんは乳児期に亡くなっている。つまり、4人の赤ちゃんが助かっていない。

 助産所の助産師の能力
そのものに、疑問のある例もある。
 生まれてくるまで、双子かどうかが判断できなかった例
があるのだ。


 新生児搬送15例中,助産所取扱い基準逸脱例は9例であった.このうち双胎の症例は分娩中に初めて双胎と判明したものだった.逸脱例9例中1例が新生児死亡となったが,これら逸脱例は病院で管理されるべき症例であり,出生前診断か可能であったと思われた。

搬送されてきた9例の内、双子は2例。つまり
 生まれ始めたら双子と分かって、助産所が大あわてした
ということなのだ。多胎は助産所では取り扱えない、難しいお産に属する。

双子かどうかも判断できない助産師が助産所の看板を上げ、母子を危険にさらしている。
 自然なお産
は、
 こうした未熟で自信過剰の助産師の助産所でも行われている
ということを、これから出産を考えている「エコ派」の女性達は知るべきだ。
せっかく胎内で育てた赤ちゃんが、未熟で自信過剰な助産師の手によって殺されるかも知れない。
あるいはあなたの命も危険にさらされるかも知れないのだ。

現在
 安易な助産師礼賛
がマスメディアで巻き起こっているが、
 すべての助産師が熟練した技術を持っているわけではなく、助産所の出産には危険がある
ことを、メディアはきちんと報道すべきである。
上記論文にある
 水中出産
は、あきらかに
 マスメディアの「自然なお産万歳」キャンペーン
に乗せられてしまった、若い初産のおかあさんの悲劇だ。

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コメント

http://blog.so-net.ne.jp/sunsunsung/2007-08-31

ちょっと検索してみたら、微妙なケース見つけましたよ・・・。
おなかの上から、むぎゅ・・・っと胎児をつかんでその後に陣発って。

投稿: hmt | 2007-09-27 16:25

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