2016-02-25

ジョンソン・エンド・ジョンソン社 タルクを含む「ベビーパウダー」「シャワートゥシャワー」の長年の使用により卵巣癌で死亡した女性の遺族に7200万ドルの損害賠償を命じられる(追記あり)

タルカムパウダー。
滑石(Talc)を細かく砕いたものに、ステアリン酸等を混ぜた制汗作用のある化粧品だ。一番馴染みのある製品は、赤ちゃんの湯上がりにぱたぱたはたく白いベビーパウダーだろう。子どもの頃、夏の湯上がりに、薄い蝉の羽のように透けたリボンの付いたフワフワのパフで、いい匂いのする白い粉をはたかれた記憶を持つ人は多いだろう。
赤ちゃんにポンポンとはたく、一見無害のベビーパウダーの主成分であるタルクには、女性特有の癌を引き起こす発がん性がある……。日本では、タルクの発がん性は認められていないのだが、アメリカでは
 女性器周辺で長期間にわたってタルクを使用すると、卵巣癌の危険が増す
と考えられている。シャワーの後、デリケートな部分に
 タルクを含んだお粉をぱたぱたとはたく習慣のある女性
は、少なからずいると思うのだが、それが
 卵巣癌を引き起こすかも知れない
というのだ。
 ベビーパウダー
というと、
 世の中で最も無害なもの
という印象が強く、成人女性の中には
 ベビー用ラインを大人用に用いている
人も少なくない。ところが
 タルクに限って言えば、使う場所によっては、女性特有の癌の引き金になる恐れがある
というのである。

女性器周辺で使うことで生じるタルクの発がん性を隠し、ジョンソン・エンド・ジョンソン社は長年タルクを含む、子どもや大人の湯上がり用パウダーを売り続けた。タルクの発がん性を知らされずに、35年以上、同社の「ベビーパウダー」と「シャワートゥシャワー(これも湯上がりに使うパウダー)」を愛用し、湯上がりに、女性器周辺にも使い続けた女性が卵巣癌になって亡くなった。遺族は、
 母が卵巣癌で死んだのは、ジョンソン・エンド・ジョンソン社のタルクを含む製品を長年使い続けたのが原因だ
として、同社を訴えた。そして、今日、アメリカで判決が下った。
 ジョンソン・エンド・ジョンソン社は、タルクによる発がん性を隠していたという過失を認めて、遺族に7200万ドル支払え
と。ロイターより。


J&Jに損害賠償支払い命令、ベビーパウダー関連のがん死亡で
[23日 ロイター] - 米ミズーリ州巡回裁判所の陪審は22日夜遅く、米医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)(JNJ.N)が販売するタルク(タルカム)を原料とする衛生用品「ベビーパウダー」と「シャワートゥシャワー」使用と関連のある卵巣がんで死亡した女性の家族に対し、7200万ドルの損害賠償を支払うよう命じた。
被害者家族の弁護士と裁判記録によると、被害者家族には損賠賠償として1000万ドル、懲罰的損害賠償として6200万ドルの支払いが命じられた。
J&Jは消費者に対し数十年にわたり、タルクを使用した製品にはがんを引き起こす恐れがあることについて警告するのを怠ったとして訴えられている。同社を相手取った訴訟の数は同裁判所で約1000件に上り、このほか200件ニュージャージー州で起こされている。
J&Jの広報担当キャロル・グッドリッチ氏は「われわれは消費者の健康と安全性については十二分の責任を持っており、裁判の結果には失望している。原告の家族に対しては気の毒に思うが、化粧品用タルクの安全性は数十年におよぶ科学的証拠によって裏付けられていると確信している」との見解を示した。

この日本語報道は簡単過ぎて省略されているが、英語の報道には、
 女性のデリケートな部分に長年、タルク入りのパウダーを使った
ことが書かれている。
NBCの報道より。


Court Orders Johnson & Johnson to Pay $72M in Talcum Powder Ovarian Cancer Case by REUTERS

Fox, who lived in Birmingham, Alabama, claimed she used Baby Powder and Shower to Shower for feminine hygiene for more than 35 years before being diagnosed three years ago with ovarian cancer. She died in October at age 62.…

というわけで
 アメリカの裁判では陪審がジョンソン・エンド・ジョンソン社の製品に含まれるタルクの長年の女性器周辺での使用と卵巣癌の因果関係を認めた
のである。同様の裁判は、上記記事によれば他に1200件起こされているということだから、ジョンソン・エンド・ジョンソン社は今後しんどい対応を迫られることだろう。

女性器周辺で長期間使用されたタルクが卵巣癌などを引き起こすかどうかだが、日本では今のところ認められていない。

アメリカでEpidemiology. 2015 Dec 17号に発表された、タルクと卵巣癌の関連に関する研究。
 卵巣癌を発症した人は、女性器にタルクを使用している人が多い
と結論づけている。
Cramer DW, Vitonis AF, Terry KL, Welch WR, Titus LJ. : The association between talc use and ovarian cancer: a retrospective case-control study in two US states.

(追記 2/25 16:20)
発がん性の有無とは別に、タルクに対するアレルギーというのは存在する。看護師のosonoさんのtweetより。




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2007-08-08

拝受『魏晋石刻資料選注』『江陵張家山二四七號墓出土漢律令の研究』

三国時代の出土文献資料班『魏晋石刻資料選注』京都大学人文科学研究所
冨谷至編『江陵張家山二四七號墓出土漢律令の研究』朋友書店

編者の冨谷至先生からご恵贈いただきました。ありがとうございます。
あたかも
 投我以木瓜、報之以瓊琚(我に投じるに木瓜を以てし、これに報ゆるに瓊琚を以てす)
というようなことで、恐縮しております。

前者については、碑文には独特の言葉遣いがあり、こうした優れた読み手による釈読があると、他の碑文の読みにも大いに参考になる。
後者については、「譯注篇」「論考篇」の2分冊であり、所謂「二年律令」の詳細な釈文と解読に携わった研究者の論文で構成されており、秦漢の制度史に少しでも関心がある者には、非常に勉強になる。

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2007-05-21

拝受 日本研究35集ほか

異邦人のまなざし 第1輯 富士山 国際日本文化研究センター
同 第2輯 芸者
同 第3輯 妖怪
同 第4輯 子ども
同 第5輯 遊び
日文研37 創立20周年記念特集号
 園田英弘「梅棹忠夫と梅原猛」 絶筆かな
日本研究第35集 平成19年5月
国際日本文化研究センター創立二十周年記念特集号(前代未聞の厚さ)
 井波律子 「陽夏の謝氏」(←律ちゃんの名字を間違ってたのを見落としてた。ごめんなさい)
 井上章一 「池上曽根遺跡で発見された『大型建物』の復元に関する二、三の考察」
 宇野隆夫 「縄紋の住まいの選び方ー富山の山と里と海辺、GIS分析からー」
 小松和彦 「近世土佐の槇山郷における天の神祭祀ー『いざなぎ流』との関連のなかで」
 白幡洋三郎 「島台考(1)—島台と婚礼」
 千田稔 「『天皇』号成立推古朝説の系譜ーもう一つの邪馬台国論争的状況」

日文研創立二十周年記念品として拝受。
十周年の記念品は確か古写真のアルバムだった記憶が。

(追記 2008/03/15)
誤字を指摘して下さった小谷野敦さん、ありがとうございました。
ところで、今年千田稔先生が退職なので、来年は井波律子先生の番か。律ちゃんの論文は、卒論が好きだな。今でも、中文研究室では歴代卒論がロッカーの中に置いてあるのだろうか。井波両先生のものは当然のこと、小南一郎先生の論文もあったし、吉川幸次郎先生の論文もあるらしかったのだが。夕方五時以降などに、四回生が諸先生方の卒論を引っ張り出して読むのは、恒例になっていた。吉川論文は毛筆で書かれた漢文の論文だったと思うが、畏れ多くて、探さなかった。今は中国語学の大先生が卒論は文学だったりするなど、衝撃の過去が露見することもある。

 

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