〈階級〉の日本近代史 政治的平等と社会的不平等 (講談社選書メチエ)
現代の日本は、本書の描く1920年代に似ている。一時的には景気がいいように見えるが、潜在的には格差が拡大し、財政は破綻している。特に1925年に普通選挙になってから、政治の劣化が急速に進行した。アーレントなどが「普通選挙がファシズムを生んだ」と指摘する現象だ。

明治維新は武士の革命だったので、失業した武士の一部は自由民権運動の指導者になり、憲法制定や政党政治を促進した。他方、武士の中枢は軍部に引き継がれ、統帥権の独立によって内閣と並ぶエリート集団になった。「大正デモクラシー」の時期には政党が主役で、有権者である地主や財閥と組んで「資本家の時代」になり、無産階級との格差が拡大した。

他方で普通選挙によって政治的には平等になったため、1929年の世界恐慌によって格差が顕在化すると、有産階級の支配する政党政治に対する不信感が強まり、議会を通さない直接行動で格差を是正しようという青年将校が出てきた。そして「総力戦体制」の国家社会主義と「社会政策」の温情主義によって、格差は劇的に縮小したのだ。

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