スティーブ・ジョブズについては、きのうから山のような記事が出ているので、今さらコメントすることもないが、一般メディアの論評に「ビジョナリー」とか「独創的」といった形容詞が多いのが気になったので、ひとこと。
ニューズウィークにも書いたように、ジョブズは長期的なビジョンを語ったことはなく、まったく新しいアイディアを創造したこともない。むしろエンジニアにとっては常識だった新しい技術を商品として実現したことが彼の功績だ。
1977年につくったアップルIIも「初めてのパソコン」ではなく、それまで基板がむき出しだったパソコンをパッケージに入れて使いやすくしたものだ。その中身をつくったのはスティーブ・ウォズニアクであり、ジョブズは販売担当だった。
マッキントッシュも、ゼロックスのPARCで彼が見た技術をまねただけだ。むしろ問題なのは、マウスもウィンドウシステムも完成していたゼロックスが、なぜそれを製品化できなかったのかということである。それはゼロックスにとっては複写機が圧倒的な収益源であり、オフィスをペーパーレス化するコンピュータを経営陣がきらったからだ。
iPodも初めてのMP3プレイヤーではなく、iPadも初めてのタブレット端末ではない。ジョブズの功績は、技術を世に出す上でのボトルネックが非技術的な部分にあることを認識していたことだ。iPodの場合も、音楽のネット配信ビジネスを阻んでいるのはレコード会社の寡占体制であり、彼らを説得することがもっとも重要だと考え、彼自身が交渉にあたった。
イノベーションにとって最大の問題は、新しいアイディアを思いつくことではなく、それを商品化することだ。大企業になるとソニーのように社内政治がひどくなって、レコード部門との利害対立でMP3プレイヤーが製品化できないといった擬陰性が増える。問題は技術ではなく、開発から製品化までの距離を短くして、擬陰性を減らすことだ。
ジョブズは、アップルを脱統合化してハードウェアをアウトソースし、彼のmicromanagementによってすみずみまでコントロールした。工業化社会では工程は複雑化し、組織は官僚化して、商品は凡庸になりがちだ。それを逆転して、個人的な思い入れを商品化できるサイズに企業の実質的な規模を小さくしたことが、彼の本質的なイノベーションだ。新しいアイディアを思いつくのは、ただの発明家である。イノベーターは作品を出荷するのだ。
1977年につくったアップルIIも「初めてのパソコン」ではなく、それまで基板がむき出しだったパソコンをパッケージに入れて使いやすくしたものだ。その中身をつくったのはスティーブ・ウォズニアクであり、ジョブズは販売担当だった。
マッキントッシュも、ゼロックスのPARCで彼が見た技術をまねただけだ。むしろ問題なのは、マウスもウィンドウシステムも完成していたゼロックスが、なぜそれを製品化できなかったのかということである。それはゼロックスにとっては複写機が圧倒的な収益源であり、オフィスをペーパーレス化するコンピュータを経営陣がきらったからだ。
iPodも初めてのMP3プレイヤーではなく、iPadも初めてのタブレット端末ではない。ジョブズの功績は、技術を世に出す上でのボトルネックが非技術的な部分にあることを認識していたことだ。iPodの場合も、音楽のネット配信ビジネスを阻んでいるのはレコード会社の寡占体制であり、彼らを説得することがもっとも重要だと考え、彼自身が交渉にあたった。
イノベーションにとって最大の問題は、新しいアイディアを思いつくことではなく、それを商品化することだ。大企業になるとソニーのように社内政治がひどくなって、レコード部門との利害対立でMP3プレイヤーが製品化できないといった擬陰性が増える。問題は技術ではなく、開発から製品化までの距離を短くして、擬陰性を減らすことだ。
ジョブズは、アップルを脱統合化してハードウェアをアウトソースし、彼のmicromanagementによってすみずみまでコントロールした。工業化社会では工程は複雑化し、組織は官僚化して、商品は凡庸になりがちだ。それを逆転して、個人的な思い入れを商品化できるサイズに企業の実質的な規模を小さくしたことが、彼の本質的なイノベーションだ。新しいアイディアを思いつくのは、ただの発明家である。イノベーターは作品を出荷するのだ。
Real artists ship. --Steve Jobs