きのうのアゴラ就職セミナーの村上憲郎さんの話が話題になっているので、簡単に要点だけ紹介しておこう。

村上さんの話のポイントは、グローバルなビジネスの中では、もうほとんどの日本企業が終わっており、今からそこに入るのは「ハイリスク・ノーリターン」だということだ。グーグルから見るとどんな企業もだめに見えるのはしょうがないが、救いがたいのは当の日本企業に危機意識がなく、新卒一括採用などの古いシステムを漫然と続けていることだ。今こんな会社に入ると、人生を棒に振るリスクが高い。

だから彼が推奨するのは、就活なんかすぐやめて、海外留学することだ。日本の大学を卒業しても、世界の企業ではまったく評価されない。それに英語ができないと、今後の世界では「二級市民」になってしまう。中国も韓国も、トップエリートはみんなアメリカ留学している。ところがハーバード大学に昨年、入学した日本人はたった1人

日本企業も、これからグローバル採用を増やさざるをえない。そうするとjob descriptionもなしに「コミュニケーション能力」を見るなどという採用では、まともな人材は採れない。年齢や性別など職務に無関係な理由による差別も許されないので、新卒ではないという理由で落とすと訴訟を起こされるかもしれない。日本の会社が変わらなくても、外側から強制的に変えられるだろう。

質疑応答では「そういうのはごく一部のエリートだけでは?」とか「アメリカのような競争社会はしんどいので、のんびり暮らしたい」といった質問が相次いだ。もちろん国内に引きこもって暮らす選択肢もあるが、それはのんびりした暮らしにはならない。もう1000兆円近い政府債務が先食いされており、高齢化が急速に進むので、今まで通りやっていたら生活水準は維持できない。変化を拒否する人は、今より貧しい暮らしを覚悟するしかない。

日本がこの20年、立ち止まっているうちに、世界は大きく変わってしまった。今はまだGDPが中国に抜かれたとかいうどうでもいい話に一喜一憂しているが、これからは中国企業が日本の大企業を買収するかもしれない。財政が「余命3年」だとすれば、大部分の日本企業の余命はあと10年もないだろう。

いま就活している学生は、沈んでゆくタイタニック号の1等船室に乗り込もうと競争しているようなものだ。運よく乗り込んでも、定年までは生き残れない。3年で沈めばラッキーで、10年たってから沈むと、やり直しのきかない日本社会では人生は終わりだ。「個の自立」はいい悪いではなく、避けて通れないのだ。それを「無縁社会」とか「孤族」とか嘆くのは老人にまかせ、若者は沈んでゆく船から脱出して自分だけでも生き残る方法を考えるしかない。

就職セミナーは好評だったので、3月も第2シリーズをやります。3月30日には、シンポジウムをUstream中継する予定。