2011年9月25日日曜日

Gamasutra 記事翻訳:ケーキは嘘じゃない:効果的な実績をデザインする秘訣 パート 3

はじめに

以下は Gamasutra の Features として公開された記事のうち、原著者に翻訳・公開の許可を得られた記事を Internationalization Force のメンバーが翻訳したものです。

  1. 原文の著作権等はすべて原著者に帰属します。
  2. 誤訳、誤植がある可能性があります。発見された場合は当記事のコメント欄にてお知らせいただければ幸いです。
  3. 本記事の公開を快諾してくださった Lucas Blair 氏に深く感謝します。

なお本記事は 3 部構成で、それぞれこちらから御覧いただけます。

ご意見ご感想などございましたら Twitter ハッシュタグ #igdajif までお寄せください。今後の活動の励みとさせていただきます。




ケーキは嘘じゃない:効果的な実績をデザインする秘訣 パート 3

著:Lucas Blair




[研究者でありゲームデザイナーでもあるルーカス・ブレア博士が、ゲームの実績デザインにおけるベストプラクティスの定型化に役立つ現代の学術研究の基礎を示す、全 3 回にわたる連載。今回はその最終回である。パート 1 とパート 2 の原文はこちらから、日本語版は上記を参照されたい]


始めに、本連載の概括から述べよう。第 1 部で述べたとおり、現在さまざまなテーマを扱った数多くの研究が行われており、それらは実績のデザインの指針となり得る。本連載で、私は現在ゲーム内で実績がどのように用いられているかを分析することで実績デザインの特徴を分類し、それを共有しようと思う。


本課題の目的は、実績のデザインからアクションのメカニズムを抽出することだ。実績についてはこれまでにも、プレイヤーのパフォーマンス、モチベーション、態度に影響するという研究結果が出ている。


今回、分類については可能な限り包括的になるよう努めたが、今後さらなる議論や改訂も必要になるだろう。しかし当面は、実績の可能性を効果的に引き出すために必要となる議論の良い叩き台になると考える。


本連載のパート 1 と 2 の内容は大筋において抽象的で、扱ってきた内容もパフォーマンス測定やプレイヤーのモチベーション、情報の提示方法など多岐にわたっていた。 このためパート 3 では、これまでに触れてこなかった、特定の種類の実績と、その潜在的な利用方法について検討していきたいと思う。


第3部では、次のコンセプトについて言及していく。
  • 否定的な実績
  • 通貨としての実績
  • 累積型 (Incrementalを意訳) 実績とメタ実績
  • 競争型の実績
  • (非競争型) 協力型実績

否定的な実績

通常、実績はプレイヤーが特別で肯定的なことを成し遂げたときに付与されるが、中には極端にひどいパフォーマンスに対して贈られる、全く正反対の条件で解除される実績も存在する。このようにプレイヤーが盛大に失敗したときに付与される実績が、「否定的な実績」である。Command & Conquer 3」で公式ランキングの順位で20位以上離れた格下の相手に負けると解除されるものや、PS3 版「God of War」で指定回数連続して死亡すると付与される「継続は力なり (Getting My Ass Kicked)」トロフィーなどがこれにあたる。


否定的な実績は、デジタルな傷口に塩を塗りこむようなものである。この種の実績は、獲得したプレイヤーの競争心や主体性を損なうもので、最終的に遊んでいるゲームの充足感を損なうものである。プレイヤーは、遊んでいるゲームに否定的な実績が含まれることを知るとできる限り避けて進めようとする。そして避けようとする気持ちを終始払拭できずに遊ぶことになり、最終的には疲弊してゲームを十全に楽しめなくなるのである。


また否定的な実績は、ゲームのデザインフローと相まってさらに負のコンボを起こす。稚拙なレベルデザインや有効に機能していないゲームメカニクスのせいで死に続けたプレイヤーは、「ヘタクソー!」と言うかのような実績を冷静に受け取ってはくれない。このような場合、プレイヤーは自身の技能ではなくゲーム自体を責めることになる。


ベストプラクティス: 否定的な実績は使わない。手こずっているプレイヤーの助けとなるようなフィードバックを提供するシステムを作る。

通貨としての実績

獲得した実績は、時にゲーム内の仮想通貨として使用されることがある。この種の実績はポイントやコイン、スターといった形式でプレイヤーに付与され、ゲーム内アイテムや現実のグッズ購入に用いられる。小額決済モデル (訳注:いわゆる "アイテム課金") を採用したゲーム、例えば「League of Legends」ではゲームを遊ぶことで時折獲得できる第二の通貨が存在する。


実際、実績というのは仮想通貨にうってつけだ。輝かしき記録であり、既定の要件をクリアする必要があり、プレイヤーはすでに重要なものとして認識しているのだから。しかし、実績を通貨として使用することは、プレイヤーに対してさまざまな影響を与える。


「あるパフォーマンスの報奨として通貨を与える」行為については、じつにさまざまな調査が行われている。たとえば、通貨の報酬は物品的な報酬よりもタスクに対するパフォーマンスへの影響力が大きい。これは、通貨のほうがプレイヤーの自由度が高い (何を購入するか決定できる) からだと推測される。何を適切な報酬とするか? その決定の責任を負うのはデザイナーだ。


最近では、一部の学校組織が通貨の報酬を用いて一定の成果を上げている。一部のケースでは、通貨的報酬を提供したことでクラス出席率やテストの成績、果ては登校率までが向上したという。なお、別の研究でも同様の効果が報告されているが、この場合、向上が見られたのは報酬が「インプット」に関連付けられている時だけだった (アウトプット」と関連付けられている場合には効果が見られなかった)。これは「規定以上の成績を獲得した」(訳注: = アウトプット) などではなく「何時間勉強したか」(訳注: = インプット) のような行為に対して報酬を与えられた場合、という意味だ。ここで肝となるのは「学生が良い就学姿勢を見せたら報酬を渡すことで、成績は後からついて来る」という考え方だろう。


通貨的報酬に関する議論でよく議題となるもうひとつの事項は、物品的な報酬のそれと共通している。すなわち、「通貨的報酬は報酬を受け取る側の本質的なモチベーションを低下させる」ということだ。プレイヤーは最終的に、ゲームよりも報酬システムを意識するようになってしまうのである。この種の報酬システムを最大限活用し、プレイヤーを退屈なタスクに没頭させているゲーム会社は 1 社ではない。通貨システムは、他の報酬プログラム (Reward Program) と同様、報酬がプレイヤーの関心を集めすぎてしまう結果、プレイヤーのクリエイティビティを弱めてしまうことが多い。


ベストプラクティス: プレイヤーに通貨的報酬を提供する場合はタスクが完了した時に提供するようにし、多大なコントロール感 (訳注: 自分の判断に基づく行動が予期した結果を生み、自分にとって望ましい状況を作り出せた、という感覚) を与えないようにする。また、通貨システムはゲームを補強するために用い、その通貨の獲得がプレイヤーがゲームを遊ぶ主目的にならないようにする。


累積型実績とメタ実績

通常、実績はひとつのタスクを完了したときに獲得されるものだ。しかし累積型 (Incremental) とメタ実績 (meta-achievement) は、複数のタスクを完了した時に獲得される。


累積型実績は、一定の難易度が生じるまで同一タスクを何度も行うことで付与される実績だ。例としては、FPS で敵のキル数が 250、500、1000 に達した時に解除されるものや、「FarmVille」で違う色のリボンを集めた時に解除されるものなどがある。


メタ実績は異なるタスクを完了することで得られる実績を複数集めた時に解除される実績である。たとえば「World of Warcraft」で "Chef (シェフ)" という称号を手に入れるには、料理関連の実績をすべて獲得する必要がある。


この 2 種は両方とも、指導上の「土台」または「補助輪」として使うことが可能である。これらは一見すると複雑なタスクに見えるが、細かく分解していくとトレーニングプログラムのように構成されている。

また「タスクを細かく分解する」ことで、プレイヤーがその後より複雑なタスクに直面した時に、構造を把握しやすくなるという利点もある。


通常、累積型実績とメタ実績は獲得するまでに長い期間を要する。長期的な報酬制度のようなものだとも言えるだろう。そして長期的な報酬制度は、(単一のアクションで解除される) 短期のものよりもパフォーマンス向上を引き出す効果が強いというデータがある。また長期的な目標を設定することで、プレイヤーがそれを達成しようとしてゲームを長時間遊ぶ、という利点もあるだろう。


一方でこの種の実績には、潜在的な欠点もある。プレイヤーが、自分では何も決められず、目の前に撒かれたパンくずを追いかけているだけだと感じると、自主性が失われてしまうのだ。だからこそ、実績の数、間隔、そして用意するチャレンジのボリュームには細心の注意を払うべきなのである。

ベストプラクティス: ここで紹介した 2 種の実績は、プレイヤーの関心を長期間にわたり維持したり、関連するアクティビティへと導いたりする際に使う。累積型実績は時間的にも距離的にも充分な間隔を持たせ、プレイヤーが「コントロールされている」と感じさせないようにする。

競争型の実績

競争型の実績は、直接的または (あるタスクのスコアなど) 間接的な方法で他のプレイヤーと対決する必要がある実績だ。この種の実績は、個人で、またはチームで協力して対戦相手を倒すことで獲得できる。


ある調査では、指定された任意のタスクに対する総合的な満足感は、競争によって向上するという結果が出ている。競争で優れた結果を出すことは内発的動機づけの強化につながるというのはこれまでにも証明されてきている。これはプレイヤー自身の競争力に対する意識を高めるためだ。また、競争が求められる環境も、繰り返し行われる単一タスクのパフォーマンスを向上させる効果がある。


特にコンピューターサイエンスのクラスでは、クラスをより盛り上げるために競争の要素を組み込み、成果を上げている。


だが「競争のある環境」は、肯定的な結果を示す調査はあるものの、特定の状況では競争は避けるべきだとの結果を示している調査も存在している。


たいていの場合、競争的環境は学習プロセスを阻害する傾向がある。理由の一つには競争的環境では利己的行動に走りやすく、また他者を手助けしにくくなることが挙げられる。また競争は、学習者の自己効力感 (訳注: 「自分は達成できる」という自信) に好ましくない影響をもたらすことも分かっている。これはつまり、プレイヤーが自身やチームメイトに厳しくあたることを意味する。勝負に負けた場合にはその傾向はより一層強くなる。


高いスキルを持つプレイヤーは競争的環境を好み、また先述の好ましくない要素の影響もあまり受けない傾向にある。ゲーム自体に慣れているため、競争要素が加わったとしても多大なストレスを受けないのだ。


この他、配慮が必要となるのが各プレイヤーのモチベーションだろう。実績に対するモチベーションの高いプレイヤーは競争型タスクを比較的楽しむし、モチベーションの低いプレイヤーに比べて内発的興味 (intrinsic interest) も高い。一般にゲーマーは、実績に対する総合的なモチベーションは高いが、これはゲームの種類によって大きく異なる。つまりターゲット層をよく理解し、実際に遊ぶプレイヤーにとって最も「気持よく遊べる」環境が何かを理解することが肝要と言える。


ベストプラクティス: 競争型実績をゲームで使う場合は、プレイヤーがゲーム自体に完全に慣れて、これ以上新要素を学習しなくて良い状態で導入する。

(非競争型) 協力型実績

協力型実績は、ゲーム内の目標を協力して達成するプレイヤーが獲得する実績である。この種の実績は多くの場合、他のプレイヤーとやりとり (intaract) が発生するマルチプレイヤーモードで用いられる。グループ向けタスク (モンスターを倒すなど) の報酬や、マルチプレイヤーゲームに組み込まれてチームワークの醸成支援 (FPS でキルアシストを 1000 回行うなど) などがこれに当たる。


多数の調査でも、協力型環境はパフォーマンスを向上させるとの結果が出ている。ピアモニタリング(訳注: 原文は "Evaluating Peers = "ピアの評価時"、内容から "Peer Monitoring、同種の活動を行う関係者間の相互評価と判断) においては、協力型環境というのは学問的達成や自尊心の向上、積極性の増進などと関連付けて考えられている。チームワークを要求する報酬制度は、個人単位でのそれと比較してパフォーマンス向上効果が非常に高いのである。


この他にも、協力プレイには「一人では達成できない、バラエティに富んだ目標を提供できる」という素晴らしい利点がある。この利点を有効に活用するには、ベテランプレイヤーが経験の浅いプレイヤーと関わりを持つようにするよう実績をデザインするべきである。


City of Heroes」の助手 (Sidekick) システムはこの良例だ。調査の結果でも、職場でメンター (Mentor) を割り当てられた見習いは、そうでない者と比較して出世率や仕事に対する満足度が大幅に高いという結果が出ている。またこの種のシステムでは、メンター自身もパフォーマンスや社会的地位の向上といった利益を享受できる。


このように多くの利点がある協力型のしくみだが、それでも関連リスクというものは存在する。そのリスクのひとつがグループ間での態度のかたよりだ。これが生じた場合、全体の意思決定がおかしな方向へ進むことが多い。このような状況になると、個人であれば絶対にしないようなお粗末な決断をチームとしては下す、というようなことが発生する。


この他、「プロセスの損失」(Process Loss、集団に期待される効率水準と実際の遂行の落差) も時に問題となる。これはコミュニケーションや手助けに余分な労力が必要になり、チーム全体のパフォーマンスが落ちるために生じる問題だ。ゲームでは特に、技術的な制限からコミュニケーションの問題で「プロセスの損失」が生じやすい。これは MMO のレイド (Raid) 時に、グループメンバーの一部がボイスチャットできない場合を想像すると分かりやすい。


この他、グループの規模によって生じる問題には「社会的手抜き」(social loafing) がある。大規模グループでは各人のパフォーマンスが可視化されず、そのため目標達成に向けた努力をしなくなる状況が起こりやすい。「社会的手抜き」はそのような場合に発生する問題だ。


ベストプラクティス: 協力的環境を育むには、習熟度の高いプレイヤーが低いプレイヤーを助けると付与される実績を用意するという方法がある。協力型実績で対象とするグループは比較的小規模に抑え、「社会的手抜き」や「プロセスの損失」を減らす。 実績獲得の評価基準は、グループという環境の中で各人が残すパフォーマンスを評価するものにする。


以上



<<著者あとがき>>


本稿が、今後さらなる研究が望まれる「実績」というかなり複雑なテーマにいくばくかの光を当てられていれば幸いです。なお本稿を書くにあたり、様々な研究分野の結果を拝借してゲームデザイナーが使いやすいように変形させる必要がありました。これはこの種の概説における課題の一つと言えると思います。


RETRO lab では、本稿で触れたいくつかのトピックの関連事項のうち、実績デザインに関する理論を強固にする上で必要となる「実績の分類」について研究中です。具体的には、ゲーム内で種類の異なる実績を入れ替えてプレイヤーに与える影響を評価したり、楽しさの度合い (Amount of enjoyment) やプレイに費やした時間といった要因を検証したりしています。


なお、ラボでは、本研究の結果は明らかになり次第、顕著な成果について継続的にゲームコミュニティーに向けて公開していきます。過去数週間にわたり、コメント・意見をお寄せ下さりありがとうございました。今後も引き続き実績のデザインに関する活発な議論がなされ、そのきっかけとして本稿が多少なり貢献することができれば、これに勝る幸せはありません。


本稿を執筆するに当たり、指導にあたってくださった Dr. Clint Bowers、ならびに協力してくれた James Bohnsack、Katie Procci、RETRO Lab のメンバーに感謝の意を表します。


各トピックの詳細に関する資料:

  • Deci, E. L., & Cascio, W. F. (1972, April). Changes in intrinsic motivation as a function of negative feedback and threats. Paper presented at the meeting of the Eastern Psychological Association, Boston.
  • Stajkovic, A. D., & Luthans, F. (2001). Differential effects of incentive motivators on work performance. Academy of Management Journal, 44(3), 580-590.
  • Condly, S., Clark, R. E., and Stolovitch, H. S. (2003). The effects of incentives on workplace performance: A meta-analytic review of research studies. Performance Improvement Quarterly, 16(3), 46–63.
  • Fryer, Roland. 2010a. Financial Incentives and Student Achievement: Evidence from Randomized Trials. Working paper, Harvard University.
  • Amabile, T. M., Hennessey, B. A., & Grossman, B. S. (1986). Social influences on creativity: The effects of contracted-for reward. Journal of Personality and Social Psychology, 50(1), 14-23.
  • Reeve, J., & Deci, E. L. (1996). Elements of the competitive situation that affect intrinsic motivation. Personality and Social Psychology Bulletin, 22(1), 24-33.
  • Lam, S., Yim, P., Law, J. F., & Cheung, R. Y. (2004). The effects of competition on achievement motivation in Chinese classrooms. British Journal of Educational Psychology, 74(2), 281-296.


ようやく翻訳完了です。本翻訳記事が皆様のお役に立つことを祈りつつ、今後も各種活動進めていきます!
ご意見ご感想は #igdajif までお寄せください。活動の励みにさせて頂きます。


翻訳担当メンバー:

矢澤 竜太(ヤザワ・リュウタ)

元フリーランス英日ゲーム翻訳者、現在はゲーム開発業界一年生でローカライズ業務に奮闘中。IGDA Japan i18n Force (Internationalization Force) 代表。
愛のあるゲーム人を応援するためボランティア翻訳してる。今年も CEDEC アツかった。今度は GDC でローカライズ成功事例の講演だ (目標)! / Twitter: lye_

2011年9月23日金曜日

スカラーシップ感想6


CEDECスカラーシップの最後の感想です。今回はGDC2011にも自費で参加した、立命館大学の堀田亮介君です。

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IGDAの活動の一つとして、今年初めて設置されたCEDECスカラーシップ。スカラーシップとして認められると、日本を代表するゲームディベロッパーを4社訪問することができ、さらにCEDECのレギュラーパスが無料になる。応募条件は実質エッセイを提出することのみで、こんな面白そうなものは挑戦してみるしかない!  と思い、ある意味好奇心でメールを送ったのが参加のきっかけでした。

最初に合格の発表があったときには、僕の元に連絡は来ませんでした。しかし、数日経ってから諸事情でキャンセルが出て、繰り上がりで合格ということに。僕が合格した理由は、おそらくGDCに単身で参加したということだと思います。来年のCEDECスカラーシップに参加したい人は、GDCに行ってみる、というのもありかもしれません。英語なんてYesとNoとThank youが分かれば、どうとでもなります。

さて、初日に訪れたのは、株式会社イニス、キューエンタテインメント株式会社、株式会社トライエース、株式会社サイバーコネクトツー東京スタジオの4社様。どの会社でも、普段は目にすることのできない開発環境や、なかなか聞く機会のない話を聞かせてもらえて、とても為になりました。

学生にとって、ゲーム会社の人が実際に働いている姿を見る機会はとても貴重です。足りなかったとすれば、もっと色んな人の話を聞きたかったという点でしょうか。僕ら学生にとって一番近い距離にある、新人の方の話なんかも是非聞いてみたかったです。しかし、会社を訪問したときも業務で忙しそうでしたので、難しいのだろうなとは感じました。全体的にドタバタした一日になりましたが、その分内容は非常に濃かったように思います。

CEDECは去年も参加していたので今年で二度目、ということになるのですが、前回とは違って、あまりジャンルにこだわらずに多種多様なセッションを受講するよう心がけました。そのことが功を奏したのか、去年よりも楽しく有意義な選択を取ることができたと思います。また、CEDEC後に開かれる飲み会にも三日間とも参加してきました。僕は元々人見知りな人間なので、あまりこういった飲み会などは得意ではないのですが、せっかくの機会なのでできる限り出席するようにしています。参加しても、結局ほとんど知っている人としか話さなかったこともよくありました。今でもあります。それでも一年前なんかと比べると、随分成長したのではないかなと思っています。

今回のこのCEDECスカラーシップに参加できたことは光栄なことでした。出発する前と帰ってきてからでは、様々な面、特に気持ちの面で大きく変動があったように感じています。スカラーシップや飲み会で出会った仲間たちの勢いにも、取り残されないようにしなくてはなりません。スタジオツアーでお世話になった4社様には本当に感謝しています。皆様から直接授かった知見は、これからも大切にして自らを磨いていきたいと思います。そしていつの日か、何かの形で恩返しができればと思います。お世話になりました。ありがとうございました。

来年のスカラーシップがどういった形に変わっていくのかは分かりませんが、今年よりも更によりよいものとなることを期待しています!(立命館大学映像学部三年生 堀田 亮介)

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This year, the IGDA established the CEDEC scholarship. Those awarded the scholarship are able to visit four game developers, all representative of the Japanese games industry, and are also given a free regular pass to CEDEC. Because all that is required in order to apply is a personal essay, I essentially sent an application in out of curiosity, thinking that I had no choice but to make an attempt at something that looked so interesting, and was accepted.

When scholarship recipients were first announced, I did not receive a notification. However, after a few days, one recipient canceled due to various circumstances, and I was awarded a scholarship as an alternate. I believe that the reason I was awarded a scholarship was most likely because I had attended GDC on my own. Those who are thinking of applying for a CEDEC scholarship next year might want to try going to GDC. As far as English, you’ll be able to manage as long as you know “Yes,” “No,” and “Thank you.”

On the first day, we visited 4 Tokyo studios, iNiS, Q Entertainment, tri-Ace, and CyberConnect2. At all of these companies, I was able to see development environments and learn about things that I would normally not be able to see or hear, making it a very valuable experience. As a student, the opportunity to actually watch people perform the work that they do at a game company is also valuable.

If there was one thing that I thought was lacking, I think that it would have been useful to be able to speak to more kinds of people at the companies. I strongly wanted to be able to speak to freshly-hired employees, as they are the closest people at a company to students like ourselves. However, the companies seemed busy when we visited, and I felt that it would be difficult to do this. Overall, while it ended up being a very frantic day, it was also a very substantial and packed one.

This was my second time attending CEDEC, as I attended last year as well, but unlike my first time, I decided to attend a variety of different kinds of sessions, not focusing too much on one specific genre. This decision was a fruitful one, as the sessions I chose this year were even more interesting and worthwhile than those I attended last year.  I also participated in nighttime CEDEC parties on all three days. As I’m a shy person by nature, parties like these are not my strong suit, but I made an effort to make the most of the opportunity and go to these events. Despite attending these parties, I generally only spoke to people I already knew, both this year and last. However, compared to last year, I think that I have made a significant amount of progress in this regard.

It is an honor to have been able to participate in this year’s CEDEC scholarship. I feel that I have changed in a number of ways, especially with regards to my attitude, since returning. I also know now that I cannot allow myself to fall behind the level of enthusiasm shared by other students on the scholarship and those I met at parties.

I’d like to thank the four companies who allowed us to tour their studios. I will treasure the expertise I directly received from everyone at these companies, and will use it to better myself. And, someday, I hope to be able to repay everyone’s kindness. Thank you very much for your hospitality. While I do not know if or how the scholarship will change next year, I hope that it only continues to become an even better experience! (Ryosuke Horita / Ritsumeikan University)

(Translation: Ko Ransom,i18n Force@igda Japan)

2011年9月22日木曜日

スカラーシップ感想5


CEDECスカラーシップの感想第5弾です。今回は中京大学の津坂真有さんです。

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CEDECスカラーシップで得た最も大きなものは、クリエイターお一人お一人が考えていること・思っていることを直に聞けたことでした。

今までクリエイターのお話を聞くことができるのはせいぜいゲーム雑誌やネットのインタビュー記事、ゲームショウなどの舞台、Twitterのふとしたつぶやきでしかありませんでした。チーム作業がほとんどのゲーム業界では個人個人のクリエイターが見にくく、見えていてもあくまで外側から見たゲーム業界の形にしか過ぎません。

全員ではありませんでしたが、ひとりのクリエイターが何を考え、どうゲーム制作に向き合っているのか知ることができた今回の機会を本当に有り難く思っています。

特に起業を考えている私にとって、代表の方や地方に本拠地を構えているメーカ様のお話は非常に参考になりました。

私は3歳からMSXに触れていたほどのゲーム好きですが、メディアアートという別の分野を歩んできました。

何でも直感で済ますことができてしまう芸術とは違い、人に楽しんでもらうためにどのようなメディアを用いれば良いのか、どのタイミングでどうすれば人がハマり込むのかということを熟知したクリエイターさん達への尊敬の念が堪えません。願わくば、そのノウハウをもっと外部に出して欲しい。

「人を楽しませて幸せにさせる」ことができるゲームのノウハウは、世界を良い方に変えるためにきっと応用できることでしょう。

ソーシャルゲームがコンシューマゲームの売り上げを超えたらしき日本のゲーム業界。これからゲームが時間を取って楽しむものか隙間時間に少しずつ楽しむものかどのような方向に進むのか分かりませんが、ユーザに何を届けたいのかというエンターテイメントの基本を忘れず精進したく思います。

重ね重ね、CEDECスカラーシップ関係者の皆様と見学させて頂きましたメーカの皆様、ありがとうございました。(中京大学 津坂真有)

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To me, the most valuable part of my CEDEC scholarship was the ability to directly hear from various creators one by one about their thought processes.

Before, the only chances I had to hear creators speak were, at best, through interviews in magazines and websites, at large settings such as the Tokyo Game Show, or through statements they made on Twitter. In the games industry, which for the most part involves collaborative work, it is hard to pick out individual creators from the group as a whole, and even when I could, my perspective was always that of an outsider looking at the industry from afar.

While I was not able to hear from every creator I met, I am very grateful for the opportunity given to me by this scholarship to learn from individual creators about their thought processes and approaches to game development. As someone who is thinking of starting their own company, it was especially useful for me to hear from head representatives of companies, as well as makers with headquarters away from major cities.

While I am a lover of games, to the point of even becoming engrossed with the MSX from the age of 3, I have been following a path in a separate field, media art. Unlike traditional art, which is immediately taken in simply by the senses, game creators are well-versed in how to utilize media in order for someone to have fun, or how to time certain events in order to engross a player, and my respect for those with this knowledge is immeasurable. Hopefully, this know-how will be spread beyond just the games industry. I am certain that games-related know-how on how to make people happy and have an enjoyable time has the ability to change the world for the better.

In the Japanese games industry, it appears as though the sales of social games have surpassed the sales of consumer games. While I do not know which will be the future, games that are enjoyed over long sessions or games that are enjoyed one spare moment at a time, I hope to work hard to never forget the basic idea of entertainment, “what do we want to bring the user?”

Once again, to those involved in the CEDEC scholarship and to everyone at the makers that hosted our tours: thank you very much.(Mayu Tsuzaka / Chukyo University)

(Translation: Ko Ransom,i18n Force@igda Japan)



2011年9月21日水曜日

スカラーシップ感想4

CEDECスカラーシップの感想第4弾です。今回は神奈川工科大学で日本デジタルゲーム学会学生フェローの竹斑瑛一君です。


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非常に素晴らしい機会にご招待して頂いたIGDAや当日の進行などを管理して頂いた小野先生やメンターの方々、スタジオ見学させて頂いた4社(敬称略)など、多くの関係者に深く感謝いたします。そしてCEDECを含めこの4日間は非常に多くの経験をさせて頂き、本当にありがとうございます。


さて、私はスタジオ訪問で学んだことが4つあります。


まず1つ目に社風がそれぞれ違うことです。その空気感は実際に社内に入って作業現場を見てみないと感じることのできない要素で、説明会などで社員の方々から語られる社風とはほぼ異なっているのではないかと思います。当然ながらこの会社(具体的な社名は控えますが)は肌に合わないと感じることもありました。そう言った意味では会社はブランドではなく、自分と社風を比較するための軸を明確に持たなければならないと思いました。


2つ目に技術の違いです。豪華なプリレンダームービーを挟む会社やアイディア一直線の会社もあります。そこで使われる社内ツールも何を最適化することに重点が置かれているかで違うと思います。それぞれの会社に尖った部分があり、その尖った部分をゲームに落とし込もうとしているため、一概に自社製ゲームエンジンと言っても各社で何をやろうとし、何を作ろうとしているのか全く違うということが分かりました。スタジオ見学で得られたのは会社の技術的な立ち位置と自分ならそこで何ができるかについて考える余地が生まれたことです。


3つ目は人と人の距離感です。残念ながらセキュリティ上、奥まで見ることのできなかった会社もありますが、社内のデスクや設備を眺めているとやはり感じるものがあります。就業時間中はどうなのか、会社に残ったときはどうなのか、そこに色々な属性や生活を垣間見ることができました。その距離感を見ていて思うのはやはり、自分がそこでどう働くだろうか、どのような人間関係を作ることができるのか、という想像です。やはりこれも現場を見なければわからないことだと思います。


4つ目に会社がどれだけ外向きか内向きかどうかも知ることができました。これは私にとって新しい尺度になったのですが、やはり会社によっては外に向かって積極的に働きかけられる体制のある会社と、NDAやセキュリティの問題でそれほど見せられない会社があることを知りました。自分がどう外の世界と付き合っていきたいかでその会社が向いているか向いていないか分かれるところだと思います。


以上の4つがスタジオ訪問で学んだことになります。


CEDECへの参加の感想は、今年のCEDECは講演以上に交流の幅が広がったことに対する満足が最も大きかったと思います。CAPCOMのDragon’s Dogmaのセッションはどれも素晴らしく、これだけの情報や技術に触れることができたのは私の中で大変刺激になりました。


それ以上にDeveloper’s NightやTwiCEDEC/ゲームのお仕事、私が企画したCEDEC2011 学生交流会と3日間連続で交流会に参加しました。この交流会には私と同じく3日連続で参加している方や展示ブースにいらした企業の方などが参加していたため、多くの方と顔見知りになることができ、とても充実した3日間を送ることができました。それと同時に、多くの方々と意見交換をすることでさらに視野を広げることができ、今後の活動において何をすべきなのか考えるきっかけを頂くことができました。この経験をきっかけに次へと結びつけようと考えております。


スタジオ訪問の感想は、楽しい時間と多くのことが得られた一方で、移動のスケジュールが過密で1社だけ長居することができなかったのがとても残念に思います。また、メンターや学生同士で議論する時間があまりなかったため、可能であればCEDEC終了後に時間が設けられていると今後の活動やCEDECの感想などについて深い議論が交わせたのではないかと思います。また、4社回った後に懇親会を行ったのですが、学生に対して社会人が非常に多いと感じました。CEDECスカラーシップOBでまだ学生をやっている方を特別に招待するなどで人数比を調整すればもう少し話しやすい環境になれたのではないかと思います。


また、スカラーシップの特典としてCEDEC期間中にメンタープログラムもありました。1日目には藤原先生、2日目にはGordon BellamyさんとDavid Helgasonさんとお話しする機会があり、それぞれ様々な議論を行いました。特に、2日目は外国の方を交えたので、日本の文化に対する海外の方々の理解やIGDAとIGDA Japanの現状など様々な意見を聞くことができました。


今後、CEDECスカラーシップに求める点としましては、スタジオ訪問とCEDECの受講パスの支給では企業訪問+αだけとなり、せっかく集まった学生の方々とはたった4日間の付き合いになってしまいます。今後もこのスカラーシップのOBとなり、さらにIGDA Scholarsに編入となりましたが、リアルな繋がりとしてはすぐに解散してはつまらないと思います。


例えば1年間はIGDAのメンバーとして学生活動をバックアップする仕組みであったり、関東圏や関西圏のイベントに参加するために短期的なアルバイト(開発やイベントスタッフなど)を紹介したり、あるいはイベント参加のためにイベント企画・運営から最低限のマージンを受け取ることのできる仕組みなど、スカラーシップに参加するだけでなく活動できる場を提供すると面白いのではないのかなと思いました。仮に場所が問題であれば、イベントを企画することで再会できる仕組みがベストではないかと思います。


以上がCEDECとCEDECスカラーシップに参加した感想です。関係者の方々には再び深い感謝を捧げます。

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I would like to begin by expressing my deep gratitude to everyone involved in the IGDA scholarship, including the IGDA, which invited me to be a part of this wonderful experience, Mr. Ono and the various mentors, who managed our events during the course of the scholarship, and the four studios who allowed us to tour their facilities. I was able experience many new things during this four-day period, including my time at CEDEC, and I would like to say thank you very much. 


I learned four things during the studio visits. 


First is the fact that different companies have different internal cultures. As a company’s internal atmosphere is impossible to feel without actually entering the workplace and watching work be performed, I believe that the actual culture at a company is somewhat different from the one you may hear about from various employees at an information session for job applicants. Of course, in some cases (I will refrain from giving exact names), I felt that a company would not fit my character. In this way, I thought that a company is not just its brand, but a place where I need to clearly grasp the comparison between myself and its corporate culture.


Second is the difference in technology.  There are some companies that insert extravagant pre-rendered movies into their games, while other companies may stick straight to an idea. The internal tools used and emphasized at each company differ according to what is being optimized for. Each company has its specialties, and I understood that because they try to incorporate these specialties into their games, their respective game engines, all produced in-house, are radically different from each other based on what a given company is trying to do and create. While visiting the different studios, I was able to gain the perspective to think about each company’s technological standpoint and where I could potentially fit in each situation.


Third is the sense of distance between employees. Unfortunately, due to security reasons, there were some companies where we could not see all of their inner workings, but one does get a feel for certain aspects of a company just looking at its desks and equipment. We were able to catch a glimpse at different workplace environments and daily life both during and after regular work hours. Seeing this, I ended up imagining what kind of human relationships I would be able to build or how I would work at each company. This is also something that is not possible to figure out without being there first-hand. 


Fourth, I learned how outward or inward-facing each company is. This was a new consideration to me, but I learned that some companies may be organized to be more assertively outgoing, while others, due to NDAs or security concerns, may not be able to show as much of themselves to the public. After learning about this, I began to understand that based on my personality and how I would like to associate with the outside world, there are some companies that I would be compatible with, and others that I would not be as compatible with.


As for my thoughts on CEDEC, I was very satisfied with the lectures, but even more satisfied with the wide breadth of opportunities to interact with others. All of Capcom’s Dragon’s Dogma sessions were wonderful, and the opportunity to come in contact with all of the information and technology presented at these sessions was extremely stimulating to me. 


Furthermore, I participated in social gatherings such as Developer’s Night and TwiCEDEC/Game no Oshigoto, along with the CEDEC 2011 Student Gathering, which I planned, on all three days. As there were others like myself who participated in these gatherings on all three nights, as well as individuals from exhibiting corporations at these parties, I was able to acquaint myself with many people, making these three days very fulfilling ones. Also at these events, I was able to exchange ideas and opinions with many individuals, further widening my outlook and providing an impetus for me to think about what I should do in the future in the field. I’d like to use this experience as a chance to reach the next stage in my life.


Regarding the studio visits, while they were a fun and rewarding experience, our travel schedule felt overbooked, and I thought it was unfortunate that we were not able to visit at least one studio for a longer period of time. Also, because there was not much time for discussion with the mentors or other students, I hope that it would be possible to create time after CEDEC where we can have deeper discussions on topics such as our future activities and our thoughts on CEDEC. Also, while we went to a get-together after the studio tours, it felt as though the students there were far outnumbered by the working adults in attendance. I think that an environment more conducive to conversation could possibly be created if past CEDEC scholarship recipients or other students were also invited to the event. 


Additionally, a mentoring program throughout the course of CEDEC was given as a special privilege to scholarship recipients. We had the opportunity to discuss a number of topics with Professor Fujiwara on day one, and with Mr. Gordon Bellamy and Mr. David Helgason on day two. In particular, we spoke to individuals from outside of Japan on day 2, which allowed us to hear outside perspectives on Japanese culture, as well as comments on topics such as IGDA and IGDA Japan.


If there was one thing I hope could be implemented in the CEDEC scholarship in the future, it would be to lengthen students’ involvement in the program, as the current program provides studio tours and a bonus in the form of a lecture pass, but no involvement between the gathered students beyond the four days of the scholarship. While we will become alumni of the scholarship as well as IGDA Scholars, in practice, our connections to each other as scholarship recipients will unfortunately dissolve quickly.


I believe it would be interesting if beyond participating in the scholarship, a place for students to participate in activities could be created, such as creating a structure that would allow recipients to back up the IGDA’s student-related activities as members, the introduction of short-term part-time jobs that would allow recipients to participate in events either in East or West Japan (such as in the form of development or event staff), or some sort of arrangement where event organizers could provide a small amount of funding in order for students to attend their event. If finding a place for this is a problem, bringing students together again in order to plan an event may work best. 


These are my thoughts on CEDEC and regarding my participation in the CEDEC Scholarship. Once again, I would like to give my deepest thanks to those involved.(Eiichi Takebuchi / Kanagawa Institute of Technology) 

(Translation: Ko Ransom,i18n Force@igda Japan)

2011年9月20日火曜日

スカラーシップ感想3


CEDECスカラーシップの感想第3弾です。今回はデジタルハリウッド大学の酒井駿介君です。

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今回の日本IGDAのスカラーシップへの参加は、自分が今後ゲーム業界を目指すための
活動をする上で、非常に有意義なものとなりました。

まずCEDECに先立って行われたスタジオツアーでは、訪問先のゲームスタジオの見学、そして社員の方とのディスカッションを行うことで、ゲームに関する最新の技術に触れたり、現在の業界に対する会社の方針や考えを伺ったりすることができました。中でもそれぞれの会社のもつ社風というのは、直接そこへ足を踏み込まなければわからないもので、それを自分の肌で直接感じ取ることができたのは、大変興味深いものでした。実際にゲーム業界で“働く”ことの具体的なイメージを強く意識させてくれたツアーでした。

3日間のCEDECでは、自分の興味のあるセッションを自由に聴講することができ、初参加の自分にとってどれも貴重な経験になりました。特に、西川善司さんや五反田義治さんのCG関連のセッションは、CGデザインを勉強している自分にとってこの上なく刺激的でした。また、Developers Nightのような飲み会にも参加し、スタジオツアーで訪問した会社以外の方とも交流することができ、実際に何人かの方に就職活動などの相談に乗ってもらい、アドバイスを頂くことができました。

加えて、志を同じくする何人かの学生と知り合い、談話するなかで、お互いにモチベーションを高められました。このように情報交換のための人のネットワークを構築できることも、こうしたイベントに実際に足を運ぶことのメリットであると実感しました。

今回のスカラーシップ参加で得た、さまざまな知識や人のつながりといった“経験値”は、今後の自分のレベルアップのために有効に使いたいと思います。そして、将来ゲーム業界に対して大きく貢献できるような人材を目指したいと思います。最後に、今回貴重なチャンスを与えてくれた日本IGDAにはこの場をお借りしてお礼申し上げます。(酒井駿介 デジタルハリウッド大学)

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Of the various activities I have pursued in hopes of accomplishing my goal of working in the games industry in the future, my participation in this year’s IGDA Japan scholarship has been one of the most significant.

First, before CEDEC were the studio tours, where we were able to observe game studios and participate in discussions with employees. Here, we were able to encounter some of the latest technology in gaming, as well as ask questions about each company’s policy and thoughts with regards to the current industry atmosphere. Above all else, as understanding the internal culture of a company requires you to physically be in that company itself, being able to personally and directly experience various different company cultures was very interesting for me. These tours gave me a strong awareness and concrete image of what it means to work in the games industry.

Over the three days of CEDEC, which I attended for the first time this year, I was able to freely attend sessions on topics I found personally interesting, all of which were valuable experiences. In particular, sessions related to CG, such as those by Zenji Nishikawa or Yoshiharu Gotanda, were extremely stimulating to me, as I am studying CG design. I also participated in parties such as Developers Night, where I was able to interact with even more individuals from the games industry and receive advice from many of them on topics such as how to conduct a job hunt. Additionally, I met and spoke to a number of students with aspirations similar to my own, which was a motivating experience for us all. These opportunities to build a network of relations that provide a good source of information exchange once again made the benefits of attending events such as CEDEC clear and immediate.

I hope to use the “experience points” I gained in the form of information learned and new relationships built through participating in this scholarship to effectively level up in the future. Also, I would like to reach my goal of becoming an individual who can contribute in a large way to the games industry one day. Finally, I would like to take the time here to thank the IGDA Japan chapter for giving me this valuable opportunity. (Ryosuke Sakai / Digital Hollywood University)

(Translation: Ko Ransom,i18n Force@igda Japan)


2011年9月19日月曜日

お知らせ: プロジェクト単位での協力者募集について

いつもIFブログをご覧いただきありがとうございます。

本日は題名の通り「プロジェクト単位での協力者募集」についてお知らせさせて頂きます。

現在 Gamasutra 記事の翻訳は IF のメンバーのうち英日翻訳を得意とする人材で手分けして対応しておりますが、それらは各メンバーの自主的な協力に基づいていることもあり、現状敏速に対応できているとは言いかねる状況です。

私個人としては「辞めないことが勝利、サステイナビリティが一番大事」という気持ちで活動しているとはいえ、「遅くなる理由」が「労力不足」ではより大きな命題である「言語の壁に阻まれている情報の流れを後押しする」が達成できなくなってしまいます。

そこで、今後立ち上がるプロジェクトについては、その特定プロジェクト限定で気軽に参加して頂ける体制を整えようと考えています。
具体的には、プロジェクト/タスク発生時に、このサイトもしくは運用に適した Web サービスを用いて何らかの方法で告知を行い、参加を希望する方に連絡していただく、という手法を取る予定です。

これにより、例えば Global Game Jam などの「強くコミットする方が多いイベント」の翻訳プロジェクトでも、翻訳ボランティアのハブのように機能できたらと考えています。

なお現状メンバー間の情報共有は Yammer を用いておりますが、その点についても参加者の方がプロジェクト関連のトピックを共有できるようにします。

詳細は決まり次第こちらに投稿しますので、RSS などでチェックいただければ幸いです。
よろしくお願いします。


参考リンク





矢澤 竜太(ヤザワ・リュウタ)

ゲーム開発業界一年生。開発スタジオにてローカライズ業務に奮闘中元フリーランス英日ゲーム翻訳者。IGDA Japan i18n Force (Internationalization Force) 代表。愛のあるゲーム人を応援するためボランティア翻訳してる。今年も CEDEC アツかった。今度は GDC でローカライズ成功事例の講演だ (目標)! / Twitter: RYazawa_CC2

スカラーシップ感想2

CEDECスカラーシップに参加した学生の感想第2弾です。今回は京都大学3年生の今田智子さんです。
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IGDAスカラーシップでCEDEC2011に参加しました、京都大学3年生の今田智子です。現在、ゲームデザイナーを目指して、個人的に勉強中です。今年初めてCEDECに参加しようと思っていた折、ちょうど良いタイミングでこのスカラーシップ制度のことを知って、応募させて頂きました。合格して貴重な体験をさせて頂き、大変勉強になりました。 

さて、スタジオツアーからCEDEC最終日まで、非常に濃密な4日間でしたが、簡単にかいつまんで、感想などレポートして行こうと思います。

まずは5日のスタジオツアーです。イニス様・キューエンタテインメント様・トライエース様・サイバーコネクトツー様を訪問し、各社ごとに開発技術・企業理念・社内環境などについてレクチャーを受け、実際にスタジオ内を見学させて頂きました。特色の強いゲームを開発しているデベロッパー4社様ですので、実際に見学してみてもそれぞれの個性が表れていて、とても面白かったです。その夜には、各社でスタジオツアーを担当して頂いた方々・IGDAのゴードンさん(当日空港から直接来てくださいました!)・IGDA日本の小野さん・メンターの藤原先生・通訳の米田さん・奨学生6人での懇親会がありました。スタジオツアーでは聞けなかった個人的な相談にも乗って頂き、とても楽しい懇親会でした。

翌日から、CEDECが始まりました。思っていたよりもずっと大規模で、人と人との交流が盛んな場で、ある意味お祭りのようにわくわくする雰囲気でした。セッションの内容は様々にあり、どれを聴きに行こうかとても悩みました。結局は、もともと関心の強いゲームデザイン関係のものと、まだ知識の浅い技術よりのものとを、大体半分ずつ選択して聴講しました。技術よりのセッションは、こまかい内容を半分も理解出来たかあやしいのですが、最新の技術でどういうことができそうなのか、という大枠について知ることができて、これからゲームはまだまだ面白くできる、という期待をあらためて感じています。

CEDECの会期中には、夜にいくつもの交流会が開催されており、私は6日の学生交流会と、8日のTwiCEDECに参加しました。大学ではゲーム業界に関心のある知り合いがほとんどいないので、たくさんの方と交流をもつことができ、嬉しく思っています。また、いろいろな方とお話しして行く中で、これから自分がどのように勉強していくべきかという方向がかなり明確になりました。大勢の方とお話しするのはそんなに得意ではなかったのですが、積極的に参加して本当に良かったと思います。

今回スカラーシップで得た知識や人とのつながりを大切にして、しっかりと勉強を重ねていきます。そして将来、最高に人を面白がらせるゲームづくりに携わることで、今回お世話になった方々、ひいてはゲーム業界全体に、恩返しをして行きたいと思っています。素晴らしい機会を、本当にありがとうございました!(今田智子/京都大学)

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My name is Imada Tomoko, and I am a third-year student at Kyoto University who attended CEDEC 2011 on the IGDA scholarship. I am currently aspiring to become a game designer, and am studying on my own in order to reach this goal. Just as I began to think about attending my first CEDEC this year, thanks to good timing, I learned about the scholarship and applied for it. The scholarship provided me a very valuable and educational experience that I am grateful for.

While the four-day period that started with studio tours and ended with the final day of CEDEC was an extremely packed one, I would like to give a simple overview of my thoughts and experiences.

We began with studio tours on the 5th, visiting iNiS, Q Entertainment, tri-Ace, and CyberConnect2. We heard lectures at each studio on topics such as their development technology, corporate philosophies, and workplace environments, and were also taken on tours inside the studios. As all four developers are companies who develop strongly distinctive games, I found it very interesting to be able to see how the character of each studio manifested itself within the workplace. That night, a get-together was held with our hosts from each of these studios, as well as Mr. Gordon Bellamy from IGDA (he came straight from the airport that day to meet us!), Mr. Ono from IGDA Japan, our mentor Professor Fujiwara, our interpreter Mr. Yoneda, and the six scholarship recipients. The get-together was very fun, and I was able to ask and receive advice on more personal topics that I was not able to ask about during the studio tours.

The next day marked the beginning of CEDEC. It was a much larger-scale event than I had imagined, and with the lively interaction between the attendees, it was an exciting atmosphere, similar to a festival of sorts. Topics for sessions were varied, making it very hard to decide which to listen to. In the end, I chose to split my time roughly in halves between sessions related to game design, which I have had a stronger interest in from the past, and sessions on more technical topics, which I still am not too familiar with. While I’m unsure if I understood even half of the finer points that were discussed during the technical sessions, I was able to learn in a broader sense about what is going to be made possible in the future with the latest technology, and now feel even more excited about the fact that there are still new, fun places that games can continue to go.

Over the course of CEDEC, a number of social gatherings were held at night. I participated in the student gathering on the 6th and in TwiCEDEC on the 8th. At my university, I have nearly zero friends or acquaintances who are interested in the games industry, and was happy to be able to interact with many people at these events. Also, through my conversations with many different individuals, I was able to understand fairly clearly how I should proceed with my studies in the future. While speaking to many people in this way was not my strong point, I am very happy that I actively participated in these events.

I will value the knowledge and personal connections I was able to make thanks to the IGDA scholarship, and will continue to study hard. And, in the future, I would like to be able to repay the people involved in this scholarship as well as the games industry as a whole by becoming involved in the creation of delightful and fun games. Thank you very much for this incredible opportunity! (Imada Tomoko / Kyoto University)

(Translation: Ko Ransom,i18n Force@igda Japan)


2011年9月18日日曜日

スカラーシップ感想1

IGDAのCEDECスカラーシップに参加した6名の学生の感想が寄せられたので、順次公開してきます。はじめは米シアトルにあるデジペン工科大学に通うシンガポール人、Chin Xiang Chong君です。英語で送られてきた内容を日本語に翻訳しました。粗訳で恐縮です。
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IGDA CEDEC 2011スカラーシップは私にとって、非常にすばらしい勉強の機会を与えてくれた。

スカラーシップは東京にある4つのスタジオ(イニス、キューエンタテインメント、トライエース、サイバーコネクトツー)の見学で始まった。「エリートビートエージェント」「チャイルドオブエデン」「エンドオブエタニティ」および「.hack」シリーズのように、大作ゲームが開発された環境を直接見て、感じることができたのは、希少で刺激的な特権だった。

そのうえ、原田さん(イニスCEO)や渡辺さん(サイバーコネクトツー・スタジオマネージャ)のような経営幹部が、忙しいスケジュールの中から我々の質問に対して、個人的に回答する時間を取っていただき、その特権がさらによりよい物となった。学生にとって、こうしたトップレベルのスタッフに直接お会いして、話をすることは、事実上不可能である。こうした機会を与えられたことを、非常に感謝している。

CEDEC自体の参加もまた、さらに有益な経験だった。

専門的で技術的な話題を扱う講義を日本語で理解することに対して、初めは不安だったが、実際にはほとんどの講義でそれほど問題を感じることなく、話題について行けることは愉快であり、驚かされた。

GDCと同じように、CEDECは課題に挑戦しようとするプロのゲーム開発者の話を聞くことができ、私のようにゲーム産業をめざそうとしている学生にとって、めったにない機会を与えてくれる。

特に私にとって、セガ三宅さんの「ライズ・オブ・ナイトメア」におけるKinecを用いたのフリーローミングシステム開発のセッションが有益だった。というのも、私自身が学校で、Kinectを用いたゲーム開発を計画しているからである。

これ以外にも、ライアン・ベートンさん(コナミ小島スタジオ、343 Industries)の、日本とアメリカでのゲーム開発経験に関する講義のように、完全に英語のセッションがいくつかあった。これらは日本語が話せない西洋の開発者だけでなく、日本の開発者に対しても、西洋のトップのゲーム開発者の考えを活用する方法を提示してくれた。

このような国際的な協力体制は、IGDAが誕生した理由であり、ゲーム業界全体が前進するための唯一の処方箋だろう。(Chin Xiang Chong/Digipen)

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6 guys who attended IGAD CEDEC scholarship send us their feedback and I Japan chapter will upload them one by one. The first one is feedback of Chin Xiang Chong, who is a Singaporean, and a student of DigiPen Institute of Technology, in US. He send us it in English and staff translated into Japanese.
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The IGDA CEDEC 2011 scholarship was a highly educational experience
for me.

It kicked off with a tour of 4 studios in Tokyo(Inis, Q Entertainment, Tri-Ace and CyberConnect2).

Being able to see and feel in person the environment in which great games like Elite Beat Agents,Child of Eden, Resonance of Fate and the .hack series were made was arare and exciting privilege.

What made it even better was the fact that even senior staff like Harada-san (CEO of Inis) and Watanabe-san (General Manager of CyberConnect2) took time out from their busy schedules to personally answer our questions.

Having such up-close and direct access to top-level staff as a student is virtually impossible,and I am very appreciative of being given the opportunity.

The CEDEC conference itself also proved to be very fruitful.

While I was at first apprehensive about my ability to understand lectures covering very technical material in Japanese, I was pleasantly surprised that for the most part I could follow the lectures along without too much of a problem.

 Like GDC, CEDEC presents a rare opportunity to hear how professional game developers tackled
challenging problems, and is highly instructive to students like me
who are trying to break into the games industry.

In particularly, I found the session by Miyake-san from Sega about the challenges of developing a free-roaming game on the Kinect (Rise of Nightmares) very useful, as I am planning on doing some development with the Kinect for a game project next semester.

There were also several lectures that were entirely in English, such as Ryan Payton's(formerly of Kojima Productions, 343 Industries) lecture on his experiences developing games in Japan and the States. Those lectures were convenient not only for developers without much Japanese language, but they also provided Japanese developers a way to tap into the thoughts of top game developers from the West.

Such international cooperation is the very reason why the IGDA was formed, and will only result in the game industry moving forward together as a whole. (Chin Xiang Chong/Digipen)


2011年9月15日木曜日

Gamasutra 記事翻訳:ケーキは嘘じゃない:効果的な実績をデザインする秘訣 パート 2

はじめに

以下は Gamasutra の Features として公開された記事のうち、原著者に翻訳・公開の許可を得られた記事を Internationalization Force のメンバーが翻訳したものです。

  1. 原文の著作権等はすべて原著者に帰属します。
  2. 誤訳、誤植がある可能性があります。発見された場合は当記事のコメント欄にてお知らせいただければ幸いです。
  3. 本記事の公開を快諾してくださった Lucas Blair 氏に深く感謝します。

なお本記事は 3 部構成で Part 1 は翻訳済み、Part 3 は英語版公開済みで翻訳これから着手予定です。
また今回も引き続き試験的に本記事(Part1~2)の翻訳メモリ(TMX)も公開いたします。

このTMX提供を継続していくことで、日本におけるゲーム業界の用語定着に貢献できれば幸いです。

ご意見ご感想などございましたら Twitter ハッシュタグ #igdajif までお寄せください。今後の活動の励みとさせていただきます。





ケーキは嘘じゃない:効果的な実績をデザインする秘訣 パート 2

著:Lucas Blair



[研究者でありゲームデザイナーでもあるルーカス・ブレア博士が、ゲームの実績デザインにおけるベストプラクティスの定型化に役立つ現代の学術研究の基礎を示す、全 3 回にわたる連載。今回はその第 2 部である。第 1 部はこちら]

始めに、本連載の概括から述べよう。第 1 部で述べたとおり、現在さまざまなテーマを扱った数多くの研究が行われており、それらは実績のデザインの指針となり得る。本連載で、私は現在ゲーム内で実績がどのように用いられているかを分析することで実績デザインの特徴を分類し、それを共有しようと思う。
本課題の目的は、実績のデザインからアクションのメカニズムを抽出することだ。実績についてはこれまでにも、プレイヤーのパフォーマンス、モチベーション、態度に影響するという研究結果が出ている。
今回、分類については可能な限り包括的になるよう努めたが、今後さらなる議論や改訂も必要になるだろう。しかし当面は、実績の可能性を効果的に引き出すために必要となる議論の良い叩き台になると考える。
ではさっそく、今回の内容に入ろう。 第 2 部では、次のコンセプトについて説明する:

  • 予測可能な実績と予測不可能な実績
  • 達成した実績を通知するタイミング
  • 実績の不変性
  • 誰が獲得した実績を見られるのか?

予測可能な実績と予測不可能な実績

プレイヤーが実績を獲得した際に表示される通知は、まったくのサプライズの場合もあれば、努力の末にたどりついたゴールの場合もある。達成できる実績をあらかじめプレイヤーに知らせるというデザイン決定だと、プレイヤーはゲームを開始する時点で予測がつくことになる。獲得できる実績をプレイ前から知らせる場合と、プレイ中に突然知せる場合があるが、予測可能な実績と予測不可能な実績はそれぞれ異なる効果をもたらし、どちらもプレイヤーのゲーム体験の向上に活用できる。

「予測可能な実績」には、プレイヤーが行動を開始する前から目標を設定できるという利点がある。プレイヤーが自分で目標を設定することには、大別して 4 種の利点があるとされている。以降では、その 4 種について説明していく。第一に、目標を設定したプレイヤーは達成を目指して行動の方針を定め、自らの持つリソースを適切に投入するようになる。これは特定のスキルを向上させることにもつながる。もちろん長く時間をかける、友人に助けを求めるなどの可能性も存在するが。第二に、目標があると「達成までに費やしても良いと思える労力」の量が増える。制作サイドにしてみれば、これはゲームのプレイ時間が増えることに他ならない。


World of Warcraftプレイヤーがメタ実績「Salty(「海の」:これを獲得するには釣り関連の実績を大量に獲得しなければならない)」を獲得するには凄まじい時間を費やさなければならない。私はコレで実績がどれほど「時間泥棒」であるかを個人的に証明してしまった。

第三に、目標を設定したプレイヤーは困難なタスクに直面しても諦めない傾向が強い。目標を設定していないプレイヤーがタスクがきつすぎると判断するとすぐにやめてしまうのと対照的である。第四に、自ら目標を設定するプレイヤーは、その目標を達成するために新たな知識やスキルを身につける。これはゲームの製作者側にとっても非常に重要な要素である。新たなスキルを身に付けたプレイヤーはそのゲームをもっと遊びたくなるためだ。

予測できる実績には、目標設定のメリットの他にも「プレイ開始前にゲームプレイのスキーマやメンタルモデルを作り出す」という利点がある。 プレイヤーはこのスキームを活用して、ゲームの構造と、目標を達成するために行うべきアクションを把握するのである。プレイヤーが新たにゲームを購入した後に実績を眺める行為には、ゲーム全体の理解を深めるという効果がある。実際、スキーマの作成に似た手法は、ユーザーのパフォーマンスを向上する目的でトレーニングプログラムでも活用されている。

そのスペクトルの反対側に位置するのが 予測不可能な実績だ。 ビデオゲームにおいて、予測不可能な実績は一般的ではないが、プレイヤーを楽しませるだけのポテンシャルは秘めている。そんな実績があれば、思い切ったプレイをしようという気にもなるものだ。

この戦略を極限までつきつめたのが「Achievement Unlocked」(訳註:メッセージ「実績が解除されました」の英語版)というタイトルだ。このゲームでは、基本的に何をしても実績が解除されるようになっている。このゲームの開発者は実績の使い過ぎに対する皮肉として作成したのだろうが、「Achievement Unlocked」はプレイヤーが何らかの実績が解除されるかもしれないと考えて「画面中をデタラメに跳んだり走ったりする」ようプレイヤーを実に効果的に導いている。

ベストプラクティス:最初は 予測可能な実績を用意してプレイヤーが目標を設定し、ゲームのスキーマを構築できるようにしておく。 この時、実績の説明文は解除条件を正確に記すようにし、なぜ重要なのかもわかるようにする。予測不可能な実績は、創造的な遊び方を推奨するよう控えめに用いる。


達成した実績を通知するタイミング

実績の獲得後は、当然その事をプレイヤーに通知しなければいけない。通知タイミングには、ゲームがまだ進行中の解除直後に通知する方法と、ある程度の時間が経過して一連のアクションが落ち着いてから通知する方法の 2 種類がある。 即座に通知するか少し遅れて通知するかの判断は、ゲームの種類とプレイヤーの経験レベルを考慮して下さなければならない。
World of Warcraft」のように実績が解除されたことをプレイ中に通知する手法は、即時フィードバックの一形態と言える。即時フィードバックが学びや効率を向上させることを示す研究は複数ある。計測系の実績はプレイヤーのパフォーマンスと直接関係してくるため、そういった実績を用いる場合には特に重要な要素となる。

ひとつ注意しなければならない点は、即時フィードバックはプレイヤーがゲームに不慣れであるほど有益であるということだろう。プレイヤーがゲームに慣れるにつれてフィードバックを返す時間は遅れるほど良くなる。これは、熟達したプレイヤーにある程度の時間を与えると、自身のパフォーマンスを評価するようになるためである。

また、プレイヤーにゲームをプレイしている最中に実績解除を知らせる行為が押し付けがましいと捉えられるリスクを内包していることも考慮しておく必要があるだろう。通知のせいでフロー状態に入った (あるいは「ゾーンに入った (The Zone)」)ユーザーの邪魔をして足を引っ張ってしまいかねない。

ユーザーがこのような状態にある場合、外部世界は溶け落ち、時間は意味を失い、集中力が高まる。この状態は、一番好きなゲームをプレイしているときに、あなたも体験したことがあるのではないだろうか。
フロー状態にあるプレイヤーはもっとプレイを続けて、もっとゲームを体験したい、というモチベーションが高まっているため、この唐突に突きつけるような通知の方法は理想的とは言えない。

プレイヤーのやる気を削がないようにするため、大量のメンタルマッスル (Mental Mascle、心の筋肉) が求められるゲーム (RTS など) では獲得した実績を通知するタイミングを遅らせている。たとえばプレイセッションが明確に区切れる「StarCraft」のようなゲームでは、実績解除の通知をセッションの間に挿入する傾向がある。

これは遅延フィードバックと同様の機能を果たしているが、これには新しい事を学習する際には記憶力を高める効果があるとされている。これはつまり、新しいゲームで初めておこなったアクションをその少し後に把握するという行為は、それ以降にやり方を思い出しやすいことを意味する。

ベストプラクティス:ゲーム中に明確な「休憩時間」が存在しないゲームでは、即時フィードバック方式で邪魔にならない程度に通知をポップアップさせ、詳細な説明はプレイ終了後に表示する。明確な「休憩時間」があり、さらに多大な集中力を要するようなゲームでは、遅延フィードバック方式を用いたほうが良い。初心者には即時フィードバックが有効で、熟練プレイヤーには遅延フィードバックが有効である。


「Achievement Unlocked」の画面

実績の永続性

プレイヤーは、獲得した実績についてしばらく経ってから振り返ることがある。このような時、「永続的な実績」はプレイヤーに過去に体験した栄光を思い返させるが、永続的でない実績は初回通知時にしか通知されない。

この永続的な実績には、「デジタルな褒賞品」と「保存されたリスト 」の 2 種類がある。これら 2 種は基本的に、それぞれ実績獲得時に受け取る報酬と実績の説明をリスト化したものを示す。そもそもデジタルアイテムは仮想世界にしか存在しないため、それを「手にする」感覚というのは抽象的な概念である。しかし報酬として与えられるペットやコスチュームといった「デジタルな褒賞品」は、実在する物と同じように手で操ったり、他のプレイヤーから羨望のまなざしを集めたりできる。

ただし現実世界で用いられる報酬の仕組みをそのままデジタル世界に持ち込む場合には、過剰使用に気を付けなければならない。報酬はプレイヤーの内発的動機づけ (個人が何かを行おうとする欲求) や自己決定力を弱め、さらに再びタスクに戻ってくる可能性を下げるからだ。

一方で、Xbox LIVE に代表されるような獲得済み実績の保存リストの仕組みは、獲得してから長時間が経った後でも振り返ることができる。過去をこのように振り返ることはプレイヤーに自分の経験を思い出し、より深い理解を促す。

一時的な実績、例えばFPSにおける「Unstoppable」や「God-Like」(マルチプレイの連続キルで表示されるテキストなど) は声による応援に似ていると言えるだろう。永続的な実績と異なり、このような応援は内発的動機付けを強く後押しする上に、プレイヤーの自己決定感を阻害しない。この実績は記録に残らず、表示されなくなると共に失われる。

ベストプラクティス: 獲得した実績はリストのような形式で保存して、プレイヤーに確認する機会を与える。 デジタルな褒賞品は強い動機付けになるが、達成後はプレイヤーを惹きつけなくなる。


誰が獲得した実績を見られるのか?

マルチプレイヤーやシングルプレイヤーモードでプレイヤーの得た実績は他のプレイヤーに見える場合がある。どの情報が共有されるかはゲームによって異なり、中にはプレイヤーに判断をさせないゲームもある。こういったシステムはプレイヤーの実績を完全に公開する。一方で StarCraft IIFarmVille に実装されている実績設定は、プレイヤーが公開する実績を決定できる。

仲間意識は人がゲームを遊ぶ大きな理由の一つである。獲得した実績を他のプレイヤーに向けて可視化すると、他のプレイヤーに示すために実績を狙うようになる。他者から認識されることをインセンティブのように利用すると、プレイヤーのパフォーマンス向上につながるというデータもある。

獲得された実績を 可視化することにより、プレイヤーの仲間にそれを見て、同じ実績を得たいと思わせる事ができる。その結果、労力を費やして最終的に報酬 (訳注: Reward、ここでは獲得した実績それ自体) を獲得すると、プレイヤーは自己効力感 (Wikipedia)を高め、またゲーム内の他のタスクもクリアできるはずだと自信を築くことができる。

可視化された実績はゲーム世界の履歴書のような存在にもなる。他プレイヤーの実績から良いチームの仲間になる可能性や、助けを求める相手となる可能性が見えるからだ。

ただし、コミュニティに向け可視化した実績にマイナスとなる可能性もまた存在する。実績が記録されて履歴書のような役割を担うようになると、デザイナーの意図に反してプレイヤーを除外してしまう可能性が生じるのだ。

たとえば MMO でよく観測される事例として、パーティに誘うプレイヤーの条件として特定の実績を達成していることを要求する事がある。これでは「プレイヤーが経験を積むには経験がなければならない」という矛盾した問題を突きつける結果になってしまう。また別の問題としては、他者から認識されることを動機づけ要素として用いてしまうと、注目を得られなくなったり実績が弾切れになった後にパフォーマンス向上が見込めなくなる点がある。

ベストプラクティス:獲得した実績を他のプレイヤーに公開することは強力な動機付けになりうる。また、経験の浅いプレイヤーが「経験が不足していること」が原因で他プレイヤーから疎外されないようにするため、他プレイヤーが別のプレイヤーを助けることで解除される実績を用意する。プレイヤーの動機を高め、またプレイスタイルを強調するような実績をいくつか提示する。

本トピックの詳細に関する資料:

  • Kulik, J. A., & Kulik, C. C. (1988). Timing of feedback and verbal learning. Review of Educational Research, 58(1), 79-97.
  • Schooler, L.J. and Anderson, J.R. (1990). The disruptive potential of immediate feedback. The Proceedings of the Twelfth Annual Conference of the Cognitive Science Society, Cambridge, MA.
  • Csikszentmihalyi, M. (1975). Play and intrinsic rewards. Journal of Humanistic Psychology, 15(3), 41-63.
  • Fu, F., Su, R., & Yu, S. (2009). EGameFlow: A scale to measure learners' enjoyment of e-learning games. Computers & Education, 52(1), 101-112.
  • Metcalfe, J., Kornell, N., & Finn, B. (2009). Delayed versus immediate feedback in children's and adults' vocabulary learning. Memory & Cognition, 37(8), 1077-1087.
  • Greene, D., & Lepper, M. R. (1974). Effects of extrinsic rewards on children's subsequent intrinsic interest. Child Development, 45, 1141-1145.
  • Dickinson, A. M. (1989). The detrimental effects of extrinsic reinforcement on 'intrinsic motivation.'. The Behavior Analyst, 12(1), 1-15.
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Part2 は以上です。Part3 もお楽しみに!
翻訳担当メンバー:

米田 健(ヨネダ・ケン)

和菓子と抹茶を愛する翻訳・通訳で生計を立てているアメリカ、カルフォルニア州サンタクルーズ市在住のバイリンガル。
学費を苦心しつつ本業であるはずの大学で広く浅く様々な分野を無節操に受講中。専門は雑学。卒業は未定。
アウトドアと料理好きで、ハイキング、ランニング、ロードサイクリング、マウンテンバイク、ロッククライミング、サーフィンと地元の自然を日々楽しんでいます。次はクロスカントリースキーと雪山登山に挑戦予定。
ゲーム関係はIGDA Japan i18n Force (Internationalization Force)にて活動中。好きなゲームはボードゲームとCo-opマルチ系です。オススメや連絡はツイッター@akatombo、または[email protected]までご連絡ください。


福市 恵子(フクイチ・ケイコ)

2004年からフリーで活動しているゲーム翻訳者(英日)。Xbox 360ゲーム「Alan Wake」「Mass Effect 2」でクレジット掲載。その他、幅広いジャンルのゲームタイトル多数の翻訳をお手伝いしております。文芸翻訳コンテストで最終選考に残った経験あり。企業 Web サイトなどのマーケティング翻訳も手がけています。現在シナリオ ライティング勉強中。ゲーム翻訳のお仕事のご相談は、k.fukuichigmail.com までお気軽にどうぞ


簗瀬 洋平(ヤナセ・ヨウヘイ)

北海道札幌市出身。埼玉県川口市育ち。電気通信大学電子情報学科出身。1996年にゲーム業界に入りデバッグのアルバイトからスクリプター、シナリオライターを経てゲームデザイナー。日本コンピューターシステムメサイヤ事業部、株式会社キャリアソフト、株式会社コーエーネット、株式会社ソニーコンピューターエンターテインメント、株式会社アトラス、株式会社ゲームリパブリックを経て現在株式会社サイバーコネクトツー在籍。シナリオ、システム、レベルの一体化とAIによるインタラクション豊かなゲームデザインを目指して開発をしています。


矢澤 竜太(ヤザワ・リュウタ)

元フリーランス英日ゲーム翻訳者、現在はゲーム開発業界一年生でローカライズ業務に奮闘中。IGDA Japan i18n Force (Internationalization Force) 代表。
愛のあるゲーム人を応援するためボランティア翻訳してる。今年も CEDEC アツかった。今度は GDC でローカライズ成功事例の講演だ (目標)! / Twitter: lye_