このほど発表された調査結果によると、巨大な捕食者であるホッキョクグマは、2001年にはカナダとアラスカに面したボーフォート海南部に1500頭が生息していました。しかし、2010年には900頭まで落ち込みました。
一方、専門家によれば、ホッキョクグマの個体群は分かっているだけでほかに18あり、米国、カナダ、ロシア、グリーンランド、ノルウェー、デンマークに分布しているが、その実態は十分把握されていません。
最も調査が進んでいる個体群のうち、ボーフォート海南部の集団を含む4集団は個体数が減少していますが、5集団は横ばい、カナダのマクリントック海峡北中部の1集団はむしろ増えているといいます。
ホッキョクグマの生息数は種全体では減少しており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは絶滅危惧II類(危急)に分類されています。
◆薄氷を踏みながら
ボーフォート海南部など、ホッキョクグマ生息域の中でも南の地域は北の地域に比べて気温上昇が速く進んでおり、したがって海氷減少の影響を強く受けています。
地球温暖化による海水温の上昇で、北極の海氷は減少の悪循環に陥っています。NASAによると、北極の氷は1970年代後半以降10年で12%ずつ後退しており、2007年からはそのペースがさらに早くなっています。
野生生物の個体数動態を研究しているアメリカ地質調査所のジェフ・ブロマギン氏によれば、この地域でホッキョクグマが減少しているのは、主な餌であるアザラシを捕る足場として海氷を使うためだといいます。「氷があったとしても、夏の期間が延びているために冬でも十分な厚さまで成長せず、薄く割れやすい氷が多くなっている」とブロマギン氏は懸念します。
「アザラシは海にいるのかもしれないが、ホッキョクグマはそこまでたどり着けないのだ」。