あらためてここまでこぎつけるのに協力していただいた方、すでに予約いただいた方に、この場を借りて感謝したいと思います。ありがとうございます。
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まだ、本書をご覧になっていない方や買おうかどうか迷ってる方のために、以下で本書の内容をすこし紹介しておきたいと思います。
目次
まずはamazonなどにも載っていない詳細な目次を紹介しておきます。すこしは本書の内容がイメージしやすくなるのでは、と思いますので。【概要編】なぜユーザー中心のデザインなのか?
- 第1章 デザインの問題を特定する
- デザインとは何か?
- ウェブの制作とデザイン
- 創造性とデザインの方法
- ユーザーの行動とデザイン
- ウェブサイトをデザインする際の境界線問題
- 第2章 ペルソナ/シナリオ法とウェブデザイン
- ウェブサイトではなく人々の暮らしをデザインする
- ペルソナ/シナリオ法とは
- ユーザビリティとペルソナ
- ユーザーエクスペリエンスとペルソナ
- ペルソナを用いてインタラクションデザインを考える
- 第3章 ユーザー中心デザインの方法
- ユーザー中心のデザインのための5つのデザインプロセス
- ユーザー中心デザインの方法を考える
- 認知科学と「わかる」ということ
- アフォーダンスと身体の動き
- 日本のデザイン、日本という方法
【実践編】ユーザー中心のデザイン
- 第4章 体制作りと基礎体力作り
- ユーザー中心のデザインを行うための基礎体力・基本スキル
- ユーザー中心のデザインを実施する体制作り
- ケーススタディ1
- 第5章 デザイン問題を定義する
- 問題を発見する
- 問題について議論を行い、問題を定義する
- ケーススタディ2
- 第6章 ユーザー行動の観察と問題理解のためのデータ収集
- ユーザーの利用状況を把握する
- 行動調査の結果をシナリオにまとめる
- 評価グリッド法とラダーリング
- データを収集する
- ケーススタディ3
- 第7章 ユーザー行動の分析と統合
- ワークショップ:みんなで手を使いながら考える
- ユーザー行動を5つのワークモデルを使って分析する
- 行動モデルを統合する
- ケーススタディ4
- 第8章 ペルソナ/シナリオ法を使ったユーザー行動のリデザイン
- グランドデザインとウェブサイトのデザイン
- ペルソナ基本文書を作成する
- ペルソナの行動をリデザインする
- ユーザー要求一覧を作成する
- ケーススタディ5
- 第9章 プロトタイピング
- ユーザーインターフェイスをデザインする
- ペルソナ作って、それからどうするの?
- プロトタイプを作る
- ケーススタディ6
- 第10章 ユーザーテスト法によるデザイン評価
- ユーザーテストによくある間違い
- ユーザーテストを企画・設計する
- ユーザーテストを実施する
- 問題の分析・改善案の作成を行う
- ケーススタディ7
- 第11章 オペレーションをデザインする
- オペレーションのデザイン
- コミュニケーションのデザインとオペレーション体制
- アジャイル開発と成長するウェブサイト
- ユーザー中心のデザインを社内に浸透させる
- ケーススタディ8
「目次」より
ご覧になってイメージしてもらえたと思いますが、「ペルソナ/シナリオ法」を単独に扱う本というよりも、それを含めたユーザー中心デザイン・プロセス全体を紹介し、できるだけ具体的な実践に使ってもらえるよう方法やそれを用いる際の注意点などを紹介しています。
本書が目指したもの
ペルソナは現在、注目を集めている手法です。ただ、僕が今回この本を書こうと思ったのは、ペルソナへの注目に乗ったというよりも、そのペルソナの理解のされ方に危機感をもったからです。どうも世間ではペルソナをマーケティング手法だと理解されている方が多い。でも、実際はペルソナという手法はデザインの手法です。しかも、ユーザーを知るための手法ではなく、ユーザーがどんな風にデザインするものを使うのかを考えるための手法です。つまり、ペルソナ/シナリオ法というのは、デザイン・コンセプトを具体的に明示する方法であり、当然、コンセプトができたら実際のデザインに落とし込まなくてはいけません。
しかし、流行としてのペルソナはマーケティング手法だと思われてるので、デザインをどうするかということを具体的なコンセプトに落とし込もうとしないし、ましてや、そこから具体的なデザインを作ることなど考えもしません。ペルソナを作ったら終わり。ペルソナとモノとの関わり合いを具体的に記そうともしないし、プロトタイプを作ってその仮説が正しいかを検証してみようともしない。
まったく、ペルソナ作って、それからどうするの?です。
2つ目として「ペルソナ作って、それからどうするの?」をテーマにしたのは、現実の体験としてWebデザインの現場で、ディレクターやデザイナーがどうやってペルソナ/シナリオを使いこなせばいいか戸惑ってしまう場面に出くわしたからです。先にも書いたようにペルソナ/シナリオ法はデザイン・コンセプトを具体的にかつ詳細に記述したものです。いわゆるデザインの上流工程の最終段階のドキュメントと考えられます。でも、それが具体的な構造や骨格、表層のデザインに落ちていかないのだったら、そのデザイン・プロジェクトは不幸なことこの上ない。ペルソナ/シナリオ法というコンセプト・メイクの手法だけでなく、コンセプトをモデルに落とし、さらにプロトタイプという具体的なデザインに落とし込む手法が現場で使えるようにならないとダメだろう。そう思いました。
ところが、残念ながらここのところを丁寧に解説した本って僕の知るかぎりなかったんです。じゃあ、僕がそこを書こうと思った。
3つ目としては、いまのWebデザインの現場の分業体制がどうにも気に食わないという思いもあります。技術が高度化・細分化していますので役割分担するのはいいのですが、分業によってできあがるデザインがバラバラになっているという印象をずっと持っていたんです。
SEO、ユーザビリティ、マーケティング、ライティング、ブランディング、などなど。Webのデザインに求められる品質・効果というもの自体がこんな風に細分化され、それが別々の専門家が担当していたりする。こんな状態でスピーディーにすべての品質を加味した1つのWebデザインを生み出すのはかなり困難です。しかも、それが別々のタイプのユーザーを想定してそれぞれが頭に思い浮かべたユーザー像に最適化してれば、できあがったものは誰にも不適合なものになりかねません。
この状況を打破して一貫性のあるWebをデザインするには、デザインする視点そのものを統合するしかないんです。じゃあ、誰の視点で統合するのがよいかといえばユーザーの視点でやるのが手っ取り早い。だから、ユーザー中心デザインのプロセス・方法をみんなが使えばいいじゃないか。それがこの本でユーザー中心デザインの方法を紹介している理由です。
まとめると、本書で僕が目指したのは、以下の3つです。
- ペルソナを本来のデザイン手法という位置づけに戻して、デザインの現場でこそ使ってもらえるようにすること
- ペルソナ/シナリオを作成したあとの具体的なデザインの方法を明らかにし、デザインプロセスにおける上流工程と下流工程の断絶をなくすこと
- ユーザー中心デザインのプロセス・方法を導入することで、デザイン過程のすべての工程において一貫した視点で思考・作業ができるようにすること
デザインという総合的で創造的な思考・作業を、すこしでもやりやすくできるようになればというのが一番の狙いです。
決して一握りの優れた才能の持ち主だけのものではない「創造の方法」というものを示せていればよいなと思います。
読者タイプ別読み方
さて、そんな欲張りな目的をもって書きましたので、既報どおり「A5判、縦書き2段組、384ページ」とボリュームは、それなりにある本になっています。ですので、どこから読めばいいのかの目安になるように、いちお読者タイプ別に読み方・順番の参考を書いておきます。- すぐにでもペルソナを使ってみたいというお急ぎの方:【実践編】からお読みください。【概要編】はプロジェクトを進めながら合間にお読みください。
- もっと手っとり早く「ユーザー中心のデザイン」の雰囲気をつかみたい方:【実践編】の各章の最後に設けた「ケーススタディ」をお読みください。ユーザー中心デザインのプロジェクトの進め方が小説仕立てでわかるようになっています。
- ペルソナって何よ。ユーザー中心のデザインって?という方:まずは順序良く【概要編】からお読みください。
- すでにユーザー中心デザインをやってるという方:通してお読みください。特に自分がやってるのがユーザー中心デザインの1パートである場合は特に。【実践編】の「第4章 体制作りと基礎体力作り」と「第9章 プロトタイピング」あたりは、なぜユーザー中心のデザイン・プロジェクトがうまく行かないかを考えるためのヒントになるのではと思います。
- Web以外のデザインに関わってる方:Web以外のデザインをやられている方でも、UIのデザイン、ソフトウェアデザインなどに関わっている方であれば、本書で紹介している手法は有効だと思っています。説明に用いている事例がWebになっていますが、ご自身の関わっているものに置き換えて読んでいただけると幸いです。特にWebデザインの現場で用いられている情報デザインの考え方、手法は参考になると思いますよ。
- Webデザインに関わってる方:従来の仕事で用いられる「Webデザイン」とか「Webデザイナー」とかいう言葉はいったん忘れてください。そのためにも【概要編】の「第1章 デザインの問題を特定する」で「デザインとは何か?」を整理、定義していますので、こちらを読まれると本書で「デザイン」という言葉をどう扱っているかがイメージしやすくなるかと思います。
- いいから好きに読ませろって方:申し訳ありません。差し出がましいことをしました。ご自由にお読みください。
実際には全部通して読んでもらったほうが内容は理解しやすいかなと思います。上記はあくまでどこにどんなことが書かれているかの参考ということで。
参考文献
巻末に参考文献のリストも掲載していますが、その一部はすでに下記のエントリーでも紹介しています。これと目次をみてもらうと本書がどのあたりを網羅しているのかが想像してもらいやすくなるのかなと思います。- 『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献:1.デザイン編
- 『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献:2.認知科学・UCD編
- 『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献:3.日本文化・ものづくり編
- 『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献:4.脳と意識、生物編
単なる技術本、マニュアルになってしまわないように、というのが、今回、僕がこの本を書く際に念頭に置いていたことです。ですので、僕がどういう思考を経て、どういう情報を参照にして、この本を書いたかを明らかにし、読んでくれた方それぞれが同じ情報を再編集して、僕のまとめた手法よりさらに良い手法が生み出せるよう、文中にもさまざまな書籍から引用もしています。この本をできるだけ開かれた本にしようと思ったんです。この本の中だけで閉じているのではなく、ほかの本とネットワークされているような。ただ、書籍だとリンクが張れないので、そこを補助するために、上記のエントリーでそれを補っています。
以上が『ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト』の紹介です。
興味のある方はぜひお読みいただけると幸いです。
関連エントリー
- 『ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト』:amazonにて予約開始
- 『ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト』:書影が公開
- 『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献:1.デザイン編
- 『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献:2.認知科学・UCD編
- 『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献:3.日本文化・ものづくり編
- 『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献:4.脳と意識、生物編
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