昔、自分のデザイン力が落ちたなと感じて、三ヶ月くらい、毎日最低一枚、鉛筆デッサンの絵を描いていた時期がある。
そんなにすごく昔のことではない。せいぜい5年くらい前だから30才は過ぎていた。仕事もWebデザイナーは卒業してディレクションの仕事をしていたからデザイン力は決して必須ではなかった。それでも毎日描いたから最終的には100枚くらいにはなった。
それをやろうと思ったきっかけはエンライトメントを率いるヒロ杉山さんが同じことを何年もそれ続けているという記事を読んだからだ。結局、それで絵がすごくうまくなったわけではない。それでも最初描きはじめた時よりかはマシになったし、描く時間も早くなった。何より実感したのは物を丁寧に見るクセがついたことだった。主に人物の絵を描いていたのだが、対象となる人に似ているようにするには特徴(違い)を捉えなくては描けない。描いていたのは似顔絵とかではないので、鼻と目の細かいバランスだとかを気をつけて見るようになったのを覚えている。
とはいえ、やはり何より役に立ったと思えるのは、それだけ描けば普段のレベルが変化してくるということだ。デザイナーがつくるデザインに対する視点、企画書などのレイアウト、物をよく観察する視点など。絵を描くこと自体のスキルは大きく変化しなくても訓練は何らかの形で身につくものだ。
もっと身についている訓練がある。
僕には絵を描く訓練するより前に、毎日1,200字以上の原稿を書くノルマを持っていた時期があるのだ。これは3年以上続けた。たぶん、一日10,000字以上書いた日もあるだろう。この訓練で身についたこと。それは文章を書くことに一切臆することがなくなったことだろう。今でもどんな文章でもいくらでも書ける自信はある。取材や情報収集の余裕さえさせてくれれば、どんなカテゴリーの記事でも書けると思う。それも限りなくスピーディーに。
また、これは仕事でだが、一日何件ものリサーチのレポートを書いていたこともある。いまでもクライアントのアクセスログ解析レポートなどを書かせたら、それを専門にやっているチームの担当者より早くクールなレポートを書ける。スピードで言えば、そうした担当者が2日かけるところを僕なら3~5時間で仕上げられる。
訓練をするということは無理をすることではない。
普通にできるレベルを上げることである。レベルの向上は継続的な訓練によって達成される。無理をしたら継続できないので、ここでも無理することが訓練ではないことはわかる。
その効果は何よりスピードに出る。もちろん、質にも出るのだろうが、何より顕著なのはスピードだ。最初のスポーツ選手の例として高橋尚子の練習を聞いたが、結果はやはりスピードとして出た。たぶん、訓練による効果が出やすいのはスピードだと思う。それは訓練が意識より身体に蓄積されるからではないかと思う。絵を描くこと、文章を書くこと、分析レポートを書くことも、その意味では実は頭のスキルだけではなく身体的なスキルが必要なのだろう。
いずれにせよ、訓練しようとしない人はプロにはなれない。
すごい!を現実に自分のものとしようと思うなら、日々の訓練が重要だというごくごく当たり前のことが正解なのだと思う。
そして、自分の職業に直接的に関係のあることばかりが訓練ではない。
高橋尚子も世界一「歩く」ことで世界一早く「走れる」ようになったのだから。
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