公文書先進国イギリスでは「森友文書問題」はこう報じられている

改ざんより「首相の政治生命」に焦点
3月19日に参院予算委員会の集中審議がおこなわれ、森友文書改ざん問題の追及が本格化している。19世紀から政府の公文書を組織的に管理してきた英国で、一連の事件はどのように受け止められているのか。
英国公文書の世界史』を上梓したばかりの在英ジャーナリスト・小林恭子氏が公文書管理に関する近年の問題も含めレポートする。

森友文書問題が「安倍疲れ」につながる?

先週、財務省は学校法人森友学園への国有地売却をめぐる決裁文書(「森友文書」)に書き換えがあったことを認めた。国民のために存在する公文書の改ざんは、民主主義の土台を揺るがし兼ねない行為だ。

英国のメディアは、日本で森友問題が報道されるようになった昨年から継続して記事を出してきたが、今回の公文書改ざん疑惑をめぐる最大の焦点を安倍首相の進退としている。

修正を入れた文書を原本として出していたこと自体に特に驚いたり、これを大きく問題視したりする論調はほとんどない。

例えば、3月12日付の左派リベラル系ガーディアン紙は「妻が縁故主義のスキャンダルに関連付けられ、安倍首相の政治生命に疑問符」という見出しの記事を掲載した。

安倍首相と妻に関わる「縁故主義のスキャンダル」は、「夫妻についての文章を削除するために」公的記録を「不正に変更した」と財務省が認めたことで、頂点に達したと書く。

以前に首相は自分あるいは自分の妻が森友学園に低価格で国有地を売却した一件に関連していたことが判明したら「辞任する」としていたが、この日は「書き換えに謝罪の意を表明しながらも辞任はしないと述べた」。

 

ニュース週刊誌「エコノミスト」は、3月15日付の記事で、安倍首相は「猫よりも多い人生を生きる」と書いた。「猫は9つの命を持つ」ということわざにちなんだ表現である。

というのも、昨年、首相夫人の友人が経営する、「超保守系の教育機関」森友学園に「極端に低い金額で」国有地を売却したスキャンダルが発覚したが、これを首相は生き延びたからだ。

しかし、書き換え問題が報道されてから、首相に辞任を求める声が国民の中で高まっており、9月に総裁選を迎えるが、「過去に総裁選への出馬をあきらめた大物政治家が今度は出馬を考える」可能性もある、と指摘している。

〔PHOTO〕iStock

経済紙フィナンシャル・タイムズの3月12日付では、シンクタンク「テネオ・インテリジェンス」の日本専門家トビアス・ハリス氏が「安倍首相にはなんらかの責任を取ることが期待されている」とコメント。

「すぐに辞任を求められることはないだろうが、党内に『安倍疲れ』を生じさせるのではないか」。これが総裁選での勝利を危うくする、とハリス氏は見る。

ロイター通信は3月12日付で、専門家らによる見方として、文書書き換えが土地売却問題よりも大きな損害を安倍首相や麻生財務相にもたらすと指摘する。

この記事の中で、上智大学の中野晃一国際学部教授は「書き換えの方が大きな問題となっている」と述べている。

つまり、日本では書き換え・改ざんが最大の焦点となっているのに対し、英国のメディアは安倍首相の政治生命との関連付けでこの問題をとらえている。

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