「極右テロはドイツの恥だ。この事件の解明のために、我々はあらゆる努力をするだろう!」メルケル首相は14日、ライプツィヒで開かれているCDU(キリスト教民主同盟)の党大会の場で、深刻な面持ちでそう語った。シーンとした会場に賛同の拍手が響いた。
何が起こったか? 一言でいうなら、極右テロの大量殺人だ。しかし、まだ謎が多い。
まず、11月4日の午前、旧東独のチューリンゲン州のアイゼナッハという町で、信用金庫が襲われ、行員が怪我を負った。同日の昼ごろ、アイゼナッハの隣町で、駐車中のキャンピングカーから火が出る。駆け付けた警官が、車の中で2人の男の遺体を発見した。あとの調べによると、2人とも銃弾による自殺。直前に、確かに2発の銃声が聞かれたという。
さらに同日の午後3時、そこから180キロ離れたやはり旧東独ザクセン州のツヴィッカウという町において、住宅の一角で爆弾がさく裂、炎上した。壊滅した部屋に住んでいたのは2人の男と1人の女で、女は爆発の直前に立ち去っており、一方、男は、昼間キャンピングカーの中で死んでいた2人だということがわかった。また、信用金庫に押し入ったのも、この2人だった。
しかし、この日、事件はまだたいして大きなニュースにはなっていない。この3件のできごとの繋がりさえ、わかっていなかったからだ。大きなニュースになったのは、3日後。そのきっかけは、キャンピングカーの中で発見された、1個の拳銃だった。そしてそれ以後、現在まで、どんどん膨らむ犯罪の規模に、ドイツ中が震撼している。
燃えたキャンピングカーの中で見つかった拳銃。それは、ある婦人警官の銃だった。2007年4月25日、南ドイツはバーデン・ヴュルテンベルク州のハイルブロン。自転車で通りかかった住人が、パトカーの中で倒れている2人の警官を見つけて110番した。2人とも頭に銃弾を受けており、22歳の婦人警官はすでに死亡。その同僚の男の警官は、命拾いはするが、今日も事件を思い出すことさえできない。
2人の警官は、ちょうど昼休みで、パトカーの中で軽食を取っていたという。そこへ、犯人は後ろから近寄り、頭を撃ち抜いた。そのとき犯人が奪って逃げた2丁の拳銃が、燃えたキャンピングカーの中から出てきたのである。迷宮入りしていた残酷な事件が、突然、再浮上した。間もなく、ツヴィッカウの住宅の焼け跡からは、警官の殺害に使われたと思われる拳銃が発見された。犯人が2人の警官から奪っていった手錠やナイフも出てきた。