« WHO、DDT解禁? | トップページ | ヨム・キプール(Yom Kippur) »

2006.10.01

農薬のポジティブリスト制度

 農業関係者なら皆さんご存じのことだし特にブログ的な話題でもないかとなんとなく書かないでいた農薬のポジティブリスト制度だが、昨日のDDTのエントリの関連でちょっと言及しておいてもいいかなと思うようになったので、既知のことばかりだが簡単に触れておく。
 農薬のポジティブリスト制度というのは、利用可能な農薬をポジティブに、つまり「積極的にこれは使って良しの品目」で制限するという規制である。今年の五月二九日から導入された。
 従来はネガティブに、「これは使っちゃダメよんリスト」で規制していた。がそれだと、新薬の農薬とかこれって何がなんだかわけワカメ農薬とかが、行って良し!、ということになり、行った結果、ひどい毒性なんじゃないのって後からわかるという悲劇が満喫できる。そう考えると、農薬のポジティブリスト制度のほうがいいのではないのというのは基本線では理解しやすい。
 ポジティブリストでは、七九九品目の農薬について、原則作物ごとに基準を設定し、基準値が設定できない場合は一律〇・〇一ppmとした。
 すでにこの夏は、農家の皆さん、農薬のポジティブリスト制度で苦労されたようだが、現場的に一番の問題は農薬の飛散で、この作物にはこの農薬をこれだけ利用してよいとしても、隣の畑のこの作物にその農薬が飛散したら、じゃーん、アウチ!ということになる。農薬散布の技術が非常に難しくなった。ヘリの散布はダメっぽい。無人ヘリなどはやはり別の国に販売ルートを広げたいものである、かどうかはさておき。素人的な感想を言うとそれまでけっこうアバウトに撒いていたんでねーのという感じも〇・〇一ppmくらいする。

cover
森の娘
マリア・シャプドレーヌ
 ルイ・エモン「白き処女地」(参照)だったか、農家は常に不平しか言わないとかいうフレーズがあったように記憶しているが、どうでもいいが、ルイ・エモンの絵本「森の娘マリア・シャプドレーヌ」(参照)も昨年翻訳されているか。話がそれた。
 今回の規制改変で農家の不満もわからないではないが、マクロ的に見ると、農薬のポジティブリスト制度というのは、剛力非関税障壁である。もう安い中国野菜なんかばしばしはねのけできるからいいじゃんということになる。とおふざけのようだが、農薬のポジティブリスト制度導入が促進したのは、〇二年の中国産冷凍ほうれん草騒ぎがきっかけで、翌年の食品衛生法改正で導入が決まったものだった。余談だが、米国のほうれん草騒ぎはまだ続いている。生食うからだよと思っていたが、NCRを聞いていると日本みたいに規制管轄の問題などもありそうだ。
 もう一点気になるのは、規制が強化されるということは、検査体制が公平に強化されないと面白い結果になってしまうことだ。が、まだ導入の日も浅いせいかそれほどしっかりしていないようだ。せっかくのバッチグーな非関税障壁ということもあってか、残留農薬検査について、輸入品は国の検疫所で行うが、国内流通分は市場で都道府県などの保健所が実施するということになっている。後者は抜き打ちでもいいのでその分手心が加えやすくてよろしい。むしろ問題は検疫所のほうなのだが、大量をこなせるのだろうか。
 ネットを見ていると対外的には現実認識が鋭い中国様は、やったな日本、マジ非関税障壁じゃんということで、ずばり人民網”日本の非関税貿易障壁に対応 茶葉産業に新衛生基準”(参照)ということで対応に乗り出すケースもある。

今年5月末、日本は輸入農産品に対して「食品中残留農業化学品ポジティブリスト制度」を導入した。このポジティブリスト制度では、茶葉の検査項目が89から276に増え、農薬残留量はすべて0.01ppm以下に統一された。0.01ppm以下とは、100トンの農産品における化学物質の残留量が、1グラムを超えてはならないという量である。中国が実施する新しい茶葉衛生基準は、間違いなく日本による非関税障壁に対応した措置だが、日本の標準と比べ、中国の基準はまだまだかなり低い。専門家は、国外の農薬と科学技術に関する貿易障壁に対応する道は、農薬の使用を減らし、総合的な対策を行うしかない、としている。

 問題認識はしているようだ。余談だが昨今話題の中国での日本の化粧品規制だが……ってまあそこまでは話は広げず、と。
 私は中国茶が好きなので中国茶の汚染についても気になるほうなので、最近はよほどの銘茶でなければ有機のものを指定して購入している。そう、中国で有機農法のお茶があるわけですよ。中国を甘くみてはいけないわけで、やればできるわけです。日本はまだまだ、ワハハで非関税障壁ができたと思っていると、そんなものは簡単に破られることになるだろう。

|

« WHO、DDT解禁? | トップページ | ヨム・キプール(Yom Kippur) »

「環境」カテゴリの記事

コメント

その有機野菜を育てるのに使う水や土の汚染は
大丈夫なんでしょうか?いくら完璧に指導しても
水と土はどうしようもないようにおもうのですが。

投稿: 中国野菜恐い | 2006.10.01 18:40

↑そんなこと言ったら、拙宅では畑に犬のクソを撒いておるし父ちゃんとか自分の尿をしばらく保存後腐敗させてから撒いておる。ときに私も立ち小便。水だって、上流にダムが出来てからというもの毎年毎年年がら年中濁り水。都内の水道水に比べりゃマシだけど、水質は確実に悪い。ヌートリアと鯉・鴨しか棲めない不浄空間と化してますな。んで、そこで採れた野菜を市場に出したり拙宅で食しておる。特に問題ない。
 まあ、中国について問題視されるのはそういうんじゃなくて化学薬品とか放射能とか基準値以上のなんとやら、なんだろけどさ。

 あと、アレだ。ポジティブリストに従ってなんだかんだご利用なさったとき、大抵「撒きすぎるヤツ」出るんよね。んで、自分が勝手に撒き過ぎたのに「だって使えって指導したじゃんか」ってゴネるヤツ、絶対出てきそうな気がするけどなぁ。
 ポジティブリスト、どうなることやら。

投稿: ハナ毛 | 2006.10.02 17:02

残留農薬:カボチャ、160トン焼却へ 基準値超える農薬検出−−函館 /北海道
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/hokkaido/shoku/news/20060909ddlk01040296000c.html

投稿: | 2006.10.03 16:31

 農薬散布による周辺被害(?)ってどーなんだろね。
 一方でアイガモ農法とかやってヒジョーに自然なのに、そのすぐ隣の田んぼで農薬バンバン撒いてることなんかよくあるし。
 散布する場合、風に乗って飛沫が飛ぶことなんかしょっちゅうあるし、田んぼである以上水に流れて下流の田んぼへ蓄積するなんてことも想定内。
 ↑(北海道)のケースは畑だけど、日本の耕作地の大半であるところの田んぼの問題をどうにかせんとね。

 ま、いっそのこと「農薬なんてppm単位で認識しなきゃわかんないくらいにしか撒かれてないんだったら何食ったって一緒だよ」くらいに開き直るのも手ですけど。
 どーせどのみち、報道機関がガタガタ騒がない限りは誰も気付かないんだからさ。

投稿: ハナ毛 | 2006.10.04 12:14

>従来はネガティブに、「これは使っちゃダメよんリスト」で規制していた。
以前は、使って良い作物、濃度、時期(収穫何日前まで)、回数が指定されてた。で、残留農薬については使って良い作物については基準があったが、それ以外には基準がなかった。何故なら、「使用して良い作物以外の作物には使われないから、残留のしようがない」ってのが建前。しかし、ドリフト(隣の田んぼで撒いた農薬が風に乗って飛んでくる)や、前述の建前を無視した中国産野菜の残留農薬問題で、建前がたんなる建前だと暴露されてしまった(昔から指摘はあった)。
ので、データのない部分は一律に規制してしまおうってのが、「ポジティブリスト」だと認識してましたわ。

投稿: 工作員 | 2006.10.04 19:07

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 農薬のポジティブリスト制度:

» ポジティブリスト実施後・・ [おもしろすぎるぜ 中国で農業]
今年5月29日に施行されて・・・ 『1−7月 対日農産物輸出 45.4億ドル 昨年同期比横ばい6月 6億ドル 17.9%減、7月 6.3億ドル 1.7%減6月、7月に不合格を出したもの、計38回、主にうなぎ、ドジョウ、しろきくらげ、落花生、ウーロン茶、...... [続きを読む]

受信: 2006.10.04 23:21

« WHO、DDT解禁? | トップページ | ヨム・キプール(Yom Kippur) »