中国の対外武器販売が世界の紛争を悪化させている
BBCが十一日付けのニュース記事”China arms sales 'fuel conflicts' ”(参照)で、中国の対外武器販売が世界の紛争を悪化させているとするアムネスティ・インターナショナルの報告書を取り上げていた。国内ニュースが出ないようなら、また日本のアムネスティが例によって中国に配慮してか取り上げないようなら、少し極東ブログのほうに書こうかと思っていた。が、共同”中国の武器輸出非難 アムネスティ報告書”(参照)でベタ記事になっているようだ。
同団体は、兵器の輸出入データを国連に提出するよう促す「国連軍備登録制度」への参加を中国が拒否していることなどを批判。武器輸出の情報公開に向け「国連安全保障理事会の常任理事国、また主要な武器輸出国としての責務を果たすべきだ」と指摘している。
とりあえずそれだけ書いてあればマシなほうかな。ほいじゃ、今日のエントリはなし、とも思ったのだが、なんとなくだらっと書いておく。
アムネスティ・インターナショナルによるオリジナルの記事は”China: Secretive arms exports stoking conflict and repression”(参照)である。試訳を添えておく。
China is fast emerging as one of the world’s biggest, most secretive and irresponsible arms exporters, according to a new report issued today by Amnesty International.
(アムネスティ・インターナショナルが今日発表した報告書によれば、中国は今日の世界において、秘密裏にかつ無責任に武器を輸出する最大の国家として急速に台頭してきている。)The report shows how Chinese weapons have helped sustain brutal conflicts, criminal violence and other grave human rights violations in countries such as Sudan, Nepal, Myanmar and South Africa. It also reveals the possible involvement of Western companies in the manufacture of some of these weapons.
(この報告書によれば、中国発の武器によって、スーダン、ネパール、ミャンマー、南アでの残虐な紛争や犯罪的な暴力、人権侵害の持続が可能になっている。同報告書では西側諸国の企業が武器製造に関わっている可能性も明らかにされている。)“China describes its approach to arms export licensing as `cautious and responsible`, yet the reality couldn‘t be further from the truth. China is the only major arms exporting power that has not signed up to any multilateral agreements with criteria to prevent arms exports likely to be used for serious human rights violations,” said Helen Hughes, Amnesty International's arms control researcher.
(「中国は武器輸出認可について注意深く責任を持って行っているとしているが、これほど事実に異なることはない。中国は、武器の輸出が深刻な人権侵害を起こさないようにするための、いかなる多国間条約も批准していない唯一の主要な武器輸出国である」とアムネスティ・インターナショナルの軍備管理研究員ヘレン・ヒューズは言う。)
報告書”People’s Republic of China, Sustaining conflict and human rights abuses, The flow of arms accelerates”(参照)では次のように、ダルフールによる虐殺に中国輸出の武器が使われていることにも言及している。
For example, China has continued to allow military equipment to be sent to Sudan despite well-documented and widespread killings, rapes and abductions by government armed forces and allied military groups in Darfur.
(例えば中国は、スーダン政府軍や関連軍事グループがダルフールにおいて殺害、レイプ、誘拐を広げており、かつそのことが十分に文書化されているにもかかわらず、武器をスーダンに送り続けている。)
ひどいもんだな中国はと言ってみても特にインパクトもない、またか、ということであろう。日本の左翼も経済界も仲良くこの問題には黙りを決め込んでいるし、Google様もお嫌いな話題というわけだ。
子細に考えれば、中国も単一の国家の指導で武器商人をやっているというよりは、むしろそうした死の商人たちのコングロマリットを制御できないのだろう。
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コメント
NHKでちょっとだけ流しましたね。あとのメディアはどうするのか。
投稿: tomato | 2006.06.12 17:08
中国の武器はきれいな武器
だから報道の必要はないですよw
投稿: くれふ | 2006.06.12 20:16
>Helen Hughes, Amnesty International's arms control researcher.
>アムネスティ・インターナショナルの武器制御研究員ヘレン・ヒューズ
ここですが、arms controlの定訳は「軍備管理」です。細かいところですが気になったので。
投稿: | 2006.06.13 13:18
初めまして。いつも拝読しています。以下、細かいですが。
>最大の国家
one of が抜けているような。
>武器製造に関わっていることも明らかにされている
possible が抜けているような。
>武器の輸出者
者は不要かと。
>いかなる多国間条約も批准していない
the only major arms exporting power が抜けているような。
>武器制御
arms controlは「軍備管理」あたりでは。
>武器をスーダンに送り続けている
allow が抜けているような。「死の商人たちのコングロマリットを制御できない」とのご主張だけに、この語は必要かと。
以上、いずれもお話の主旨を損なうものではない点ばかりですが、気になったもので。そういや、小型武器規制条約って、どうなったんでしたっけね。なんか、戦前のイラクにもいたなあ>中の国の人に見えるあやしいひとびと(笑)。
投稿: harmoniker | 2006.06.13 13:25
harmonikerさん、匿名さん、ご指摘ありがとうございました。十分ではないもののご指摘を反映しました。
投稿: finalvent | 2006.06.13 15:01
中国の軍事産業は、人民解放軍の傘下にあります。
『カラシニコフⅡ 松本仁一著』によると、アメリカにも大量の自動小銃を密輸した(摘発された)ようです。
投稿: K | 2006.06.13 21:43
おや、ネタがかぶってしまいました。
そちらが先なようなのでトラックバックを。
管理しきれないってのは実情でしょうね。そもそもどこで作られているか国内情勢も把握できていないかも。
投稿: カワセミ | 2006.06.14 00:18
つーか、中国の陸軍は、基本的に自活せよ、といわれているはずだから、武器が輸出できないとむしろ自分たちの軍隊が維持できないはず・・・。大学といい、あまりにも中国は放任主義過ぎるがな。
投稿: うみゅ | 2006.06.20 22:36