占領都市

劇場公開日:

占領都市

解説

「それでも夜は明ける」のスティーブ・マックイーン監督が、ナチスドイツ占領下で10万人以上が虐殺された大都市アムステルダムの恐怖の記憶を描いたドキュメンタリー。

第2次世界大戦中の1940年5月から5年間にわたってナチスドイツの占領下におかれたオランダの首都アムステルダム。人々は人権や言論の自由を奪われ、ユダヤ人を中心に10万人以上もの犠牲者が出た。アムステルダムを第2の故郷として暮らすマックイーン監督が、歴史家で妻のビアンカ・スティグターによる著書「Atlas of an Occupied City (Amsterdam 1940-1945)」を原作に、忌まわしい虐殺の記憶をもつさまざまな場所を通して恐怖の日々を復元。アーカイブ映像やインタビューによる回想はあえて使用せず、35ミリフィルムで130カ所にもおよぶ“現場”を正確にとらえることで、当時の記憶を鮮烈によみがえらせていく。

「ポール・ヴァーホーヴェン トリック」などのレナート・ヒレヘが撮影を手がけ、「aftersun アフターサン」のオリバー・コーツが音楽を担当。

2023年製作/251分/G/イギリス・オランダ・アメリカ合作
原題または英題:Occupied City
配給:トランスフォーマー、TBSテレビ
劇場公開日:2024年12月27日

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(C)2023 De Bezette Stad BV and Occupied City Ltd. All Rights Reserved.

映画レビュー

3.5平面空間とそこに刻まれし記憶をさまよう

2024年12月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

まず前提として、これはレビュー星取りなどで易々と評価できない作品である。我々が慣れ親しんでいる映画の枠組みを超え、美術館のインスタレーションを体感しているような気持ちをもたらす4時間越えのドキュメンタリーだ。それも語り口として何かしらの起承転結があるわけではない。観客の目は彷徨う魂のように、人々が事実上の自由を奪われたコロナ禍におけるアムステルダムの街並みを漂い続ける。なおかつ、平面的な空間移動によって静謐に映し出される住宅、建造物、広場に添えてナレーションが淡々と物語るのは、この場所に刻まれた記憶。1940年〜45年のナチスドイツの占領下にあった時代にどんな状況や情景が広がっていたのかを、回想シーンを挟み込むことなく、観客一人一人の中に想像させる試みなのだ。考えるよりもどっぷり感じる映画というべきか。マックイーンの『ブリッツ』(空襲下のロンドンを駆け巡る劇映画)とも比較したい一作である。

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牛津厚信

3.5demolished

2025年1月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

新年初っ端から4時間の長丁場耐えて見ました 15分のインターミッションあり
ナレーション付きでかつてはその場所はナチスの〇〇だったと延々と続く、でも映像は観ていて飽きなかった
関心領域へのスティーブ・マックイーン監督アンサー作品だそうで
こちらは過去何が起こったか気にせず過ごしている人達を描いてるのかな?と思いました
水の豊かそうなアムステルダム
レジスタントが多かったのは予想外だった
ロックダウンとユダヤ人迫害時代の外出禁止は奇しくもとてもよく似ていると思いました
難民、植民地、デモ 戦争は終結しても他国同様多くの問題抱えてるのだ!?

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ゆう

3.5新たな手法で伝えるホロコースト

2024年12月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

1940年代にナチス・ドイツの占領下にあったオランダ、アムステルダム。10万人以上が犠牲となった当時の出来事をナレーションで伝えていくドキュメンタリー。

言葉のひとつひとつが重いのに対して、その現場であるアムステルダムの現在は子供達が無邪気に遊び、街並みも美しい。ひたすら続くナレーションと現場の映像にとても挑戦的な作品だと感じました。星をつけるのも難しいです。

間に15分の休憩がありましたが、それでも4時間というのはやはり長い…何度か自分との戦いになったことは言うまでもありません。。

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4.0景観を刷新してもなお立ち上ってくる、都市の随所に埋め込まれた悲劇の記憶をとらえた一作

2024年12月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

まず4時間越えの上映時間に躊躇を覚えてしまう人も多いのでは。予告編は、流れる現代のアムステルダムの映像の美しさとそこに被さるナレーションの不穏さがなんとも印象的ですが、本編はこの予告編の形態が4時間以上続くと考えてもらってまず間違いないです。

おそらくマックイーン監督は、あえてアムステルダム各所を捉えた映像の空間配置も、ナレーションの時間軸もシャッフルしているため、明確な起承転結は存在せず、時にどれだけの時間が経ったのか、時間間隔を見失いそうにすらなります。

マックイーン監督が本作で時間をかけて描いたのは、人々が往来し、穏やかに生活する(といっても政治デモが結構盛んだけど)アムステルダムの都市の各所に埋め込まれた、わずか80年ほど前の迫害と流血の記憶です。

作中に頻出する"demolished(破壊された、撤去された)"という言葉が示すように、都市は破壊と再生、そして変質を繰り返す場でもあり、古い記憶は棄却され地面の奥底に埋め込まれていきます。そこには未来への前進という肯定的な側面があることは十分理解できるものの、この言葉を聞くたびに、暗い過去を今と切り離し、抹消してしまいたい、という断固たる都市そのものの強い意思が伝わってくるようで、軽い衝撃が走ります。

そうして清潔で洗練されたアムステルダムという都市の空気を人々は享受しているわけですが、果たしてかつての巨大な悲劇を現実の出来事としては忘れていいのか?とマックイーン監督は問いかけます。本作の時間的な厚み事態が、いかに忘れてはいけない記憶が「歴史化」しようとしているのかを知らしめているようです。

なかなか鑑賞には心構えが必要な作品ですが、こういったかなりの時間を要する作品こそ、劇場で観るべき作品と言えそうです。

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yui