ゲームで健康になる――。高齢者が加齢により心身共に弱体化するフレイル現象の予防に、なんとゲームが効果があると実証された。さらに、ゲームは子どもと高齢者などの多世代交流のツールとしても大人気なのだ。健康目的でゲームを設置する施設や自治体は急増しており「高齢者専用“ゲームセンター”」を設ける自治体もあるという。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#19では、ゲームが高齢者の健康にもたらすその驚きの効果を見てみよう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
高齢者の健康維持にゲームが大活躍
全国自治体で導入が急増中
「ドン、ドン、ドン!」「うまーい!」。集会所の大きなスクリーンに映し出されたのは、バンダイナムコエンターテインメントの人気ゲーム、「太鼓の達人」だ。プレイしているのは集まった十数人のお年寄りと、子どもたち。そして地元の高校生。プレイしている2人が太鼓をたたくのに合わせて観客も一緒に手を上げたりして歓声が上がる。見た目は楽しげなゲームイベントだが、れっきとした「高齢者外出促進健康ゲーム事業」という町の事業である。
ここは鳥取県日野町。地元の県立日野高校・町立の日野学園と共同で、町内の施設で太鼓の達人を使った交流イベントを定期的に実施しているのだ。日野高校の福祉科の学生が企画・運営し、地元の小学生と高齢者が一緒に参加する。
引きこもりがちで周囲とのコミュニケーションや活動量が減少している高齢者が、認知症予防やフレイル(心身が衰えて健康な状態と介護状態の中間にある状態)予防のためにゲームを活用しているのだ。日野高校の福祉科の授業の一環として、学生にとってもとっつきやすいゲームを介護や高齢者福祉の場で活用できないか、と導入が始まり、その後町ぐるみの活動となった。少子高齢化が進み子どもと接する機会が減っている高齢者にとっても、刺激が得られるイベントとなっているという。
ゲームには依存性があり、健康に悪影響しか与えない――。長い間、学校や自治体などの公的機関はこのような前提に立った対応を取ってきた。2020年には、香川県が未成年者の家庭でのゲームの時間について条例で制限するということも起きた。
だが、その一方で実はこのような「ゲームを健康増進に利用する」という例が、最近日野町のみならず全国の自治体で急増しているのだ。忌諱すべき悪役から一点引っ張りだこになり、注目されているのはなぜなのか。最新の研究では、むしろゲームをプレイすることが健康増進効果につながる、という結果すら出てきているのだ。
「ゲームで健康になる」という一見これまでの常識とは真逆のことは、本当なのか?次ページからじっくり見ていこう。