2023年に約10兆円という史上最大の買収額で米開発スタジオ、Activision Blizzardを買収した米マイクロソフト。その例からも分かるように、人気タイトルやIP(知的財産)を持つ企業に対する買収合戦が起こりやすいのもゲーム業界の特徴だ。子会社に人気タイトル開発企業を持つKADOKAWAにソニーが買収提案を行っていることも明らかになった。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#9では、ゲーム業界のM&Aや企業への投資の動向をみていこう。ゲーム業界のマネーゲームの勝者は誰だ?(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
自社の20年分のM&A費用を上回る資金を
たった1社のゲーム会社の買収に投じたマイクロソフト
「さあ、今日はゲーム日和だ!」
「今日は世界中のゲーマーにとって素晴らしい日です。Activision Blizzardと協力し、人々がいつでもどこでも好きな方法でつながり、素晴らしいゲームをプレイできるようにするというビジョンを実現します」。2023年10月23日、米マイクロソフトのサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)は、Xボックス公式アカウントのポストにかぶせてこうコメントした。1年以上にわたる各国競争当局との裁判を終えて、ゲーム開発企業である米Activision Blizzard社の買収を終了したのだ。
買収金額は690億ドル(約10兆円)。米LinkedIn(262億ドル)、米GitHub(75億ドル)、フィンランドNokia(72億ドル)、エストニアSkype(85億ドル)、そしてスウェーデンMinecraftの開発元であるMojang Studios(25億ドル)など、ここ20年余りの間にマイクロソフトが行ってきた買収を全て足してもまだ届かない巨額だ。
Activision Blizzardは一人称視点シューティングゲームの大型タイトルである、「Call of Duty」シリーズの開発元だ。2003年から現在までシリーズ合計21本の世界累計販売本数は5億本を突破。欧米では年間ランキングトップの座を譲らない状態が長い間続いている。世界最大級のユーザー数を抱えるモバイルゲーム「キャンディークラッシュ」の開発元の英Kingも傘下に持つ会社だ。
いわば自社の20年分のM&A費用を全部Activision Blizzardの買収につぎ込んだマイクロソフトだが、他にもゲーム会社の買収には少なからぬ資金を投じている。前出のMojangもそうだが、21年には米ZeniMax Mediaを75億ドルで買収しているのだ。
マイクロソフト、テンセント、そしてソニーグループと、米中日の三大陣営が、盛んなM&Aで陣取り合戦を進めるゲーム市場。
さらに、あまり知られていないが、米国、中国のみならず、韓国、中東の勢力も、急激に日本のゲーム会社に急激に食指を動かし始めている。しかも、対象には大手ゲーム会社も含まれていて、安穏とはしていられない。日本と世界のゲーム会社の勢力図はどう変わっていくのか。具体的な名前と数字、金額で詳述していく。