外で暮らす猫は、基本的に排他的で、自分ひとりの生活を守っていますが、
数が増えると、そんなことを言っていられなくなります。
単独生活を基本とする野生猫は、ふだん、成猫ならオスでもメスでも、自分だけの「縄張り」をもって生きています。
「縄張り」の範囲は、ネズミなどの獲物が多ければ、狭くても十分ですし、獲物の密度が低ければ、広い縄張りが必要になります。
野生猫が他の猫と暮らすのは、基本的に母猫と子猫の関係だけです。
子猫が育ち、自分で狩りができるようになると、子猫は、母猫の縄張りから出ていき、どこか別の場所に自分の縄張りを築きます。
メスの子猫なら、母猫の近くに自分の縄張りを築いて暮らすこともありますが、オスの子猫の場合、どこか遠くへ旅立っていきます。
これは、近親交配を避ける猫たちの知恵といえます。
しかし、人の生活圏に暮らす野猫では、かなり様子が違ってきます。
漁村など、人から与えられる食べものが豊富な場所に、多くの野猫が群れ暮らしていることは、よく知られていますね。
他の猫と争わなくても食べものが手に入るのなら、お互いの縄張りが重複しても、平和共存できるわけです。
でも、そのような野猫の群れをよく観察すると、いくつかのグループに分かれて暮らしていることに気づきます。
グループの基本単位は、母猫と娘猫を核とする母系集団です。
それぞれの母系集団では、発情や出産の周期を一致させて、グループごとに共同育児をしていることもあります。
このような、縄張りを重複させて暮らす野猫たちが互いの存在を認め合う場が、よく「猫の集会」といわれるものではないか、
と考えられています。
集団生活を基本とする人の社会で生きていこうとすると、本来は単独生活者の猫も、
やむをえず、群れに近い状態で生きざるを得なくなります。
「一緒に暮らしたくないけれど、食べものの豊富な場所を離れたくない。どうすればいいのか」。
そこで、同じ地域のなかで、縄張りを重複させている猫同士が、縄張りを共有する公園や空き地、空き家などに集まって、
ケンカせずに生きることを確認し合おうというわけです。
集会は穏やかな雰囲気ですすめられ、日常的な顔見世興行のようなものなのです。
お互いの顔を確認しあい、交流の安定化をはかっているのです。
ここで顔を合わせた猫同士は、ハンティングエリア(狩り場・・・ゴミ捨て場、集会所など)内でたまたま顔を合わせることがあっても、
ケンカになることはないのです。
集会は夜中だけでなく、日中日向ぼっこをしながら開かれることもあります。
この「猫の集会」に子猫が母猫に連れられて参加し、みんなに認められると、「市民権」を得たことになります。