Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

財政が大変厳しく…と役人はいった。


 鳥インフルに感染したかもしれないといって会社を休んだ部長の代理で、とある自治体の事業説明会に出席した。案件は職員向け福利厚生施設=職員食堂を兼ねたレストランだ(市民も利用可能だが存在をしられていないので実質職員食堂)。実は二年前同じ案件の説明会に出席したのは僕だったりする。

 二年前の説明会。自治体の担当者は冒頭で財政が緊迫しており条件はよくないが公共機関の福利厚生という意味合いをご理解してぜひ企画競争に参加していただきたいという意味のことをいった。公共の福利公正をやる意味合いとはなんだろう?わからない。意味不明だ。配布された要綱と仕様書をみるかぎり相当に厳しい条件だったので即座に辞退の二文字が浮かんだ。実際そのときやっていた業者は厳しい条件にたえられず一年でギブアップしていた。


 会場の前のほうに役人が六人座っていた。うち一人だけが司会進行と質疑応答をこなし他は…、何のためにいたのだろう?このまま帰ってもしょうがないと思い、質問した。会社名と名前を告げて、「大変に厳しい条件だと思いますが、仕様書に記載されている単価を業者側提案にすることはできないのですか?」。単価=売値を自治体側が決めていたからだ。


 役人「正直ベースに申しまして福利公正という性質上その単価を引き上げるのは難しいです」。僕「でもこの条件で運営したら業者はおそらく赤字覚悟になると思いますよ。せめて単価を業者側提案にしてその上で判断するというのはどうなんですか?さまざまなパターンで試算しているんでしょ?」。役人「正直ベースにいいまして…数字は出していません」。は?僕ちょっとキレて「え?試算してないんですか?現状の数字だけ?」。隣にいた同僚と話してから役人「正直ベースにいいますと現状の数字も現業者からあがってきた数字を裸のままお出ししているだけでして検証もしていません」。えー!


 僕「それなら市民の利用を促すような広告をうってもいいですか?売り上げ伸ばすって意味で業者も助かるし、税金で作った施設なら一般の人にひとりでも多く使ってもらったほうがいいじゃないですか。看板もないですよね、ここ。一般の人知らないんじゃないですか?」。役人「看板はちょっと前例がないので検討事項とさせていただきます」。結局、現業者が音をあげたから、何も検証研究せず、厳しい条件もそのままで赤字覚悟で引き受けてくれる奇特な民間業者を探している、というようにしか僕には見えなかった。実際そうなんじゃないかな。


 呆れて僕「おそらく今の条件ではどこがやっても白旗をあげると思います。もし次回もこのような機会があるなら検討を重ねてください。以上です」。そんな捨て台詞を残して辞退を決めた。端にいた役人は居眠りしていた。くだらねえ説明会をやる時間もコストだってわからないのかな。


 辞退届は翌日提出した。すると仕様書と要綱のオリジナルを返却しろとかたくなに言ってきた。複製禁止の注意書きがないのを確かめコピーをとってからコロ助やプリンスのラブシンボルマークの落書きも消さずに返した。油性ボールペンで描いたので消せなかった。情報漏洩対策と胸を張っていたが穴がありすぎだろ。それからしばらく「正直ベースで」というのが口癖になってしまった。それが二年前。


 んで今日。一応前回の関係書類のコピーを持参して説明会に出席した。驚いた。配られた資料が前回二年前と日付以外一字一句まで同じだったからだ。驚いていると役人がづらづらと現れ、少し太られた正直ベースが定刻になりましたのでといって説明会が始まった。現業者撤退に伴う新業者募集であること、当該財政は大変に厳しく前回以上に非常に厳しい条件ではあるが公共施設の福利公正という意味合いを理解していただいて参加していただきたいというような前回の録音再生みたいなことをいった。


 書類を読み上げるだけの説明が終わり質疑応答になった。挙手して質問。僕「前回以上に厳しい状況と伺いましたが、なぜ状況が厳しくなっているのにこの書類の前提条件が前回と同じなんですか?普通利用者数とか減っているんじゃないですか?」。役人「正直ベースに申し上げますと前回の条件では運営できない状況が現在の状況だそうです」。だそうです?他人事みたい。僕疲れて「だから〜厳しくなった状況の情報を教えてくれないと提案できないでしょ。赤字じゃやらないですよ昨今どこも」。役人「ですからそこは民間で蓄積したノウハウを活かして企業努力で…」企業努力キタコレ。


 あきれて僕「つーか状況が変わっているわけでしょ?」。「悪化しています」。「悪化しているならその状況を教えなきゃダメっしょ。それに検証しなきゃ同じことのくりかえしでしょ。それに前回と一字一句書類が同じってどういうこと?仕事やる気あるの?」。言っちゃった。役人「予算削減で新しい仕様書をつくれないことをご理解いただきたい…。ルーチンワークにアドオンして書類をゼロからつくってコストがかかってもいいのですか?その部分をどうお考えですか?私たちは市民からの血税を守る立場にいるのです…」。えー!なんだよそれ。僕が税金垂れ流しを促しているみたいじゃん。それから役人「前回の書類は回収したはずですが…」。アホらしくなった僕の手には「以上です」というしかカードが残されてなかった。


 以上で説明回を終了いたします。それをいうだけの役割の役人がいって説明会終了。役人は12人いた。うち仕事をしていたといえるのは正直ベースたった一人。人も金も余裕あんじゃん。随分とひでえ二十四の瞳だ。つーか正直ベース、正直ベースって鬱陶しいんだよ。お役所とはいろいろ仕事してきたけれど、こんなのばっかり。


そんじゃーねー。