初音ミクとVOCALOID2の微妙な関係

概要

初音ミクとVOCALOID2を区別すると、初音ミク界隈の混乱した議論が、整理しやすくなる。今回は特にCGM・二次創作という視点から、初音ミク祭りの盛り上がり方を考察する。

キャラクターとしての初音ミク

映像部分。KEIが描いた初音ミクの外見。初音ミク自体は合成音声を作る機能しかないが、ユーザが画像映像を加えて、ニコニコ動画などの動画サイトにアップロードすることで、アイマスMADのように盛り上がった。そのように、二次創作市場の側面がある。

初音ミクというキャラクターの二次創作を作るだけなら、ソフトがなくても参加することは可能だ。この「直接買わないけど祭りに参加する」層が強力に知名度を上げる、祭り型の盛り上がり方は興味深い。もちろん、初音ミクの場合は発売元が意図したというより結果的にそうなったわけだが。しかしなぜ興味深いか。

フリーソフトで普及させてから上位版のシェアソフトを売るとか、ネットサービスなどで無料会員でも遊べるが有料だと追加機能(アバターとかも)を使える、といった手法は一般的だが、初音ミクというキャラクターを広めるタイプの手法は、意外と珍しい。

もちろん、マンガ・アニメ・ゲームといったコンテンツ分野ではイメージキャラクターはデフォルトといっていいほど盛んに活用される。ブロッコリーのデジキャラットなんかは、でじこビルを建てる位に優秀なのだが(いつかミクビルも建つだろうか?)、ソフトウェアではそれほどキャラクターの印象がない。もっとも、最近のPoserのもえたんとか、そういう動きはあるかもしれない。

ボイスツクールとしてのVOCALOID2

音声部分。藤田咲が演じた初音ミクの声。ユーザが声を楽器のように操作できるため、楽曲がmuzieなど各所で公開されている。そのように、CGM市場の側面がある。混同しやすいが、二次創作とイコールではない。なぜなら、ユーザがVOCALOID2でオリジナル曲を作れば一次創作になるからだ。対して、ユーザが初音ミクのキャラクターをモチーフに一次創作を作ることはできない。もし一次創作なら、初音ミク以外の何者かだろう。

ただし、ソフトがなければ作れない。大勢の人間が初音ミク祭りに参加して、その中で一部のミク御輿を担ぐ人間が、ソフトを買ってくれるというわけだ。これは、RPGツクールの構造に似ていると思う。つまり、RPGツクールを買わなくても、RPGツクールで作ったRPGは遊べる(体験版とは違う)のだが、作る側に回りたくなるという心理はある。

だから、VOCALOID2のCGMはボイスツクールと捉えると分かりやすいと思う。もちろん、RPGツクールで作ったRPGが、スクウェアエニックスの超大作RPGを超えるわけではない。規模的・技術的に商業作より優れているということではなくて、自分で作れてしかもネットで発表できるという、いわばインタラクティブな部分がウケているのだ。

初音ミクも同様である。歌手より上手く歌えるからではなくて、自分で作れて面白いから流行っているのである。ただし、VOCALOID2の技術はYAMAHAが開発しているし、歌自体ではなくて、音声合成で歌を作る技術は、素朴に考えて凄いと思う。合成音声は以前からあるが、これだけ自然な声を聞く体験は、初音が初めての音だった。