医療のイロハも知らないのは山形氏の方です。

医療のイロハも知らない長妻氏/山形浩生(評論家兼業サラリーマン)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20101020-00000001-voice-pol

と言う記事で、厚労省研究班が補完代替医療の有効事例を集めて検証することを揶揄しているのだが、これがあまりに酷い。
ホメオパシーの怪しげな理論による現代医療の否定が非難されるのは構わないし、怪しげな民間療法を非難するのも別にいいのだが、それこそ医学の専門家でもない山形氏が長妻氏個人を中傷するための政治利用するのは頂けませんな。

ところが日本では、鳩山前首相がそんなものを真面目に採り上げるといいだした。そして実害が出て、各方面から批判が出てきたが、一方で長妻前厚生労働大臣の指示で、同省の研究班ががんの補完代替医療の事例収集を行なうとのこと。

まず、鳩山前首相が言い出したのは、2010年1月29日の施政方針演説の以下の部分を指すのでしょうね。

健康寿命を伸ばすとの観点から、統合医療の積極的な推進について検討を進めます。

http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/201001/29siseihousin.html

そして、長妻前厚労相の指示による研究班と言うのは、医政局管轄の「統合医療プロジェクトチーム」のことを指すのでしょう。
第1回会合(2010/2/5):http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/s0205-17.html
第2回会合(2010/4/26):http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/04/s0426-9.html

とは言え、代替医療についての研究は、小泉政権時代からやっているんですが山形氏は知らないようですね。

平成13年から16年までのがん研究助成金課題として、四国がんセンターの兵頭一之介氏を担当とする研究がされています。

13-20 我が国におけるがんの代替療法に関する研究
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant/2001/focused1320.html
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant/2002/focused1320.html
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant/2003/focused1320.html
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant/2004/list.html#02

平成17年2005年からは、同じく四国がんセンターの住吉義光氏を担当として、以下の研究がされています。
17-14 がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant/2005/list.html
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant/2006/list.html
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant/2007/list.html
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant/2008/list.html

統合医療、補完代替医療(相補・代替医療とも)(Complementary and Alternative Medicine, CAM)の研究はこれらの代替医療研究のがん以外の分野に適用しただけです。

「補完代替医療」についてはすでに多くの研究で有効性が否定されているはずだが、まともなかたちで検証するのであれば止めはしない。

この一文だけでも山形氏が医学、特に医療統計に関する知識を持っていないことがわかります。
まず、「補完代替医療」についてはすでに多くの研究で有効性が否定されているってのが間違いです。

「有効性を証明できていない」=「有効性が否定」

では、ありません。
こんなバカな論理が通るなら、現在市場に出ている薬剤のほとんどは有効性が否定されたことになります。
言っておきますが、論理的・医学的・統計的に有効性を否定するのってはかなり難しいんですよ。

なぜ補完代替医療を研究するのか?

有効性も安全性も検証されていないサプリメントなどが、がん患者などに多く利用されていることが問題です。サプリメントの種類によっては、医者が処方する薬剤の効果を高めたり弱めたりしますから、医者としてはその性質を理解しておくべきなんですね。
「効果がないからそんなのやめろ」と断言できるほどの知見もありませんから、医者としては患者にそれらをやめろとは言えません。
現実問題として、患者は、それもがんのように重大な病気の患者は、補完代替医療に頼る人が多いと言う問題もあります。

実際、こういう報道もちゃんとされています。

研究班の大野智・埼玉医科大講師は「有効かどうか、安全かどうかもよく分からないまま患者さんが利用し、データがないので医師側も勧められないし、やめろとも言えないのが現状だ。科学的にしっかりした根拠となるデータを蓄積したい」と話す。

http://mainichi.jp/select/science/news/20100922dde041040002000c.html

山形氏の言う「「補完代替医療」についてはすでに多くの研究で有効性が否定されている」は明らかに嘘です。山形氏は、例えば、がん治療において、手術・抗がん剤・放射線治療を一切行わず、その代わりに、ホメオパシーとかで治す、というイメージを持っているようですが、統合医療で想定されているのは、例えば、抗がん剤の副作用を緩和するとか、精神的に不安定になっている患者をケアするとかそういうことが多いんです。あるいはサプリメントの中に、抗がん剤候補になるものがないか、という研究ですね。

むろん、ほんとうは鳩山前首相が思いつきでくだらないことを口走ったのがアホだ。そしてもし政治主導をいうなら、厚労大臣は医療のイロハくらいは理解していて、鳩山ルーピー発言は黙殺するか明確に否定すべきだ。ところがいまは、何の専門性もない者が党内派閥のご褒美として、中身を何も知らない役所の大臣になってしまうからこんなぶざまなことになる。

相手をアホだ、ルーピーだとか罵倒するなら、ちゃんと調べるべきでしょう。上記の通り、代替医療に関する研究は10年前からやっています。山形氏はその貧困な知識に基づく先入観と鳩山氏、長妻氏に対する個人的嫌悪感から、勝手なわら人形を作って叩いているに過ぎません。

 従来の官僚主導ならそれでもいい。実務は官僚に任せて、大臣はたんなる飾り首、不祥事があったときに頭を下げて首を切られるだけ。でも、政治主導をいうならまず政治家のほうが変わるべきだったんだが……相変わらずの様子。そして菅首相続投で、それがなおさらひどくなっている。

民主政権憎しで、思いつきを口走ってるのは山形氏ですな。山形氏の方こそルーピーですよ。