ビールは発がん性の飲料でその毒性はアフラトキシンの260倍以上

かなり出遅れてしまった感があるがアフラトキシンについて何か書いてみる。
最近かび毒であるアフラトキシンの記事をよく見かけるのだが、Wikipediaにはこんなふうに書いてある。

アフラトキシンは地上最強の天然発癌物質とされ、その毒性はダイオキシンの10倍以上といわれる(詳細はIARC発がん性リスク一覧参照)。

他にも、名古屋検疫所のページ*1にも同様のことが書いてある。

アフラトキシンB1の毒性:ダイオキシンの10倍以上

10倍以上・・って何ぞ。詳細はIARC発がん性リスク一覧参照・・・とか書いてあってもそこにはそんなことは何も書いないので困った。Wikipediaは出典不明な記述が多すぎて困る。ダイオキシンの毒性ってAhR(aromatic hydrocarbon receptor)を介して発現する*2のだけど、種によって毒性が8000倍以上違ったりする。8000倍に比べたら10倍なんて普通誤差範囲じゃね?とも思う。
そもそも、同じ用量で比較すれば、急性毒性も発がん性もダイオキシンのほうがおもいきり高いのである。どこから、「ダイオキシンの10倍以上」なんて与太話が出てきたのか全く不明であった。


そこで考えた。実は同じ用量で比較してるんじゃなくて、曝露量を掛け算してるんじゃね?と。実際の曝露量だと、ダイオキシンの発がんリスクよりも、アフラトキシンの発がんリスクが高くなる、そういう意味だろうと推測して資料を探してみた。だってそれくらいしか可能性が無いから。
Pesticide Residues in Food and Cancer Risk*3では、HERP (human exposure/rodent potency)という値を用いて発がん物質を評価している*4。ヒトでの平均暴露量を、げっ歯類で半数の発がんが見られる用量(TD50)を割って、その数値が高いほど発がんリスクが高いという考え方だ。このTable38.5によると、アフラトキシンのHERPは0.008、ダイオキシン(TCDD)のそれは0.0007で、アフラトキシンのほうが約10倍高い。つまり実際の暴露量ではアフラトキシンのほうがダイオキシンの約10倍のリスクになるのである。これで最初と話がつながった。


さて、実際の暴露量での発がんリスクをHERPで比較する、というルールであるなら、もっと発がんリスクが高いものがごろごろ存在する。たとえばビールのHERPは2.1(一日の平均摂取量257g、エタノール13.1mL)で、アフラトキシンの260倍以上、ダイオキシンの3000倍なのである。
つまり、えっアフラトキシンの毒性はダイオキシンの10倍以上?こわーいとか思ってたら、実は全然すごくなくてビール一杯のほうが危険なんである。食事から取るアフラトキシンの濃度が260倍になったときよりも、ビール中ジョッキ(350-500mLくらい?)を一日一杯飲むほうがよっぽど有害なのだ。


別にビールを貶めようとして書いてるんじゃなくて、アフラトキシンのリスクを考える上で参考になればと思って、ビール飲みながら書きました*5。

*1:http://www.forth.go.jp/keneki/nagoya/AFLATOXIN.htm

*2:発がん性に関しても詳しい機構は不明だけどAhRが関与していると考えられている

*3:http://potency.berkeley.edu/pdfs/handbook.pesticide.toxicology.pdf

*4:あくまで、げっ歯類のデータをそのまま適用した一次スクリーニングであるのでその点に留意。

*5:ヒトのデータでも良かったんですけど、げっ歯類のデータが気に入ってる人がいたりとか、ネットではラットの発がん性がすげーーーとかなってるみたいなのでげっ歯類ベースで書いて見ました><