『ペルソナ4』

kodamatsukimi2008-07-30


 公式サイト http://p4.atlusnet.jp/ ASIN:B001675JCU

・10年ほど前に「女神転生十年史」(ISBN:4757701209)という本が出ておりまして
 つまり今年出すなら21年史。
 『ペルソナ』はメガテンではないものの
 もう20年同じ様なゲームを遊んでいるのかと思わず遠くをみたり。
 『ドラクエ5』だってSFC版は16年前でありますよ。飽きないな。


・さて『ペルソナ4』は『3』に続いてPS2。
 なんだかんだといまだなかなかお休みになれません。
 『3』が一昨年、RPGとしてはずいぶん短い発売間隔でありまして
 みためからして予想されていたように
 その中身もあんまり変わらずむしろそのまま。
 罪と罰くらいの違いです。

・これまでに比べて革新的かつ素晴らしい完成度のものができたから
 次でまたすぐ変え、1からみな作り直して何年も掛かる『ドラクエ』方式でなく
 中身同じで見た目とかお話だけ変えようというそれ。
 この仕組みでもうひとつ何か作ってみよう。
 『ゼルダの伝説』の「時のオカリナ」に対する「ムジュラの仮面」。
 なぜだか知らないですが『3』あたりに比べて『4』は難しめで
 その度合上昇もそんな感じでございます。

・仲間は戦闘不能になっても許されるのに
 主人公がうっかりミス、ムドとかハマとかラッシュ中のカウンターでHPゼロ、
 即ゲームオーバー。
 これだ。これがメガテンではないけどRPGというものなんだよこれが良いのだ。
 ふるくからあるものは、きっとなんでもよいにちがいない。


・お話や舞台背景に、ほとんど続くところこそないけれども
 まだ遊んでいないひとには、『4』の前に『3』をお勧めしたい。
 『ペルソナ3』はその仕組みを新しく使りあげて、しかも完遂している。
 文句なく素晴らしい。
 『3』を踏まえての『4』。同じ仕組みを使って別のお話を表現した本作は
 安定した楽しさと、その差異から、であれば次はどうなるかという面をみて
 面白さがあるわけであるわけです。




・『ペルソナ3』の評価は自分の中でとても高いのですが
 どこが面白かったかといって
 日常生活を続ける一般人ながら冒険して世界を救う伝説の勇者でもある、
 ということの表現の仕方が、新しくかつ良く出来ていたところです。
 『ときメモ』『トゥルーラブストーリー』のような学生生活シミュレーションに
 戦争シミュレーションをくっつけたのが『ガンパレードマーチ』。
 メガテン風RPGをくっつけたのが『ペルソナ3』。
 ただつなげただけではなく、そうあるべく接続されている必要がしっかりある。

 以前の『ペルソナ3』感想 http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20070603

・「メガテン風RPG」の部分、普通RPGと言って出る、
 戦闘したり町でアイテム買ったりダンジョンの奥でボス敵倒したり、
 というようなあたりは
 『ペルソナ2』時点で相応出来上がっていた上に
 『真女神3』からの要素、属性へ新しい意味を持たせて
 かつ複雑ではないという画期的発明「プレスターンバトル」も見事混ぜ合わせ、
 同時期に出てその後音沙汰ない『ライドウ』と比べるもなく
 言うなれば雰囲気で売っていたメガテン中で
 もっとも無駄ない作りなのが『ペルソナ3』と評価できます。長い文だ。

・しかしそれは『真』『デビルサマナー』『ペルソナ』で培った延長の正常進化。
 『ペルソナ3』が『真女神3』以上に新しかったのは
 世界の崩壊を救うのではなく、戦場で戦争するのでもなく
 平和な昼間の日常を送り続けるだけ、という
 戦闘してレベル上げて敵を倒すRPGでありながら
 とても身近な対象を目的として置いているというところを
 無理なく表現しているところが素晴らしい。
 『ガンパレードマーチ』や『魔人学園』系でもっとも良く出来ている。


・狭い範囲で言うRPGという形式が、表現する主題は
 そこに構築された世界で役割を演じること、そこで暮らすことではなくて
 お話を駆動させる原理、それ常に心身の成長、とくくれます。
 そのための動機と目的、するべきことが戦いです。
 戦う相手、敵が出てくるわけで、倒す理由が必要なのです。
 このわけがそのゲームでするべきこと、なのだからなければならない。

・敵ではなくて獲物、目的食べるため、これは狩り。というような
 つまり、そこに冒険がありダンジョンがあるから潜って斬ってをしただけで
 世界が救われたのは単なるその結果であり我関知せず、というのも
 大上段のご都合主義でないことに価値を置くならば面白いけれど
 製作者という神が示した正義に従う、選ばれしものの恍惚と不安という
 ふたつながらの役割を演じ操るのもまた、
 他で味わい難いこのRPGというジャンルならではたる特長でもあります。

・一方で、ゲームを遊んでいるこちら側は
 冒険はゲームの中だけにしたい、一般人であるわけです。
 斬った張ったはデジタル世界の中でだけ。できないのでなく、したくない。
 しかしゲームの中ならできるので、したい。
 そしてまた、伝説の勇者でなくとも
 あらゆることで、明示される選択肢を何度でも選び直せる機会が与えられる
 選ばれし存在として日々を送れるのならば、ぜひそうありたいゲーム脳。
 そこの接続。
 ゲームの中でするべきこと、正しい正義に気持ち良く酔えるかどうか。

・筋書き通りに次々起こる事件を解決していくことが目的ではない。
 そこに迷宮という謎があり、あるから潜ることがしたいこと、楽しみである。
 日常という生活があり、それは楽しいので、したいのでなくすることである。
 目的はないけれど事件がおきれば対応はする。
 駆り立てるものに流されて良いのかと悩む、ことを演じる楽しみを
 そうあろうとして選択するのでなく
 より良くあろうとすべくある日常の結果として、選択している。

・ざらっと言いますと
 冒険を達成するためのゲームがあるのではなくて
 テストで良い点をとったり、容姿能力値を上げると異性の好感度が上がったりが
 現実より上手くいく楽しい世界。
 それが守るべきものであるという正義。
 戦場とか学校ではなく、ゲームの中という異常条件下でないゆえの説得力。
 それでいて、信じられる正義を成すに選ばれた存在である、
 という役割を演じるゲームである。
 敵だから倒すのでなく、敵がいるから倒すのではなく
 自分が正義で敵が悪だから倒すのである。

・あと残りどれくらいか、どうなるかがレベルやページ数や放送時間で
 推測できてしまうがゆえに成り立つ理屈であります。
 世界はなんて良く出来ているのだ。
 結果だけみると、想像できないものはみな想像できないほどすごくみえる。




・それで本作の内容でありますが
 『3』で「ペルソナ」という設定の根源的なところ、
 この設定下で主人公たちがあるべきありかたというのは
 先に述べたように達成し終えてしまっているので
 すこしひねって、田舎町を襲う謎の連続殺人事件を追う、という
 ミステリ風味仕立てで、お話を牽引する形となっております。

・なるほど上手くしたものだ。
 この仕組みからして、各人それぞれとそれによってなる、
 街行く全ての人々が送る日常生活との接点から事件を切り離すと
 絵空事の空想世界に価値が落ちるゆえに
 話の仕掛けに苦労しそうであるのが、構造からしてありそうなのですが
 そこはこういう法則で世界は成っているとの『3』を踏まえてからこそ
 やや規模を狭めて、きちんとまとめております。
 クリアに要する時間も7掛けくらい。
 事件の規模がそうであり、そのためにある舞台と役者の数がそれくらい。


・日常離れて迷宮に潜ったら、『3』と違い、いつまでも中にいられるので
 遊び方次第では、街をふらふらしているころと迷宮うろうろしている2つが
 やや切り離されすぎに感じられますが
 これも狙いではあるのでしょう。

・切り替えを少なくすることで、お話の進行速度をどれだけ操作できるかの感触が
 遊ぶ側と用意する側にとってどの程度変化するか。
 短期的達成課題評価を、規定の日時に開催するのではなく
 規定日までに消化するよう、変更したのもその一環。
 夏休みの宿題は短期集中と毎日実行とで、どちらがより効果的か。
 勝手にそういうように読み取りました自己暗示自己暗示。


・解決すべきお題が、連続殺人事件の犯人を追え、なので
 宿題をかたづけても夏が終わる日まで秋は来ない、という日常に
 犯人もまた支配されているとは世界が強すぎではないか、に齟齬を感じます。
 そこが明確に浮かぶ次への課題と言えるでしょう。
 つまり日常生活を誰がどのように保っているかの理屈付け整合性。

・『3』の規定期日までに要求性能達成の方が納まり良くてやはり理想だけれど
 結局、新しい移動手段を手に入れても行けるところにしか行けない、
 知ることができることしか知ることができないのは変えられない。
 物理的な秩序をどうやってゲーム内現実の中に表現できるか。

・もっともこれはどうでも良いといえばどうでも良く
 普通RPGでは問題にならないのですが
 聞いた事ある神話の神様とかが出てくるメガテン風だからこそ
 遊ぶ方が見る日常が舞台だからこそ、粗に見えてしまうところであります。


・ゲーム部分はますます洗練されていて大きな問題はないです。
 これくらい調子良く『アンリミテッドサガ』を遊びたいものだ。
 リールのすべりはなくすべきた。

・「コミュ」による経験値ボーナス前提のペルソナ合体という仕組みは
 敵の取りえる手段が広く強力になっていくのに対し
 自分がそれにわずか先んじて同じことが出来るようになっている、ということへ
 気持ち良く理屈付けがされていて本当に見事です。

・アナライズも『3』より良い。ギボアイズが付いたりするのも嬉しい。
 合体時に継承スキルをインストールプログラムばりに選びたくもなりますが
 そこは仲間スキルでうっかりメディラハンのためメディラマ消した、
 とかいう時の保険。お金と時間の兼ね合い。
 性能の見せ場、個々スキルに活躍どころが用意されている調整具合には
 アトラスもいつのまこんなにゲームが上手くなったのかと惚れ惚れ。
 でも「バステ耐性アップ」というスキル名には根掘り葉掘り問い詰めたい。
 バステときたか。かなりツボに入りましたですことよ。

・21年前と比較しようにも忘却の彼方ですが
 本当にどんどん良くなっていると思います。
 一撃死でゲームオーバーも味。敵が螺旋上に接近してくるのも味。
 図鑑を埋めているだけで楽しい。スキル使用を工夫して戦闘で勝つのが楽しい。
 遊んでいてすごく楽しい。
 細かい工夫が丁寧です。良いゲームです。



・RPGというのは『ドラクエ』調に終わるのでもなく
 『オブリビオン』だけが進むべき方向でもなく
 携帯機で、オンラインで遊ぶものが全てではない。
 見た目だけ変えれば良いというだけで、片付けられてしまうほど狭くない。
 ゲームの中に、現実とは違うものをつくり、そこに降り立った気になって
 生活が出来る。冒険が出来る。想像が及ぶ限り想像できる。
 同じものを共に遊んで楽しめる。それがゲームでできること。
 想像できないほどとそれは想像できる。

・次はさすがにPS2でなく、『ライドウ』路線も含めてどうなるかと楽しみですが
 近くでも『ペルソナ3』『世界樹』と的確に地を広げつつ
 21年々品質向上体勢を確立しつつあるアトラス製RPGは、さて次どうなるか。
 とてもすごく楽しみです。