『風来のシレン3』

kodamatsukimi2008-06-22


 公式サイト http://chun.sega.jp/shiren3/ ASIN:B000VSW7MK
 攻略サイトhttp://dungeon.jp/shiren3/

・「不思議のダンジョン」シリーズが大安定に面白いことは
 今更ことさら書くまでもないですが、しかし苦手です。
 上手くいかない。集中が続かない。うっかりミスで全て灰燼あたま真っ白。
 けれどそこが面白いのです。
 ミスするのが面白いのではなく、それを踏まえてすぐ次へと活かせるところが。

・対戦ではない1人用ゲームなのに、思い通りいかない。いらつく。
 けれど、アクションゲームではないのに、遊んでいると上達する。
 短時間で遊べる。繰り返すほど上手にこなせる。
 STGなどのアクションゲームのようにテンポ良く遊べて
 けれど操作の上手さが関係せず、じっくり腰を据えても楽しめる。
 そこがこのゲームの良いところ、面白いところ。他にない魅力です。 



・「不思議のダンジョン」は『ローグ』をもとにしてつくられた、というのは
 『ドラクエ』が『ウィザードリィ』『ウルティマ』をもとにした、
 と同じ様に有名なお話なのですが
 これはつまり、RPGだけれど『ドラクエ』とは違うゲームなのだよ、だけでなく
 同じくらい昔から並立してあったゲームで
 『ドラクエ』のおまけ的なものではないんだよ、
 ということを強調したい伝説です。


・『メタルギア』シリーズは基本アクションゲームなのですが
 あれをターン制のSLGにしても割りと成り立つのでは、と思って作られたけれど
 結果どうにも古いつくりになってしまったのがPSPの『メタルギアアシッド』。
 ダンジョンに敵が配置されていて、それが見えて
 では先に進むためと、それを倒したり隠れてやりすごしてみたり。
 というのをゲームとして表現するのに
 リアルタイム、同時間で動き回って駆引きをするのがアクションゲームで
 ターン制、一歩進むごと状況を確かめて、つまりそうする必要があるほど
 情報量を多くできて、より奥深く表現したものがシミュレーションゲーム。

・『メタルギア』がなぜ基本アクションで、『アシッド』がいまひとつなのか。
 遊ぶひとはスネークではないので、リアルタイムに敵を倒したりできないのが
 ゲームだとスネークになれる。それができる。
 シミュレーションだと、現実問題そこに潜入しているわけではないので
 画面で見えている内、どの情報が重要かが教えてもらわなければわからない。
 だれが教えているのか。
 そこにいるはずの自分自身よりそこに詳しい誰かである。
 そうするとリアルに敵を倒せるスネークになる必要がないのだ。
 上から俯瞰している誰かの命令に忠実に従うだけで良いのだからして。


・「不思議のダンジョン」がアクションゲームだったらどうなるか。
 『クエストオブディー』のようなゲームになるでしょう。
 闇から突然襲い来る敵。物陰からトラップの矢が飛んでくる。
 強力なボス敵の攻撃を避けつつ、いかに効果的な打撃を打ち込むか。
 限られた時間でどれだけ効率良くダンジョンを探索できるか。
 『メタルギア』の基本部分も、良く良くすればこういうゲームであるわけです。

・『ローグ』及び「不思議のダンジョン」は
 自身と周囲を把握できる立場にあって、指示するその内容が
 先の展開を見通し、状況に即して、いかに的確かを操作する
 シミュレーションゲームなのですが
 その優れているところは、上から見てはいるけれど
 全ての情報がそこから見えているわけではなく
 誰もが知らないことは知らない、という制限も
 的確に設けれらているところです。

・ダンジョン内で草を拾う。その効果は食べてみるまでわからない。
 杖を振る。あとどれくらいで効果が切れるか、振ってみなければわからない。
 およそどのような種類の効果を持つアイテムがその辺りにあるかは知っていても
 そのどれがそれなのか、試してみなければわからない。

・なぜならそこにはいないから。見ればわかるのに見えないから。
 だから知ることができない、というようなことでなくとも
 ゲームとしてここが良く出来ているところなのです。


・シミュレーションゲームである「不思議のダンジョン」では
 こちらが動かない限り、敵も微動だにせず時間停止。
 目前の敵を排除し、先に進むためにはどうすればもっとも良いのかと
 その場で立ち止まってみていることができる。

・どうすれば正解なのか。
 それは前提条件となる情報が完全ではないので
 唯一の答えがあり得ないし、後から思い返してもわからない。
 だから対人対戦ではなく、コンピュータが全ての情報を支配する1人用SLGでも
 成功が保障されていないのに、その過程が面白い。

・運なのです。偶然に左右されるのです。目をつぶって飛び込むこともできる。
 けれどその影響を最大限に抑える選択肢も用意することができ
 選ぶことができる。
 極端に言えば常にこの二択。
 そしてどちらが正解かは誰にもわからないようになっている。
 そこがゲームとして絶妙。

・情報の中から法則を見つけ、勝利目標を達成することが目的であるSLGは
 法則の検証が済めばゲームにならないが、現実はそうではない。
 目標が容易に確定しない代わり、情報は不完全で、ゆえに過程が未確定で
 だから楽しめる。
 1人用シミュレーションゲームとして、計算機相手なのに深く楽しめる。
 それがこのシリーズならではの妙です。
 



・この『シレン3』でこれまでに比べて変わったところは
 いわゆるシナリオモードが主体の構成でだるくて長い、もとい充実したところと
 仲間を操作できるようになったところ、の2点。
 特に後者重要。

・眺めのシナリオモードはレベル継続なのが特徴。
 以前『トルネコ3』を遊んだ際は
 レベルがダンジョンを出ても下がらず継続、これは無駄な引き伸ばしであって
 だれるので却下。と思っていたわけですが
 他のRPGとは違うシリーズの特徴をわかってもらうため
 常に新しく遊んでくれるひと向けに導入を広く取るのは重要であるのもたしか。
 今、『シレン1』をいきなり遊ばされたら客はつかないだろうし
 時代の趨勢、畢竟仕方ないかな、わかるよわかる。

・というように宗旨転換したのですが
 それでも今回は、過去のどれにもまして長い。
 チュートリアルとしても新要素の説明が充実しているとは思えず疑問。
 経験値量によるレベル勾配などの、継続なりにの調整はされているので
 要領がわかっているひとなら詰ることなく簡単に終わらせられ
 モードのひとつとして楽しめないことはないですが
 『シレン2』くらいのほうがやはり適当なのでは、と思わないでもないです。

・ストーリーモードで一度クリアしたダンジョンは
 もう一度潜ってみようという魅力もなく無駄に感じられ
 いつものことですが、キャラクターもいろいろでてくるわりに活かせていない。
 横文字単語を喋るのはともかく、シリアスでない部分のノリはいかがなものか、
 『ローグギャラクシー』とかあそこまではいかないもののいかがなものか。
 「いかがなものか」を連発するのはいかがなものか。いかがなものか。


・そういうケイブSTGにおけるいかがなものかな見た目外見はどうでも良くて
 肝心の中身について変更点ですが
 仲間を操作できるというのは、なぜいままでなかったのかという的転換。
 空腹度と装備、アイテム欄共有で、ターン消費なしに操作切り替え可能なので
 これまでモンスターのパワーエサでしかなかった仲間が、実質戦力に超絶強化。
 モンスターハウスなどの要所やボス戦闘ではこれが非常に大きく
 いままでは、そこまでの積み上げが殆ど全てであったのが
 回復しあったり囮にしたりと立ち位置軸操作も意味があって
 格段に戦術的に立ち回れます。

・装備オプション扱いからパーティバトルになったわけで
 操作の手間が増えているマイナスを上回る利点。
 これだけは出色。大変素晴らしい。
 この新要素だけを持って過去最高の出来といえましょう。

・ただそれを活かすダンジョンモードがどれだけあるか、
 これまでの主人公一人旅から複数人パーティになったことにゲームとして
 対応しきれているか、活かせているかというと疑問。
 アイテムやレベルなどの調整は仲間がいることを前提に成されているものの
 従来の1人用と変わらなさすぎでは。
 よりそれを前面に押出して意識させるステージもあって良かったと思います。



・「不思議のダンジョン」はもう出来上がっているゲームでありまして
 特に、DCとWinの『外伝アスカ』はそのモードの多様性、
 モンスター、ダンジョン、アイテム周りの細かい調整からして
 完璧に極まってもう先はないかという感じであったのですが
 以外に盲点。仲間を操作できるという基本的なところでまだ拡張要素はある、
 ということを示したのが、この『シレン3』であります。

・ただそれが活かせていない。
 従来の1人旅モードだけでも『アスカ』を踏まえて多様に用意できるはずだし
 さらに仲間前提モードも同じ様に様々な遊び方を拡張できるはずで
 本作はそこまで提示されているとは思えない。

・ダンジョン突破速度を競うネット対戦も、もうひと捻り、
 あともうひとつ何かアイデアが加われば面白くなりそう。
 もうひとつ。やや惜しい。それが全体の印象で
 完成度は『アスカ』に及ばなかったと言えましょう。
 しかし新機軸は打ち出せた。

・ゲームにこれで充分という完成はあっても
 もう新しくなる必要はないという完璧は、ゲームにもない。
 さらに次が楽しみです。