『スーパーマリオギャラクシー』

kodamatsukimi2008-03-10


 公式 http://www.nintendo.co.jp/wii/rmgj/ ASIN:B000IUCWFI

・ようやくWiiを買いました。ついにWiiを買いました。
 Wiiは、360の実績システムとはまた違う、
 いつどのゲームを何時間遊んだかを、見て振り返られる仕組みがついております。
 これはひとに見せられない。
 実績システムなら紫コインと同じく、無駄な作業は嫌いなんだぜとごまかせますが
 遊んだ時間が1時間なのに、このゲーム傑作あれ駄作。とか書いていたのがばれる。
 危険です。さすが任天堂だといわざるをえない。
 (2008/12/31追記 これは『マリオギャラクシー』のみの仕様だった模様)

・あとはコントローラの電池。
 360はUSB有線ケーブルが別売りであるのですけれど、Wiiはなさげである。
 『マリオギャラクシー』を20時間ほど遊んだだけなのに
 もう最初に付いていた分の電池がなくなりました。はや。エネループとか本当に必須。
 『Wiiスポーツ』のように振り回し系の使い方をするのに合わないのはわかりますが
 選択肢として有線ケーブルも出していただきたいものであります。



・本体、値段が下がったわけでもないのに買ったきっかけであるというのが本作なのですが
 『マリオギャラクシー』にばかりなぜ、そこまで期待なのか、といいますと
 20年くらい前に遊んだファミコンの『スーパーマリオブラザーズ』が
 いまだにもって忘れがたいからでございます。
 テレビゲームといえば、自分にとっては、ずっとこのゲームのようなものでした。
 今でも、であるのです。


・『マリオ』は、当時思い出してみて、それほど他に比べ劇的にずば抜けて凄かった、
 というわけではなかったと記憶しております。
 テレビ画面のなかみを、自由にそうさできる、という形の
 ファミコンが始めて遊んだビデオゲームだったものにとっての驚きは
 他のゲームも同等に持っていました。
 みためが他と差別化されるほどのものであったわけでもない。

・何が、当時ゲーム情報誌の存在すらしらなかった自分の中に
 『マリオ』というブランドを作り上げたのか。
 何が、ハドソンなどが出していた適当なゲームを100万人が買っていたようななかから
 飛びぬけて抜け出してくるもとであったのか。

・それは特別なものではないのです。新機軸とか見えない工夫とかではない。
 単純に全体どこをとっても、アクションゲームとして良くできている。
 『マリオギャラクシー』を遊んでみてもそう思います。
 他のアクションゲームに比べて、とても斬新である、というところはない。
 これは過去のゲーム全てを旧態へと貶め、以後の全てへ革新を促す作りである、
 そういう幻想はなかった。
 ありきたりに、当たり前に、良くできているのが、
 『マリオ』というアクションゲームのブランド、名前に
 持たせていた力なのでありました。
 そう思い出しました。そして今もいまだにそうなのです。




・FCの『スーパーマリオ』、SFCの『マリオワールド』、64の『マリオ64』、
 そしてGCの『サンシャイン』。
 過去の流れを見てまいりましょう。

・『マリオ』というアクションゲームは、敵を銃で撃つとかではなく
 コースをたどってゴールにたどり着く、というのが目標のアスレチックアクション。
 それに、障害物をより多くこなすことで得られるスコア、得点という評価と
 より早くそれらを抜けることで競うタイム、小さい方が良い数字という評価、
 その2つを組み合わせたもの。
 敵という存在は、スコアを稼ぐ手段であり行く手をさえぎる障害物であって
 排除する必要がある場合は存在しても、倒すのが目的ではない。

・『スーパーマリオブラザーズ』は、『ドンキーコング』『マリオブラザーズ』、
 それらと比較すると驚くほど
 これらの現実的目標を現実的に、テレビゲームという枠内で
 実現させていたゲームでした。
 この実現度、意図した目的に対する完成度という面からすれば
 間違いなくゲーム史上最高の傑作といえるものでありましょう。


・最初の『マリオ』の変化する方向は、さらに実現すべき要素を
 限られた手段にいかに盛り込むかという点にあります。
 FCでボタン2つだった手段が、SFCで6つに増え、操作が多彩になりました。

・『スーパーマリオ1』では、操作ボタン2つはそれぞれダッシュとジャンプ専用。
 攻撃手段のファイアーボールはダッシュボタンと兼用。
 それが『3』になって、蹴り飛ばすだけだった攻撃用甲羅アイテムを
 より活用するため持ち運びできるようにした際に
 それを持つ、離すためのボタンが必要とされ、ボタン2つの同時押し、
 という操作が加わりました。

・SFCの『マリオワールド』では、同時押しを
 複数のボタンに割り振れるようになったわけです。操作しやすくなった。
 しかし出来ることが単純になったわけではない。複雑になる一方だった。
 もちろんそうでなければならなかった。それが付け加えられる変化だった。
 乗り物に乗ることで違う操作手段も加えることで、それを整理していたわけです。


・『64』では、世間のながれに合わせて『マリオ』も3Dアクションになりました。
 アスレチックのコースが立体になることでおこった変化は
 障害物をさけるのが容易になった点と、スコアを稼ぐ手段がわかりづらくなった点です。

・例えば『マリオ1』で最大の難敵ハンマーブロスも、上か下かを抜けるのでなく
 わきを通り抜けてあっさりやりすごしてしまうことができる。
 3Dアクションでは、足元さえしっかりしていれば、避けられる速度の遠距離攻撃は
 2Dのそれまでに比べ、格段にさけやすいのです。
 自分と相手を結ぶ線上から、一歩わきにどけば良いだけなのだから。
 面でなく空間に変わったことで確かに広くなり
 当たる範囲自体が必然に狭くなっていたのです。

・自分が手前、目標が奥にあるので奥へ進む。
 そうするとこれまでと比べて困るのが、距離感が取りづらいことです。
 片目つぶって走っているのと同じ状態なのですから当然。
 また縦方向すなわち高さ方向の表現も、見えている視野はそれまでより現実風なぶん
 それを飛び越えられる程度が非現実的、言い換えると
 アクションゲームにしてみた時に操作しづらくなりました。
 これまた見えないのだから当然です。

・神の視点で障害物の全景余す所なく見えていた視点を提供しづらくなったことで
 アスレチックコースの紹介、どういう仕掛けの遊びが用意されているか
 説明が難くなりました。
 全能感の低下。自分の能力が下がった上に、自分の視線も扱いなれておらず
 容易に見たいところが見れない。
 また目の前にあるのに触れない、触れるかどうかもわからない、
 というように変わってしまった。


・『マリオ64』で、その環境にこれまでになく大きな変化があったわけですが
 周りの景色が大きく変わる中、3Dアクションという中身はどう変えるべきなのか。
 そこで採られた方向は
 これまでと同じ遊び応えのアスレチックアクションであること、
 であったのだろうと思います。

・当時、なんでもかんでもゲームがみな3Dに変わる中、
 『ゼルダ』の『時のオカリナ』と同じく
 『マリオ』も上に挙げたような点で、相当に変化したように思っていました。
 操作は十字キーから3Dスティックに変わった。
 これまでまったく思慮の埒外にあったカメラ位置を意識するようになった。
 Bダッシュジャンプはなくなった。

・『マリオ64』では実際そうだったのでしょう。
 GCの『マリオサンシャイン』もそうだった。
 昔遊んだ『スーパーマリオ』とは違うものに見えたのです。
 けれど、『ギャラクシー』を今、遊んで振り返ってみると
 『マリオ』はアスレチックアクションであり
 敵をさけてアイテムを回収して早く華麗にゴールするのが目標であるという目的、
 ゲームとして用意されている目指すところは、何も変わっていないのです。



・『ギャラクシー』になりWiiに変わり、何が変わったかというと
 これまでと同じく操作手段。コントローラ。
 他は同じで、『64』時のような変化はありません。
 基本的に前作『サンシャイン』の諸アクションを置き換えたもの。

・アスレチックアクション、障害物乗り越え競争であるこのゲームですが
 ダッシュとジャンプが最初、ボタンに選ばれて割り当てられていたように
 この2つの動作を操作することが基本。
 しかし3Dになり立体になり、それを見た目だけでなくコースに活かすためには
 主として奥へ進むように変わらざるを得なくなったことで
 単純に先の見通しが利きづらく、ダッシュと奥と縦へのジャンプがしづらくなった。 
 そこで『64』では、3Dスティックを倒しこむことで行うダッシュはそのまま
 ジャンプだけを主動作として、見づらい部分はコース設計とカメラ位置で補う、
 という手段の見せ方をとった。

・続く『サンシャイン』はSFC『ワールド』の時のように動作の整理。
 『64』で、ジャンプからの踏みつけ以外の攻撃手段として加えられたパンチを
 より使いやすい回転アタックに置き換えたのが最大の変更点といえましょう。
 パンチやキックでなく回転アタック。
 『ゴッドオブウォー』のもっとも目を引くのが
 あの3Dアクションにとって都合の良い武器であるのと同じ理由で
 この回転アタックへの変更も妥当当然の処置。
 『サルゲッチュ』を遊んでみるとよくわかります。  


・『ギャラクシー』では『サンシャイン』ほどの変化もなく
 ダッシュ、ジャンプ、回転アタックの3種の動作をそのままに基本として
 リモコンコントローラに置き換えています。
 ダッシュ、ジャンプはいままで通り、
 回転アタックは画面上でリモコンポインタを振ることで行えます。
 方向スティックを倒しつつ、ジャンプボタンを押しつつ、回転アタックのため
 さらにもうひとつのスティックを動かさなければならなかったGCより
 明らかに操作しやすい。

・リモコンポインタは、画面上に自分がいる位置以外も指し示せるのですが
 それは特定の移動アクション以外で役に立つことはない。
 ここは次回変更の余地あるところかもわかりませんが
 当面、画面上に散らばるスコアアイテムをポイントすることで回収できる、
 という仕様になっております。
 3Dになって、見えているのにそこへ行けるのかどうかが良くわからなくなった分、
 下がった全能感を補う工夫、目に見える限り確実触れるようにする。
 1アイデアとして良しであります。

・カメラ補正と、それを感じさせないステージ構成はさらに洗練。
 各ステージごとに目先を上手く変えて
 自由に動けないがゆえの物足りなさを感じつつも飽きさせない。
 3Dとして魅力ある見せ方として、タイトル通り重力が今作での表現主題。
 下方向でなく、上下左右、画面奥、そして画面に浮かぶ球体中心や物体表面と
 重力の働く方向をさまざまに置くことで
 アクションにこそ新しい変化はないですが
 空中ジャンプもダッシュもワイヤー移動もなくとも
 空間を表現する新しい絵の手段として、今後大いに利用され得るものと思います。
 


・欠点は相変わらず同じ。敵の攻撃をさけるのが容易である。
 ゆえに目先を変えて、言い方悪いですが、ごまかしている。
 ダッシュとジャンプの慣性を操作して、敵の攻撃を見切るアクションは
 そういうものは、2DSTGとか2Dアクションでかつて味わい今わずかに生き残るそれは
 『マリオ』では、今もって難しい。

・ボス敵戦闘のようなものも用意されております。
 他の3Dアクションのように、敵の動作パターンを覚えれば確実にノーダメージで勝てる。
 タイムアタックステージもあります。
 それは汎用ではなく、つまりボス戦闘ステージと同じく
 どのコースでも成り立たせることはできず
 その環境が整うほど、フルオートアシストの簡易操作レースゲームと変わらなくなる。

・同じコースでスコアタックとタイムアタックを並立させられない。
 障害物を的確に処理しつつ、より効率良くスコアを回収する行動を許容できない。
 どちらかに専用化しなければ、カメラが的確に追いつけず
 思った通りの操作を、操作の巧遅以外の要因が阻害してしまい
 結局どちらの良さも潰してしまうから。



・片目つぶっての3Dアスレチックアクションの唯一正解がこれで良いのかは
 今もわかりませんが
 現時点では、カメラ位置を的確に活かせるコース設計、
 これが答えであるのでしょう。

・2DSTG最高『ケツイ』移植万歳トレジャーアクション復権はまだですかとか言う連中を
 これで満足させることは難しい。ものたりない。中途半端。
 1ステージは10分弱でテンポ良く遊べる。コースごとに工夫は十分。
 操作の応答性はいうまでもなく文句付けようのない出来。
 3Dアスレチックアクションとして最高の出来である。
 昔の『マリオ』と変わらない、変わっても出来得る限りに大事なところは外していない。
 変わっていない。
 けれど今は昔ではないのだし、変わっていなくとも同じではないのだ。


・『マリオ』というアクションゲームが提供するのは
 その時点にある当然を当たり前に実現した最高品質であって、
 過去を内包してもいないし未来を感じさせるそれでもない。
 というのが現状思うところであります。
 ただ、昔はそう思っていなかったし、今はそう思っているけれど
 しかしこれかもそうであるとは限らない。

・昔が良かったのなら昔のゲームと、その再生産だけをありがたがっていれば良い。
 技術は進歩しゲーム機は変わり、テレビだって買い替えが勧められるご時世である。
 ゲームは常に新しくなり得るはずで、それに期待し続けるのは当然である。

・『マリオギャラクシー』は新しくはなかったけれど
 今は昔と同じことをしようとしても出来ない、今は昔ではないことを
 わからせてくれるゲームでありました。