再帰は再帰なんかじゃない!末尾再帰こそが真の再帰なんだ!
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再帰は再帰なんかじゃない!末尾再帰こそが真の再帰なんだ! : melborne.github.com
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「計算機プログラムの構造と解釈」で
末尾再帰というものを知ったので勉強しました
自分の理解を書いてみます
再帰
再帰呼び出しとはある手続きの中で
再びその手続き自身を呼び出すことと定義される*1
でもこの定義は正確じゃない
なぜなら再帰呼び出しは自分自身を呼んでいないからだ
階乗を考えてみよう
階乗は数学的にこう定義できる
但し、自然数n=1のときは1
ふつうRubyで階乗メソッドはこう書く
def fact(n) if n == 1 1 else n * fact(n-1) end end fact 5 #> 120
factメソッドの中でfactメソッドが呼ばれているので
自分自身が呼ばれているように見える
でもそうじゃない
最初の引数5を受け取ったfactメソッド(彼をfact5と呼ぼう)は
引数4と共に自分が呼んだfactメソッド(fact4)の結果を
待たなきゃならない
なぜならその結果と5をあとで掛けなきゃならないからだ
fact4もfact3もfact2も同じだ
自分が呼んだメソッドの結果を待たなきゃならない
人間が待ちながらその要求に答える
なんて芸当ができないのと同様に
Rubyにだってそんなことはできない
こういうときは誰か他の人に頼むしかない
だからfact4メソッドはfact5とは別人なんだ
fact3もfact2もfact1も全部別人なんだ
つまり上のコードはメソッド呼び出しに関して
次のコードとほぼ等価だ
def fact5 5 * fact4 end def fact4 4 * fact3 end def fact3 3 * fact2 end def fact2 2 * fact1 end def fact1 1 end fact5 #> 120
このコードではfact1が結果を返すまで
他のメソッドはRuby空間に止まってることははっきりしてる
これは再帰でも同じだ
各factメソッドは内容は同じだけれども
別のメソッドとしてRuby空間に置かれる
これはちょうど同じ文字列が
Rubyでは別のオブジェクトとして扱われるのと似ている
5.times do s = 'factorial' puts "#{s}(id:#{s.__id__})" end # >> factorial(id:72570) # >> factorial(id:72580) # >> factorial(id:72560) # >> factorial(id:72530) # >> factorial(id:72500)
つまりふつうの再帰は自分ではなく
自分とそっくりな人
そう
分身を呼んでいるんだ
再帰の問題点
同じことをするのに反復手続きがあるのに
なぜ再帰を使う必要があるんだろう
反復手続きによる階乗メソッドを見てみよう
def fact(n) p = 1 while n > 1 p *= n n -= 1 end p end p fact 5
これを見れば理由はわかる
そう反復手続きはエレガントじゃない
再帰では階乗の数学的表現をそのまま自然に記述できる
反復手続きではそうはいかない
でも再帰はその度に別の手続きを呼び出すのと等価だから
深い再帰では手続きでRuby空間が溢れるという問題が生じる
fact 10000 #> `fact': stack level too deep (SystemStackError)
末尾再帰で階乗
そこで末尾再帰の出番だ
ふつうの再帰による階乗を再掲しよう
def fact(n) if n == 1 1 else n * fact(n-1) end end fact 5 #> 120
再帰では手続きが次の手続きの結果を必要としてる
だからRuby空間で結果を待たなきゃならない
上のコードではelse節のnが掛けられるのを待ってる
それが問題になる
ならば待たないようにすればいい
つまりnを一緒に次のfactに投げちゃえばいい
それで知らぬ顔をしてRuby空間からおさらばする
そうすると困るのは最後のfact(fact1)だけだから
彼に後処理を全部やってもらえばいい
この考えに基づいたコードはこうなる
def fact(n, mem=[]) if n == 1 mem.inject(:*) #fact1が配列の要素を全部掛けて返す else mem << n fact(n-1, mem) #nを配列に入れて次のfactに順次渡す end end
これによって処理の末尾が再帰だけになるので
値を渡した手続きはもう結果を待たなくていい
最終的な結果は最後の手続きが返してくれる
つまり手続きを呼び出した手続きは
もう必要なくなるので呼び出した手続きとして使える
そう自分自身を使える!
fact1にすべてをさせるのが酷というなら
各人が自分のところの計算をやって
その結果を投げるようにすればいい
def fact(n, mem=n) if n == 1 mem else fact(n-1, mem*(n-1)) end end fact 5 #> 120
実は残念ながらSchemeとは違って
現在のRubyの実装では
この末尾再帰のメリットは受けられないようだ
fact 10000 #> `fact': stack level too deep (SystemStackError)
末尾再帰によるフィボナッチ
Rubyで末尾再帰を使っても
ふつうの再帰と同様に分身が呼ばれるようだ
フィボナッチ数を考えよう
n番目のフィボナッチ数は数学的に次のように定義できる
: n = 0のとき
: n = 1のとき
: それ以外のとき
これをRubyで書くとこうなる
def fib(n) if n == 0 0 elsif n == 1 1 else fib(n-1) + fib(n-2) end end fib 10 #> 55
これは数学的記述に従ったエレガントなコードだけれども
末尾再帰になっていない上に末尾の+メソッドは
2つの再帰メソッドfibの結果を待たなきゃならない
呼び出された各メソッドfibはそれぞれにまた2つのfibを呼び
この数はフィボナッチ数的に増える
すると高々20番目のフィボナッチ数を求めるのに
fibメソッドは21891回も呼ばれることになる
% _ruby -rprofile fib.rb
% cumulative self self total time seconds seconds calls ms/call ms/call name
69.45 2.16 2.16 21891 0.10 1.93 Object#fib
15.76 2.65 0.49 39601 0.01 0.01 Fixnum#==
10.61 2.98 0.33 21890 0.02 0.02 Fixnum#-
4.18 3.11 0.13 10945 0.01 0.01 Fixnum#+
0.00 3.11 0.00 1 0.00 0.00 Module#method_added
0.00 3.11 0.00 2 0.00 0.00 IO#set_encoding
0.00 3.11 0.00 1 0.00 3110.00 #toplevel
fibメソッドを末尾再帰で書けたなら
fibメソッドの呼び出し回数は21回で済む
だからRubyでも検討する価値がある
今8番目のフィボナッチ数を求める演算をfib8とすると
これは以下のように展開できる
fib8 = 1*fib8 + 0*fib7
= 1*fib7 + 1*fib6 = (fib6 + fib5) + fib6
= 2*fib6 + 1*fib5
= 3*fib5 + 2*fib4
= 5*fib4 + 3*fib3
= 8*fib3 + 5*fib2
=13*fib2 + 8*fib1
= 21*fib1 + 13*fib0 = 21
各項の係数をそれぞれa, bとすると
各ステップでbには前のステップのaの値が
aにはa+bの値が与えられていることがわかる
また最後のステップをみると
fib0が0なので第2項の演算結果は
結果的に答えに反映されないことがわかる
だから1つのfibメソッドにa、bを渡していき
fib1に達したところでaの値を返すようにすればいい
def fib(n, a=1, b=0) if n == 0 0 elsif n == 1 a else fib(n-1, a+b, a) end end fib 8 #> 21
これでフィボナッチを末尾再帰で実現できた
これなら1000番目のフィボナッチ数だって直ぐ求められる
t = Time.now p fib 1000 p Time.now - t #>43466557686937456435688527675040625802564660517371780402481729089536555417949051890403879840079255169295922593080322634775209689623239873322471161642996440906533187938298969649928516003704476137795166849228875 0.001581
関連:Ruby、同じことの繰り返しは君に任せるよ 〜 再帰でハノイの塔を解こう!〜
(訂正:末尾再帰であることはfibメソッドの呼び出し回数とは直接関係しないことが分かりましたので訂正します)