民主党の勝因〜「大きな政府」「小さな政府」という議論を止めたこと〜
民主党の勝因は世論のニーズに忠実であったことであろう。実は有権者のニーズのマジョリティは20年前からほとんど変わっていない。鳩山代表曰く「コンクリートから人へ」つまり税金の無駄遣いや無駄な公共事業を止めて、その財源で社会保障や教育を充実して欲しいというニーズだ。
単純なニーズなのだが、ここ20年間有権者も政党も「大きな政府」「小さな政府」という言葉に惑わされてこのニーズを掴みきれていなかったのだ。
「大きな政府」「小さな政府」は押し付けセット販売
「小さな政府」は本来なら歳出も削減し、税金も安くしますという商品で、90年代からも日本で人気のあった商品だが、日本では減税をあまり謳わない代わりに反福祉も前面に出さない。税金の無駄遣い批判や公共事業削減といった部分を前面に出して売り出されたために、都市リベラル層にも人気が出て非常によく売れた。
ただ購買者のほとんどは、その商品にはもれなく社会保障の削減も付いてくることに気づかなかった。一方でこの商品が売れていることを以って、日本人は「低福祉低負担を望んでいる」という間違ったマーケティングが横行してしまった。
この商品を世界中に売り込みたいネオリベラリストは、日本人の意識が変わり、自助自立を重視し自ら社会保障削減を是とする考えに生まれ変わったかのような喧伝を行ったが、そのような事実は存在していなかったのだ。
この商品の欠陥が知られ売れ行きが悪くなった頃、自民党はかつての定番商品で小泉時代に発売停止していた「大きな政府」という商品の併売を始めた。ところがこちらの売れ行きも芳しくなくてジリ貧になってゆく。
民主党も長いことずっと「小さな政府」が是であると惑わされて来たのだが、小泉時代に「小さな政府」という商品を自民党に取られてジリ貧になった時点で先にマーケティングを始めていたのが幸いであった。かつて「小さな政府」のセールスマンであった小沢一郎は、その商品の限界を知っていたが故に新商品の開発を急いだ。
それで民主党が売り出した商品が「コンクリートから人へ」だった。実はこの商品、かつての革新自治体や1990年前後の土井社会党ブームの時にも売り出されていたが、使用方法が悪かったりしてあまり陽の目を見なかった商品をちょっと改良したに過ぎないのだが。