法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

河野談話の根拠は裏づけのない被害者証言しかないのではなく、被害者証言が裏づけのひとつということ

裏づけが出てきたら裏づけの裏づけを要求することで、永遠に裏づけを認めないですむという詭弁は珍しくもない。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140220/plc14022018180021-n1.htm

事実関係を明らかにするため関係省庁に資料調査を要請したが、「女性たちを強制的に(慰安婦に)従事させるという種の文書は発見できなかった」と説明。「米国の図書館まで行ったが、女性たちを強制的に集めたことを客観的に裏付けるデータは見つからなかった」とも語った。
 韓国側の強い要求で行われた元慰安婦16人の聞き取り調査については「事実関係の裏付け調査は行われていない」とした上で、「当時の状況として、裏付け調査をこちらが要求するような雰囲気ではなかった」と明言した。

逆に、石原信雄元官房副長官の証言に産経新聞が裏づけを求めないことは、予想されたこと。


産経記事からはあたかも被害者証言のみに依拠して河野談話が出されたかのように説明しているが、ほぼ同時に内閣官房内閣外政審議室名義で出された「いわゆる従軍慰安婦問題について」という文書を見ると、被害者証言をふくめた証拠から総合的に判断したと明記されている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/pdfs/im_050804.pdf

関係資料の調査を進めるかたわら、元軍人等関係者から幅広く聞き取り調査を行うとともに、去る7月26日から30日までの5日間、韓国ソウルにおいて、太平洋戦争犠牲者遺族会の協力も得て元従軍慰安婦の人たちから当時の状況を詳細に聴取した。また、調査の過程において、米国に担当官を派遣し、米国の公文書につき調査した他、沖縄においても、現地調査を行った。

上記の資料調査及び関係者からの聞き取りの結果、並びに参考にした各種資料を総合的に分析、検討した結果、以下の点が明らかになった。

当時の日本政府は複数の証拠から従軍慰安婦問題の全体像をとらえていったのであって、ひとつの証拠に裏づけがなければ全体が瓦解するという代物ではない。一例として、募集手段が詐欺的手法であったことは、日本政府が集めた米国公文書にも同じ記述があるのだ。
「テキサス親父」が存在を確認した尋問調書は、たしかに重要だ……ただしそれは慰安所の非人道性の証拠としてであり、そもそも昔から知られていた資料だが - 法華狼の日記
むろん米国公文書も証言にもとづいた一地域の一報告書であって、全体調査ではない。それそのものが裏づけではないことも事実だろう。
だからこそ、各種の資料と証言が相互に裏づけとなると理解できなければ、歴史を研究することなどできない。その後の歴史研究の進展から見ても、河野談話の根拠となった被害者証言が代表的なものであったろうことはうかがえる。
つまるところ、被害者証言に疑問符をつけようとも、それを補強する証拠ばかりが集まり、否定できるような証拠を日本政府は集められなかったのだ。