法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

朝鮮語の禁止が捏造だという証拠を出した!→証拠として成立していないことを指摘→あんた、提示できる?

歴史学と刑事裁判と事件報道と、それぞれの区別すらできないのかな - 法華狼の日記
上記エントリへの反論として、[twitter:@neon_shuffle]氏が返答ツイートを自らTogetterにまとめていた。
はてサを代表する法華狼が「ハングル弾圧は事実だが、ハングル小説のベストセラーは例外的事象だ!」とアホな主張をしてきたので、徹底的に潰します - Togetter
しかし私は「ハングル小説のベストセラーは例外的事象だ!」という主張はしていない。タイトルの時点で失格だ。私が最初のエントリでハングル小説に言及したのは下記のとおり。
自分まとめの歴史認識Togetterは微妙なものが目立つ - 法華狼の日記

ちなみに日韓併合より前でも、朝鮮半島の古典『春香伝』*4等はハングルで記述された版があったし、公文書でもハングルが用いられていた例がある。過去の日本における仮名と同じく重要な政府文書では使用されなかったが、普及していなかったわけではないのだ。日本の植民地政策を擁護する言葉と一貫性を持とうとするなら「弾圧」と呼べるばずがない。

「徹底的に弾圧」されていたとneon_shuffle氏が主張する李朝時代にも「ハングルの娯楽本」があったのだから、「ハングルの娯楽本」は弾圧の必要充分な証拠になりえない。

neon_shuffle氏自身の論理にしたがっても、「弾圧」と「ハングルの映画・娯楽本・電報・レコードの存在」は両立する。

せっかく下記の最新エントリでもリプライを送っているのだから、すべからく読んで反論するべき。
歴史認識をめぐる、やる夫のインターネット活用術 - 法華狼の日記
最初のエントリ時点でも「朝鮮語学会事件」について、はてなブックマークコメントを引用する形式で言及している。コメント欄は読んでいないのかもしれないが「学校教育で朝鮮語授業があったといっても、植民地内現地語の授業にすぎず、他の科目の授業は日本語が用いられていました」といった話もしている。
しかしneon_shuffle氏のツイッターを見てみると、下記ツイートのように最新エントリのコメント欄に対してだけ反応するツイートが複数あった。

前後して、Togetterでまとめていない「まとめ」のツイートも見つかった。

きちんとTogetterにまとめてくれないと、どこまで読んで反論すればいいのかわからない。
ちなみに坂本真一氏がコメント欄で提示している史料については、下記ツイートひとつだけですませているようだ。

このツイートのように「意味ないよ」と耳をふさいで、提示した証拠を拒絶しただけということが推察できる。
しかし、頭から都合の悪い論を拒絶する者には意味がなくても、歴史を理解し学ぼうとする者には意味がある。坂本真一氏から各コメント欄で紹介していただいた朝鮮語抑圧資料を、まとめて提示しておこう。歴史の通説が作られるために提示された証拠の厚み、そしてその通説に異議をとなえるために必要な努力の大きさが、ざっと並んだ資料名を見るだけでも感覚として理解できるのではないかと思う*1。

坂本真一 2011/05/28 12:13


追記:植民地朝鮮における言語政策については、最新の研究として2010年12月に明石書店「朝鮮植民地支配と言語 」が出版されています。著者の三ツ井崇氏は「日韓新たな始まりのための20章」にも執筆していらっしゃいます。博士論文をもとにしたものだそうで、http://www.soc.hit-u.ac.jp/research/thesis/doctor/?choice=exam&thesisID=67に概要があります。

坂本真一 2011/05/29 15:30


追記:CiNiiで探したら、三ツ井崇氏の論説がいくつか見つかりました。参考にしてください。
・朝鮮総督府「諺文綴字法」の歴史的意味 : 審議過程の分析を通して
・植民地期朝鮮におけるハングル運動に関する研究動向とその批判的検討
・「三年峠」をめぐる政治的コンテクスト : 朝鮮総督府版朝鮮語教科書への採用の意味 (京都における日本近代文学の生成と展開)
・日中戦争期以降の福井県における朝鮮人融和/統制団体の教育 ・ 教化事業 : 『福井新聞』記事の分析を中心に
・金榮敏著、三ツ井崇訳「韓国近代小説の形成とその近代的特性」

坂本真一 2011/05/31 11:57


私は植民地支配と言語政策について深く勉強してないのですが、参考になりそうな本は知っているので下にメモしておきます(amazonやCiNiiで探してください)。
・海を渡った日本語―植民地の「国語」の時間(川村湊)
・戦時中の話しことば(遠藤織枝,木村拓,桜井隆,鈴木智映子,早川治子,安田敏朗)
・植民地のなかの「国語学」―時枝誠記と京城帝国大学をめぐって(安田敏朗)
・統合原理としての国語 近代日本言語史再考 (3)(安田敏朗)
・日本語はだれのものか (歴史文化ライブラリー)(川口良,角田史幸)
・「国語」という呪縛―国語から日本語へ、そして○○語へ (歴史文化ライブラリー)(川口良,角田史幸)
・「ことば」という幻影(イ・ヨンスク)
・植民地朝鮮における朝鮮語奨励政策―朝鮮語を学んだ日本人(山田 寛人)
・「言語」の構築―小倉進平と植民地朝鮮(安田 敏朗)
・朝鮮植民地支配と言語(三ツ井 崇)
・韓国「併合」前後の教育政策と日本 (本間 千景)
・日本の植民地言語政策研究 (石 剛)
・植民地支配と日本語―台湾、満洲国、大陸占領地における言語政策(石 剛)
・台湾・韓国・沖縄で日本語は何をしたのか―言語支配のもたらすもの(古川 ちかし (著), 川口 隆行 (著), 林 珠雪 (著) )
・「在日」のはざまで (平凡社ライブラリー)(金 時鐘)←(特に「クレメンタインの歌」は必読)
・植民地主義の暴力―「ことばの檻」から(徐京植)←(「母語と母国語の相克--在日朝鮮人の言語経験」はCiNiiで閲覧可能)
・朝鮮人差別とことば(内海 愛子:編, 梶村 秀樹:編, 鈴木 啓介:編)←(「京城」ということば[梶村] は読んでみる価値がありそう)
・植民地支配下の朝鮮における言語の「近代化」と「ナショナリズム」 (特集2 「大東亜共栄圏」と教育--日本教育学と植民地支配下の現実) (石純姫)(植民地教育史研究年報 ←この年報は読んでみる価値がありそう)
・日本語教育史への新たな視点――日本統治期朝鮮における大衆歌謡を手がかりに (佐藤結)(小出記念日本語教育研究会論文集)
・日本植民地教育政策論 : 日本語教育政策を中心にして(I 差別と教育)(小沢有作)
ほかにもCiNiiで[CiNiiに本文あり、または連携サービスへのリンクあり]で制限しておいて、「植民地 朝鮮語」「植民地 言語政策」「植民地 日本語」で検索したら結構出てきます。
 ちなみに上の本・論文を探すのに1時間もかかりませんでした(読むのはこれからですけど)。私がやったことは、amazonとCiNiiでキーワードを打ち込んで検索したことと「虚構の皇国」さんのサイトの該当エントリ「「日本語でおk」ってなんかイヤな言葉だな――「国語全解運動」」http://d.hatena.ne.jp/tadanorih/20100310/1268149213から芋づる式に調べていっただけです。たぶん「朝鮮史研究会」「朝鮮新報」「民族時報」のサイトにはもっと詳しい情報があるのではないでしょうか。

坂本真一 2011/05/31 12:15


>在日朝鮮人の強制連行という嘘で自爆してしまうんだな。


もうやめてくれ、と言いたくなる嘘ですね。これについてもメモを下にしておきます。
・朝鮮人戦時動員FAQttp://wiki.livedoor.jp/gurugurian/(gurugurianさんのサイト)
・竹内康人作成・朝鮮人強制労働現場一覧ttp://www.ksyc.jp/sinsou-net/takeitu-itiran.pdf
・朝鮮人強制連行期(1939〜1945)朝鮮人強制労働現場一覧/解説・参考文献ttp://www.ksyc.jp/sinsou-net/takeuti-kaisetu.pdf ←(2004年以降の論文は記載されていない)
・戦時強制労働の調査(竹内康人氏のサイト)ttp://www16.ocn.ne.jp/~pacohama/kyosei/kyouseiroudo.html
・外村大研究室―学会・論文ttp://www.sumquick.com/tonomura/society.html
・遺骨は叫ぶ(朝鮮新報、筆者は野添憲治)ttp://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2007/06/0706r200.htm
・〈日本の過去を告発する〉(朝鮮新報)ttp://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2005/05/0505r600.htm
・古庄正氏の論文「足尾銅山・朝鮮人強制連行と戦後処理」「日本製鉄株式会社の朝鮮人強制連行と戦後処理 : 『朝鮮人労務者関係』を主な素材として」「朝鮮人強制連行問題の企業責任」CiNiiで閲覧可能 「朝鮮人戦時労働動員」(岩波書店)にもこの論文が言及されている。
・雑誌「戦争責任研究」「統一評論」「在日朝鮮人史研究」各号
・戦後補償から考える日本とアジア (日本史リブレット)(←戦後補償についての入門書、強制動員された側のその後についても記述あり)


ほかにもまだまだ資料がありますが、ここら辺で留めておきます。

坂本真一 2011/05/31 12:29


在日朝鮮人の形成過程とその歴史の全体像についても山ほど文献があります。amazonやCiNiiや「日本の古本屋」で検索すれば、それほど苦労なく見つかります(ただ、値段が張る文献が多いという印象があります)。とりあえず、
・朴慶植「在日朝鮮人運動史―8・15解放(三一書房、1979年)」「解放後在日朝鮮人運動史(三一書房、1989年)」←おそらく初めての在日朝鮮人の通史
・解放後の在日朝鮮人運動(梶村秀樹氏の講演が元になっている。630円ととても安い。神戸青年学生センター)
・雑誌「在日朝鮮人史研究」
を挙げておきます。

坂本真一 2011/05/31 13:47


乗りかかった船ですので、ついでに植民地支配と朝鮮人にかかわる、いわゆる「一次資料」の資料集についても下にメモしておきます(たぶん探すのは難しいと思いますが、後学のために書いておきます)。


・現代史資料+続現代史資料集(みすず書房)←(定番といっていい資料集、6巻および25巻〜30巻が特に重要な朝鮮関係資料)
・在日朝鮮人関係資料集成:戦前編(朴慶植 三一書房)
・在日朝鮮人関係資料集成:戦後編(朴慶植 不二書房)
・朝鮮問題資料叢書(朴慶植 三一書房)
・特高月報(政経出版社)←(朝鮮人と特高の関係について)
・十五年戦争極秘資料集(不二出版 朝鮮関係の文献あり)
・朝鮮総督府 帝国議会説明資料 (不二出版)
・最近に於ける朝鮮治安状況 (水野直樹解題 不二出版)
・朝鮮憲兵隊歴史(松田利彦解説 不二出版)
・従軍慰安婦資料集(吉見義明 大月書店)←(わずかだが朝鮮総督府側の資料あり)
・日本軍「慰安婦」関係資料集成(鈴木裕子, 山下英愛, 外村大編 明石書店)
・戦時外国人強制連行関係史料集(林えいだい監修・責任編集 明石書店)
・戦時下朝鮮人中国人連合軍俘虜強制連行資料集(長澤秀編 緑陰書房)
・戦時下強制連行極秘資料集(長澤秀編 緑陰書房)
・協和会関係資料集(樋口雄一編・解説 緑陰書房)
・戦時期植民地統治資料(水野直樹編 柏書房)
・戦時下朝鮮人労務動員基礎資料集(樋口雄一編・解説 緑陰書房)
・朝鮮労務(庵逧由香監修・解説 緑陰書房)
・植民地下朝鮮におけるハンセン病資料集成  (滝尾英二編・解説 不二書房)
・外交史料 韓国併合(海野福寿編集・解説 不二書房)
・朝鮮総督諭告・訓示集成(水野直樹編 緑陰書房)
・近代朝鮮文学日本語作品集(大村益夫, 布袋敏博 緑陰書房)
・百萬人の身世打鈴ー朝鮮人強制連行・強制労働の「恨(ハン)」(東方出版)←(これまで出版された在日朝鮮人の証言集の中で最大の証言集、「証言」も一次資料です。一人だけ日本人の証言者として、詩人の小野十三郎氏の証言が記述されています)
・聞書水俣民衆史5-植民地は天国だった(岡本達明編纂 草風館)←(こちらは在朝日本人の証言記録。朝鮮窒素肥料興南工場の従業員などの証言を集成、類書を探すのは困難と思われます)

これらの資料名を見ているneon_shuffle氏は、反論Togetterに下記のようなツイートを投下している。

見たいものしか見えず、見たくないものは見えない生物が人ということだろうか。

*1:このエントリに対するコメントで坂本真一氏から誤記の訂正があったので、(2011/06/03 18:01)の正誤から該当するものを訂正。