んがんぐ

パンを喉に詰まらせて死亡した事故がこのタイミングで報道された件。

消防本部および救急救命センターに対して行なわれた調査によると、パンを喉に詰まらせる事故自体は1ヶ月あたり平均して7〜8件程度は起きているそうで、しかも食品による窒息事故のうち4分の1で患者が亡くなっているそうですから、総合すると、パンを喉に詰まらせる事故が1ヶ月あたり2件以上は起きていても不思議ではないという状況のよう。つまり上で報じられた事故そのものは希有な例なのではなく、その事故が報じられたことが希有、と言うべきでしょう。
こういった事故は、報じられないがゆえに、それなりに頻発しているという事実はあまり認識されていないのではないでしょうか。「知られない事象は存在しないのと同じ」というのはありがちな言説ですが、パン窒息事故について世間で報じられない→実際にパン窒息事故が起こっても「これだけパンが広く食べられているのに窒息事故(の報道)はぜんぜん無いから、パンの特殊性によって起きている事故ではなかろう」と(当事者も報道機関自身も)判断する→とりたてて騒がれることも無く報道されないまま埋もれる、という“問題視しない”ループが起きているのではないかと。他方で、蒟蒻畑は(類似品含めて)流通初期に事故が大々的に報じられることが多かったため、新たに事故が起きた際も(その事故が起きるまでの間に製品が改善され安全性が向上しているにもかかわらず、その点を考慮することなく、個々の事例の具体的検証さえ踏まずに)「この製品の特殊性ゆえに起きている事故なのだ」と判断されてきてしまっていて、すなわちパンの例とは逆に“問題視する”ループが生じているように感じます。
たとえ流動食であっても気道に詰まれば死ぬこともあるわけですから、消費者の安全を守るためには、食品全般について安全に食べるための作法(詰まらないようにする食べ方・詰まったときの対処法)を消費者1人1人に周知することがまず肝要でしょう。そのうえで各製品に安全な食べ方の案内がなされていさえすれば、あとは消費者の選択と責任に任せればよいわけで、一足飛びに製造中止などという強攻策に及んで多くの消費者の便益を阻害する必要も無いはずです。これだけこの問題が注目されているというのはいい機会でもありますから、消費者行政はここで消費者教育にこそ焦点を当てていくべきなのではないでしょうか。