「珍右翼が巣くう会」に突っ込む・番外編(8/28分:常岡浩介と黒井文太郎と桜木武史の巻)(追記・訂正あり)

常岡浩介がリツイート
文化放送『吉田照美 飛べ!サルバドール』 ‏@tobe_saru
【明日の飛べサル】ゲストは、ジャーナリスト・常岡浩介さん。

 吉田照美らあほなマスゴミ人がこうして「アホの常岡」をちやほやするからこそ常岡は「今回の身柄拘束」など自分の失敗を反省しないのでしょう。うんざりします。

常岡浩介
 クルディスタンではぼくは取り調べを受ける容疑者だったけど、日本でTwitterをみてるよりストレスは少なかった。橋下やトランプみたいなバカはいなかったから。バカが大嫌いなぼくにはクルディスタンは快適

 バカはこういう非常識ツイートができる常岡の方でしょう。常岡解放のために動いた現地日本大使館職員の事を何だと思ってるのか。「快適ならずっと拘束されてろよ、日本に帰ってくるな」と思うのは俺だけではないでしょう。

川上泰徳 y.Kawakami ‏@kawakami_yasu
 シリア人権ネットワークは米軍主導の有志連合の空爆で2014年9月以来の民間人死者が639人(子供244、女性132)と発表。政権軍、ロシア軍だけでない戦争犯罪

 こうした事実を無視しロシアとアサドしか批判しない常岡と黒井はどう見てもまともではありません。


■桜木武史『シリアへの素朴な疑問−支援とは何か』
http://t-sakuragi.com/?p=2636#more-2636

 国連はアサド政権の地域から反体制派の地域に運ぶ手法を好みます。なぜなら、それはアサド政権が喜ぶからです。国連はアサド政権に尻尾を振っています。

 ガーディアンの記事だそうです。国連をアサドの手先扱いする完全な陰謀論ですね。呆れて二の句が継げません。さすがに反アサドの桜木も

しかし、アサド政権からそっぽを向かれたら、支援ができないという難しさもあります。

と書いています。


■ニューズウィーク日本版『「ホワイト・ヘルメット」をめぐる賛否。彼らは何者なのか?』青山弘之(東京外国語大学教授)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/10/post-6091.php

 「シリア内戦」において、「ホワイト・ヘルメット」と呼ばれるグループが、欧米諸国や日本のメディアでにわかに注目を集めている。ロシア・シリア両軍の攻撃に晒される「反体制派」支配地域で人命救助を続ける彼らは、その勇敢さと無償の奉仕精神を称賛される一方で、アル=カーイダの系譜を汲むシャーム・ファトフ戦線(旧シャームの民のヌスラ戦線)と「結託」しているとの指摘も多い。
 ホワイト・ヘルメットをめぐるこうした賛否両論はどう捉えたら良いだろう?
(中略)
 米国、英国、ドイツ、日本といった国の政府はホワイト・ヘルメットに資金を供与した。例えば、米国際開発庁(USAID)は2013年以降、少なくとも2,300万米ドルを援助し、英国政府も2012年から2015年にかけて1,500万英ポンドを提供した。このほか、米国の開発企業「ケモニクス・インターナショナル」、UAEのコンサルタント会社「ARK」、そしてトルコのNGO「AKUT捜索救援協会」などが、ホワイト・ヘルメットに技術や装備の提供、広報、組織運営といった分野で支援を行っている。
 ホワイト・ヘルメットの支援国は、シリア政府の正統性を否定し、その退陣をめざして干渉を続けてきた。2012年にはカタールでのシリア国民連合結成を後押しし、「シリア国民唯一の正統な代表」として承認、この組織がシリア国内での支持獲得に失敗し、内部抗争で弱体化すると、今度はシャーム・ファトフ戦線を含む「反体制派」を直接間接に後援した。さらに、イスラーム国が「国際社会最大の脅威」として台頭すると、有志連合としてシリア領内を空爆、米国、英国、トルコは地上部隊を潜入させた。
 欧米諸国のこうした多様な「反体制派」支援を踏まえると、ホワイト・ヘルメットがその対シリア干渉政策の一環として位置づけられていたとしても不思議ではない。事実、ホワイト・ヘルメットの言動は「反体制派」的な色合いが強い。彼らは連日、インターネットを通じて活動現場の写真や映像を公開している。だが、それらはいずれもロシア・シリア両軍の攻撃の被害者を撮ったもので、紛争被害者の約3分の1以上を占めるシリア軍兵士や親アサド政権民兵を救出するデータが公開されることはない。
 また、ホワイト・ヘルメットの活動地域は「反体制派」が支配する「解放区」に限定されている。その理由に関して、公式ホームページでは以下の通り弁明されている。
 「政権側支配地域での活動は許可されていない。我々が市民に与える希望が、市民の抵抗を手助けするというだけの理由で、政権は私たちを殺そうとする。政権側支配地域でも我々を求める声がある。しかし、我々が助けようとすると、政権軍が撃ってくる。もし許されれば、シリア全土ですべての人々に奉仕したい」。
 しかし、こうした言葉とは裏腹に、ファトフ軍の広報ビデオに登場するホワイト・ヘルメットのボランティアは「シャッビーハ(政権支持者)の遺体はゴミ箱に棄てる」と主張している。しかも、彼らがどのように「解放区」での活動を許可されているのかは実は明らかではない。
(中略)
 ホワイト・ヘルメットは、「解放区」の自治を担うとされる「地元評議会」やこれらの武装集団との折衝を通じて活動地域を拡大したと主張する。だが、群雄割拠の状態にある「解放区」で、誰からも攻撃を受けずに活動できるのは、ホワイト・ヘルメットがイスラーム過激派や外国人戦闘員とさえも協力・相互依存関係にあるためだ、との解釈も成り立つ。
 とりわけ、ホワイト・ヘルメットとシャーム・ファトフ戦線の「親密」な関係は、インターネット上に氾濫する多くの写真や画像から明らかだとも言われる。ファトフ軍によるイドリブ市制圧(2015年3月)に際して、シャーム・ファトフ戦線メンバーとともに組織の旗を振るボランティアの映像、アレッポ県フライターン市でシャーム・ファトフ戦線が処刑した住民の遺体を搬送・処分するボランティアの写真などがそれだ。
 バッシャール・アサド大統領の発言を借用すると、これらのデータは現地で実際に何が起きたのかを示しておらず、プロパガンダの材料に過ぎない。しかし、それらはホワイト・ヘルメットが「シャーム・ファトフ戦線の救援部門」だとする断定にも説得力を与えている。ホワイト・ヘルメットが「中立的」だというのなら、これらのデータに反論し、シャーム・ファトフ戦線との関係を否定して然るべきだが、彼らが明確な態度を示すことはない。
 それだけでない。レバノン日刊紙『サフィール』(2016年10月7日付)は、ホワイト・ヘルメットが「外国の専門家」から、救助活動だけでなく、メディアでの露出のあり方についての教練を受けているとの「匿名ボランティア」の証言を紹介している(『サフィール』記事の日本語訳は「日本語で読む世界のメディア」http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20161015_170904.htmlを参照)。こうした証言の是非もまた実証できない。だが、ホワイト・ヘルメットが配信する広報資料のなかには、ヒムス県での空爆の被害とされる写真が実際には数日前に撮影されたものだったり、異なる三つの空爆現場で救出されたとされる女児の写真が同一人物のものだったり、と明らかな「ねつ造」が存在する。
(中略)
 ホワイト・ヘルメットは(中略)ノーベル平和賞の最有力候補にノミネートされ、欧米諸国と日本で一躍注目を浴びた(ボーガス注:実際には反政府ゲリラとの和平合意でコロンビアのサントス*1大統領が受賞)。
 ホワイト・ヘルメットがロシア・シリア両軍の激しい空爆に晒されるシリアで、「地獄のなかの希望」として救援活動を続けていることは厳然たる事実で、(ボーガス注:彼らの動機や目的が何でアレ)彼らの活動は称賛と支持に値する、そう声を大にして言いたい。
 しかし、こうした称賛や支持は、彼らが「中立、不偏、人道」を体現していることを意味しない。ホワイト・ヘルメットの支援国や言動は、彼らが「反体制派」であることを示しており、この事実を踏まえずに彼らを評価しようとすれば、「シリア内戦」の実態を見誤ることになりかねない。

 重要な指摘でしょう。しかし「反アサド」の黒井や常岡はこうした青山氏の指摘を「アサドの太鼓持ち」扱いするからやれやれです。

日本人が知らない世界情勢@クルド・シリア ‏@newsfromworld15
 ロシア外相ラブロフ*2は定例会見においてトルコのクルド人勢力に対する空爆について憂慮していると発言した。アメリカに対しトルコを有志連合の一員として本来向かうべき敵*3に向かわせるよう影響力を行使すべきだと主張した。

 勿論ラブロフ発言は「クルドへの善意」ではなく「敵(トルコ)の敵(クルド)は味方」つう党利党略、マキャベリズム話でしょうが「トルコのクルド攻撃はおかしいのと違うか」つう指摘それ自体は正論でしょう。
 そして「アサドとロシアの敵は皆正義」という設定のため、「トルコの問題行為」は徹底的に無視するクズが常岡と黒井です。

常岡
今夜10時からのMr.サンデーで、イラクで始まったモスル奪還作戦の最前線から、ちょっとですが、リポートできると思います。
→
宇都宮の爆発事件のニュースに押し出されて、延期になったようです。申し訳ございません。

 吹き出しました。まあMr.サンデーなんてただのワイドショーだからねえ。

常岡浩介がリツィート
エレニ ‏@EleniNumber5
 日本ではモトローラ(ボーガス注:ザハルチェンコの部下です)の訃報(ボーガス注:暗殺による死去です)が、ことごとくザハルチェンコ(親露派『ドネツク人民共和国*4』トップ)の「ウクライナがやった」コメントと共に流れているという惨状。
 嘘に決まってんでしょうがあんなの。

 イヤーすごいですね。常岡とその類友は「ザハルチェンコが何らかの理由で邪魔になった部下を消した上で、ウクライナに罪をなすりつけてる」と言いたいようですがそれこそ「根拠あるの?」です。

常岡浩介
 ボリス・ジョンソンのような人間が、責任ある地位に就いた瞬間に、プーチン&アサドファンから対露強硬派に転向してしまうのは、彼らがその地位に就いたときに開示される情報に説得力があるからでしょう。

 そう言う話ではなく、単にジョンソンが無責任なだけでしょう。彼には信念も何もないから上司(メイ首相)や部下(外務官僚)が「こういう方針で行きたい」と言えば「わかりました」というしかないわけです。

常岡浩介
 日本では、鳩山、孫崎*5から森(ボーガス注:元首相)、安倍、ムネオ、佐藤優まで、極左から極右まで、責任ある立場にありながら、「プーチンとの信頼関係」とか、「プーチンは親日家で」といったお花畑をさまよっています。

 常岡が名前をあげた人間には「安倍政権批判者(鳩山元首相、孫崎元外務省国際情報局局長。なお、他は皆安倍支持でしょう)」はいても「極左」どころか「左翼」なんかいないと思いますが。どうも「アホの子」常岡の「極左、左翼理解」は常人の認識とは違うようです。つうか安倍政権批判者の親プーチン派*6として「鳩山氏、孫崎氏」の名前しか挙げられない時点で「左から右まで云々」という常岡の主張は崩壊しています。
 鳩山氏、孫崎氏は保守だからです。
 「で、社民党の福島副党首や共産党の志位委員長はどうなんですか?」と常岡には聞きたくなります。小生の理解では福島氏や志位氏は「日露領土交渉それ自体には『成果が出るかでないか分からないので』一応反対しないまでも、安倍ほど楽観視はしてない」でしょう。

常岡浩介がリツィート
Kazuto Suzuki
 第三政党と言われる米国の緑の党の大統領候補であるステイン。ロシアとの戦争を求めないトランプよりもヒラリーの方が恐ろしい、とツイート。

 そりゃ「対ロシア関係(主としてシリア問題)」を考えればそう言う理解も十分可能でしょう。ただそのステイン氏にしても「ロシア関係限定(ヒラリーがタカ派路線の疑いがあって怖い、ベトナム戦争みたいな泥沼はノーサンキュー)」であって「トランプの方がマシ」とはさすがに思ってないでしょう。また「ロシアとガチバトルとかシリアでやって欲しくない」つう話であって「ロシアの対シリア政策を全面支持する、プーチン大好き」つうことでもないでしょう。まあ、ヒラリーが実際どうなのかはともかく、常岡がロシア相手にやたら「本気か?」と聞きたくなるほどタカ派なことを吹き、それに否定的な人間に「ロシアシンパ」のレッテル貼ってることは確かです。
 まあ正直米国においては「ゴアvsブッシュ」時の「ラルフ・ネーダー」など一部を除けば「今回のステイン氏に限らず」残念ながら「第三候補」には影響力がほとんどないんでこんなコトに絡む常岡の考えはさっぱり分かりません。

常岡浩介
 トルコのメディアだけが一斉に、モスル奪還作戦開始を伝えているわけですが、現地に確認したところ、「まだよ。もうすぐ」とのこと。トルコで誰か大物がデマ飛ばして、メディアが乗せられたんでしょうね。

 これが常岡の大嫌いなロシアメディアなら「プーチンの情報操作」と言ってるでしょうがトルコだと「誰か大物がデマ飛ばして」と曖昧な表現になるんだから常岡も愉快な男です。ぶっちゃけエルドアンの情報操作じゃないのか。

常岡浩介がリツイート
神田大介
 宇都宮中央署で留置管理課長の警部が保管していた留置人の所持金15万円を横領するという事件があったが、栃木県警は実名を発表しなかった。下野新聞は独自取材から氏名を明らかにしている。こういう地元紙の仕事は実に頼もしい。

 この神田という男は朝日の記者(テヘラン支局長)です。「朝日の記者が能天気に『下野新聞に感心した』じゃねえよ、脳みそ湧いてるのか、手前。手前の会社・朝日も含めて中央紙の記者は何やってんだ!。恥ずかしいって気持ちはねえのか?」と説教したくなります。まさかとは思いますが「それは地方紙の仕事であって、全国紙の地方支局の仕事じゃない」とでも思ってるのか?

常岡浩介
「自分を批判するものは『アサドは悪だから負ける』と主張しているが、自分はアサド体制は存続すると事実を語ってるだけ」と青山氏。

 まあそういうことです。そもそも「アサドが悪で反アサドが善」「アサド政権が崩壊すれば全てがバラ色」であるかのように常岡や黒井が語り「アサド政権打倒論に否定的な青山氏ら」を「アサド支持者」扱いすることも無責任の極みですが。「フセイン政権が倒れてもイラクがバラ色でなかったこと」を見せられれば常岡や黒井のような与太「アサド政権打倒論」を支持する気にはとてもなりません。
 まあ、それ以前に青山氏らが指摘するように「イランやロシアの支援がある以上」アサド政権打倒なんて現実的でもないですが。
 ちなみに「シリア・アサド政権を北朝鮮・金正恩政権」「青山弘之氏(東京外語大教授、シリア研究)を例えば、北朝鮮打倒論について非現実的として否定的な日朝交渉論者(例:東大名誉教授で朝鮮研究専門の和田春樹氏)」に書き換えれば常岡、黒井の言ってることは巣くう会の北朝鮮打倒論とうり二つです。常岡らが青山氏をアサドシンパ扱いし悪口するように巣くう会も和田氏を北朝鮮シンパ扱いし悪口しています。
 つまりは常岡、黒井は巣くう会並のバカだという事です。なるほど巣くう会とつきあってるウスラバカ高世仁が常岡とつきあってるのもよくわかります(毒)。

常岡浩介
 米国をサイバー攻撃していると、米国がはっきり指摘してる国と安倍氏は「平和条約」を結びたいのね。すごいね

「何だかなあ」ですね。「平和条約」とは要するに「領土問題の解決」です。プーチンと安倍によって「領土問題解決ができるか」はともかく、仮に「可能であるならば」サイバー攻撃云々は関係ないでしょう。
 常岡は何が言いたいのか。
1)たとえ領土問題が解決してもそんな怪しい国とは条約を結ぶべきではない、ロシアがまともになるまでは領土はあきらめろということなのか、
はたまた
2)そんな怪しい国との間に領土交渉なんか成立しない、島なんか帰ってこないつうことなのか。

常岡浩介
 ニューズウィーク日本版の日本独自記事ってまさにゴミ。

と常岡が誹謗する青山弘之氏の文章を読んでみましょう。小生には何がゴミかさっぱり分かりません。結局、常岡は「全てアサドとロシアが悪い」と言わないと納得しないのでしょうが話はそれほど単純ではないでしょう。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/10/post-5960.php
■ロシア・シリア軍の「蛮行」、アメリカの「奇行」(青山弘之・東京外国語大学教授)
 アレッポ市に対するロシア・シリア両軍の「蛮行」に厳しい視線が注がれる傍らで、米国の(ボーガス注:ヌスラを敵視しながら、ヌスラと野合する反体制派を支援するという)「奇行」がこれまでにも増して目につく。
 きっかけは、9月12日に発効し、19日に破綻した米露による停戦合意だ。
(中略)
 しかし、米露はそれぞれの思惑のもとで合意を解釈、これを反故にしていった。
(中略)
 停戦合意をめぐるロシアの狙いは明白だった。ロシアはシリア政府を「シリア内戦」の「勝者」として位置づけるため、停戦合意を利用し、アレッポ市包囲戦への米国の干渉を抑えようとした。一方、米国は、(ボーガス注:ロシアが支援するアサド政権の攻撃で)アレッポ市喪失が避けられないと(おそらく)自覚しつつも、大統領選挙期間中に事態が悪化するのを避けようとしているように見えた。
 こうした思惑の違いゆえに、停戦が持続しないことは発効前から明らかだった。「反体制派」は9月12日に共同声明を出し、(ボーガス注:ヌスラ先生が改名した組織である)シャーム・ファトフ戦線が(ボーガス注:ヌスラを敵視する米露の思惑から)停戦適用対象から除外されたことに抗議して戦闘停止を拒否(中略)、シリア軍も19日に戦闘再開を宣言し、停戦は崩壊した。
 ロシアとシリア政府は、9月18日に有志連合がダイル・ザウル市郊外のシリア軍部隊を「誤爆」したことを引き合いに出し、「反体制派」だけでなく米国の違反が停戦を瓦解させたと追及した。
(中略)
 対する米国は、ロシアがアレッポ市への人道支援を妨害し、合意に違反したと反論した。
(中略)
 (ボーガス注:しかし)停戦は「テロとの戦い」という戦闘行為を同時並行で進めることが前提となっていた点で「ミッション・インポッシブル」だった。なぜなら、共闘関係にある「穏健な反体制派」と「テロ組織(ボーガス注:典型的にはヌスラ)」を峻別することなど、そもそも不可能だったからだ。
(中略)
 つまり、米国は「ミッション・インポッシブル」を科せられたことで、ロシアの術中に嵌り、停戦崩壊の責任を負わされたのである。

 米国が「シャーム・ファトフ戦線(旧称・ヌスラ戦線、以下ヌスラと呼ぶ)」を打倒対象にしてきたにも「関わらず」、ロシアやシリアに対抗するため、軍事的に劣る「反体制派」が「敵の敵は味方」とばかりにヌスラを仲間に引き入れたため米国にとって話が厄介になってる、それについてロシアやシリアが「米国はヌスラを打倒しろ」と要求してうまくつけ込んでる(本当に本格的ヌスラ打倒を米国がやったら反体制派と米国の全面対決になりかねず、とはいえ米国にとってヌスラ容認はしがたいため)というのが青山氏の指摘です。
 この「混乱状態」を反体制派や米国がうまく解決できるかは疑問であり「ヌスラとつるむ反体制派を支援する米国こそがシリア混乱の元凶」とアサドやロシアに攻撃されてろくに反論出来ない状態が今の米国のわけです。
 しかし常岡にとって「米国が打倒対象にしていたはずのヌスラが反体制派の有力メンバーとなったため話が厄介になってる」と言う事実は「不都合な真実」のためそうした指摘を行った青山氏に対する「青山はアサドやロシアの太鼓持ち」という下劣な誹謗をやるわけです。

常岡浩介
 米はこれまで露との「調整」に腐心してきたわけですが、それが無駄と悟った今、なんとか土と調整してくれれば、と思います

 トルコのエルドアンの「クルド敵視」「国内の独裁強化」を見ながら「米国はトルコと協調せよ」と言える常岡には呆れますね。常岡にとっては「アサドの敵は皆正義」のようです。

常岡浩介
 アサド政権の兵站を担っているイランの航空機は欧州の空港から閉め出すべきだ。

 是非以前にそんな事が現実にできるわけがないでしょう。どんだけ常岡も非常識なのか。

常岡浩介
 高岡氏は我が国が誇るトンデモ専門家だけど、無能な大手メディアからまともな人と勘違いされている。

 さすが「我が国が誇る自称ジャーナリストのトンデモバカ」「大手メディアからあまり評価されてない」常岡らしい非常識さです。根拠も上げずに研究者・高岡豊氏を非常識扱い。まあ、高岡氏も「社会的影響力皆無」の常岡の「根拠レスの罵倒」なんかばからしくて「名誉毀損で訴えないのは勿論批判、反論もせず」相手にしないでしょうが、常岡も根拠レスのくだらない悪口なんかせずに「これこれこういう理由で高岡氏の主張は間違っています」と冷静に指摘できないのか。まあそう言うことができないバカが常岡なんでしょうけど。本当、常岡は長崎放送を退社しない方が良かったんじゃねえの?
 ちなみに常岡がトンデモ呼ばわりする高岡氏の文章は以下の通り。

http://www.meij.or.jp/kawara/2016_094.html
 そもそも、アメリカとロシアとの合意に基づく「戦闘停止」は、「誰が誰との戦闘を停止するか」すら不明確なおぼつかないものであり、当初から永続する見込みは全くなかった。例えば、そもそも「イスラーム国」に対する戦闘は「停止」の対象にはなっていない。その上、アメリカなどが「反体制派」と認識する「シャーム自由人運動」、「反体制派」と事実上一体化している「シャーム征服戦線(旧称「ヌスラ戦線」)」は停戦が政府軍を利すると主張し、これを拒否する立場だった。また、ロシアは戦闘停止に合わせてアメリカに「反体制派」と「ヌスラ戦線」のようなイスラーム過激派を区別し、「反体制派」が占拠する地域にあるイスラーム過激派の拠点の地図を提供するよう要求したが、アメリカはロシアが納得する情報を提供しなかった。そうした中、ダイル・ザウル市にて連合軍による政府軍への「誤爆」*7事件が発生し、これをシリア政府・ロシアは「イスラーム国」を支援するための故意の爆撃だとみなして態度を硬化させた。
 要するに、シリアでの戦闘は(ボーガス注:常岡や黒井ら一部の反アサド派が言うのとは違い)ロシアや(ボーガス注:シリア)政府軍が爆撃を止めれば(ボーガス注:停戦が現実化して)それでよいという状況には最初からない。(ボーガス注:ロシア、シリア、米国、米国が支援する反体制派など)紛争に関与する主体の全てが民間人の殺傷や社会資本・文化財の破壊に何らかの責任を負うにも拘らず、相手方に責任の全てを転嫁しようとするが故に事態が紛糾するのである。
(中略)
 シリア紛争については、無謬かつ中立の当事者を想定することはほとんど不可能であることを留意すべきである。

 小生も高岡氏の言うとおりまず「無謬の存在などいないのだ」ということを認める必要があると思っています。もちろんだから「皆、悪だからもうどーでもいい、成り行きに任せればいい」つう話ではない。高岡氏もそんなことが言いたいわけではないでしょう。「アサドとロシアが全て悪い」という常岡や黒井のような「デマ屋」を高岡氏は批判しているだけです。で批判された常岡は悪口するわけですが「悪口の根拠を提示できない」辺り常岡らしいだめさです。

黒井文太郎 ‏@BUNKUROI
 欧米日あたりと中露とかが同じように「嘘をつく」かというと、国家が国民に嘘をつく壁の高さに大きな差がある。
 例えば米英仏独日などでは国が嘘をついたことがバレた場合は厳しく責任追及される。中露の政権は議会もメディアも支配*8してるから、それがない。だから中露の政権は嘘がバレても困らない

 「欧米と中露については無知なので知りませんが」少なくとも日本においては「汚染水はアンダーコントロール(安倍)→どう見てもコントロールできてない」「消えた年金はきちんと処理する(安倍)→いつの間にかうやむや」「米国との間に密約などない(外務省)→やっぱりありました」とか嘘つきまくっても「嘘つきが政財官界の権力者の場合」残念ながら、ろくに責任追及なんぞされていませんが。黒井が「嘘つき」か「バカ」か知りませんがここまでデタラメなことを言える神経もなかなかのもんです(勿論褒めてない)。

日本人が知らない世界情勢@クルド・シリア ‏@newsfromworld15
 黒井文太郎 @BUNKUROI みたいなカスがシリア内戦の構図語るって悪い冗談だろ。アサド政権の虐殺とロシアの陰謀しか語ってねえじゃん。こいつはコンビニに売ってるしょーもない本書いてるくらいが身の丈に合ってる。

 全く同感ですね。「シリアやロシアだけでなく欧米すら批判する」トルコのエルドアンに対し「反ロシア、反アサド」てだけでろくに批判しないんだから黒井には呆れます。まあ、それ常岡も同じですけど。

常岡浩介
 ケリー(ボーガス注:米国国務長官)はいつまでも、「譲歩すればプーチン(ボーガス注:ロシア大統領)はお礼をしてくれる」と思い込んで、現実からなにも学ばないらしい。(ボーガス注:北方領土問題での?)鳩山(ボーガス注:由紀夫元首相)も安倍(ボーガス注:首相)も同じ。

 北方領土問題はともかく「ロシアが公然とシリア・アサド政権を支援している」シリア問題ではいかに米国がアサド政権を敵視していたとしても、「ロシア軍を米軍で叩きつぶす」なんて軍事的に無理*9なんだから戦況を米軍に有利にしたかったら交渉してロシアと何らかの合意に達するしかない。その場合、妥協というか一定の譲歩は不可避でしょう。
 「ケリー氏の交渉、譲歩の仕方」を非難するならともかく「交渉、譲歩を否定する常岡」は拉致問題で日朝交渉を否定する巣くう会並に非常識です。
 シリアの件で大国ロシアを屈服させるなんていかに米国でも無理だろうに、常岡は何考えてるんですかね。なお常岡は「故意に無視していますが」、常岡が打倒したがってるアサド政権はロシアだけでなくイランも支援しています。

常岡浩介
 1996年に長崎県警で行われていた裏金作りを全国放送で暴露して以来、公安による嫌がらせが続いています。去年の私戦予備陰謀事件もその一貫。

 「ええ?」ですね。少なくとも私戦予備について言えば「長崎県警の裏金」云々ではなく「常岡はISの手先」と見なした公安が常岡逮捕に動こうとしたつう話でしょう。つうか当時、常岡もそう言っていたと思いますけどね。

常岡浩介
 世界の主要メディアのまともな記者たちがちゃんとした分析記事を出している中で、なぜ日本の記者だけが支離滅裂な分析しかできないのか?

さて常岡がここまで罵倒する日本の記者の記事
■トルコのシリア越境攻撃:クルドをめぐる米国との確執(川上泰徳*10)
http://www.newsweekjapan.jp/kawakami/2016/09/post-21.php
を見ましたが「反アサド派は一枚岩ではない」「『クルドは反アサドの対抗勢力として利用価値がある』と考えた米国が公然とクルド支援しているのに対し、クルドを敵視するトルコ・エルドアン政権が反発している」「一方米国はクルドを敵視し、またクーデター失敗後、独裁性を強めるエルドアン政権に反発している」「トルコはクルド打倒の為に今まで敵視していたアサド政権を容認する姿勢を見せている」「トルコや米国、クルドやアサド政権などの今後の動向が注目される」というだけの川上記事について、「反アサド派は一枚岩だ」といいたい「反アサドの常岡」が反発してるだけの話です。
 常岡の川上氏に対する悪口雑言には「いや米国やクルドとトルコの間に妥協が成立したから川上氏が言うようなクルド問題での対立は解消された」「これこれこういう理由でトルコとアサド政権の野合などあり得ない」などの具体性が何一つないのには心底呆れます。

日本人が知らない世界情勢@クルド・シリア
‏@newsfromworld15
@Acty3bom (ボーガス注:アンチ・アサドの常岡などに)アサド擁護とか言われることも多い青山弘之*11のほうが、常岡とか黒井みたいなインチキジャーナリストより全然情勢分析能力がありますよ。だって内戦当初から(ボーガス注:ロシアやイランが支援してるし、反体制派は一枚岩じゃないし、アサドも国内で一定の支持があるから?)アサドは負けないって言ってて、今正にその通りになってますから。

 ああやっぱ常岡とその類友(例:黒井某)って青山氏の事をそういう風に悪口雑言してたのか。予想の範囲内だけど。

常岡浩介
シリア少年の衝撃映像に中国メディアが「疑念」 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News http://www.afpbb.com/articles/-/3098315
:青山教授と高岡豊研究員の強力な味方が現れたよ

 青山氏や高岡氏が「シリア少年の衝撃映像は捏造」などの「アサド全面擁護発言をした*12」のならともかくそうでないなら、この常岡ツイッターはもろに青山氏、高岡氏に対する名誉毀損に該当するでしょう。
 まあ、青山氏も高岡氏も常岡のこんな発言は彼らにとって「不愉快ではあっても」ほとんど何の害もないでしょう。常岡の発言を本気にして「彼らの嫌がらせの手紙や電話が殺到する」だの「所属組織が彼らへの懲戒処分を検討する」だの言ったことはないでしょう。
 そして彼らも「実害もないのに」常岡を名誉毀損訴訟で訴えるほど暇人でもないでしょう。だから訴えはしないでしょうけどね。

常岡浩介リツイート
内藤正典*13 ‏@masanorinaito
 日本のシリア研究者*14にはアサド政権の提灯持ちが多い。

 常岡の類友で「アサド政権転覆論」の内藤の暴論ツィートです。もちろん内藤においても常岡同様、「アサド政権転覆は正義、反対する奴はアサドの犬」という実に幼稚きわまりない認識があるわけです。
 なお「シリア」でググったら以下のような本がヒットしました。常岡や内藤同様、桜木が政権転覆論であることは間違いありませんが他は分かりません*15。まあ、でも研究者である青山氏や黒木氏、末近氏や高岡氏は内藤の言う「提灯持ち」に該当するのかな?
 まあ、元シリア大使の国枝氏は少なくとも常岡、内藤、桜木ほど単純な政権転覆論ではないでしょう(当然ながらそれは常岡、内藤、桜木が国枝氏を「アサド政権の提灯持ち」扱いすると言う事ですが)。

・青山弘之『現代シリア・レバノンの政治構造』(共著、2009年、岩波書店)、『混迷するシリア』(2012年、岩波書店)、
・国枝昌樹*16『シリア・アサド政権の40年史』(2012年、平凡社新書)、『報道されない中東の真実:動乱のシリア・アラブ世界の地殻変動』(2014年、朝日新聞出版)、『テレビ・新聞が決して報道しないシリアの真実』(2016年、朝日文庫)
・黒木英充*17『シリア・レバノンを知るための64章』(編著、2013年、明石書店)
・桜木武史*18『シリア・戦場からの声』(2016年、アルファベータブックス)
・末近浩太*19『現代シリアの国家変容とイスラーム』(2005年、ナカニシヤ出版)
・高岡豊*20『現代シリアの部族と政治・社会』(2012年、三元社)
・津村一史*21『中東特派員はシリアで何を見たか』(2015年、インプレス)
・安田菜津紀*22『君とまた、あの場所へ:シリア難民の明日』(2016年、新潮社)

 さて内藤や常岡、桜木などは「アサド政権打倒」を叫び、反アサド派を美化するわけですが、それに対する異論として内藤が「アサド政権の提灯持ち」認定しているらしい「シリア研究者」青山氏の文章を見てみましょう。青山氏は「アサド政権転覆論の内藤や常岡、桜木」と違い、アサド政権転覆論については「フセイン政権打倒後のイラクのような混迷をもたらす危険がある(反体制派は呉越同舟の集団で仮にアサド政権が打倒されても仲間割れをしかねない)」、「大体、米国がIS打倒でロシア(アサド政権を支援)と共闘してる現在、アサド政権打倒論には現実性がない」、「反体制派はイスラム過激派が主流でアサド政権以上に反民主的な危険性がある」として否定的です。
 まあ青山氏のそういうところが反アサド・内藤*23によって「アサドの提灯持ち」認定される理由でしょう。俺はもちろん青山氏に共感しますし、内藤や常岡、桜木は心の底から「あいつらは、バカや」とバカにしていますが。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/aoyamahiroyuki/20160106-00053172/
■「イランとサウジアラビアはシリア紛争でどのように対立しているか?」青山弘之(東京外国語大学教授)
 中東地域における二大大国のイランとサウジアラビアがにわかに対立を深めている。2日にサウジアラビアがニムル師を含む48人を処刑すると、イランの首都テヘランで抗議デモが発生し、暴徒の一部がサウジアラビア大使館を襲撃した。これを受け、サウジアラビアはイランとの国交断絶を宣言、バハレーン*24、スーダン、クウェートといった国もこれに続いた。
 両者の関係悪化、とりわけサウジアラビアの強硬姿勢の背景には、イラン核開発問題の進展に伴うイランと米国の対立緩和、イエメン情勢をめぐる対立*25に加えて、シリア紛争をめぐる最近の動きが影を落としているとされ、イランの台頭に危機感を強めるサウジアラビアが反転攻勢に転じるための機会を窺っていたとの見方が強い。
 その一方で、両国の対立を「イスラーム教スンナ派の盟主」と「シーア派大国」の宗派対立とみなす安直な解釈も散見される。シリア情勢との関連では、スンナ派のサウジアラビアがスンナ派のシリア国民を後援しているのに対して、シーア派のイランはシーア派の一派であるアラウィー派によって主導されるバッシャール・アサド政権を支援、またサウジアラビアは、イラン・イラク・シリア・レバノンからなる「シーア派ベルト」の形成を警戒しているのだという。
 「逆立ちしたイスラーム原理主義」に依拠したこうした宗派主義的言説が、今回の対立だけでなく、中東地域の政治的事象を何ら説明し得ないことは、『「アラブの心臓」で何が起きているか』*26で詳しく述べた通りであるが、だとしたら両国は実際にどのように対立しているのだろうか?
 以下では、筆者の主要な研究対象国であるシリアでの紛争に限って焦点をあてて、両国の対立の実態、具体的にはサウジアラビアのシリア政策がどのように窮地に立たされているのかを概説する。
 サウジアラビアとイランは、シリア紛争をめぐる干渉政策をそれぞれ「人権」、「主権」に依拠して正当化している。サウジアラビアは、欧米諸国、トルコ、カタールとともに、シリア政府が「民主化」を求める国民を弾圧、無差別殺戮しているとして、アサド政権の統治の正統性を一方的に否定し、「保護する権利」を行使するかたちでその退陣と体制転換を主唱している。対するイランは、ロシア、中国、IBSA諸国*27などと同様、こうした干渉政策を「主権」侵害とみなし、シリアの内政問題はシリア国民が対処・解決すべきだと主張し、国際法や二国間合意に基づくとしてアサド政権を物心面で全面支援している。
 むろん、これらの主張が実態を伴っていないことは、サウジアラビアがシリア以上に非人道的、非民主的であることや、イランが時としてバハレーンなどの周辺諸国に対して内政干渉とも言うべき覇権主義的な政策に打って出ることを踏まえれば一目瞭然だ。だが、プラグマティクな側面から両国のシリア政策を見ると、そこには戦略の有無という点で大きな違いがあることに気づく。
 イランの政策には、ハーフィズ・アサド*28前政権以来の同盟者であるシリアの現政権、そしてその存続を可能たらしめる政治体制の維持という具体的な戦略目標を見てとることができる。制裁下のシリアへの経済・財政支援、革命防衛隊クドス旅団将兵やイラク人・アフガン人民兵の派遣に代表される軍事支援は、その是非はともかくとして、この戦略目標を実現するために行われており、これに抗するあらゆる内政干渉が主権侵害なのである。
 しかし、サウジアラビアに首尾一貫した戦略があるようには思えない。対シリア経済制裁や、アラブ連盟、国連でのシリア・バッシングがアサド政権打倒をねらったものだということは理解できる。だが、体制転換後の「民主化」に関しては、何らの具体的なヴィジョンも示されてはいない。このことは、反体制派への支援のありようにもっとも端的に現れている。
 サウジアラビアは、イスラーム軍、シャーム自由人イスラーム運動をはじめとするアル=カーイダ系・非アル=カーイダ系のイスラーム過激派を支援してきたことで知られている。「穏健な反体制派」、ないしは「自由シリア軍」として知られる反体制武装集団が脆弱ななか、イスラーム過激派に肩入れすることは、アサド政権打倒という目的に沿っていたとしても、その軍事的勝利が「民主化」とはほど遠い現実の出現を意味していることは、誰の目からも明らかである。
 むろん、イスラーム過激派を支援するサウジアラビアのシリア政策は、欧米諸国もアサド政権打倒に固執し、それを「民主化」として黙認している限り支障はなかった。だが、シリア難民・移民の欧州への流入に対する欧米諸国での関心の高まりやパリ連続襲撃事件の発生を契機として、欧米諸国が「民主化」に代えてダーイシュ(イスラーム国)に対する「テロとの戦い」を最優先に掲げ、シリアで大規模空爆を行うロシアとの連携を強めていくと、(ボーガス注:アサド政権打倒のためにダーイシュの同類といっていいイスラム過激派組織を支援する)サウジアラビアはトルコとともに疎外感に苛まれることになった。
 ロシアと欧米諸国の連携強化を受けて採択された国連安保理決議第2254号は、停戦プロセスと政治移行プロセスを同時並行で進める一方で、「テロとの戦い」を推し進めることでシリア紛争の解決をめざしている。しかし、この動きは、アサド政権の存続を前提とした秩序回復と、武装闘争に固執するすべての反体制派の殲滅をめざすロシアやイランの意図に沿って進行している。
 両国の軍事的支援を受けたシリア政府(シリア軍)は国内で反転攻勢に転じ、支配地域を徐々に拡大、各地で停戦合意を結び、ダーイシュとイスラーム過激派を排除している。サウジアラビアが後援するアル=カーイダ系・非アル=カーイダ系のイスラーム過激派は新たな合同作戦司令部を設置して抵抗を試みたが、イスラーム軍のザフラーン・アッルーシュ司令官が空爆で死亡するなど、劣勢を強いられている。
 欧米諸国は、ロシアの軍事介入がダーイシュ以外の反体制派や民間人をも標的としていると非難した。だが、軍事バランスの変化に対応するかのように、米国はイスラーム過激派と連携する「穏健な反体制派」の軍事教練を断念し、人民防衛部隊(YPG)が主導するシリア民主軍への支援を強化していった。YPGは「反体制派」ではあるが、その事実上の母体であるクルド民族主義政党の民主統一党(PYD)は、武力による政権打倒をめざすイスラーム過激派とは一線を画し、政治プロセスを通じた体制転換をめざし、ダーイシュやヌスラ戦線を含むイスラーム過激派と激しい戦闘を続けている。米国は、サウジアラビア、トルコに配慮し、イスラーム過激派を「テロ組織」とみなすことを控えてはいる。だが、ロシア、イラン、そしてアサド政権とともに、イスラーム過激派の掃討に力を注ぐようになったのである。
 こうしたなか、サウジアラビアは孤立化を回避するかのように、シリア政府と反体制派の和平交渉(政治移行プロセス)への関与を強め、12月上旬には首都リヤドで反体制派合同会合を主催した。この会合では、シリア政府との交渉にあたる反体制派統一代表団の人選を担当する最高交渉委員会が設置され、イスラーム軍、シャーム自由人イスラーム運動もこれに参加した。だが、リヤドでの会合は、トルコ政府の主張に準じるかたちで、クルディスタン労働者党(PKK)とつながりがあるPYDを排除、サウジアラビア政府もこの決定を支持した。
 これに対抗したのがイランとロシアだった。両国はシリア民主軍の参加組織や支援組織を一同に会した総会のシリア国内での開催を後援し、トルコやサウジアラビアにPYDの統一代表団への参加受諾を説得する米国と共同歩調をとった。また「ロシアと米国が、シリア民主軍、シリア軍と連携し、ダーイシュとヌスラ戦線主導の反体制派掃討を本格化か?」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/aoyamahiroyuki/20160104-00053104/)で述べた通り、ロシア、米国、そしてイランは、アレッポ県北部でダーイシュだけでなく、イスラーム過激派に対しても軍事攻勢をかけるシリア民主軍を共に支援していったのである。
 サウジアラビアとイランの対立は、ロシア、米国、そしてイランが、シリアでの「テロとの戦い」において戦略的協力関係を強め、サウジアラビアとトルコが支援してきたイスラーム過激派が「事実上のテロ組織」として扱われるようになる最中に激化した。この対立を宗派対立だとする見方は、シリアをめぐる各国の綱引きを何ら説明してはいないが、そこに政治的な意味がないわけではない。
 イスラーム過激派と関係を維持するサウジアラビアが、トルコとともに「テロとの戦い」というパラダイムのなかで、非難・疎外される「少数派」に追いやられるなか、今回の対立が「スンナ派対シーア派」として理解されれば、サウジアラビアは宗派主義というパラダイムのもとで「多数派の盟主」としてのプレゼンスを誇示できる。サウジアラビア政府がこうした意図をもとにニムル師らを処刑したかどうかはともかく、「逆立ちしたイスラーム原理主義」のもとで中東情勢を安直に理解する傾向が強い日本をはじめとする欧米諸国の近視眼が、こうした誤認に貢献していることだけは確かである。
 しかし、「トルコ人の保護」や「主権侵害阻止」を主張してロシア軍戦闘機を撃墜したトルコ政府に対する欧米諸国の対応が冷ややかだったのと同様、ニムル師処刑に伴う対立激化が、シリア情勢において劣勢に立たされたサウジアラビアにとっての起死回生の一打になることはないだろう。欧米諸国は、ロシアとともに事態の悪化を回避するための仲介に動き始めているが、こうした冷静な姿勢は、サウジアラビアのシリア政策が欧米諸国の理解や同調を得られないことを示している。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/06/post-5246.php
■ニューズウィーク日本版『米国とロシアはシリアのアレッポ県分割で合意か?』青山弘之(東京外国語大学教授)
(前略)
 「マンビジュ解放作戦」は、「北ラッカ解放作戦」と同様の陽動作戦、ないしは単なるプロパガンダかもしれない。しかし、特筆すべきは、この攻勢に呼応するかのように、ロシア軍とシリア軍が各地で「反体制派」への攻撃を激化させた点である。
 とりわけアレッポ県での攻撃は激しい。
(中略)
 こうした攻撃は、当然のことながら、多くの「民間人」を巻き込むこととなり、反体制系メディアや人権団体は「無差別攻撃」、「虐殺」といった非難を浴びせた。しかし、米国、そして西欧諸国は、「北ラッカ解放作戦」や「マンビジュ解放作戦」での「コラレタル・ダメージ」を黙殺するのと同じように、ロシア軍とシリア軍の非道な行為への批判を控えた。
 2013年夏の化学兵器使用疑惑事件以降、米国とロシアが、シリア紛争解決に向けた和平協議「ジュネーブ3会議」や、ダーイシュ、ヌスラ戦線などとの「テロとの戦い」において連携を強めていることは周知の通りである。
 「ジュネーブ3会議」が4月に事実上決裂し、米国・ロシアの合意のもとに発効した停戦(戦闘停止合意)への違反が顕著になったことで、両国は互いを非難し合いはしたが、同時に事態収拾に向けて折衝を続けてきた。
(中略)
 米国とロシアがこの間の折衝で具体的にどのような意見を交わし、そしていかなる合意に達したかは知る由もない。だが、シリア国内の戦況から明らかなのは、米国がPYD(民主統一党)と連携してダーイシュとの「テロとの戦い」を、ロシアがシリア政府と連携して「反体制派」への「テロとの戦い」をそれぞれ強化したことである。
 米国とロシアのシンクロの受益者となる紛争当事者は、言うまでもなくシリア政府とPYDであり、そこにはジュネーブ3会議において「反体制派」を主導していたはずのリヤド*29最高交渉委員会の姿はない。リヤド最高交渉委員会から脱会したシャーム自由人イスラーム運動、そして同委員会における交渉責任者の地位を手放したイスラーム軍は、米国の黙認のもと、これまで以上にシリア軍とロシア軍の空爆に曝されるようになっている。
 こうした状況は、「ポスト・ジュネーブ3会議」段階におけるシリア政治のパワー・バランスを予兆するものであり、そこでは欧米諸国が後援してきた「反体制派」は、ダーイシュ(イスラム国)、ヌスラ戦線といったテロ組織とともに阻害され、これらの組織を後援してきたトルコ、サウジアラビア、カタールはこれまで以上に困難な舵取りを迫られるかもしれない。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/07/post-5566_1.php
■ニューズウィーク日本版『ヌスラ戦線が、アル=カーイダから離脱を発表。シリアで何が起きているのか』青山弘之(東京外国語大学教授)
(前略)
 ヌスラ戦線を含むシリアの「反体制派」は、2015年9月にロシア軍が空爆を開始して以降、これまでになく劣勢を強いられるようになった。
(中略)
 クラスター爆弾、熱誘導弾、「樽爆弾」などを駆使したシリア軍とロシア軍の攻撃は、これまでは、無垢の市民を巻き込む「無差別攻撃」、「戦争犯罪」と非難されてきた。だが、時を同じくして、シリア民主軍がシリア北部のイスラーム国の主要都市の一つマンビジュ市を包囲し、有志連合がこれを支援するかたちで激化させた空爆で多数の一般住民が犠牲となるなか、欧米諸国は、自らがもたらす「コラレタル・ダメージ」(編注:やむを得ない民間人の犠牲)が触れられることを嫌うかのように、シリア軍やロシア軍への批判を控えた。
 米国、ロシア、シリア政府、シリア民主軍の「呉越同舟」によって苦境に立たされるようになった「反体制派*30」は、これまで以上に合従連衡を強めた。
 そのなかには、米国が支援する「ヌールッディーン・ザンキー運動」や「第13師団」などのいわゆる「穏健な反体制派」だけでなく、サウジアラビア、トルコ、カタールが後援する「シャーム自由人イスラーム運動」、「イスラーム軍」といったイスラーム過激派がいたが、その中核を担うようになったのがヌスラ戦線だった。
 ところで、本稿で筆者が「反体制派」をカッコ(「 」)付きで呼ぶのは、こうした「反体制派」の実態を踏まえてのことだ。「反体制派」というと、「独裁」に抗い、「民主化」をめざす「革命家」、ないしは「フリーダム・ファイター」をイメージしがちだ。だが、このイメージに合致するような組織は「シリア内戦」当初から泡沫で、彼らはイスラーム過激派と連携し、その傘下で活動することでのみ存続してきた。「シリアのアル=カーイダ」であるヌスラ戦線を含むイスラーム過激派こそが「反体制派」の実体をなしてきたといっても過言ではない。
 ヌスラ戦線、イスラーム過激派、「穏健な反体制派」からなる「反体制派」のスペクトラに対して、諸外国の対応はさまざまだ。ロシアは、ヌスラ戦線とそれ以外の「反体制派」を区分できないと主張し、シリア軍とともに激しい空爆を行ってきた。それがイスラーム国に対する空爆より格段に大規模であることは、欧米メディアが報じてきた通りだ。
 これに対して、米国は自らが支援する「穏健な反体制派」を擁護するかのように、両者の峻別は可能だと主張し続けてきた。だが、ヌスラ戦線を含む「反体制派」の一体化が公然となるなかで、その姿勢には変化が見られている。
 米国は、イスラーム国だけでなく、ヌスラ戦線への空爆でも、ロシアとの連携強化に向けて動こうとしている。有志連合がヌスラ戦線への直接空爆を本格化させるにせよ、ロシアによる空爆を黙認するにせよ、両国の連携がかたちを得れば、ヌスラ戦線が他の「反体制派」とともに窮地に立たされることは避けられない。こうした事態に対処するための「秘策」として、ヌスラ戦線はアル=カーイダとの関係解消に踏み切り、「国際テロ組織」から「革命家」へと転身することで「反体制派」のなかに紛れ込み、空爆を回避しようとしたのである。
 この「秘策」は、ヌスラ戦線自身が発案したものではなく、サウジアラビア、トルコ、カタールが画策してきたものだ。この3カ国は、「反体制派」支援策をめぐって共同歩調を強めるようになった2015年初め以降、ヌスラ戦線を含むイスラーム過激派に対してアル=カーイダからの「離反」を奨励してきた。これを受け、例えば、アル=カーイダのメンバーらによって結成されたシャーム自由人イスラーム運動が、アル=カーイダとの関係を否定するようになった。このように「革命家のフリ」をすることで、イスラーム過激派は、軍事面、資金面、そして外交面での支援を公然と受けられるようになった。
 ヌスラ戦線も、この3カ国から陰に陽に支援を受けてきた点では変わりがない。事実、彼らは2015年春、シャーム自由人イスラーム運動などとともにファトフ軍を結成し、イドリブ県掌握を主導した。だが、シリア軍とロシア軍の反転攻勢により、こうした勢いは失われてしまった。
 パン・アラブ日刊紙『ハヤート』(7月29日付)は、アル=カーイダとの関係解消を条件に「域内諸国」がヌスラ戦線に1,000万米ドルの追加支援を約束したと報じている。その真偽は定かではないが、ヌスラ戦線が今になって「革命家のフリ」をするようになったのは、旧知の支援国であるサウジアラビア、トルコ、カタールからの支援の公然化とその増強を望んでいるからだとも考えられる。
 だが、狙いがどのようなものであれ、「秘策」が成功する可能性は低いだろう。ヌスラ戦線が「反体制派」と糾合することは、「反体制派」の殲滅をめざすシリア政府やロシアの主張をこれまで以上に説得力を与えるだけだ。米国もロイド・オースティン前中央軍司令官が、ヌスラ戦線は名称変更にかかわりなくアル=カーイダの一派であり続けると早々に発言しており、「秘策」を意に介そうとはしない。
 サウジアラビア、トルコ、カタールの動きも鈍い。これまでは「反体制派」の形勢が不利になるたびに、トルコ国境から多数の戦闘員、武器弾薬が流入してきた。しかし、トルコが、ロシア軍戦闘機撃墜事件(2015年11月)に対する謝罪を機にロシアとの関係改善を模索するなか、同国を経由した支援は、アレッポ市東部の「反体制派」の完全包囲という危機的事態にもかかわらず今のところ確認されていない。
 「反体制派」のなかに紛れ込み、「革命家」として支援を受けることで生き残りを図ろうとするヌスラ戦線。「テロ組織」の汚名を返上したヌスラ戦線の「軍事的傘」のもとでの存命を模索する「反体制派」。「シリア革命」が「テロ組織」にハイジャックされたとみなすか、「革命」が「テロ」に依存するようになったとみなすか、政治的な立場によって解釈は異なろうが、こうした状況こそが「シリア内戦」の悲劇的な末路を示している。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/08/post-5712.php
■ニューズウィーク日本版「トルコのクーデタ未遂事件後、「シリア内戦」の潮目が変わった」青山弘之(東京外国語大学教授)
 シリア北東部のハサカ市で8月16日、シリア政府を支持する民兵組織「国防隊」と西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)の治安警察「アサーイシュ」が交戦状態に入り、同地の緊張が一気に高まった。
(中略)
 突如発生したこの新たな動きは、「シリア内戦」において何を意味するのか?
(中略)
 小競り合いはこれまでにも散発していたが、シリア軍とロジャヴァの武装部隊「人民防衛部隊」(YPG)が介入したことで全面衝突に発展した。
(中略)
 シリア軍の空爆がYPGへの教練・技術支援を行う米特殊部隊の拠点近くに及んだとの理由で、米国が介入し、同軍戦闘機がシリア軍機に対してスクランブル(緊急発進)をかけた。シリア政府とロジャヴァの武力衝突、そして米軍の威嚇行動はいずれも「シリア内戦」下で初めてのことだった。
 両者の対立は、ロシアの仲介によって23日未明に停戦合意が発効することで収束した。その結果、ロジャヴァはハサカ市の90%を掌握、一方のシリア政府は同市からの軍の完全撤退を余儀なくされ、政府関連施設がある中心街を除くすべての支配地域を失った。
 ロジャヴァはシリア北東部や北西部を実効支配する暫定自治機関だが、それを主導するクルド民族主義政党の民主統一党(PYD)は「シリア内戦」において特異な地位を占めてきた。
 PYDはアサド政権打倒を主唱している点で反体制組織ではある。だが、武力ではなく政治プロセスを通じて体制転換をめざすことで、いわゆる「反体制派」とは一線を画してきた。彼らはまた、「イスラーム国」だけでなく、このいわゆる「反体制派」と敵対し、武力衝突を繰り返してきた。ここでいうカッコ「 」付きの「反体制派」とは、アル=カーイダ系の「シャーム・ファトフ戦線」(旧ヌスラ戦線)や「シャーム自由人イスラーム運動」といったイスラーム過激派が主流をなす勢力を指し、この言葉からイメージされる「フリーダム・ファイター」はイスラーム過激派に依存することで延命している周縁的存在に過ぎない。
 (ボーガス注:アサド打倒を唱えても『いわゆる反体制派』とは共闘しない)ロジャヴァの政治姿勢は、「反体制派」をテロリストと断じて「テロとの戦い」を推し進めてきたシリア政府、ロシア、そしてイランとの戦略的連携を可能とした。
(中略)
 一方、米国は、アサド政権に武力を行使しないロジャヴァを「反体制派」と認めようとはしなかった。だが、シリア国内でイスラーム国に対する「テロとの戦い」を開始した2014年9月以降、徐々にロジャヴァとの協力を深めていった。
(中略)
 ロジャヴァは(中略)存在感を増していった。
 シリア政府とロジャヴァの武力衝突は、米国には、ロジャヴァの「反体制派」への転身という歓迎すべき動きに見えたかもしれない。だが、その台頭を快く思わない当事者がいた。トルコである。
 トルコは、クルディスタン労働者党(PKK)の元メンバーが2003年に結成したPYDをPKKと同じテロ組織とみなしてきた。
(中略)
 国内でPKKとの戦闘が激化するなか、シリア政府に対する以上にロジャヴァへの敵意を露わにするようになった。
 2015年8月、トルコは米国との合意のもと、ロジャヴァが支配するユーフラテス川以東とアレッポ県北西部のアフリーン市の間に位置する一帯を「安全保障地帯」に設定し、この地域へのロジャヴァの進入が「レッドライン」にあたると主張、米国やロシアの介入を阻止しようとした。しかし、この結果、同地は緩衝地帯と化し、イスラーム国に侵食されてしまった。
 トルコの戦略は、イスラーム国に活動の場を与える「テロ支援」と非難されるべきものではある。だが、同国がイスラーム国ではなくPKKを国家安全保障上最大の脅威として認識していることは承知しておく必要がある。さもなければ、トルコがPKKとの「テロとの戦い」のために、イスラーム国との「テロとの戦い」を猶予している事実は理解できない。
 とはいえ、イスラーム国との「テロとの戦い」を中東政策の基軸に据える米国が、トルコの「(ボーガス注:クルドをIS以上に敵視し、クルド打倒のためならIS攻撃も自粛する、トルコ版)テロとの戦い」を尊重するはずもなかった。米国は「シリア民主軍」を名乗る武装連合体に対して、空爆による航空支援や特殊部隊による技術支援を行い、最近では、アレッポ県東部におけるイスラーム国の拠点の一つマンビジュ市の解放が実現した。だが、シリア民主軍はYPGを主力部隊として構成されており、米国のシリア民主軍支援とは、トルコにしてみれば「テロ支援」に等しかった。
 一方、ロシアにとっても、トルコの「テロとの戦い」は容認できなかった。シリア領内で空爆を開始して以降、ロシアはトルコがイスラーム国やヌスラ戦線を支援していると非難、国境地帯で「反体制派」への空爆を繰り返した。2015年11月のロシア軍戦闘機撃墜事件はこうしたなかで発生、両国関係は一気に冷え込んだ。だが、ロシアの強引なシリア介入策にトルコが抵抗し得るはずもなく、トルコが支援してきた「反体制派」は、シリア軍とYPGの反転攻勢を前に劣勢を強いられるようになった。7月末のシリア軍によるアレッポ市東部包囲はこうした流れのなかで生じたものだった。
 だがここへ来て、「シリア内戦」の潮目が再び変わり始めた。きっかけは、7月のトルコでの軍事クーデタ未遂事件だ。事件を機に、これまでにも増して強権的な支配を強めるようになったエルドアン政権に対し、欧米諸国からは批判的な反応が相次ぐようになった。その一方で、ロシア(そしてイラン)は、事件直後に同政権への支持を表明し、接近を図った。トルコはこれに先だってロシア軍戦闘機撃墜事件について正式に謝罪し、関係改善に向けた布石を打っていたが、8月9日にエルドアン大統領とプーチン大統領の首脳会談が実現、「シリア内戦」に介入を続けてきた諸外国のパワー・バランスに微妙な変化が生じ始めた。
 この変化とは、トルコとロシアがそれぞれ推し進めてきた二つの「テロとの戦い」の擦り合わせをもたらそうとしているかのようである。より明確に言うと、ロジャヴァと「反体制派」への両国の関係見直しの兆しが現れているのだ。ハサカ市での武力衝突とは、おそらくはその予兆を察したロジャヴァとシリア政府のリアクションの一環として起こったと解釈できる。
 二つの「テロとの戦い」の擦り合わせの兆しは他にもある。ロシアは、ジュネーブでの和平協議へのPYDの参加に固執してきた従来の姿勢を軟化させるかのように、2月にモスクワに開設されていたはずのロジャヴァの代表部は存在しないと発表した。また、シリア政府は「愛国的反体制派」と呼んでいたPYDを、トルコに倣ってPKKと名指しし、その行為を厳しく指弾するようになった。
 対するトルコは、国境地帯におけるイスラーム国最後の拠点であるジャラーブルス市をYPGに先んじて掌握すべく、完全武装した「反体制派」戦闘員1,200人を同地に派遣した。20日にトルコ南部のガジアンテップ市でイスラーム国によると思われる爆弾テロ事件が発生すると、トルコはジャラーブルス市一帯を越境砲撃し、地上部隊を進攻させ、「反体制派」による同市制圧を後押しした。「フーフラテスの盾」と名づけられたこの作戦は、イスラーム国の掃討を目的としていたが、トルコ軍が重点的に攻撃したのは、(ボーガス注:既にYPGが支配する)マンビジュ市と(ボーガス注:トルコが支配しようとする)ジャラーブルス市を結ぶYPGの進路だった。
 なお、ジャラーブルス市を攻略した「反体制派」は「シャーム軍団」、「スルターン・ムラード師団」、「ヌールッディーン・ザンキー運動」など、アレッポ市での攻防戦でアル=カーイダ系組織と共闘する組織ではある。だが、トルコは「反体制派」によるアレッポ市東部の解囲前後から、アル=カーイダ系組織への支援を控えるようになっているとされ、また移行プロセスにおいてアサド政権の役割を認めるといった政府首脳の発言も顕著になっている。
 むろん、これらの予兆は、単なる善意の表明に過ぎず、各当事者の対応には根本的な変化は生じていないかもしれない。だが、少なくとも、一連の動きの変化のなかで再認識し得るのは、「シリア内戦」の主人公であるはずのシリアの主要な政治・軍事主体、そして言うまでもなく市井のシリアの人々が、諸外国の利害のもとで恣意的に解釈される「民主化」や「テロとの戦い」に翻弄されるようになって久しいという事実だ。
 「シリア内戦」における「民主化」や「テロとの戦い」という大義は、欧米諸国や日本も含めたすべての当事者にとって実態のないプロパガンダに過ぎず、そうしたプロパガンダのもとで自己正当化されるだけの正義や道徳をもってしては、シリアの現状は到底理解できないのである。

http://courrier.jp/news/archives/60484/
■クーリエ・ジャポン『「危機の本質は、ISでもテロでもない」気鋭の中東政治研究家が提言!』
 2015年9月に始まったロシアの空爆により、IS(いわゆる「イスラム国」)は衰退の一途をたどっています。
 最近では、2016年6月にイラク軍がISの支配地域ファルージャを奪還するなど、その領土は徐々に縮小し、軍事的な影響力も失いつつあります。
 「現在の中東情勢の混乱の原因であるISが弱体化すれば、この地域に安定が訪れるのではないか」
 そう考える向きもあります。しかし残念ながら、状況はそれほど単純ではありません。
 むしろISの弱体化は、中東地域の「新たな悲劇」の始まりだと言っていいでしょう。
 シリア内戦は、当初「国民を弾圧する非人道的なアサド独裁政権」とそれに対立する「民主化を求める反体制派」という単線の構図で捉えられ、その混乱に乗じて台頭してきた国際的テロリスト集団「IS」が事態を悪化させたと理解されてきました。
 ですが実像は、この3者を自国の政治ゲームに利用しようとする欧米やロシア、中東各国が介入する「国際紛争」なのです。
 そもそもISは、シリア内戦のなかでは反体制派の一つに過ぎない存在でした。それが「世界共通の敵」に成り上がったのは、欧米が泥沼化した紛争の出口戦略を探していたからです。
 欧米は、当初「シリアの民主化」を楯に内戦に介入してきましたが、その大義名分を維持しながら対シリア政策を転換するには別の論理が必要でした。
 それがISに対する「テロとの戦い」だったのです。
 つまりISは、各国の利権が複雑に絡み合う状況において、「世界に脅威をもたらす残虐な武装集団を倒そう」と、国際社会を一致団結させるために欧米に利用されたのに過ぎません。
 そして、これを逆手にとったロシアが(ボーガス注:IS打倒を口実に)シリアに全面空爆を行い、干渉を強めました。その結果、今日のISの弱体化があるのです。
 しかしながらその脅威が薄まったいま、シリア内戦に介入していた各国は、再び自分たちの政治的な利権を追求する行動に腐心するようになっています。
 たとえば、イランと組んでアサド政権を支援するロシアは、シリア政府に敵対するものはすべてテロリストとみなして容赦なく攻撃し、IS以外のアルカイダ系の組織、そしてそれと共闘する反体制派を劣勢に陥れています。それによって、シリアにおけるプレゼンスを高め、政治的な影響力をさらに強固なものにしようと企んでいるのです。
 サウジアラビアは反アサドを掲げ、これと戦うアルカイダ系の組織を含む反体制派への支援を強化していましたが、こうしたロシアの台頭を前に手をこまねいています。
 シリア、イラクと国境を接するトルコは、反アサドを理由に国内のクルド民族主義者が率いる「PYD」(民主統一党)とその傘下の「YPG」(人民防衛隊)を駆逐しようとしています。
 そのためISとの戦いに参戦する「フリ」をしながら、YPGと敵対する「ヌスラ戦線」など反体制派への支援を強め、最近ではシリア領内に地上部隊を派遣しています。
 YPGはISというテロリストと戦ってはいますが、トルコはこれをPKK(クルディスタン労働党)と同じテロリストとみなし、安全保障上の脅威だと考えているのです。
 当事者国のなかで一番優柔不断な態度を見せていた米国は、この内戦介入で「世界の警察」の立場を放棄。2014年9月から有志連合を率いて空爆を始めるも、ロシアの参戦があるまでは、大きな成果を挙げられていませんでした。
 まもなく大統領選を控えた米国の存在感は、よりいっそう脆弱になるでしょう。
 (ボーガス注:イラン、ロシア、トルコ、サウジと言った)他の当事者国たちは、大統領選挙で米国の責任者が事実上不在となる2016年11月〜2017年1月にかけて、自分たちの政治的利権を拡大しようといまから着々と準備をしています。
 今後のシリア情勢では米国は蚊帳の外に置かれ、アサド政権を支援するロシア、そしてヌスラ戦線をはじめとする反体制派に影響力を持つトルコが、いい意味でも悪い意味でも主導的な役割を担うことになるでしょう。
 シリア内戦が泥沼化した原因の一つに、この国がもともと中東のパワーバランスを保つ重要な立ち位置を占めていたことが挙げられます。
 もともと中東は、欧州でのユダヤ人迫害の結果作り出されたイスラエルという「異質な存在」のせいで、放っておいてもすぐにきな臭くなる地域でした。
 そんな状況でアサド政権は、イスラエルやそれを支援する欧米諸国と対立し、イスラエルに抵抗するパレスチナ諸派やレバノンのヒズボラを支援してきました。しかしその一方で、自国が巻き込まれるような全面戦争を回避するために国際社会のなかで巧みに立ち回り、紛争の範囲や強度を調節する「安全弁」のような役割を果たしてきたのです。
 またシリアは欧米に対する外交政策において、「口げんかはするけど、決して手は出さない」という態度を崩しませんでした。つまり、表向きには米国と対立する姿勢を見せていましたが、その裏では中東地域での相互の利益を最大化するために協調的に振る舞う、「友好的な敵対関係」を維持してきたのです。
 歴史的、地政学的に重要な役割を果たしてきたシリアは、欧米からも周辺からも非常に利用価値が高い存在でした。そのためシリア内戦は多くの国が干渉し、複雑化したのです。
 シリア情勢が変わるにつれて、テロ組織も自らを“バージョンアップ”させようとしています。
 たとえば、シリアのテロ組織であるヌスラ戦線は、これまで支援を受けてきたアルカイダからの離脱を発表しました。アルカイダはテロリスト業界では世界的なブランド。資金や情報といった恩恵を受けることができるし、この看板を掲げていたほうが、戦闘員のリクルートにも有利です。
 では、離脱の目的は何なのか?
 ヌスラ戦線などのテロ組織は、ロシア軍が空爆を開始して以降、これまでにない劣勢を強いられるようになりました。この窮地を脱するため、ヌスラ戦線はアルカイダとの関係解消を表明し、「ファタフ戦線」に名称を変更。「自由シリア軍」として知られる組織とよりあからさまに共闘するようになりました。
 彼らは巧みにに「看板」を変えることで、アルカイダへの関与を隠し、国際社会が定めたテロリスト一覧から外れることで制裁や追及を逃れようとしているのです。
 「国際的なテロ組織」から一転して、民主化を夢みる「革命家」を装うことで「反体制派」のなかに紛れ込めば、空爆されたときに国際社会から同情を得ることができますし、軍事面、資金面、そして外交面での支援を公然と受けることもできます。
 こうした「テロリストの進化バージョン」は、いわゆるグローバルジハードの新しい潮流と言えるかもしれません。
 西側諸国の政治的利権をめぐる戦いは、シリア内戦の和平交渉にも大きな影響を及ぼしています。
 そもそも、「和平」という言葉に語弊があります。2016年8月、ジュネーヴで和平交渉が再開されましたが、ここは紛争の当事者国が内戦に介入したことで獲得した権益を主張し合う場になっていますから、これではシリアに平和がもたらされるはずがありません。
 しかも、この交渉には構造的に大きな問題があります。
 欧米諸国は対話の当事者として、アサド政権と反体制派を同じテーブルに座らせようとしていますが、この「反体制派」がそもそも存在しないのです。
 「シリア内戦は、民主化を求める反体制派が引き起こしたものではないのか」と、疑問に思われるかもしれません。しかし、シリアで起きた「アラブの春」は市民運動で、政府と政治的な交渉ができるような確固たる勢力ではありませんでした。
 そのため、欧米は、ロシアやアサド政権がテロ組織とみなすイスラム過激派を反体制派とみなそうとしているのです。「シャーム自由人」「イスラム軍」といった組織がそれに当たりますが、彼らはいまや改称したヌスラ戦線と公然と共闘しています。
 「民主化」を理由に介入する米国は、「穏健な反体制派」と呼ばれる勢力に軍事訓練を施しました。
 しかしながら、この勢力はイスラム過激派と常に共闘しており、この支援は結果として「テロリスト予備軍」を養成するに等しい行為とも言えます。
 つい数ヵ月前までは、米国とロシアは、軍事力ではなく、政治プロセスを通じてアサド政権を打倒としてきたPYDを反体制派の席に座らせようと画策していました。
 しかし、PYDをテロ組織と見なすトルコ、そしてサウジアラビアがこれに強く反対しています。
 PYDは、シリアの政治において実態として存在する事実上、唯一の「反体制派」でしたが、2016年8月半ばのPYDとアサド政権の全面武力衝突、そして同月末のトルコ軍とPYDとの本格交戦を受けて、(ボーガス注:トルコを支援する)米国と(ボーガス注:アサドを支援する)ロシアはPYDへの支援を弱めつつあり、彼らが和平協議に参加できる環境ではなくなってしまっています。
 このように、21世紀に入ってから、中東は「民主化」と「テロとの戦い」という欧米の2つのロジックの間で翻弄され続けてきたのです。
 権力が(ボーガス注:米ソに)二極化していた冷戦期や、米国が唯一の超大国として君臨していた時代にも、中東地域では、幾度となく戦争や紛争が発生していましたが、いまと比べればまだ小康状態を保っていたと言えるのかもしれません。
 ところがいまは、こうした小康状態を維持できるような圧倒的な力を持つ国家や陣営がありません。
 いくつかの有力国が濫立して自国の権益を追求しているさまは、19世紀に列強が植民地や勢力圏の拡大を競い合い、中東やアフリカを分割・領有した帝国主義の時代を彷彿させます。
(中略)
 現在のように超大国がなく有力国が牽制しあうパワーバランスにおいても、各国が自国の政治的利権を獲得するため、中東地域を分断し、利用しようとしているのです。
19世紀のような権力争いに再び巻き込まれた中東地域の混迷は、それゆえ容易に終息しないでしょう。
 シリアの混迷やISの台頭によって、テロが頻発し、膨大な数の難民が押し寄せている欧米も、一見、シリアを政治ゲームに利用した大きなツケを払っているように見えるかもしれません。
 しかし、こうした二次被害を鑑みても、シリアに安定化をもたらすより放置して「生殺し」にすることに、欧米はまだ「旨み」を感じています。
 欧米は難民・移民のほんの一部を受け入れて人道主義を振りかざしていますが、その一方で自分たちの思い通りの政治的権益や石油などの資源は得ているように思えます。
 当事者国がシリアの和平に奔走しているように見えるのは錯覚で、実際のところシリアの安定化には程遠く、今後も問題は野放しにされたまま。
 シリアに、そして中東に平和が訪れることは、当分ないでしょう。
 ここで(ボーガス注:クーリエジャポンの特集)「イスラム危機3.0」の特集ラインナップを見ていきましょう。8月30、31日掲載の「米軍から100万ドルを奪った少年」は、米軍から巨万の富を横領したアフガニスタン人の少年のルポルタージュです。
 最近、日本でそのニュースが報じられることはほぼなくなりましたが、アフガニスタンでも依然として内戦が続いています。
(中略)
 つまりアフガニスタン戦争は、いま中東で起きている危機のプロトタイプで、中東は「アフガン化」していると言えます。中東は、「テロとの戦い」と「民主化」という欧米の大義名分に翻弄され続けているのです。
 9月1日掲載の「NYからイエメンに渡ったiPhoneで切り取られた現実」では、米国で紛失したiPhoneのiCloudにイエメンの暴力的な日常を映し出す画像が次々とアップされる謎が描かれます。
 アラブの春の煽りを受けて、やはり2011年に民主化運動が起きたイエメンでは、長期独裁政権が崩壊した後に就任したハディ大統領が、新憲法の制定を進めて安定化の道を歩むかのように見えました。
 ところが、イスラム教シーア派の反体制派が、憲法草案の内容に不満を募らせて2014年に首都サヌアを武力で制圧。
 これに対し、サウジアラビアをはじめとするアラブ諸国がハディ政権を支援し、イランがシーア派の反体制を支援する代理戦争に陥り、内戦は長期化しています。
 イエメンでもシリアに負けず劣らずの深刻な人道危機が続いているにもかかわらず、アフガン同様、そのニュースは国際的にほとんど無視されています。
 なぜ報じられないかといえば、オーディエンスが見たがらないこれらの話題を、メディアが「自己規制」しているから。
 最近、アレッポの爆撃現場から救出された血まみれの幼い男の子、オムラン君の写真が大きな話題を呼びました。
  しかし、国連難民高等弁務官のフィリッポ・グランディは、「オムランのような少年はシリアにはごまんといる。なぜ彼だけが特別扱いされるのかわからない」という声明を出し、メディアの安易な報道姿勢を批判しました。
 たしかに最近の中東のニュースで注目されるのは、「戦争の犠牲になったかわいそうな子供」か「ISを脱退した外国人兵士の身の上話」、そして「外国人の拉致」。ほぼこの3点につきると思います。
 オーディエンスもメディアも、わかりやすく情動に訴えるようなニュースばかりをほしがり、その背景を論理的に分析するような報道はないがしろにされているとしか思えません。
 そして、オムラン少年のニュースから10日、すでに彼のことを報じるメディアはほとんどなく、すでに過去のこととして忘れ去られています。
 9月2日掲載の「トルコに残るリベラル紙の奮闘」では、トルコで政府批判を繰り広げる唯一のメディア「Cumhuriyet」が政府の言論統制に苦しむ姿が描かれ、言論の自由を侵害するエルドアン*31大統領が厳しく批判されています。
 イスラム諸国のなかでは安定を保ってきたトルコも、テロの頻発や経済不振により、情勢が不安定化。「その原因はすべてエルドアンの独裁体制にある」と非難するのが欧米メディアの最近の傾向です。
 トルコの動きは欧米には確かに不利かもしれませんが、「テロとの戦い」を考えた場合、あるいはIS対策に代表されるような高度な情報統制や諜報戦略を必要とする政策を打つに際しては、エルドアンの独断主義やリーダーシップは必ずしも、西側にはマイナスになりません。
 トルコは、クーデタ未遂以降、外交方針に若干の変化が見られますが、この変化が欧米の安全保障にプラスの結果をもたらせば、彼らはいとも簡単にトルコへの否定的評価を撤回するかもしれません。
 これまで我々は、トルコを好意的に見てきました。「民主化」「人権」というロジックは、実は我々の利益にとって都合のいいように使われるものだということを踏まえたうえで、トルコの変化を冷静に見続ける必要があると思います。
 私たちは報道の真意やプロパガンダというものに対し、もっと敏感で批判的であるべきなのです。

*1:財務相、国防相などを経て大統領

*2:外務次官、国連大使などを経て外相

*3:ISのこと

*4:ウクライナ内部にある自称独立国だがロシア以外の国が独立を認めていない

*5:著書『日米同盟の正体』(2009年、講談社現代新書)、『日本の国境問題:尖閣・竹島・北方領土』(2011年、ちくま新書)など

*6:実際そうか知りませんが

*7:カギ括弧がついてるのはロシアやシリアは故意だと批判し今のところ「故意か誤爆か」判断できる決定的根拠がないからです。

*8:支配と言ったら言い過ぎかもしれませんが自民党が万年与党の日本だって「議会やメディア」と政権与党の力関係が、中露とどれほど違うんでしょうか?

*9:仮に可能だとしてもISを完全に撲滅してない時点でそれをやるとISを有利にしかねないという問題もあります。

*10:著書『イラク零年:朝日新聞特派員の報告』(2005年、朝日新聞社)、『現地発エジプト革命:中東民主化のゆくえ』(2011年、岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと』(2012年、岩波書店)、『中東の現場を歩く:激動20年の取材のディテール』(2015年、合同出版)

*11:ジェトロ(日本貿易振興会)アジア経済研究所研究員、東京外国語大学准教授などを経て東京外国語大学教授。個人サイト(http://syriaarabspring.info/aljabal/)。

*12:小生の知る限りそんな事実はありませんし、常岡もそのような事実を指摘してはいません。もちろん「アサド政権転覆論に賛同しないことは「アサド支持」ではありません。

*13:著書『ヨーロッパとイスラーム:共生は可能か』(2004年、岩波新書)、『イスラムの怒り』(2009年、集英社新書)、『イスラム・癒しの知恵』(2011年、集英社新書)、『イスラームから世界を見る』(2012年、ちくまプリマー新書)、『イスラム戦争:中東崩壊と欧米の敗北』(2015年、集英社新書)など

*14:具体的に誰のことなんですかね。まあ名前出したら確実にケンカになるでしょうが。

*15:追記:青山氏についてはアサド政権転覆論に否定的なことが後で分かりました。

*16:ベトナム・ホーチミン総領事、ベルギー公使、カメルーン兼チャド兼中央アフリカ大使、シリア大使など歴任

*17:東京大学東洋文化研究所助手、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助手、助教授を経て、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授。

*18:個人サイト(http://t-sakuragi.com/)

*19:立命館大学教授。個人サイト(http://www.suechika-kota.net/)。著書『イスラーム主義と中東政治:レバノン・ヒズブッラーの抵抗と革命』(2013年、名古屋大学出版会)

*20:中東調査会研究員

*21:共同通信記者

*22:個人サイト(http://www.yasudanatsuki.com/)。著書『それでも、海へ:陸前高田に生きる』(2016年、ポプラ社)

*23:恐らく内藤だけでなく常岡や桜木も、青山氏に対する敵対的な態度は同じでしょうが。

*24:一般にはバーレーンと表記される。

*25:ウィキペ「イエメン」によればイエメンは内戦状態で、サウジは「ハーディー暫定大統領一派」を、一方イランは、ハーディーと対立する「イスラム教シーア派の武装組織フーシ」及び「サレハ前大統領一派」を支援している。それにしても同じ内戦なのにシリアばかり注目され、イエメンがあまり注目されないのも本来おかしな話です。

*26:2014年、岩波書店

*27:IBSAとは「インド、ブラジル、南アフリカ」のこと。IBSAに中国とロシアを加えればBRICSになる。つうか何で青山氏が「BRICS5カ国」と書かないで「ロシア、中国、IBSA3カ国」と書くのかよく分からない。

*28:バッシャール・アサド(現シリア大統領)の父。国防相や首相などを経て大統領

*29:サウジアラビアの首都

*30:まあ米国が支援するシリア民主軍(クルド人が主体らしい)も広い意味では「反体制派」です。

*31:イスタンブル市長、首相を経て大統領