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JAXAはモテ期に突入している

今日は、はやぶさのカプセル内のキュレーションについての定例会見があった。今朝早く、読売新聞が「地球外物質の可能性がある微粒子を発見」とやったため、明日の予定だったのがくり上げになった形。

会見の内容はというと、「新たに電子顕微鏡を使って調べ始めたところ、さらに100個程度の微粒子が見つかった」というもの。しかし微粒子は今までも見つかっているし、それがイトカワのものかもしれない点も変わらない。つまり一歩ずつゆっくりと、しかし着実に進んでいますよという話である。読売の記事は、新しく微粒子が見つかったとは伝えているけれど、記事のトーンは実態よりも大ごとにしてしまっていると感じる。それでもこうやってニュースになると、周囲の我々は色めき立ってしまうのだった。

実は今回のキュレーション会見、もともとは来週の火曜日の予定だった。それがまず今週の木曜にくり上がっていた。

これは想像なのだけれど、読売の記者は「日程がくり上がったということはなにか新しい発見が?」と思って取材をしたんじゃないだろうか。

でもそうやって、各社が次々と取材を申し込んでいては、研究者が本来の仕事ができなくなってしまう。だからこそ、キュレーションの定例会見を行うようになった経緯がある。

にもかかわらず今回のように、いざ何かがありそうな雰囲気が出てしまうと抜けがけするメディアが出てきてしまった。これでは定例会見を開く意味がなくなってしまう。

じゃあその「何かがありそうな雰囲気」の原因、つまり会見が木曜にくり上がった理由はなんだったのか。微粒子が新たに100個見つかったのを早く伝えたかったから…ではない。会見後聞いてみたら「来週の火曜では登壇者の都合が悪くなったため」とあっさりした答えだった。木曜日へのくり上げを知らせるプレス向けの連絡では、くり上げの理由は特に書かれていなかった。そこを聞いたら「理由について問い合わせがあればお答えしていました」と、やはりあっさりしたものだった。

さて、ここがなかなか難しいところだと思う。

JAXAのはやぶさ周辺には今、世間の注目が集まっている。そしてJAXA自身がその注目度を計りかねているように感じる。まるで急にモテ期に入った人みたいに。

モテ慣れていない人が異性と来週の火曜に食事の約束をした。その後都合が悪くなり、理由は話さずただ「今週の木曜にくり上げてほしい」とだけ連絡する。こうなると相手は「来週まで待てないってこと?」なんて、ついつい期待してしまうではありませんか。

「仕事の都合があって」と一言加えることで、相手のトーンが変に上がりすぎずにすむ。もとからモテる人はそういうところをきっちり押さえるのだけれど、慣れていない人はなかなかそこまで気が回らない。ほかの人に「気を持たせるようなことをしないの!」と言われてしまうような状況だ。

そんなものを今のJAXAには感じるのだった。

それはさておき、はやぶさは実に気をもませてくれるが、そのぶん大いに楽しませてくれるプロジェクトであると思う。

なにしろ、地球帰還はトラブルで3年も遅れたけれど、結局ちゃんと帰ってきた。長い間待っていたから、帰還の1か月くらい前に最後の精密調整(TCM)に入ったあたりで「このままでは本当に帰ってきちゃう」と変な思考がわいてきたりした。

今注目のカプセルの中身も、イトカワの砂がザクザクではないけれど、かといって空っぽともいえずまだわからない。カプセル内に2つある部屋のうち、構造上先に開けることになったのは、イトカワの砂が入っている可能性がどちらかといえば低そうなA室だった。

決定的にもうダメとはならない代わりに、本当のうれしいことはできる限り後回しにされている気分になる。

つまり、そういうところがはやぶさのモテの理由なのだな。