シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

法人税減税とか云っているヤツはブタのエサ

ども。睡眠不足が続くシートンです。
昨今、消費税増税と共に騒がれているのが、法人税減税ですね。社民党・共産党は反対していますが、他の政党は小異はあれど法人税減税に賛成しているようです。
その理由が、「他国に比べて日本の法人税は高すぎる。国際競争力を維持し、企業の海外移転を防ぐために減税が必要だ」というものです。
まあ、企業経営陣が言うのは判ります。連中はどうやったって支出を抑えたいでしょうから。
でも、貧乏能無しのボンクラどもが「消費税上げろ、法人税を下げろ」とか云っているのを見掛けると(ブクマでは大量に見掛けますよね?)、ああ、コイツら相変わらずボラレ放題だなぁ、バカは度し難い。と嘆息してしまいます。そんな脳みそじゃ、オマエらブタのエサ決定だよ?


で、消費税に関してはkojitakenさんと地下猫さん達が秀逸なエントリーを載せているので、私は法人税減税を叫ぶことがいかにくだらないか、を述べていくことにしましょう。


まず、最初ですが、以下のコラムに目を通して頂きましょう。これは、朝日記者の安井孝之氏が載せたコラムですが、くだらない政治記者が多い朝日にしては珍しく冴えた内容です。

記者有論 編集委員 安井孝之
アップル(米)6.3% ノキア(フィンランド)2.4% サムスン電子(韓国)1.7% パナソニック(日本)1.6% ソニー(同)1.3%。
世界のエレクトロニクス企業の、納税額の売上高比率を計算してみた(2007年度と09年度の平均。08年度はリーマン・ショックの影響が大きいため除いた)。
この数字を眺めると、日本の法人課税(地方税を含む)は重い、という「常識」とは異なる姿が見える。
売上高から税金をどれほど払っているのか、つまり人件費などと同じようにコストとしてみると、多機能携帯端末のiPhone(アイフォーン)やiPad(アイパッド)のヒットで好業績をあげ、税引き前の利益率が20%を超えるアップルが最も税金を払っている。
サムスンも、韓国の実効税率は24.2%と低いが、利益率は9%台と高く、納税額の水準は日本勢を少し上回る。日本勢は税率(40.7%)は高いが、各社の利益が少なく、実際に支払う税額は少ない。
「日本の法人課税の税率は諸外国に比べて高い。税率を下げて、競争力を増さなければならない」。経済界も政治も同じ方向を向いている。政府は成長戦略に法人税率下げを盛り込んだ。税率下げは企業負担を軽くし、確かに競争力を増すが、実際の効果が大きいかどうかは話は別である。
日本企業の利益率は世界の優良企業と比べて低い。一方、アップルは日本勢が赤字に沈んだ08年度も20%を超える利益率だった。付加価値の高い商品を生み、利益を得て、税金を払っても再投資に回す資金が充分残るという好循環を維持している。
こうした経営が出来るのは、消費者が飛びつく商品やサービスを提供し続ける経営力があるからだ。初代iPhoneの発売からすでに3年。今年になってiPadも発売した。かつては家電・オーディオ分野で世界をリードした日本勢からはアップルに対抗する商品は出てこない。日本勢の苦境は税率の高さが主因ではなく、経営力が劣っているということに尽きる。
人口が縮小する国内市場で多くの企業がひしめく日本は過当競争を招きがちだ。そこで体力をすり減らしていることも、新しいビジネスモデルを築けず競争力を無くしている一因だ。付加価値の高いビジネスモデルを富につなげる経営力を発揮する会社に進化する努力こそが大切なのだ。経済界は競争力アップのため、法人税率の引き下げを求めているが、まず利益率を引き上げるように知恵を絞るのが先である。
税率が高いから日本勢からiPadが生まれなかったわけではない。税率を下げればiPadが生まれる保証もない。5%の法人税率下げで1兆円の財源がいる。減税の費用対効果を見極める「仕分け作業」が必要だ。
朝日新聞 2010年 6月22日 朝刊


日本企業の多くが人件費を削るのに必死で、それでも利益率は上がっていません。簡単に云えば「薄利多売」で何とか、というところで、これは経営手腕としては下も下です。
まず問われるべきは経営陣のビジョンの無さであって、法人税減税はどうよ、というところです。
「下げなければ出ていくぞ」と脅すなら言える事は簡単ですね。
「出ていけばいいじゃん」
こんな無能な経営陣が外へ出て行って維持できる筈もありません。たちまち従業員の離反にあうか、経営陣総取っ替えにあうだけでしょう。

第一、日本の企業の多くは主要国レベルの社会保障費を引き受けていません。
私は以前、次のようなエントリーを書きました。


企業の社会的責任について
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20061110/1163146603


実際に少し前の企業負担の社会保障コストについて文献がありますが


検証:企業が負担する社会保障コスト
http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2006_9/world_01.htm


法人税だけ、を取り沙汰するのはいかがなものでしょうかねぇ。さらに付け加えます。先頃赤旗が以下の記事で指摘しました。


法人税「40%は高い」といいながら実は(赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-06-24/2010062401_01_1.html


実際に払っている額は税率よりだいぶ低いわけです。他国との法人税ダンピング合戦に踏み切る、というにはどうかと思いますね。
そして、重要な点です。日本企業の多くは中小企業が担っています。いわゆる下請け、孫請けのような企業ですね。そういう企業はどうか、といえば中小企業庁による手厚い保護を受けています。


中小企業庁
http://www.chusho.meti.go.jp/


読んでももらえば判りますが各種補助金を含め、詳細を追い切れないくらい様々にサービスがあります。さらに中小企業に科せられる税率は低く設定されています。


上手に使おう! 中小企業税制
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/faq45/index.html


しかも、それでも多くの中小企業は法人税を納めていません。


中央総研ニュース 第11号|税理士法人 中央総研
http://www.cri-nagoya.com/cri-news/news011.html

なんと法人の69.7%が赤字であり、この赤字法人割合は史上最高となり中小企業が厳しい環境の中で苦戦をしていることが裏付けられています。


じゃあ、「中小企業ウハウハだな」となるか、といえば、そうではないことは多くの識者が指摘するところです。
中小企業は多くが大企業の下請けに組み込まれていますから、納品時にカツカツまで値引きさせられます。利益が出ない、労働環境が悪化する、そうした状況で大企業は製品単価を下げ、「薄利多売」に踏み切れるわけです。
つまり、中小企業の減免分や補助制度の恩恵は大企業が受け取っているのです。
他国でこれほど虫のいい恩恵を被ることが出来るのか?だからこそ、日本の大企業は系列の企業に海外進出を促すわけです。いつまでも喰いモノに出来るように。


消費税に関しては再三「福祉に利用する」と云われますが、しかし、どう云おうとも同じですよね。結局、税収の中の法人税比率が下がり、消費税比率が上がれば逆進性が増して、低所得世帯は苦しくなる。


でもまぁ、企業の海外移転を防ぐ手当が必要な事は認めましょう。
ですが、そのために法人税を下げる、というのは下策です。現在起きている事を利用する方が利口、というものです。


ホンダ中国スト、外資系に飛び火懸念 賃金上昇で“世界の工場”転機
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100531/biz1005312134022-n1.htm


中国スト拡大 トヨタ工場が停止、日産関連でも初
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100619/biz1006190013000-n1.htm


はい、どうです?中国へ進出したら賃上げ要求が待っていた。これは経営陣にとっては頭の痛いところでしょう。人件費の安さに惹かれて進出したのに、人件費高騰。計算違いです。
つまり、日本政府がすべきなのは法人税減税ではなく、中国人労働者の組合活動の後押し、です。賃上げ、労働環境改善要求、ストにデモにアジ。
どうせ、現政権は「本格的左翼政権」とかいわれているのですから、相応しく振る舞えばいいじゃないですか。支持団体のノウハウを中国に輸出すればいいんです。「インターナショナル」が聞こえてきますw。それを中国政府が弾圧したら嗤いますね。


悪評が立つだけだって企業にとってはダメージです。対策を取らなくてはならない。


アップルどころじゃない、死にたくなる労働環境のニッポン
http://d.hatena.ne.jp/skicco2/20100605/p1


こうした事も海外移転抑制に効果があるでしょう。さらに効果的なのは「通貨切り上げ」ですけど。


人民元切り上げ 中国進出日本企業 「影響ごくわずか」冷静に対応
http://www.sankeibiz.jp/business/news/100622/bsd1006220503013-n1.htm


輸出型企業にとって一番大きな問題は為替レートですから、法人税減税を唆すのって、そもそも悪質なのです。
さて、もっとも効果があるのは次のような法人税ダンピングをやめる国際的取り決めです。


【G20】法人税引き下げ競争に歯止めを 峰崎副大臣
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100605/fnc1006052141010-n1.htm


どこの国も財政問題には苦慮しています。こうした取り組みでコンセンサスが得られれば素晴らしいことです。
政府の役割は国民に負担を押しつける事ではありません。そうならないために方策を立てるのが務めです。であれば、法人税減税ではない手立てに踏み切るべきでしょう。私は何回かこうした方策を立てるよう進言してきました。


Arbeit macht frei 労働は自由にする
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080806/1217994089

長々と説明してしまったが、先進国が続々とネオリベ路線に舵を切ったのは“自然現象”などじゃない。互いに投資を呼びこむために財政支出、福祉水準や労働条件を低下させるためだ。これは、福祉切り下げのチキンレース、まさにナッシュ均衡。行き着く所は全世界的に焼き畑が広がる状況だろう。

むしろパレート最適を得るために、世界各国が所得税・法人税、労働条件の下限水準を決める方が効果的では無いかな?課税回避(タックスヘイブン)を行うような国には通商停止・経済制裁を行う、ようにね。その上で、つまり全世界的に“公平”な条件で存分に経済競争でも何でもやって貰おうじゃないの。


そもそも、企業も減税によって競争力を維持する、とか云ってますけど、それより経営計画をしっかり立てて、(株式・債権)市場で資金を得る方が大事なんじゃないですか?市場主義、というなら、優秀な経営陣の独断による内部留保の運用より、市場による経営の競争的選択、の方が適切な筈でしょう。経営陣だけで裁量できる内部留保を貯め込むのは、官僚による財政の恣意的運用となんら変わることがありません。


法人税減税など無用です。それでも出ていく、という企業が出るなら、それは好きにしてもらいましょう。そんな企業が持続できるとは思いませんけどね。
では。