難民ってどーやって日本に来るの?

このエントリは連載ものです。

第一回 問題はデータと首相の認識
第二回 びっくり! これが日本の難民認定基準
第三回 難民条約とインドシナ難民
第四回 トルコとミャンマーの違いとは?


さて今日は、
「難民て、どこから何人くらい日本に来てるの?」
「いったいどーやってはるばる日本まで来れたの?」
「やってきて・・・一体どこにいるの?」といった素朴な疑問の答えを(できる範囲で)書いてみましょう。


実は、「この 1年に何人の難民が日本に来たか?」は誰にもわかりません。わかるのは「難民申請をした人の数」だけです。

で、その申請数ですが、 2011年の 1867人から 2014年に 5000人、そして昨年 2015年には 7586人と、急増しています。

前述したように、これは「去年、日本にたどり着いた難民が 7586人」ということではありません。


下表が申請者 7586人の申請時の立場です。これを見ると、留学中や日本で働いている途中で難民申請をする人もたくさんいるとわかります。

つまり 7586人の中には、何年か前に日本に来てる人もいるわけです。

滞在の立場 申請時の立場 人数
1 正規 短期滞在 2882
2 正規 留学 1413
3 正規 難民認定申請中 849
4 正規 技能実習 731
5 正規 就労を目的とする在留資格 98
6 正規 その他 421
小計 正規小計 6394人
7 非正規 − 1192
8 合計 − 7586人


一番多い「正規の短期滞在者で、難民申請をした 2882人」には、観光ビザで日本に入国し、そのビザが有効なうちに申請をした人が含まれてるんでしょう。
(ビザが切れた後に申請すると、最後の「非正規の在留中に申請」というカテゴリーかな)


難民申請の国籍別トップ 5(過去3年)は下記の通り

年 一番多い国 二番目 三番目 四番目 五番目
2013年 トルコ ネパール ミャンマー スリランカ パキスタン
2014年 ネパール トルコ スリランカ ミャンマー ベトナム
2015年 ネパール インドネシア トルコ ミャンマー ベトナム


人数が多いのはアジアの国ですが、コンゴ、チュニジア、エチオピア、ナイジェリア、ウガンダ、セネガルなどアフリカ諸国からくる人もいます。

彼らは基本、国際線の飛行機でやってきます。アジアからだと船で来る人もいますが、それはごく僅かです。


「なぜ日本に来るのか?」ですが、アジア人に関しては、近いし、お米の国だし、すでに自国民のコミュニティもあるし、みたいな理由で「日本を選んで来る」人もいるんでしょう。

一方、アフリカや中東から来る人など、「どこでもよかった!」みたいな人もいます。

観光なら日本に来るのにビザが不要な国もたくさんあるんで → 日本のビザ免除国一覧


難民って海外旅行者とは違うので、慎重に検討して目的地を決めてるわけではありません。

だから到着後に初めて「日本で難民認定してもらうのって、めっちゃ難しい」と知る人もおり、

中には成田空港で正直に「難民です」と申告してソッコーで送り返されそうになる人もいれば(昨年の申請者 7586人のうち空港や海港で難民申請をしたのは 173人)、

空港近くにある施設に収容され、何ヶ月も滞在する(放置される?)人もいます( 2015年末時点で難民審査中の 394人が収容されてます)。

あとは、空港から都心まで自力で移動し、ネットや入管オフィスでパンフを見て支援団体 (NPO) を訪ねてくる人も。


ちなみに今回取材をした 認定 NPO 法人 難民支援協会 (JAR) の場合、支援をしてる人の半分はアフリカ人です。
↓

( JAR 2014年度 年次報告書より)


これは、日本国内にそれなりにコミュニティのあるアジア人と異なり、「とりあえず来てみたけど、知り合いもひとりもおらず途方に暮れる」みたいな人が多いからでしょう。


こちらは JARが一次預かりしている彼らのスーツケース
↓


訪ねてきた難民に JAR のスタッフがまず伝えるのは、「日本で難民認定を受けるのはものすごく難しい」という現実。

次が命を守るための緊急支援。

食物や防寒具を現物で渡したり、必要があれば医療を受けられるよう相談に載ったり。シェルターもあるけど満杯で入れない場合も多いとのこと。

日本はたしかに「平和で安全」だけれど、寒さも知らないアフリカの人が日本の冬にホームレスをするのはかなり大変そう。


そこで、スタッフが彼らに渡すこのパンフレット、

ホームレスになった時どーするかとか、警察に職務質問されたらどーするかとか、あまりに実践的でびっくり。ガチのサバイバルガイドです。
↓

(A Survival Guide for Refugees in Japan)


お金も行く当ても無い人の場合、食べ物を渡したりもするそう。


それにしても、自分がアフリカから現地語+片言のフランス語くらいしか話せず日本に来ちゃったりしたら・・・と考えると途方に暮れますよね。いったいどーすりゃいーんだ??


さらに JAR ではその後の難民申請の手続き支援もするわけですが、これがまためっちゃ大変なので、その話は また次回。



そんじゃーね!


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