ゲームの作り方をWebUIに活かすゲームニクス勉強会まとめ
面白法人カヤック 様主催の下記勉強会に参加してきました。
参加する前までは、ゲームの話が果たしてどの程度Webに活かせるものか懐疑的でしたがUIの考え方に分野の壁はないことを思い知らされました。
そして現在より遥かに表現することに対して(主にハードウェア的な意味で)制約がある時代にどのようにUIを考え改善してきたか、そういった内容の大変濃い話が聞けて最高に面白かったです。
関係者のみなさまありがとうございました。
「ゲームの作り方をWebUIに活かすゲームニクス勉強会」
http://atnd.org/events/20426■イベント概要
日本のゲーム業界が蓄えてきた「マニュアルなしで使い方がわかるゲームの作り方(ゲームニクス理論)」を聞いて、webやスマホのUIに応用する方法を考える勉強会です。■講師
サイトウ・アキヒロ氏
立命館大学映像学部教授、ビーマットジャパン取締役。多摩美術大学在学中から、ゲームクリエイターとして活動を開始。ファミコン黎明期より任天堂等、数多くのゲームディレクションに携わる。CM、アニメ、テレビ番組の制作、国内外の講演も多数。1991年、(株)ダイスを設立。現在、大学では「ゲームニクス理論」のほかに、感性レコメンドを実現する「感性推論型人工知能」、ネットでの映像配信時代における新エンターテインメントである「モンタージュ理論を利用したインタラクティブムービー」の三つのテーマで研究をしている
ゲームニクスとはなにか
1983年にファミリーコンピュータが登場する以前から、アメリカでは既に家庭用ビデオゲームのブームが到来しておりゲーム市場も確立されていた。
ところが1982年に突如急速な売上不振に陥り氷河期を迎える(アタリショック)。
そのアタリショックが起こった原因のひとつとしてゲームの質の低下が考えられた。
サードパーティ製のソフトウェアに対して何も制限していなかったため市場がクソゲーだらけになった。
その教訓を生かして任天堂は「マリオクラブ」という審査機関を作った。
A4用紙1枚の説明書を与えられただけの状態でゲームをプレイしてユーザがつまづくことなくプレイできるかなどをテストするための機関。
クリエータのエゴを排し、徹底的にユーザの意見を取り込んでいった。
ゲームそのものが面白くても操作性が悪かった駄目。その面白さまでに辿りつけなければ意味が無い。
そうした中でユーザ視点のすぐれた操作性のノウハウを確立させていくこととなった。
それがゲームニクス。
UIの進化
以下のようなことを追求していった結果、ゲームのUIは劇的に進化した
- マニュアルなしで出来る
- いつの間にか段階的に攻略法を学習してクリア出来る
- 長時間にわたって集中してハマる
- ゲームは人にストレスを与えることが絶対条件
- ストレスと快感のループがゲームの基本
- ゲーム以外のことでストレスを与えることは絶対にしてはいけない
ゲームニクス二大原則
直感的に、本能的に操作が出来る
段階的に理解し夢中になる
ユニバーサルデザインの原則の中にアフォーダンスというものがあるがそれは平面的な定義。ゲームニクスには時間という概念がある。ユーザがその次はどう操作するかを考える。
ポイント
- ボタンの役割を固定すること(=ボタンへの信頼度を高める)
- 画面からの情報とユーザのイメージが一致して循環していくこと
- 階層が深くても階層を移動する行為が気持ちよければ苦痛ではない
- 画面を完全に切り替えないでどの階層にいるかを見失わないようにする
- 直感的なUI
- マニュアル不要の操作理解
- ハマる演出
- 段階的な学習効果
- バーチャルとリアルのリンク
ゲームニクスの背景にあるもの
- ファミコンは後発にも関わらずなぜトップに立てたか
- 京都の伝統文化を持っていたから。もてなしの伝統
- マリオは触ってて気持ちいいから売れた
- インタラクティブ(双方向)ということ自体が楽しいということ
- 任天堂のCMはゲーム画面よりもゲームを触って楽しんでいる姿を映している
もてなしの文化
「きっとこういう操作をするに違いない」→先回りしてレイアウト
「使い方がわからなくなるだろう」→ヘルプを配置
「目標を見失ってしまうかもしれない」→次の目的を提示
「操作そのものが単調に感じるだろう」→アニメや音の工夫
さりげないサポートのノウハウは「さりげないもてなし」という和の心そのもの
制限による工夫
ABボタン・十字キーだけで数多くの操作
(最近の家電のリモコンはひどい)
マリオ1-1での例
- 最初の立ち位置は画面左寄りに立たせることで右に進めていくことを誘発させる
- 最初に出てくるスーパーキノコは敵と勘違いして避けてしまわないように、低めの空中のブロックでジャンプを制限して、さらに土管に跳ね返らせることで当たりやすくしている
- 高い土管からジャンプさせて敵を踏んで倒すことを学習させる
- 最初に2マスの穴→3マスの穴。段階的にジャンプを学習させる
- 上ルートはジャンプの練習用。地面にある穴に落ちると死ぬが空中のブロックから落ちても死なない。地面と同じマス数の穴が空いている
- 難しい障害の前には必ず似たもので練習させている
- スターのあとの長くて平坦な道は、無敵状態でそこを走り抜けさせて快感を味わってもらうために置いている
他にも
その他
サイトウ・アキヒロ教授の著書紹介
ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる
- 作者: サイトウアキヒロ,小野憲史
- 出版社/メーカー: 秀和システム
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 65回
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ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則 (幻冬舎新書)
- 作者: サイトウアキヒロ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/07
- メディア: 新書
- 購入: 10人 クリック: 75回
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[追記]
講義に使われた資料がアップされていました。
http://www.slideshare.net/jrpj2010/t10-4966875