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シトロエン、飛騨高山で新型「C3ハイブリッド」日本初公開
来日した日本人デザイナー柳沢知恵氏にインタビュー
2025年10月6日 19:46
- 2025年10月5日 発表
10月5日、飛騨高山で開催されたシトロエンオーナーのための特別な一日「シトロエニスト ランデヴー オーナーズ フェスティバル」で、シトロエンの新型「C3 ハイブリッド」が日本初公開された。
どのようなクルマなのか。初お目見えの実車を確認するとともに、本国から来日した同社のデザイナー、柳沢知恵氏に話を聞いた。
新型「C3 ハイブリッド」のエクステリアとインテリア
シトロエンがBセグメントに展開中のC3モデルは2002年に初代が登場。メインストリームのコンパクトモデルとしてグローバルでは現在までに600万台が販売され、同年、日本にも導入されている。2009年の2代目、2016年の3代目を経て4代目に進化した新型C3は、本国ではBEV、ハイブリッド、ICEの3モデルを展開中で、今回日本で公開されたのはハイブリッド版の「C3 ハイブリッド」だ。
フルモデルチェンジした新型が採用するのは、上記のようにさまざまなパワートレーンにも対応できる「スマートカー・プラットフォーム」で、ボディサイズは4015×1755×1590mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2540mmと相変わらずコンパクトさをキープしている。
C3のキーとなる要素は「フランス流のコスパ重視」というもので、「シンプル」「快適性」「大胆」という先代のそれに、「サステナブル」が加わった。そのエクステリアデザインは、ボディサイドにエアバンプを装着した丸くてかわいらしいデザインが特徴だった先代と比べると、大きな変貌を遂げた。つまり新型は正統派のコンパクトSUVらしい四角いボディとハンサムな顔つきをまとっていて、フロントグリルに装着した新しい縦型楕円のダブルシェブロンがなかったら、いったいどのメーカーか分からないほどだ。
フロントとリアのシルバーのスキッドプレート、ブラックのホイールアーチ、それをつなぐサイドのアンダーモール、インテグレートタイプのルーフレールなど、ボディ各所にラギッドなパーツをきっちり配置し、フロント下部のエアインテークやフェンダーアーチモールなどボディ各所にはダブルシェブロンの要素を投入。バンパー左右のインテークと、リアドア後端にはボディカラーに合わせたカラークリップを装着した。
写真で見ると複雑に見えた3つの長方形で構成する3ポイントシグネチャーライト(テールランプも同形状)は実車で見ると意外に違和感がなく、うまいデザインだな、と思わせる。深くえぐられたように見えたボディサイドも悪目立ちしておらず、17インチタイヤをボディ四隅に配した踏ん張り感のある佇まいがなかなかいい。車高が95mmアップされて日本の機械式駐車場に収まらないサイズ(1590mm)になってしまっているのは、室内空間を確保したトレードオフとはいえちょっとだけ惜しいところ。
一方のインテリアのコンセプトは「C-Zenラウンジ」。2本スポーク内側のブラックパーツでセンターパッドと切り離されたように見える小径楕円のステアリングに、その上側から覗く細いコックピットメーターを備えた水平基調のダッシュボードを組み合わせ、センターの四角い10インチタッチスクリーン、ひねってスタートするキー、シトロエンらしいふわりとした座り心地を提供するアドバンストコンフォートシートなどで構成した。新型C3のおしゃれな内外装や、インテリアに配されたギミックなどの話は、来日した同社のカラー&マテリアル担当デザイナーの柳沢知恵氏のインタビューでこのあと紹介する。
パワートレーンは1.2リッターの48Vマイルドハイブリッド
搭載する48Vマイルドハイブリッドのパワートレーンは、74kW(101PS)/205Nmを発生する3気筒1.2リッターガソリンターボエンジンと、15kW(20PS)/51Nmの電気モーターの組み合わせで、6速DCTを介して前輪を駆動する。燃費はWLTCモードで22.3km/L。足まわりには、伝統のシトロエンの味を再現すべく「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)」を採用した。
C3ハイブリッドは2グレード構成で、ボディ同色ルーフとなるベーシックモデルの「C3プラス ハイブリッド」が339万円、バイトーンルーフで装備充実の「C3マックス ハイブリッド」が364万円となっている。
来日したシトロエン・カラー&マテリアル担当のデザイナー 柳沢知恵氏に聞く
今回の新型C3発表に合わせて来日したのが、シトロエンでカラー&マテリアルデザイナーを務める柳沢知恵氏だ。同社では「C5X」を皮切りに、今回の「C3」と「C3エアクロス」を担当している。新型C3がこの時期に日本に導入された理由については、本来は来年になりそうだった計画を、今年、2年ぶりにオーナーズミーティングが開催される(今回のイベント)という話を聞いて、とにかくそこでいち早く皆さんに紹介したい、ということでイベントに合わせて発表することになったのだという。
柳沢氏へのインタビューでは、まず新型C3が丸から四角いエクステリアになった理由についての質問が出た。
柳沢氏は「シトロエンでは、次世代のデザイン言語を盛り込んだコンセプトカーというのを大事にしていて、いろいろなモデルの中で2022年に出た四角い『オリ』と呼ばれるクルマが大変評判がよかったのです。まさにわれわれのリファレンスになっているくらいの存在で、そこから要素を引き出して量産化したのが今回のニューC3というふうにお考えいただければと思います。四角いボディもそうだし、アイコニックな3つの長方形からなる前後のライトシグニチャーもそうですし、パーソナライズできるカラークリップもそうです。クリップには爪がついていてパチンと外れるので、好きなカラーや、好みの3色を選んでトリコロールにもできます。新しいダブルシェブロンも形が縦型の楕円になっていて、かつてのロゴをまた新しく採用していますが、これもオリが採用していたものです。また、ツートーンのルーフというのはシトロエンが歴史的にずっとやってきたものです。ボディカラーのブルー・モンテカルロは、あの2CVのリバイバルカラーで、現代風にモダナイズしたバージョンです」と話した。
インテリアデザインについての質問に対しては、「インテリアは水平と垂直を組み合わせるとともに、開放感のある色を選びました。カラー&マテリアルデザイナーとして一番頑張ったのが、私たちが『ソファー』と呼んでいるシートで、キーワードはコンフォートでした。アドバンストコンフォートと呼ぶソファの表面の黒い四角い連続は、われわれがラミと呼んでいる中に板状のスポンジが貼り付けられているものですが、通常のシートだとその厚さは2mm程度のものが多いのです。C3は10mm厚のクッションを入れて、家具であるソファーのような仕上がりとしています。北欧風だったり、60年代風だったりと色々アイデアを出しましたが、私の中では割とスポーティで軽快感のあるファブリックが選ばれたかなって思っています」と説明した。
さらに「ダッシュボードの出っ張ったポケット部分に採用したファブリックは織り方にメリハリと美しさがある3Dニットを採用していて、こちらはスニーカーメーカーが持つ『フライニット』という特許のものを使いました。またグローブボックスやリアガラスなど、各所にギミックを入れたので、オーナーになったら探してみてほしい」という。
柳沢氏は日本の筑波大学でデザインを学び、仏シトロエンで働いている。そうした現状について聞いてみると、「筑波大学は学生の自主性を重んじる学校だったので、就職の募集要項が来ても先生の机の中に眠っているなんてこともあって、とにかく自分で動き出さないとダメ、というのが一番学んだことです。特に欧州の会社は教育プログラムという点では手厚いわけではないので、結局自分で情報を取りにいかなきゃ、みたいな点ではそれがうまく生かされていると思います。ただ、私自身はすごく日本的だと言われていて、例えば今回のシートのエンボスもすごくたくさんのパターンを書いて試作して、チョコレート板と呼んでましたけれども、それを細々と大量に作っているのは日本人らしいよね、とよく言われます。もう少し、あとちょっとできる、とあくなき追求でエンドレスにやっちゃうところがあるのかもしれません。一方でわたしの同僚は、コレ、というのをパシッと出してきます。どっちがいい、というのは特にないのですけれど」と話していた。
シトロエンという会社は、「Be Unique」というのが社内キーワード。何か他の人とは違う、自分はちょっと個性的であるという自覚を持っている、そんな場所なのだという。