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2017年6月2日金曜日

「トランプ政権下アメリカの科学・技術と科学者: 全米科学振興協会(AAAS)年次総会での議論を中心に」『科学』2017年5月号掲載

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 ドナルド・トランプ大統領がアメリカのパリ協定離脱を表明しました。
 それに合わせて、というわけでもないのですが、ちょうど掲載誌発売からひと月経ちましたので、岩波『科学』2017年5月号に掲載されました「トランプ政権下アメリカの科学・技術と科学者: 全米科学振興協会(AAAS)年次総会での議論を中心に(PDF)」を公開します(岩波書店より頒布許諾済み)。
 (※他にも政治と科学に関する重要な論文が掲載されておりましたので、もし興味を持っていただいた方は、雑誌の方もご購入いただければ幸いです)


2017年3月29日水曜日

全米科学振興協会(AAAS)年次総会の報告会について

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 AAAS年次総会参加のご報告は以下のとおりさせていただきます。

報告会

【東京】
・ポスト真実がやって来た!トランプ時代にどう変わる?アメリカの科学と政治
 日時 2017年3月31日(金)19:00〜20:30
 会場 カクタス・コミュニケーションズ
 共催 サイエンス・サポート・アソシエーション(SSA)
 [詳細]

【京都】
・サイエンス・サポート・アソシエーション研究会 AAAS(ボストン2017 年次総会)報告会
 日程: 04月01日 18:30〜(18:10 開場)
 会場: キャンパスプラザ京都 第一演習室
 [詳細]



なお、関連するるブログ記事は以下のとおりです。
AAAS2017(ボストン) 2月16日 (前半)
AAAS2017(ボストン) 2月16日 (後半)
ジョン・ホルドレン(前大統領補佐官)の語る、トランプ政権への対処法
ナオミ・オレスケス講演「科学者は衛視の役割を努めるべきか?」 (AAAS年次総会 2日目全体講演)
トランプ政権に抗議する野外集会"Stand Up For Science"

2017年3月2日木曜日

トランプ政権に抗議する野外集会"Stand Up For Science"

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 19日(土)の午後、AAASからは独立しているものの、併催するという形で、トランプ政権に抗議する野外集会"Stand Up For Science" ラリーが開かれた。
 これに参加するため、千人を超える人々が、思い思いのプラカードを掲げて、AAAS会場近くのコプリー広場に集まってきており、この情景は日本も含めたアメリカ内外で広く報道されたようである。
 当初の案内では短距離ながらデモも行われるのだと思っていたが、この時は10人ほどがスピーチする野外集会だけで終了した。

 基本的な視点は、科学者が真実と(AAASのテーマでもある)公共善のために立ち上がるべきだ、というものである。
 主催団体は、主に気候変動に関わる社会運動である climatetruth.org (これはAAASの全体講演でも講演し、またこの時もスピーチを行ったナオミ・オレスケスも顧問に名を連ねているNPOである)と、カナダの著名な社会運動家(日本でも『ブランドなんか、いらない』や『ショック・ドクトリン』などの著作で知られる)ナオミ・クラインが顧問を務める thenaturalhistorymuseum.org であり、この他に「憂慮する科学者同盟」やグリーンピース、地域の環境問題などを扱う学生団体が呼びかけている。

2017年3月1日水曜日

ナオミ・オレスケス講演「科学者は衛視の役割を努めるべきか?」 (AAAS年次総会 2日目全体講演)

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AAAS年次総会(2007)、二日目の全体講演は科学史研究者のナオミ・オレスケスによる「科学者は衛視の役割を努めるべきか?」 Should Scientists Serve as Sentinels? 。


 オレスケスはハーバード大学の科学史、および地球・惑星科学の教授である。
 「気候変動は嘘だ」や「タバコの健康被害はない」と言った「学説」がどのような科学者たちによって繰り返されているかと言ったことを論じた『世界を騙しつづける科学者たち』()という本を出版しているが、AAASでの講演もそれをなぞる話であった。


科学者の二つのあり方として「科学的に言えることしか言わない」という人と、気候学者のジム・ヘンソンのように逮捕されることも厭わず社会的価値を訴える科学者がいる、とオレスケスは述べる。
 オレスケスによれば、ヘンソンまで行かなくても、その中間形態として「責任ある科学者」モデルが必要である。
 少なくとも「科学的なことだけ言っていればいい」わけではない。なぜなら、そう言った科学者はしばしば「事実をして自らを語らしめる」と言いたがるが、実際は、事実が自らを語ることは期待できないからである。
 温暖化否定論やタバコの害はない、と言った議論に実績ある科学者がコミットするのはなぜだろうか?
 一つには産業界からの金、ということがあるが、それだけでは十分な説明ではない。むしろ彼らは自らの価値観のために事実を捻じ曲げている。



一般に、これら否定論者は政府の規制が増大することを嫌うリバータリアンである。
 この思想は通常ハイエクに起源を求められるが、レーガンがそれを都合よく利用した。
 否定論者の多くはこのレーガン人脈にいるのであり、彼らの目的は規制を緩和し、企業活動の自由度を上げることであり、そのために環境や健康規制の根拠となる研究に否定的な態度を示すわけである。

結論として
「我々の反対者は価値に動機付けられており、その価値は独立独歩であることを尚び、福祉的な問題であっても中央政府の介入を嫌うアメリカの草の根に広がる価値観と共鳴している。
 なので、我々(科学者)も価値を語らなければいけない」
 のである、とオレスケスは述べる。

その(科学の)価値とはフェアネスやアカウンタンビリティ、現実主義、創造性、と言ったことで、これらが「市場」の価値に対抗できるのだ、というのがオレスケスの結論。
 お行儀のよいAAASの講演では珍しく、多くの人がスタンディング・オヴェーションで講演を讃えていた。

2017年2月19日日曜日

ジョン・ホルドレン(前大統領補佐官)の語る、トランプ政権への対処法

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 NHKでAAASの分科会の一つの様子が「米の科学者たちがトランプ政権への対応話し合う」として報道されているようです。
 これは、「憂慮する科学者同盟」が組織した”Defending Science and Scientific Integrity in the Age of Trump” (トランプ時代に、科学と科学の健全性を守る)と題する分科会で、オバマ政権下でアメリカ合衆国科学技術政策局のトップだったジョン・ホルドレン氏らが講演しました。
 司会者は「憂慮する科学者同盟」として過去何度もAAASのワークショップを主催しているが、開始15分前には全ての椅子が座っていた、なんていう経験はしたことがない、と会場を笑わせていましたが、これもトランプ政権への危機感の表れでしょう。


 ホルドレンのコメントはニュースでは「科学者自身が社会での科学の役割についてわかりやすく伝えるべきだ」というふうにまとめられていますが、この部分をもうちょっと細かく追うと、だいたい次のようなことを言っていました(他の分科会でもだいたい同じようなことを言っていた)。

一つ、決して絶望したり怖気付いたりしないこと
二つ、いつもの通り研究を続ける、ファンディングなどのコミュニケーションも続けること
三つ、それに加えて、いつも以上に幅広く科学と社会の問題に関する情報を入れるようにすること
四つ、何故、どのように科学が重要なのか、科学がどのように機能するのか、なるべく沢山の人に語り続けること
五つ、時間の10パーセントをパブリック・サービスに使うこと。政策決定者への働きかけとか、政治参加といったことから学べることもある。


2017年2月17日金曜日

AAAS2017(ボストン) 2月16日 (前半)

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 AAASボストン年会初日である。
 まず、会場について登録を済ませる。
 登録は、事前にメールできていたバーコードを読み込むだけで、ネームカードが印刷されるので、カードフォルダーを受け取っておしまい。
 あと、大会プログラムの入ったバッグを各自で勝手にとるだけ。
会場では Wifi が使える(特にパスワードは必要がないようなので、参加者以外でも使えてしまう感じ)。
 これと、モバイルアプリ(プログラムなどが読める)はEUの提供のようである。
 毎年EUはAAASの大会に資金を使って、いろいろなことをしている。
 研究者への宣伝ということなのだろう。


 そのまま、”How to Connect Science with Policy across the Globe: Landscape Analysis” というセミナーへ。
 椅子の数が足らないというところもあるのだが、ほぼ満席である。
 こちらでは、各国の科学者による政策提言を促進する仕組みなどが紹介された。
 事前のプログラムでは詳細はわからなかったのだが、日本からは政策研究大学院大学の角南篤教授が登壇している。
 さて、昨日述べた通り、前回は2007年に参加している。
 その後、当時榎木英介氏らとやっていたンポNPO法人でイベントなどを行い、AAASについて色々紹介したつもりであるが、その中の一つにフェローシップ・プログラムがある。
 これは、博士号を取得した若手の研究者を、AAASが資金を提供して政策機関(政府機関、各党議員の事務所、シンクタンクなど)に派遣し、科学技術に絡む問題に関する政策立案の訓練を積んでもらう、というプログラムである。
 参加したフェローはその後、研究に戻ることもあるし、民間に行くこともあり、またもちろん政治の世界にとどまることもある。
 何れにしても、産政学あるいは産官学の橋渡し役となるわけである。
 一時期、日本でもこうしたプログラムを実施しようという動きはないわけではなかったが、角南氏がプレゼンの中で述べたように日本の政治風土の問題があり(フェローが結局はコピー要員としてしか扱われず、キャリアに繋がらないと言ったことがあり)、今ひとつうまく行っているとは言い難い。


しかし、今回知ったことだが、日本以外の各国では同様のプログラムが実装されるようになっており、AAASが主導して世界的なネットワークが構築されつつある、ということである。
 なぜ日本ではこうした改革が行われにくいのか、考えてみる必要があるだろう。



 午後はまず "Engaging Scientists and Engineers in Policy (ESEP) Discussion" へ。
 形式としては、講演者は10人弱ぐらいで、科学技術コミュニケーションやアドボカシーの実践者。
 若手が多いが、シニアもいる。
 男女比は半々ぐらいで、エスニック・マイノリティに属する若者もいる。
 これらの人々が、簡単に自己紹介をした後はすぐに会場からの質問を受け付けるという、ライヴ感溢れる進行になった。
 質問する側も、ジェンダーや年齢のバランスが取れているという印象を受け、多文化主義的な空間が構築されている。
 ここだけを見れば「トランプのアメリカ」はどこに行ったのだろう、ということになるが、逆に言えば「ここではない半分」はここからは見えない、ということでもあるだろう。


 その後、引き続き同じ会場で "The Online Scientist: Social Media and Public Engagement" という文化会が行われた。
 ここでは科学者がSNSなどを通じてプレゼンをすることの意義、問題、ノウハウなどについて議論された。
 ノウハウとしては、例えば Facebook だと閲覧数はすごいがビデオなどは最後まで見てくれないが、動画配信サイトであれば科学ニュースに関心のある層は最後まで見てくれる可能性が高いので、Facebookで広報して、Youtube や vimeo でコミュニティをつくっていく努力をするのがいい、といった話などが紹介された。



 また、この日は "Lab Girl"という自伝的小説を書いた Hope Jahren 氏のサイン会も行われていた。

2017年2月16日木曜日

AAAS2017参加雑感 その01

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 ところで、大きな会議なので(最近時々見ますが)モバイルアプリが配られています。
 気になったイベントはどんどんお気に入りに入れて行くと、勝手に自分のスケジュール帳ができて行く、という感じです。
 プログラムやもらった資料の束を抱えて移動することを考えると大変便利。

 でも、調子に乗ってお気に入りを増やして行くと、こんな感じになってしまって、あまり意味がなくなる、という↓ 

AAASの年会のため、ボストンに来ています

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 サイエンス・サポート・アソシエーションのサイトのお知らせ「AAAS参加と、科学技術政策に関する調査・提言機能の強化のためのご寄付をお願いします」にあります通り、明日からの全米科学振興協会の年次総会に参加するため、ボストンにやって来ています。

 前回ボストンで行われたのは2007年で、まさに大統領選挙が行われる年であった。
 そのため、会場でも民主党の候補がバラック・オバマになるかヒラリー・クリントンになるかが話題になっており、両陣営の科学技術政策担当者による討論会が急遽企画されたりしてた。
 それも含めた、前回の報告記事は以下の通りです。

 アメリカという国は良くも悪くも政権が交代すると、上級の公務員が政治任用で大きく入れ替わり、政治が大きく動く国である。
 この8年間、研究開発にも環境保護にも比較的積極的なバラック・オバマの元で、科学者は良い時代を過ごしてきたと言える。
 しかし、新しく大統領になったドナルド・トランプは様々な問題でオバマ大統領の方針を覆すと言われています。
 その中には、気候変動問題のように、単にアメリカ一国にとどまらず、世界中の人々が影響を受ける問題も含まれています。
 こういった中で今「科学を振興する」ということがどう論じられるのか、みてきたいと思っています。


 なお、以下の通り、Youtube Live をしてみようかなと思っています(ネット環境が耐えられるのかとか、コンテンツが集まるのかとか、不安材料は多いわけですが…)。
 日本時間の午後20時、ということになるはずです(あってる??)ので、宜しくお願いします。


2016年5月4日水曜日

2008年大統領選の思い出: アメリカ大統領選と科学技術政策

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アメリカ大統領選、共和党の候補がドナルド・トランプというのがほぼ確定という報道にふれて、ふと思い出したこと。2008年にAAAS(全米科学振興協会)の総会を見に行ったのであるが、その年はブッシュ Jrの二期目が終わった次の大統領を選ぶ選挙の年であった。ところが、共和党は2月初頭の最初のスーパー・チューズデイで早々にジョン・マケインに決定。一方、民主党側はクリントンとオバマが激しい選挙戦を繰り広げることになる(この時のマケインの敗因の一つは、決定が早すぎて、その後の全米の関心が「クリントン対オバマ」に持って行かれてしまったことではないか、という気もするわけである)。
 そこで、アメリカだなぁ、と思ったのは、さっそくAAASの総会の臨時企画でクリントン陣営とオバマ陣営の政策討論会を開いたことである。


その時のことは以前ブログに書いたが以下のような感じ。