もう、孤独じゃない!


絶対ナル孤独者《アイソレータ》3 ―凝結者 The Trancer―
絶対ナル孤独者《アイソレータ》3 ―凝結者 The Trancer―
著者:川原 礫
イラスト:シメジ
電撃文庫


あらすじ:
「私は、≪特課≫の人たちが好き。お願い、ミノルさん。みんなを守って」
凶暴なルビーアイ二体を倒すことに成功した≪孤独者(アイソレータ)≫ことミノルは、同じような能力を持つ≪味方≫が集まる厚生労働省安全衛生部特別課――通称《特課》にスカウトされる。
≪特課≫最強の能力者といわれる《屈折者(リフラクター)》小村スウとコンビを組んだミノルは、敵の隠れ家に侵入する作戦に挑む。そこで目撃したのは、最強最悪の敵《液化者(リキダイザー)》の意外な正体で……!

絶体絶命の窮地に陥ったミノルとスウの運命は……!




ネタバレ具合:低中

絶対ナル孤独者3 -凝結者 The Trancer- [ 川原礫 ]
 遅くなりましたが、感想行きます。



『ソードアート・オンライン』シリーズ、『アクセル・ワールド』シリーズを手掛ける、川原礫先生のウェブ掲載作品にして、電撃文庫刊行三作目のこの作品。
 という説明も、もう要りませんよね? 今回で三冊目ですし。



 あの川原礫先生の作品! というだけで購入した作品で、正直、自分が購読している『ソードアート・オンライン』と比べると、それほど思い入れがない作品で、SAOほど楽しめていないのが本音です。それでも、まったくつまらないというわけでもないので、ここまで購読を続けられています。が、読むスピードは落ちていることは実感してます…。



 さて、個人的な状況はさておき、本書の感想でございます。
 あとがきで作者も書いていますが、冒頭から感傷に訴えかける物語が描かれていました。
 特に、この本がリリースされたのが、2016年の2月で、読むスピードが遅くて感想が3月になってしましましたが、その時期に重なったので余計にそう感じました。
 3月に入り、あの時期に差し掛かるにつれて、否応なくテレビで報道され、今なお日本に大きな打撃を与え続けている出来事。その中で一番の大きな傷跡である、原発事故をこの冒頭で取り上げています。
 今の時期じゃなければ、それほど感慨に思うこともなかったかと思いますが、この時期なのでどうしても…。作者もその事に言及していますが、これをどう捉えるかは読み手によって大きく左右されると思います。
 一応、作中では実際のものとは違うニュアンスで描かれていますが、あの出来事を覚えている人にとってはどうしても連想してしまうものだと思います。
 別に自分はそれを取り上げることに否定的ではないです。むしろ風化させてはいけないという考えなので、この先あの出来事を知らない世代が多くなった時に、こういう事があった。という史実を後世に伝えていくべきだと思っています。なので、こういうエンターテイメント作品でも扱われるのは悪いことではないないと思っています。
 こういう扱われ方や自分の様な考えに嫌悪感を感じる方が居ることも重々承知していますが、だからと言って無かった事にして良い事とは思わないので。
 そんな冒頭のシーンが、この作品の中でどんな意味を持っていくのか? 今巻はそこに注目して読ませていただきました。

 ですが、その冒頭のシーンがそれほど重要なファクターを持っているように感じないまま終了してしまいました!
 と言っても、まったく意味のない物でもなかったのですが、それなら他の事でも十分表現できたのでは?? という扱われ方でした。
 ネタバレになりますが、冒頭の原発のシーンで、主人公の能力がどれ程凄いものかを知らせるための演出だったと自分は思います。
 冒頭であんな演出があったのだから、てっきり今回の敵がそれを使って攻撃してくるものだとばかり思っていたんですよねぇ。そうなるとこの3巻は大きく動く一冊になるんじゃないか! と思ってました。
 ですが、実際はそれっきりで、最終的に主人公の防御殻がどんなものでも無力化してしまう! という説明だけだったんなぁ…と結論づけました。
 まぁ、そのための説明なら、あの演出は十分印象付になったなぁ…とは思いますが…。



 今回も主人公は敵キャラですね。
 この作者は非常に心理描写を大切にする方だと認識しています。SAOでもその描写が大部分を占めています。その所為で物語がほとんど進んでいないんじゃないか? と思っているのですが…。
 主人公のミノルの心理描写は、作品の最初である1巻である程度描かれていて、2巻以降はそれに肉付けしていくような感じなので、主人公の心理描写は徐々に減っていきます。代わりに新しく登場するキャラの心理描写が深くなっていくんですよねぇ。
 新しく登場するキャラ=レギュラーキャラじゃない=敵キャラなので、必然と敵キャラの心理描写がメインに成るんですよねぇ…。そうなると、毎巻敵キャラが主人公かの様な扱いを受けているんですよねぇ。
 まぁ、この作品は勧善懲悪な作品ではないと思います。
 ヒーローキャラとして描かれている主人公側も、悪役として描かれている敵キャラも、共に主義主張を持って行動しているという点!
 今回は敵側のそれが少し垣間見えた一冊でした。



 ウェブで公開されていた作品という事ですが、完結まで掲載されていたのかどうかは知りませんが、このシリーズ、ここまででもまだ序章という感じの内容。
 この先どのくらい続く予定なのか判りませんが、長くなりそうですね。