人間くさい悪魔の真実!



はたらく魔王さま! 15
著者:和ヶ原聡司
イラスト:092
電撃文庫


あらすじ:
魔王、ついに正社員!! ……になるための登用研修を受ける!
真冬の大騒動な第15弾!


ライラから異世界の危機について話を聞いた魔王だったが、悲願の正社員への登用研修が始まり、それどころではなかった。
魔王の留守中、千穂と鈴乃はアラス・ラムスのためクリスマスパーティーを企画していた。
初めてのクリスマスに浮かれて靴下を大量購入するエメラダや、梨香のことを気に掛ける芦屋、母親が世界の危機に関係していてもまったく気にしない漆原たちをまとめあげ、パーティーを無事開催することはできるのか!?

天使たちの過去、天界の悲劇も明かされ、庶民派ファンタジーにまさかの新展開も!?




ネタバレ具合:中
 個人的に、今一番楽しみにしているライトノベルってやっぱりこのシリーズですね。
 前ほどラノベを読まなくなってきたというのもありますし、ここのところ、読んでいた作品が立て続けに終了してしまったので、数が激減してしまいました。
 その中で、今一番面白く感じているのがこの『はたらく魔王さま!』ですね。
 そのな状況なので、今巻も本当に面白かった!
 もともと、この作品を買い始めたきっかけは、何度も書いていますが、アニメからの後発組です。
 アニメを観て、この作品を知って、そのアニメが面白かったので、続きが気になったので原作に手を出して、その原作もやっぱり面白く、今に至ると…。
 特に、10巻以降が自分的に毎巻神展開の連続で、毎巻楽しみで仕方がありませんでした。
 ただ、前巻の14巻は短編集で、本編とは違う視点で描かれた内容だったので、別ですが。それでもちゃんと面白くなってましたよ。


ついに明かされる世界の真実!
 13巻で新たな展開を示唆され、今巻でその展開が始まるという内容。
 ただし、かなり時間軸が入り乱れて書かれているので、ボーッと読んでいると、何の話をしているのか一瞬判らなくなる事があるので少し注意が必要です。
 事後の展開から始まり、ラストまでその経緯がかなり時間軸をバラバラにして語られるのが今巻。
 その中で、悪魔のくせに妙に人間くさい部分を見せる芦屋。その人間くささの根源が明らかになったり、天界と魔界、エンテ・イスラの創生。天使の秘密。漆原の生誕経緯。そして、13巻で語られた、新たな展開への全ての謎がこの一冊で一気に明らかになります!
 何気に今後のこのシリーズを左右する大きな一冊になっているのではないかと思います!
 そんな内容なので、改めてこのシリーズの練られた設定に感服しながら読ませていただきました。

 以前にも書いたのですが、最初は異世界から逃げてきた、悪の魔王が、現実世界で人間らしく振るまい、現実社会で存在地位を築こうと奮闘する作品だと思っていました。
 それが、敵役だった勇者との確執が徐々に薄れ、共通の敵を打つために異世界へ戻っての大バトルを展開。
 そこまでは、既存ファンタジー作品の設定を使えば、まぁありふれた物語で説明がつくと思うのですが、異世界でのバトルを経て、現実世界へ帰ってきてからの展開がこの作品の真骨頂だと感じました
 また元の展開に戻るのかと思いきや、内容はより複雑なものへシフト!
 支配の恐怖に慄いていた頃には生まれる余裕が無かった物が、平和というゆとりの中で生まれて、それを良しとしようと思わない者が、勇者という神格化した存在を利用して、自己欲を満たそうと画策。
 それを魔王がサポートする形で阻止したのが、エンテ・イスラ編。
 そして、その先に現れた、新たな脅威!
 その脅威と戦うために画策する人物。そのために明かされた、この作品の世界観を一変させる真実! これがこの作品の凄いところであり、面白いところだと感じています。一体どの段階でこの設定を思いついたのでしょうか? このシリーズを書き始めた時から構想としてあったのなら、よくこの時期まで出さずに居られたなぁ…と。感服します。
 途中で思い付いた設定だとしても、作者様の才能に感服です。
 異世界の存在の仕方と現実世界(笹塚)とのつながりが、さもありなんな設定で今回明らかにされました!
 これが凄いと感じました。この設定なら、悪魔や天使が居て、魔法が使える人間が存在する世界が科学的に実証されるかも!? という設定が語られています!
 このおかげで、こういうファンタジーもので疑問に思う、漠然とした世界観が総て納得できるんですよねぇ。既に、13巻で語られた、日本、笹塚とエンテ・イスラ、天界と魔界の関係もなるほど、巧い! と思ったのですが、それと同時に新しく思い浮かんだ、じゃあ、エンテ・イスラの人間と天使、悪魔の違いってなんなの? という疑問が今巻で完全に解明されました!
 まぁ、セフィロトの樹とかの神話の存在は科学的な視点では解明されてませんが、これは現実世界でも神話として語られる用語なので、この際深く考えない事にしましょうか。
 古代から語られる物語なので、何か理由があるんでしょうし。



 冒頭の事後へ続く経緯を経た、終盤の展開から次巻への期待も大きくなりましたし、ラストダンスが近づいているのかもしれませんが、まだまだこのシリーズは面白くなるどろうという確信めいたものも感じられました!





 次巻も楽しみに待ちたいと思います!







ここまでの謎が明らかになる
オススメの一冊!