緊急事態の記者会見は、会見する人も、質問する記者も殺気立っています。質問する記者の不遜な態度を不快に感じる場合もあれば、会見する人のもごもごした話した方に戸惑うこともあるでしょう。
なぜ、記者会見を見ていてストレスが貯まるのでしょうか。記者会見の図式を理解しながら3つのポイントを整理してみます。
【1】会見を開く側は慣れていないが、記者は慣れていること
記者会見で取材される側の人は、殆どの場合、会見に臨むことに慣れていません。一方、記者は多くの記者会見に出るため、慣れています。経験の差があります。
・会見を開く側……慣れていない
・記者側 ……慣れている
これを念頭に記者会見を見ると、記者会見が、なかなかスムーズにいかない理由が見えてきます。
質問される側のもごもごした話し方は、慣れていないためであることが多く、質問する記者の不遜な態度は慣れているためであることが多いのです。時折、記者 が会見する側に、「マイクを近づけて!」などと強い口調でアドバイスすることがあります。記者が偉そうに見える場合がありますが、会見する側がマイクの使い方にすら慣れていないという事情もあります。
慣れていない人が頑張っても限界があります。逆にうまくいく人は、慣れていることもさながら、会見のブレーンがいます。
記者会見の例ではありませんが、民主党が政権をとった際の、鳩山由紀夫元首相の就任演説は出来が良かったと言われています。
鳩山氏には、平田オリザ氏という劇作家が演説のブレーンを努め、話し方などを事前に演出していました。しかし、多くの記者会見をする人は、会見の素人で、かつブレーンはいません。会見をスムーズにすすめられないのは当たり前なのです。
慣れない会見に出席する人もスムーズに情報を引き出したいと願う記者も、記者会見にストレスを感じているということも念頭に入れるといいでしょう。
そして、慣れていないからこそ、記者会見側の素が現れ、真実が公のものになることもあるでしょう。
【2】記者をごまかそうとする記者会見もあること
記者会見にはいろいろな種類があります。質問を受ける側が、正直に話す記者会見もあれば、うまく言い訳を言って逃れようとする記者会見もあります。
船場吉兆の記者会見では、受け答えする人に、言い逃れるためのアドバイスをしたりなど、保身のためにウソを突き通そうとしました。こういった場合には、質問する側も人間ですから感情的になるでしょう。
また、情報を公開すべき時に、隠蔽しようとする人もいます。東日本大震災の福島第一原発第2号機爆発の際の枝野官房長官は、東京電力側の情報公開が非協力的だったことを述べ、それに対して記者側から「隠蔽ですか!?」と鋭い声が飛びました。
記者会見はあくまで紳士的にすすめるべきですが、明らかに隠そうしている態度の場合、記者も感情的になってしまう場合もあるでしょう。原発事故の詳細がはっきりしないならなおさらです。
このような記者会見を何度か経験すると、記者側の頭の中には「こいつはウソを言っているかもしれない」と不信感を抱くことも不思議ではありません。 其れは記者の本能であり、同時に病とも言えましょう。このように考えると、いつもクールに的確な質問をする記者は、よほど優秀であることがわかります。そして全員が優れた記者ではないこともわかります。優れた人材は、いつも希少です。
【3】記者会見する側が専門的な知識ばかり述べること
記者会見側が、専門的な知識が必要な情報を並べ立てて発言する場合があります。もちろん専門的な知識を元に分析することは必要ですが、専門的な知識ばかりでは、知識が浅い記者は理解出来ないでしょう。
基本的に、科学者や研究者などの専門家は、考え方のみ表明するのでは、科学者として根拠が薄いとみなされるので、専門的な知識を元に考え方を表明します。
一方、記者は専門家ではありません。「読み手や視聴者が知りたいことはなにか」、を探りながら質問することになります。専門的な知識で答える研究者と分かりやすい情報を求める記者の間には、溝があり、研究者は伝えたいことを伝えられず、記者は伝えたい言葉を引き出せずイライラするという構造が出来ていま す。
この時、「読み手や視聴者が知りたいこと」とは、いったいどういう事か、が問題になります。読み手や視聴者に、「知識人階級」を想定しているのか、「飲み屋でくだをまくおっちゃん」を想定しているのかによって、質問の内容も変わります。記者会見の場所には、様々なメディアの記者が参加しています。専門的な 質問をする記者もいれば、そうではない記者もいます。状況によりますが、質問する権利は、記者に平等に与えられるべき、という考え方もあります。
最後に。Ustreamなどで記者会見をみて、記者の質問や、会見側の答えに、あなたが聞きたいことを聞けずイライラしている時、他の誰かは聞きたいこと を聞いてスッキリしているかもしれません。また、全員がイライラしている場合もあるでしょう。皆がスッキリする記者会見はなかなかありません。記者会見と はそういうものなのです。
もし、皆がスッキリする記者会見があった場合、会見をする側が催眠能力や強いカリスマを持っている場合があり、それはそれで記者側、視聴者、そして国民が騙されたということにもなるでしょう。
ブログ「ざまあみやがれい!」はツイッターにも配信してます。
http://twitter.com/#!/zamamiyagarei
追記1)様々なコメントありがとうございます。また、ライブドアTOPページへの掲載ありがとうございます。ご批判を含め受け止めてブログ運営に活かしていきます。皆様もコメントまで目を通して考えてみてはいかがでしょうか。
コメント
コメント一覧 (31)
その後、エクソン・バルディーズ号事件についてネット上ではありますが調べて、勉強させていただきました。有難う御座いました。
知識に裏付けされた力強いご批判を頂きましてありがとうございます。勉強させていただき、魂が震えました。政府や企業、社会問題に対し、提言し影響力を及ぼせるメディア体制づくりが急務です。TwitterやUstreamで発信される情報に、注目が集まりつつあります。企業スポンサーに配慮せず、危機意識に裏付けされた提言こそが今求められています。
ご指摘ありがとうございます。確かに、少なからぬ記者は、「場慣れした『無知な素人』」でしょう。慣れは、些細な情報を見落とす原因です。プロフェッショナルは、慣れやスタイルを拒絶します。そのような記者が一人でも増えるよう私は願います。
極めて客観的なコメントありがとうございます。まさにそのとおりです。私は、フレッシュで優秀な記者が現れることを望みます。
情報提供ありがとうございます。まずは、このブログの情報を拡散する意図をメールもしくはコメントにてお伝えください。その後判断させていただきます。
あ様のような両者の立場を客観的に見つめての指摘こそ、対立するものを懐柔できるのではないでしょうか。有能な記者は、取りたい絵を撮るために、手練手管を使います。思いがけない一言を引き出すための質問を用意できる記者は優秀です。一方愚かな記者からは、取ればいいんだろう、という姿勢を感じるのは否めません。ただ、全ての記者に有能であることを求めるのは、酷でしょう。2割の働き者と8割の怠け者で、社会は出来ているのです。
コメントありがとうございます。ぱぱぱん様のような聡明な指摘を受ければ、東電も政府もそしてメディアも姿勢を改めるのではないかと思います。ぱぱぱん様のような国民の気持ちが政府に、そしてメディアに伝われば、この国のあり方も変わるのではないかと思います。
大批判のコメントありがとうございます。名無し様のような批判こそがメディアを変えて行くのではないかと思います。たしかに東電は混乱の中必死で原因を究明しているのでしょう。ただ、海外メディアから批判を受けているように、過去に東電が情報隠蔽をし、国際的に非難されたことは事実です。その時の恐怖が記者に「隠蔽ですか!」と叫ばせたのかもしれません。事態は、風雲急をつけています。これ以上無駄な時間を使わずに、意義のある会見を続けていただきたいものです。
メディア側への批判的な、ご意見ありがとうございます。おっしゃるように、会見がうまくいかないと言ってグダる記者は職務を全うしているとは言えません。ただ、会見内容によっては最初からうまくいくはずがない会見というものもあるでしょう。それは双方の言い分に大きく違いがあることが原因です。それは、相手が慣れてないせいではありません。それを冷静に受け止め、記事に反映することこそ優れた記者でしょう。数は少ないかも知れませんが、優れた記者に期待しましょう。
確かに東電の対応も褒められたモノではありません。
災害時の企業のメディア対応は、エクソン・バルディーズ号事件の時に問題提起されました。
やってることはほぼ正しいんだが、メディア対応が駄目で市民感情を逆撫でするだけに終わり、散々な目に遭いました。
以後、アメリカの大企業にはメディア対応を加味した危機管理体制を作っているところもあります。
それ専門の企業コンサルタントもあります。
ですが、日本の場合にはそれが殆どありません。
何故か? 「言霊思想」のためです。
「万が一こうなったら~」と最悪の事態を口にすることすら禁忌とする空気が日本にはあります。
「縁起でもない」と言うアレです。
東電の社員が「ウチの原発がメルトダウンした時に備えて非常時の体制作りをしておきましょう」なんて言ったら、その真面目な社員はクビですよ。
日本はそういう社会なんだと諦めるか、それとも危機に際してメディア対応も万全な企業文化を醸成するかは、それこそメディアが提言すべきでしょう。
シニカルなご意見ありがとうございます。私もまたシニカルな意見をもつものです。会見が荒れた際は、双方の意図が咬み合わないことが原因で、別段珍しいことではありません。ですから相手のせいにするほど、感情的なことでもないのです。しかし、その諦念こそが事態を悪化させています。諦めないこと、事態を解決に向かわせたいと願うこと、が求められています。
>営業に喋らせればいいのに。
私も同じことを考えていました。技術者が話せばいいのか、話すプロフェッショナルが話せばいいのか。どちらにも優れたところと欠点があるでしょう。ただ、解決したいと考える人が会見に立つ必要があるのは言うまでもないでしょう。
まさにおっしゃるとおり。だが危機であればあるほど人が足りないという現状もあるでしょう。バカを排除すると、ほんの僅かな人材しか残らないのが世の常。メディアを擁護するわけではないが、メディアによって貶められた信頼がメディアによって回復されることもある。私たちはメディアを常に監視し疑う必要があるでしょう。
気持ちがこもったコメントありがとうございます。
批判的なご意見嬉しく思います。確かに、科学記者を雇っていないメディアの問題意識の薄さについては厳しく問いただすべきでしょう。同時に、東電ともあろう大企業が会見にバタつきがあることもまた問題意識が薄いと言えるでしょう。つまり情報の価値をお互いに重要視していないということです。ひこにゃん様のような、知識人こそ、失笑している暇などありません。意見を表明し、メディアを正しい方向に導くべきかと存じますがいかがでしょうか。
コメントありがとうございます。客観的にメディアを見ているご意見嬉しく思います。天皇陛下のコメントは時折報じられています。作業服の人も見たように思います。ただスカイツリーは私も見ていません。スカイツリーほどの大きさの建物がどんな影響を受けたのか、報じないのはなぜなのか、気になるところです。ただ、幸い東京は、その後大きな余震も少なく、スカイツリーを報じる時間があれば、被災地に人の現状を伝えるほうが有益でしょう。
このブログ拡散できる?
が、説明側も例えを入れるなりして多少は噛み砕いた説明した方が親切だと思う
子供の被災者に対して「今の気持ちは?」とか聞く連中の何処が質問慣れしてるというのか……
聞きたい答えを返す様に誘導している。としか思えない質問はプロの仕事じゃないだろ
例で出してる事例と今回のは明らかに違うだろハゲ。
なんで地震で停電してんのに『責任は?』だよwwwwwwwwwwwwww
だれが聞きたいんだよそんな質問。
誰が聞きたいっていうんだよ損な質問。
なれてねえのはお前らだろ。勉強してから質問いけアホ
マスゴミ様のネタ作るために不正確な情報を流し放題しろってのか
それともマスゴミ様の為だけに現場の作業員に命懸けの撮影なりをさせろとでも?
それで難しい内容、相手がなれてないからグダる
それで会見が荒れるのは相手の責任です
って頑張ってるようにしか見えませんね
国民の方がもっと賢いから、馬鹿は行かせるな。頼むから。カイワレ、ホウレン草、BSEの時も馬鹿丸出しだったけど、今回のように喫緊かつ国難の時に馬鹿は排除せよ。というか馬鹿には質問させるな。
自分が慣れてる会見の進行に文句を言って、
自分が慣れていない専門用語にも文句を言うわけか?
何様?
自分達は事前に知識も入れずに話を聞きに行くから、スムーズに分かりやすく話せか?
原発の対応をしながら、自分達に分かるように準備しとけか?
会見に慣れてるなら、相手の緊張とかを考えて話しやすいように接し、終わった後に気分よく退室させろ。
原発の対応に戻る人間をヘコませて何の得になるんだ?
分かり難い専門知識を分かり易く解説するのもメディアの役割。
ウォルター・クロンカイトを見習えばいい。
原子炉の格納容器と圧力容器の違いも分からない記者が、偉そうにしているのを見ていると、「コレが日本の知識層の代表か」と失笑する。
枝野会見で、「建屋の天井崩落状態」から「爆発」にいつのまにか、表現が変わってる。