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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

LOST IN TIME「LIFE IS WONDER」全曲レビューその2「遠すぎた橋」

2013-12-10 20:38:26 | LOST IN TIME 全曲レビュー




















2.遠すぎた橋




















しんしんと降り積もる雪のようなアルペジオと、清廉なるサウンドの美しい調和
そこに海北大輔独特の透明感のある青年感溢れる歌声が乗っかって唯一無二の聴き心地を与える一曲
一音一音から伝わってくる繊細且つシリアスな感情に思わず襟を正してしまうようなそんな曲
基本的には心の中のナイーブな部分をナイーブに歌う曲なんですが
途中で一気に心情を激しめに吐露するパートもあったり、
かと思えば最後は透明感、というよりは少し複雑な匂いを漂わせて良い意味で後味悪く曲は終わったり
(良い意味で後味悪い~って言い方は随分アレですけど 笑 
 要するに少し考えさせられる余韻を残して終わる感じ)
一曲の中で様々な感情が蠢いているような楽曲ですね
本当は口に出せない、出しちゃいけないと思ってるのに心の中で反芻する言葉達、
本当は向き合わなきゃいけない、無関心じゃいけないのに臆病にひれ伏してしまう自分
そして、時々耐えられなくなるくらいに「正しい」この世界に対する憎しみや憤りにも似た感情。

とどのつまり、言葉では上手く表しきれない感情であり
解決の糸口もなく、解決しようとも思わない、だけどどうしても気にしてしまう心のモヤモヤ・・・
そういう気持ちの宛てのない心情をじっくりと歌ってくれている曲だと私は解釈しています
それぞれ心の奥に隠して嫌われたくないから言わない多数の事柄、
みっともないから口に出せない醜い弱音、
悔しくなるくらいに渡せない遠すぎた橋の数々・・・
しかも、それをどうにかしよう、とか前向きになろう、とかそういう方向性で終わる訳でもなく
最後の最後まで気持ちの底に沈んだままで終わるのがまた安易にポジティブでもなくいいですね
それでも「書き留める託すべき愛を」と、「それでも」の感情が歌われてるのがこの歌唯一の救いかな
本当は出したいけど出せない醜い気持ちに心を焦がされながらも、だからといって動く事はやめない
それでも「すべき」事は確かに目の前にあって、そうしたい気持ちもあって。
それだけが今の自分が握れる手綱であり希望。

そう考えると、最悪の状況を示唆しつつもそこから一歩進ませる為のナンバーなのかもしれません。
いかにも重苦しい曲のように書いてますが前述のように歌声は透明感あって青年っぽくてアレンジさわやか
要するにスルっと入ってきて深く根を張るタイプの楽曲だと思いますね
今まで棄ててきたもの
棄ててきた感情
その総てに申し訳なく思う気持ち
それでもそれを糧に今も歩まんとする気持ち・・・
人生は、あなたが考えているよりもずっとシリアスなものなんだよ、って
自覚させるための曲でもあるのかも そして自覚したからこそ今すべき事にも力が灯る。
私個人的にはそんな風に勝手に感じているナンバーです。ライブでの想像以上の迫力も凄かった。


「努力」「頑張る」という行為に勤しめどそれが必ず実を結ぶとは限らない
「努力」「頑張る」では到達出来ないポイントを知った時の絶望は計り知れません
そこで力尽きるのも一つの選択肢ではありますが
一度悲しみに浸り切って、
「負けた」「ひれ伏した」ことを自覚して
散々自分の中のモヤモヤと一緒に過ごしてあげた先に、また一歩進める「余白」が生まれる
無理矢理明るく誤魔化すんじゃなく、「届かなかった」「渡せなかった」という事実を自覚すること
そこからまた「やってやる!」という強い気持ちが生まれていくのもまた事実
こういう曲を聴いてると一種のセラピーのようなものであると同時に
自分の弱さを自覚する事って大切なんだなあ・・・としみじみと思います。その上で、何をすべきか。
そんなメッセージもまた含まれているような気もする渾身のミディアム・ソング。

無駄にしてきたいくつもの何かや、感情を忘れない為に。













「忘れ行く事すべてに懺悔を」






LOST IN TIME「LIFE IS WONDER」全曲レビューその1「S.E.」

2013-11-12 21:21:24 | LOST IN TIME 全曲レビュー

















前作に引き続き、全曲レビューを敢行します。まずは一曲目の「S.E.」。























1.S.E.













ロストインタイムのライブに行った事がある方ならご存知でしょうが
これはまんまSE、要するにバンドがステージに上がる時に掛かっている曲ですね
今作でも執拗にモチーフとして用いられてる「時計」の音、
直接的に「時計」という言葉が出てなくても時間は有限で止まってはくれないというテーマを示すような
そんな言葉が今作には多いので、
その点でもアルバムの象徴である一曲目にこの曲が流れるのは非常に良いですね。
シリアスであり、優しくもある、そんな今作の雰囲気にはピッタリで聴く前に感情を盛り立ててくれる一曲
インストで一分半という時間の割には密度が濃く、またうねりを上げるギターの音色も印象に残る
この曲もまた今作の傑作度に正しく貢献してくれている楽曲だと思います
こうやって文章を書いてる間にも時計の針は容赦なく進む、
ボーっと過去に意識を蝕まれている間にも
そういう事実を自覚させるような今作に於いては「相応しい」というしかないような幕開けです。









このアルバムに収められている「撥条」という曲は
自分が消えて姿を見せないことで他人が得られる幸福や快感がある、という事実や
理屈とか鼓舞とか義務とか、そういうものを全部取っ払って何かを肯定してみたい「五月の桜」、
個人的に重要だと思える楽曲が点在しているので毎回心を込めて一曲ずつ触れていくつもりです。

このアルバムを聴いていると「明日を生きたい」と思えるから不思議ですね。



LOST IN TIME「ロスト アンド ファウンド」全曲レビューその11 「陽だまり」

2011-06-17 16:45:11 | LOST IN TIME 全曲レビュー





いよいよ最終回です。LOST IN TIME「ロスト アンド ファウンド」全曲レビューその11「陽だまり」。

苦しくて辛い、いくつもの名曲の果てに待っていたのは、とても優しい祝福の歌。

それがある意味では厳しくも聴こえますが
それでもこの道を歩いていく、って、そういう気持ちを引き立てる曲にもなってると思います。




11.陽だまり




【宛名一つない手紙を 海へ投げる日々を】

【為す術も無く毎日は続く】

こういう幸せな曲でも
海北くんの詞は現実を見つめている。
幸せなようで、楽しいようで、でもとても残酷で儚いこの世界を
しっかりと見つめている。
その上で、歩いていける、大丈夫、と。
怖がらなくていい。
誰にも届かなくてもいい。
それでも歩いていける。誰かの物語が力になる時もある。決して一人ではない。
それに気づけたら
そこに気づけたなら。
一人で頑張れないのなら、他の誰かに頼っても良い。
自分の行動や言葉が何一つ作用しなくても、その行動にはちゃんと意味があって
寄せては返すだけだとしても
本当は確かに何かが変わっている。変わっていく。
その様子を見守りながら、時には誰かと手を繋ぎながら、クタクタになっても
それでも人間は歩いていける。
そんな力がある。

だから、大丈夫。
そうだから、大丈夫。
気持ちが少しだけ解きほぐされる、優しい歌です。

全く何も変わってないように見えても、実は何かが変わっていて。



アルバムの最後、としては非常に相応しく
最後の合唱の部分も含めてゆったりと、柔らかい気持ちで聴き終える事が出来て
更に前述の通りただ都合がいいだけの歌じゃ全然ない。
むしろ現実を見つめつつ
それでも歩いて行こうとする、そんな歌。
だからこそ、こういうアルバムのラストには相応しいですね。
この曲もまたロストインタイムらしい曲だと思います。

すぐには変わらなくても
届いてないように思えても
少しずつ状況は変わっていく。
それが良い方向なのかは分からなくても
その中で迷ったとしても
道を振り返ればきっちりと跡は残っている。
この先も標もなく看板も何もないけれど、あるわけないけど
自分の道を作る為に
歩けば必ず跡の残るその道を作る為に。
今日もまた宛名のない手紙を書いて。
それは小さな意味を成して。





これにて全曲レビューは終わりです。
今までどうもありがとうございました。
引き続きNICOの「PASSENGER」や、その他作品でも一曲単位の全曲レビューは続けて行きますので。
機会があったら興味があったらこの作品も聴いて頂ければ。幸いですね。




ロスト アンド ファウンド全曲レビューその10 「進む時間 止まってた自分」

2011-06-16 07:26:00 | LOST IN TIME 全曲レビュー






いよいよ大詰めですね。LOST IN TIME「ロスト アンド ファウンド」全曲レビュー、その10です。

タイトルだけで痛い「進む時間 止まってた自分」です。






10.進む時間 止まってた自分




いくら前に進みたくなくても
進む力がなくても
誰にだって夜は明けて、朝が来て、進む事を余儀なくされる。
それがただ受動するだけだとしても
何一つの能動がなかったとしても
時は動き
自分も動かざるを得ない
ただそこに自分自身の時計の針は一切稼動はしていないけれど。
ただ世界だけが進んでるだけ。


【僕にも朝は来てる 君がいなくなったのに】

どれだけショッキングな出来事に身を包まされようが
それでも明日が来る
来てしまうって言うのは
中々に残酷なシステムだと思いますが・・・
その分それがある意味救いにもなるんですけど。
誰かを意図的にではなく傷つけてしまったり
結果的に突き放したり
離れても
それでも朝はまたやってくる。
意地でも再生しなくてはいけない。どうにかして時計の針を。
あの日から止まってちっとも進まない時計の針を。
少しでもいいから動かしたい。
少しずつでもいいから動かしたい。
それもまた誰かの為とはいいつつ
自分の為。
それでも、歩く事には確かに意味があって。


【全然気が付いてなかったんだよ 時間があんまりなかった事に】

【僕は駄目だから 独りの方がいいんだよ そうやって逃げてばかりで】

人生長くて険しいですから
一見時間って無限の様にも思えますけど
実は突然誰かから別れを告げられたり
終わりを迎えてしまったり
そんなことは日常茶飯事で
逃げたら逃げただけそのツケが回ってきます。別に無理に頑張る必要なんてないんですが
いつかはそんな自分自身と向き合わなければいけない時が絶対に来る。
そんな時、時計の針を動かせるのは紛れも無くその人自身しかいない。
だから、今はまだ無理でも
飛行機じゃなくても車じゃなくても
みすぼらしい自転車でも良い、あぜ道を走るように
フラフラ走るように
少しずつ進んで
その時にこそ針は動いて。再び逃げてそのツケで後悔なんてしないように。



この曲を聴いていると
無性に気分がメランコリーになったりするんですが
その分音は非常に優しくて、柔らかくて、
この音色を聴いてるだけで心安らぎます。
田舎の麦畑を髣髴するような感じ?
逆に、歌詞の面では結構に厳しいフレーズ多かったりするんですが。
どうにもならない心情を吐き出し
それでも前に進まんとする歌。
決して格好良さはないけれど、それはある意味では吹っ切れてもいるような印象で。


【だから僕も進まなくちゃ もう君はいないから】





ロスト アンド ファウンド全曲レビューその9 「所在なき歌」

2011-06-09 14:37:27 | LOST IN TIME 全曲レビュー





残す所あと2回。LOST IN TIME「ロスト アンド ファウンド」全曲レビューその9。「所在なき歌」です。







9.所在なき歌


【醜態も晒さぬまま】

プライドが低いとか、
腰が低いって言葉はよく聞くけれど
その実本当に何もない人間なんていやしなくて
心のどっかで自分の事を誇りに思ってて。だからいつでも格好良く、スマートであろうとする。
傷を付けない様に、
付かない様に頑張っている。

でも、逆に言えばそんな姿が一番格好悪い。


【9回の裏になって 急に焦る無策な僕】

その結果、大事な時に何も出来ずに
ただぼーっと眺めるだけの人間で終わってしまいます。
残ったのは後悔と叶わない願いだけ。
人生なんてそんな出来事の繰り返し。
格好の悪い自分を出す勇気も
そのまま進む勇気もないままに、ひたすら余裕ぶって、まだ大丈夫だって。
本当は大丈夫な訳なんて一つもないのに。


誰にも届かない言葉や願いなんて
ただ何もない部屋の中で空気に混じって消えていくだけ。
醜態を晒さないって事は
醜態以前に格好悪くて
誰にも届かないって事を例え悲しく感じたとしても
それは当たり前で
何もしなきゃ何も掴めないのは当たり前で。

自分のちっぽけなプライドに捉われて何も出来なくなるようであるのなら
それを取っ払っちまえばいい、って言うのは簡単なことですけど
それが中々出来ないから悩んでいる。
だとしたら、その中で上手くやっていく方法を見つけるしか他はない。
ただ一ついえるのは、この歌で歌われているような状況は確実に失敗だ、って事です。
それに気づいた瞬間の歌。


ミドルテンポですが
サビの部分では熱くリスナーに食って掛かる。
非常に感情に訴えかけてくる曲です。
淡々とリズムを刻むアンサンブルから、
転がるようにもがく直情的なアンサンブルへ。その変化もまた聴き所、だと思います。




「失敗を繰り返して やっと今ふりだしに立った」

最後のフレーズが、また沁みる。
これの繰り返し。
繰り返しの中で、笑って、泣いて。また見つけて。