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大文字用ハイフンやダーシを持ったフォント
ブログ読者からいただいた質問にお答えします。
質問はこうです。ハイフンの高さは、ふつう、小文字の e o x など上下の飛び出しのない文字の真ん中くらいの位置です。でもそれだと、大文字だけで組んだときとか電話番号で数字の間に入れるときとか、こんなふうにハイフンが下がって見える。
大文字用ハイフンやダーシを持ったフォント_e0175918_1623931.jpg


そういうときにハイフンを上下の中心に持っていって、こんなふうにしたいけど、いいの?というわけです。
大文字用ハイフンやダーシを持ったフォント_e0175918_1454947.jpg

先に言っちゃいましょう。それは、すっごくオススメです。しないと間違いというわけではないですよ。でも、すると気がきいている。

ここからちょっと細かい解説。
ハイフン( - )
半角ダーシ( – )
全角ダーシ( — )
は、どれも横線ですが、長さが違って、使い道も違います。ハイフンとダーシについては以前書いた記事が こちら にありますので参考にしてください。全角ダーシは、言いかけて止めた言葉とかを表現するときに使います。日本語でも同じような使い道かな。

ダーシは、ハイフンと同じ高さにつくります。ハイフン、半角ダーシ、全角ダーシを図で見るとこんなふうです。
大文字用ハイフンやダーシを持ったフォント_e0175918_5362392.jpg

それを大文字の間に入れるときには、大文字の上下中心に見えるくらいがいいと思います。
大文字用のハイフンやダーシを持ったフォントだってあるし。例えば、これは、 Palatino nova (パラティノ・ノバ)で InDesign を使って組みました。

それを全部まとめて大文字に変換したものが下。「大文字に変換」は、私の(ドイツ版)InDesign の場合のショートカットは command + shift + K です。

そうすると、ハイフンもダーシも大文字用になる。便利でしょ?
大文字用ハイフンやダーシを持ったフォント_e0175918_5364651.jpg


上にシフトされる、ということでなく、大文字にあった高さにデザインされた別のハイフンとダーシが使われるわけです。こういうのを、「case sensitive」記号といいます。印刷や出版の用語で大文字は「uppercase」、小文字は「lowercase」と言って、金属活字ケースの配置からそういう名称になったらしいですが、要するにその「uppercase/lowercase」の違いに対応・反応するということです。

下の例は Palatino Sans (パラティノ・サンズ)で組みました。 Palatino nova と同様、ヘルマン・ツァップさんと私の共同作業です。
大文字用ハイフンやダーシを持ったフォント_e0175918_537101.jpg

下は「case sensitive」記号。
大文字用ハイフンやダーシを持ったフォント_e0175918_5373250.jpg


他にも、Adobe Garamond Pro でもできました。そういう大文字用ハイフンやダーシを持っていないフォントを使いたい場合は、もちろん上にシフトさせればいいわけです。
by type_director | 2011-05-19 05:35 | Comments(6)
Commented by m-t-s at 2011-05-21 23:19 x
細かい質問ですが・・・。たとえば headline style で「World-Class」という風にした場合、「d」と「C」 の間のハイフンはどちらに合わせるのがよいのでしょう?
Commented by ほんま at 2011-05-22 10:40 x
お答えいただきありがとうございました。
とても勉強になりました。
これからもしっかりハイフンを中心に調整し気の利いた
デザインにしていきます。

ありがとうございました。
Commented by type_director at 2011-05-22 18:26
m-t-s さん、小文字が入ってくる場合は通常の位置のハイフンを使った方がいいような気がします。ハイフンの前後の二文字だけでなく、単語全体の輪郭というふうに考えてみましょう。
小文字の単語を組むときには、母音 a e i o u はどこかに入ってきます。どれも、 i の点を除けば低い位置に納まっているため、たいがいの単語の主な輪郭は大文字の高さの半分よりは下に見えるんじゃないでしょうか。英語だと y が単語の終わりに来ることも多いですよね。かといって単語によってハイフンの高さを変えるようなことは効率が悪い。そこで、高いか低いかのどちらかを選ぶとすれば、低い(小文字の高さの中心くらいの)ハイフンのほうが目立ちにくくて無難じゃないかな。
Commented by type_director at 2011-05-22 18:26
ほんまさん、こちらこそ、面白い話のきっかけをありがとうございます!
Commented by yamamoto at 2011-05-25 10:20 x
迷いながらやっていたことが、
これからは自信を持ってできます。
ありがとうございました。
勉強になります。
Commented by type_director at 2011-05-27 20:24
yamamoto さん、コメント有り難うございます。なるほど、yamamoto さんもそうですが、けっこう自主的にやっている人は多いみたいですね。
『欧文書体のつくり方』
小林章著 Book & Design 刊
欧文書体の第一人者によるフォントとロゴ制作の教科書。美しく読みやすい文字をつくるための基礎知識と考え方を解説。
 
プロフィール

小林 章
欧文書体で120年の歴史を持つライノタイプ社のタイプディレクターとして 2001年よりドイツに在住。同社は 2013 年 3月よりモノタイプ社と改称。主な職務は、書体デザインの制作指揮と品質検査、新書体の企画立案など。有名な書体デザイナーであるヘルマン・ツァップ氏やアドリアン・フルティガー氏と共同で書体制作も行っている。欧米や日本での講演多数、コンテストの審査員もつとめる。
著作:『欧文書体:その背景と使い方』『欧文書体2:定番書体と演出法』『フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?』(いずれも美術出版社)『まちモジ:日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?』(グラフィック社) 『英文サインのデザイン:利用者に伝わりやすい英文表示とは?』(田代眞理氏との共著、BNN 新社) 『欧文書体のつくり方:美しいカーブと心地よい字並びのために』(Book & Design)
 
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