2013-09-20T08-51-12_3ずっと、「お客様は神様です」あるいは「A consumer is a boss.」というモットーに対して、少しでも疑問を持つことはマーケター失格のような気がしていました。

 


でも、ヨーロッパの歴史ある企業数社の方々からお話を伺っていると、どなたもそんなことを言わないんですよね・・・。 (参考記事: 「ファミリービジネス」という「ブランド」?

数世紀にも続くビジネスをされてきたみなさんの言葉に見え隠れするのは、「お客様は神様です」ではなく、「自分たちが楽しいとおもうことをお客さんに提供し続け、それをお客さんも一緒に楽しいと思ってくれて、だからこそビジネスが続く」なんじゃないか、という印象を受けました。

 


シャンパーニュ地方を代表するシャンパン・メゾンに伺ったときも、彼女は熱っぽくシャンパンやブランドについて語ってくれました。

「シャンパンの泡には、人を幸せにする魔法がつまってる。」

2013-09-20T08-51-12_6シャンパンの造り手である彼女の会社はこうした思いでシャンパンを造り、そのシャンパンを買う人もその思いを共有するからこそ、特別な日にはシャンパンが欠かせない、と思っている。 人を幸せにする魔法の泡、シャンパンという世界を、造り手とお客さんがそうだよねと思い、それを共有し続けていて、何世紀にもわたるシャンパン造りを続けているのです。

 


一方に「お客様は神様です」をモットーにするマーケティングがあるとしたら、彼らのマーケティングは、こんな世界があったら楽しいよね、という思いを「お客さんと一緒に造っていく」マーケティング。

お客さんは、こんな世界を一緒に造っていく協力者や同志のような存在なので、「お客様はパートナーです」をモットーにするマーケティングと言えるでしょうか。

 


「お客様は神様です」マーケティングだからこそ、「お客さんがなにをほしいか聞いて、ほしいものを作るんだ」、「お客さんが不便だと言っていることは改善して修正しないと」 と、一生懸命マーケティングをした結果、どこかで見たことあるような製品だったり、不可もないけど可もない製品になってしまう。 もしくは、いいモノを作ればかならずお客さんは買ってくれるはずだ、になってしまう。 そして、実際には買ってくれないことが多い。

 


”The consumer is not a moron. She is your wife.” というマーケティングの格言もあります。 (普遍的に言えば、S/he is your lover.でしょうね。) 消費者をあなたの妻だと思え、って、言いえてるな、と。

つまり妻とは、もちろんかけがえのない「人生のパートナー」。 こんな世界あったらいいなあとか、こんな生活できたら楽しいなあと描くイメージを、分かり合えるのもパートナーだからこそ。 企業がその思いを商品やブランドにしてカタチにしてみれば、お客さんがそれいいね、と言ってくれる関係。 商品やブランドが、企業とお客さん両者の夢を体現しているから、良ければ褒めてくれるし、がっかりすれば叱ってくれる。 もしかしたら、こうすればもっと楽しいのに、と教えてくれる。 企業とお客さんが、自分/他者の関係ではなくて、同じ思いに向かって協力し合う関係ですね。

 


ブランドマーケティングにとって、「お客様は神様」なんかではなく、「ともにブランドを造っていくパートナー」なんだろうなぁ、というお話でした。

 


れ。

 


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