前の記事では、ブランド(作り)は手段か、目的か、あるいは結果なのか、という点について少し書きました。 今回も、その続き、つまりブランド作りに関する認識の違いみたいなものを、また、つらつらと書いてみることにします。
手段か目的か、に大きく関わるんですが、ブランドに関する意思決定の思考・行動様式の違いみたいなことで、なんとなくそれを、「原則」型意思決定と「文脈」型意思決定、と名付けてみます。
やはり、世の中にはブランドマーケティングに向かない、というか、関わるとブランドが壊れる、という考え方というものがあって、それは、どうも文脈型の思考・行動様式なのではなかろうか、と、思ってみたりしたわけです。
ブランドを作り、育てる、ということは、そのブランドがどうあるべきかを決めることと、決めたことをひたすらに実践し続けていくことに他ならないんですが、その決めごと=ブランド作りの根幹をなすもの、ブランドの戦略的な要素をまとめたものをブランドエクイティーステートメントとか、ブランドアイディンティティ―とか呼びます。 企業などによって名前が違うことが多いのですが、ここではエクイティーと呼んでおきますね。
ターゲットとか、ブランドの使命とか、コアとなる価値観とか、ブランドの人格とか、ブランドを構成する戦略的な要素をまとめたもので、書くのも使うのもすごく難しいんですが、でも、とっても大事な「決めごと」を記しておくものです。 (創業社長(や、ブランドを最初にデザインしたひと)がいまだ健在で、ぶれないし、細かいことも全部決めてくれる、という場合は、こんなもの必要ないんですが。)
こいつを一度決めこんだら、製品やサービスの開発やラインナップから、デザインから、広告やプロモーションから、言葉遣いから、さらには、そこで働く人のモノの考え方・発想に至るまで、すべての活動をこれに沿って進めていくわけです。 よくバイブルとか言われたりするのは、そういうことですね。
さて、そうなると、当然、ブランドを作り、育てるためには、その思考・行動様式は、「原則」型意思決定であるほうがいいわけです。 なにせ、常にブランドエクイティーをもとに考え、それを基準に判断し、さらにはエクイティーに触発されてアイディアを考え出さなければならないわけですから。
しかし、やっとこさエクイティー作って、いよいよがっつりブランド作りよ、というところで、なぜかいつも、
「でも、これはエクイティーを決める前に進めてたことだからこのままでいいですよね?」とか、
「それはそれとして、競合が姉妹品を出してきたので、うちも出します、エクイティーには合わないかも知れないけど。」とか、
「エクイティーにはいまいち一致していないけど、ターゲットが欲しいっていうから、作りますね。」とか、
「エクイティーにとらわれてると大きなアイディアが浮かばないので、ここはまず、白紙からやってみましょう。」とか、
果ては、
「エクイティーが、ビジネスを制限するのは、おかしい。 書きなおそう。」とか、
「アイディアが思い浮かばないエクイティーはよくない。 とりあえず、なかったことにしよう。」とか、
わらわらと出てくるわけです。
例外なく。 不思議なほど。 どこで誰と仕事していても、必ず出てきます。
これらは、傾向としては「文脈」型の思考・行動・意思決定の様式ですよね。
まぁ、世の中なんでもバランスなわけで、100%どっちかってことはないし、実際、私の経験でも私がエクイティー原則主義寄りで、パートナーがビジネス実利主義寄りで、ちょうどぴったり、なんてこともたくさんありました。 それでも、「最後はブランドが一番大事」という一点で合意できていさえすれば、大丈夫なんです。
が、世の中には、ブランドマーケティングに全く向かないひともいます。 「文脈」型意思決定が強すぎると、だめですね。 結構優秀なビジネスパーソンだったりすることは多々あるんですが、ことブランド作りに直接関わることに限っては、やめたほうがいい、というタイプ。
こういうひとは、口では「ブランドは大事」と言っていても、結局そこで裏切る。
彼らは自分たちのことを、臨機応変とか状況に迅速に対応するとか表現しますね。 しばしば、「そのことはよくわかっているが、今はそういうことを言っている場合ではない」とかいうことを言うので見分けがつきます。 (ちょっと冗談。 実際は、そんな単純じゃないです・・・。)
やっぱり、思考・行動・意思決定において、ブランドエクイティーを原則として考え、律することができること、ということなんですが、言わば、随分禁欲的な行動と思考なわけです。
なんか、宗教っぽくなってくるなぁ・・・・。
これ以上進むと精神論にしかならなくなるかも知れないので、ここでストップ。
ただ、なんとなく、いろんな会社やブランドの傾向を分析していて感じるのは、欧米系外資のブランドって、ここのぶれが少ないなぁ、ということ。 VirginとかAppleとかGoogleとかをちょっと思い浮かべてもらうと、なんとなくわかってもらえるかしら。 原則を決めて、それに沿っていろいろなことを決め、作っていってる感じが強い。
一方、日本の大企業って、商品は数え切れないほど持っていて、とっても「臨機応変」にそれらを展開してきたんだろうけど、強いブランドが少なすぎるんじゃないかなぁ、とかね。
まぁ、そんな大企業のことは私にはあまり関係ないか。
まずはなんとかブランド作りの「目的としての正当性」を理解していただかないといけないわけで、それが私の仕事なんですよね。
しかし、どうやって説明すれば、もっとすんなりわかってくれるんだろう。
で、またうじうじ悩む。
(うじうじ続く。 次はすっきりわかりやすい記事にしなきゃ。)
お。